イスラム国バナー

【特集】神と石油と暴力と~世界の鍵を握りつつ、混迷を深める中東特集

 2013年の「シリア危機」再びか――

 6月に入り、イラク情勢が緊迫の度を増している。スンニ派の武装組織・ISIS(イラク・シリア・イスラム国)がイラク第2の都市モスルから北部の主要都市ティクリートまでを制圧し、首都バグダッドに迫っている。

 イラクのマリキ政権は米国に対して空爆の実施を要請。オバマ大統領はイラクに軍事顧問300人を派遣し、空爆の可能性も排除しないとの考えを示している。

 このイラクの混乱で思い出されるのは、2013年8月に突風のように吹き荒れたシリア危機だ。シリアの首都・ダマスカス郊外でアサド政権側が化学兵器を使用したとして、米国とイギリスは軍事介入の動きを強めた。英米の空爆に向けた前のめりの姿勢はロシアのプーチン大統領の巧みな外交術によって退けられたが、シリアの内戦自体はいまだ収束していない。

 今回のイラク危機では、スンニ派であるISISの台頭に危機感を募らせるシーア派のイランと米国が協力関係を結ぶなど、従来では考えられなかった「ねじれ」とも呼べる現象が起きている。

 シリア、イラク、イラン、トルコ、イスラエル、サウジアラビア、エジプト…。複雑極まる中東情勢をいかにして理解すればよいか。IWJがこれまでに取材したアーカイブを一挙ラインナップ。

目次

  1. 岩上安身インタビュー
  2. 注目記事ピックアップ
  3. 「IWJ特報」&「岩上安身のニュースのトリセツ」
  4. メルマガ「IWJウィークリー」より

岩上安身インタビュー

 中東は今、混乱の極みにある。2015年3月25日から、サウジアラビアが隣国のイエメンに対して空爆を開始。5月3日からは地上軍を派遣し、攻勢を強めた。

 スンニ派の大国であるサウジアラビアの軍事行動に、同じスンニ派のクウェート、カタール、バーレーンなど9カ国は賛意を表明。有志連合を結成し、イエメンへの空爆に参加した。

 今回のサウジアラビアによる軍事行動の背景には、シーア派の大国であるイランの存在がある。米国、英国、フランス、ロシア、中国、ドイツの6カ国とイランは、4月2日、スイスのローザンヌで、イラン核問題の包括的解決に向けた枠組みで合意した。6月末にも最終合意に達すれば、欧米諸国によるイランへの経済制裁はすべて解除されることになる。イランは、イエメンで勢力を拡大してきたシーア派武装組織「フーシ派」を支援してきた。

 「I am not Abe」――。今、この言葉が、大きな反響とともに拡散されている。

 発言の主は、元経産官僚の古賀茂明氏だ。テレビ朝日「報道ステーション」にコメンテーターとして出演した際、シャルリー・エブド事件に際して使われた「Je suis Charlie(私はシャルリー)」をもじって、この言葉を使ったという。

 イスラム国による日本人殺害予告事件は、湯川遥菜さん、後藤健二さん2人の死という、最悪の結末で終わった。

 古賀氏は、経産官僚を務めた経験から、今回の日本政府、とりわけ首相官邸と外務省の対応に、非常に強い違和感を覚えたという。

 すでに報じられている通り、後藤健二さんは、昨年2014年11月頃にイスラム国に拘束され、そのことを外務省は後藤さんの妻からの連絡により把握していた。古賀氏によれば、そのため外務省は、今回の安倍総理による中東歴訪にリスクを感じ、首相官邸に対して取りやめるよう進言していたのではないか、という。

 それでも中東歴訪が行われたのは、「首相官邸が却下したか、あるいは、外務省が言えなかったかのどちらかだろう」と、古賀氏は推測した。

 1月20日に発生したイスラム国による日本人人質殺害予告事件は、拘束されていた湯川遥菜さん、後藤健二さんの死という、最悪の結末を迎えた。

 元駐イラン大使で、外務省国際情報局長を務めた経歴を持つ孫崎享氏は、安倍総理による中東歴訪から、今回の事件に対する対応まで、「日本政府の責任を真剣に追及しなければならない」と語る。

 安倍総理が表明したイラクやレバノンに対する2億ドルの支援は、確かに、政府が繰り返し説明するように、「人道支援」という名目が立てられていた。しかし、孫崎氏によれば、安倍総理が「イスラム国の脅威を食い止めるため」と発言している以上、イスラム国側が日本を敵視する結果となったことは間違いないという。

 イスラム国による映像の公開は、安倍総理がイスラエルを訪問中に行われた。そのため安倍総理は、日本国旗とイスラエル国旗に挟まれるかたちで、記者会見に臨むことになった。京都大学教授で、パレスチナ情勢に詳しい岡真理氏は、安倍総理がイスラエルを訪問することで、「中東諸国に、日本とイスラエルが同盟関係にあることを印象づけてしまった」と語る。

 イスラム国がイラク、シリア一帯に勢力を拡大した背景には、2001年9月11日に発生した同時多発テロ事件に対する報復である、米国の「対テロ戦争」がある。アフガニスタンのタリバン政権への攻撃、そしてイラク戦争を通じて、米国は中東のイスラム圏に対して攻撃を仕掛けてきた。イスラム国は、米国の「対テロ戦争」で混乱の極地に陥った中東に生まれた、鬼子なのである。

 「はじめに2億ドルの支払いという無理難題を押し付けてきて、湯川さんを殺して『脅しじゃないんだぞ』と示し、サジダ死刑囚を引き渡させる。ヨルダンの世論を反発させ、国家の威信を傷つけるという一石二鳥です」

 2015年1月25日、岩上安身のインタビューの応じたジャーナリスト・志葉玲氏は、イスラム国(ISIS)の狙いについて解説。イスラム国の前身『イラクの聖戦アルカイダ』時代からのつながりである、かつての同志・サジダ死刑囚を救出することこそが目的だったのかもしれない、と分析した。

 フランスの首都パリで起きた「シャルリー・エブド」紙への襲撃事件と、イスラム国による邦人人質殺害予告事件。1月に入ってからたて続けに発生したこの2つの事件について、パレスチナ問題を中心とする中東情勢の専門家である東京大学名誉教授の板垣雄三氏は、1月24日、岩上安身のインタビューに応じ、それぞれが、「ある一つの大きな歯車のひとつのうえで、役割を演じているに過ぎない」と述べた。

 これらの事件を結ぶ線分として板垣氏が注目するのが、この間のイスラエルの動向である。

 パレスチナは1月2日、国際刑事裁判所(ICC)加盟に必要な文書を、国連事務局に提出した。パレスチナのICC加盟が実現すれば、パレスチナがイスラエルを戦争犯罪などで訴える道が開かれることになる。

 板垣氏は、パレスチナによるICC加盟から世界の目を逸らすためにこそ、「シャルリー・エブド事件」が起きたのだとの見方を提示する。事件の翌々日に発生した銃撃事件が、ユダヤ人の食料品店を舞台としたものであったこと、さらに、パリで各国首脳が参加したデモにイスラエルのネタニヤフ首相が参加したことを考え合わせると、「シャルリー・エブド事件」の背後に、イスラエルの存在を見てとることができるのだという。

 加藤氏は、イスラム国がこれほどまでの勢力を拡大させた背景として、米国発のグローバリゼーションが広まった結果、「近代国民国家」という枠組みが世界中の至るところで崩壊したことをあげた。

 加藤氏は、そうした「近代国民国家」という枠組みが崩壊した後に現出する状況を、「グローバル・リヴァイアサン」と呼ぶ。「万人の万人に対する闘争」(リヴァイアサン)が世界中に広まった時、戦争はどのような形態を取るのか。加藤氏は、「身体の兵器化」から「兵器の身体化」という図式を示しつつ、高度なテクノロジーによってシステム化された戦争の将来像について語った。

 元在シリア大使で、中東情勢、特にイスラム国の動向に詳しい国枝昌樹氏は、「人命尊重を第一に考え、政治的な立場はどうであれ、今は政府の交渉を全面的にバックアップすべき時だ」と語る。

 イスラム国による今回の犯行と、安倍総理による中東歴訪、とりわけイスラエルのネタニヤフ首相との会談は、関係しているのか。そもそも、イスラム国は、日本をどのように見ているのか。イスラム国の過激な思想の源流とあわせ、1月22日、岩上安身が話を聞いた。

 イスラム国による邦人人質事件。ここには必然性があった。こう分析するのは、国際政治学者で、放送大学教授の高橋和夫氏だ。

 邦人殺害予告ビデオの公開から2日目、岩上安身のインタビューに答えた高橋氏は、特定秘密保護法の施行、集団的自衛権行使の閣議決定、戦争法制が整えられていく日本が、こうしたテロ事件に巻き込まれるのは「単なる偶然ではない」と断言。「時間が経てばやがて起こることが、たまたま今起きているのかもしれない」と指摘した。

 2億ドル(約236億円)などという法外な身代金は、そう簡単に手に入らない。イスラム国の本当の狙いは、米国などとともに戦争に参加する意思を示す安倍政権への「牽制」だと高橋氏はみる。

 72時間の猶予が、刻一刻と迫る。

 イスラム組織「イスラム国」が1月20日、72時間以内に日本政府が2億ドルを支払わなければ、人質の邦人2人を殺害すると予告した動画を公開したのを受け、岩上安身は1月21日(水)、元内閣官房副長官補・柳澤協二氏に緊急インタビューした。

 安倍首相がイスラム国と対峙する周辺国に約束した2億ドルの中東支援を今更キャンセルすることはできず、かと言ってイスラム国との交渉のパイプもない。

 進むことも退くこともできない状況下で、唯一、人質の命を救う手段があるとしたら、イスラム国に対する対決姿勢を表明した安倍首相自身が辞任することで、人質の命と引き換えにすることだと柳澤氏は提案した。

 2015年早々、パリで起きた風刺週刊誌「シャルリ・エブド」襲撃、警察官射殺、ユダヤ系食料品店での立てこもり。これら一連の事件には、国際テロ組織のアルカイダや、イスラム組織「イスラム国」の関与が報じられている。

 食料品店に立てこもったアメディ・クリバリ容疑者は、「自分はイスラム国のメンバーだ」と仏テレビ局に語り、「シャルリ・エブド」を襲撃したクアシ兄弟との連動を主張していた。クアシ兄弟は、アルカイダから資金提供を受けたとされている。

 しかし、中東問題に詳しい国際政治学者で、放送大学教授の高橋和夫氏は、アルカイダとイスラム国による共同テロという図式に疑問を投げかける。

 「ヨーロッパの成立と反ユダヤ主義は同時に進みます」――。

 2014年12月22日、岩上安身は「饗宴アフター企画第4弾」と銘打ち、東京大学名誉教授・板垣雄三氏にインタビューした。

 板垣氏は、18世紀あたりからヨーロッパがオスマン帝国に反逆し始め、宗教紛争にも発展、外交史でいう「東方問題」が勃発したことに言及。もともとは輝かしい外交関係を築いていたヨーロッパとオスマン帝国。ヨーロッパの軍服やYシャツもイスラームが起源だと板垣氏は話す。

 オスマン帝国の崩壊は、ヨーロッパがオスマン帝国に抱いていた賞讃が嫉妬に変わり、後の攻撃性につながったことに起因する。キリスト教徒の持つ攻撃性は、実はコンプレックスが生んだもので、それはユダヤ、イスラームに「対抗」する感情だったのだ。

 「紀元1世紀頃のキリスト教は新興宗教。うさん臭かった。ゆえに善行に力を入れて、信用を求めた」──。

 中東・イスラエルでの絶えない紛争、アメリカ帝国主義、格差を助長する新自由主義の実態。現在の世界が抱えるこれらの問題の根幹を、ユダヤ教とキリスト教に探るべく、岩上安身がユダヤ学と聖書学の研究者である上村静氏に話を聞いた。

 4時間にわたるインタビューのテーマは、ユダヤ教とキリスト教の成り立ちと教義、宗教改革、キリスト教と資本主義、日本の戦国時代への影響、国家と政教分離、エバンジェリストとアメリカとイスラエルなど、多岐にわたった。

 イラクとシリア北部で勢力を拡大しているイスラム武装集団「イスラム国」。9月下旬には、米国を主導とする有志連合がシリア領内での「イスラム国」に対する空爆を開始し、CNNやBBCなど欧米のメディアは、シリアとトルコの国境に位置するアインアルアラブ(クルド名コバニ)での攻防戦を連日のように報じている。

 なぜ、「イスラム国」はこれほどまでに台頭したのか。その背景を知るには、アサド政権と自由シリア軍をはじめとする反体制派による内戦が続き、昨年8月には首都ダマスカス郊外でサリン事件が発生したシリア情勢を理解する必要がある。

 元シリア大使で、『シリア~アサド政権の40年史』(平凡社新書)『報道されない中東の真実~動乱のシリア・アラブ世界の地殻変動』(朝日新聞出版)などの著書がある国枝昌樹氏が10月11日に続いて岩上安身のインタビューに応じ、日本や欧米のメディアでは報じられない中東情勢の実相について語った。

 シリアとイラクで版図を拡大し続けるイスラム系武装集団「イスラム国」。米国が8月8日からイラク国内で、さらには9月23日からシリア国内で空爆を開始するなど、状況は混迷の度を極めている。報道によれば、現在、「イスラム国」はシリアとトルコの国境に位置する要衝アイン・アル・アラブ(クルド名「コバ二」)への侵攻を続けていると伝えられている。

 この「イスラム国」に関しては、欧米を中心に多くの若者が戦闘への参加を志願していることも特徴的だ。日本でも、10月6日、「イスラム国」への参加を計画していたとして、北海道大学の学生が、「私戦予備および戦闘の疑い」で、警視庁公安部に身柄を拘束された。

 「イスラム国」はなぜ、これほどまでに勢力を拡大したのか。そして、そのことが、中東情勢にもたらす意味とは何なのか。元シリア大使で、シリアで独自取材を行った成果をまとめた著書『報道されない中東の真実~動乱のシリア・アラブ世界の地殻変動』を発表した国枝昌樹氏に、岩上安身が話を聞いた。

 「イスラム国(IS)に志願しようとした北大生が警察に身柄を拘束され、事情聴取を受けている」。

 このようなショッキングなニュースが10月6日、いっせいに報道された。「首切り」の映像をインターネットで公開し、世界中で瞬く間に最も危険なテロリスト集団の一つとみなされるようになった「IS」。北大生はこのIS行きを志願し、「テロ」に加担しようと画策したのだろうか。

 岩上安身は10月8日深夜、北大生のIS行きを支援したとして家宅捜索を受けた、元同志社大学神学部教授でイスラム学者の中田考氏に緊急インタビューを行った。

 8月5日、イスラエルとハマスはエジプトの提案により72時間の停戦に入った。ロイターなどの報道によると、イスラエル軍の一部はガザ地区からの撤収を開始したという。

 7月8日から始まったイスラエルによるガザ侵攻は、パレスチナ側の市民に1800人を超える死者を出すという、大惨事となった。今回の停戦期間中、イスラエルとハマスとの間で、より長期的な停戦に向けた協議が開始される見通しだが、先行きはいまだ不透明だ。

 モントリオール大学教授で、『トーラーの名において』『イスラエルとは何か』などの著書があるヤコブ・M・ラブキン氏は、イスラエル国家の建設に寄与したシオニズム運動に対する批判者として知られる。8月5日、岩上安身はラブキン氏に通算3回目となるインタビューを行い、パレスチナ情勢の今後の展開について話を聞いた。

ウクライナ危機とイスラエルによるガザ侵攻はつながっている――。

 現在、国際社会が注視しているウクライナ東部の内戦とイスラエル軍によるパレスチナ・ガザ地区への侵攻。一見、バラバラに起きているこの2つの事象は、実は背後でつながっているのではないか。

 東京大学名誉教授で、イスラム史が専門の板垣雄三氏は、現在の国際情勢を俯瞰的に眺めた場合、ウクライナの問題とイスラエルの問題を切り離して考えることはできないと指摘した。

 話題は、中東からヨーロッパ、さらには東南アジア、米国へと地球儀を俯瞰するようなかたちで拡大し、2日間で8時間を超える超ロングインタビューとなった。

 7月8日に開始されたイスラエルによるガザ地区攻撃は、17日の地上軍投入を経て、8月1日にはいったん72時間の停戦に入った。しかし、これは数時間で継続不可能になり、長期化する攻撃の結果、ガザ地区での死者はすでに1500人を超えている。

 アラブ文学研究を専門とする京都大学教授の岡真理氏は、この3月に封鎖状態に置かれるガザを訪問するなど、パレスチナ問題に取り組んできた。7月26日、岩上安身のインタビューに応じた岡氏は、イスラエル国家建設の根源にある「民族浄化」を軸に、歴史経緯を踏まえ、繰り返されるパレスチナ人攻撃の問題を論じた。

 ヤコブ・M・ラブキン氏は、旧ソ連に生まれ、歴史学を修めた後、カナダに渡った経歴を持つ。歴史学者として研究・教育活動を行う一方、ユダヤ教徒であるラブキン氏は、著書『トーラーの名において』での、パレスチナにおけるイスラエル国家建設に帰結したシオニズム運動への強い批判でも有名である。

 イスラエルによるガザ侵攻、ウクライナでのマレーシア機の「撃墜」事件など、世界を揺り動かす出来事が立て続けに起きている。これらをどう読み解けばいいのか。岩上安身のインタビューに応じたラブキン氏は、「免責性」「不均衡」という二つのキーワードを用い、現在の世界で何が起きているのかを明快に論じた。

 イラク北部では6月に入り、ISIS(イラク・シリア・イスラム国)と呼ばれるスンニ派の武装組織が急速に台頭し、北部の都市を支配下に置いた後、南部の首都バグダットに迫っていると伝えられている。またISISの動きを受け、これまで敵対関係にあった米国とイランとが、イラク情勢に関して協議を行うという異例の事態も起こっている。

 6月18日、中東の国際関係を専門とする内藤正典・同志社大学大学院教授に岩上安身がインタビュー。内藤教授は、ISISの起源と実態、錯綜する中東情勢をさらに複雑化させる米国とロシアの存在について語った。また、集団的自衛権を行使し、日本が中東に自衛隊を派遣した場合、現地からはどういう反応が予想されるのについても言及し、行使容認派による中東での機雷除去活動という想定が、現実性の乏しいものであることを指摘した。

 ユダヤ学・聖書学が専門で、『宗教の倒錯』(岩波書店、2008.09)、『キリスト教の自己批判~明日の福音のために』(新教出版社、2013.10)などの著書がある上村静氏に、岩上安身が6時間を超えるロングインタビューを行った。24日のクリスマス・イブ、25日のクリスマス当日の2回に分けて、「IWJクリスマス・スペシャル」と題して特別配信した。

 話題は、「聖書学」が明らかにした「史的イエス」の実像から、ユダヤ教徒とキリスト教の関係、黙示録やシオニズム、さらにはTPPや集団的自衛権行使容認といった今日的な話題まで、非常に多岐に渡った。

 カナダのモントリオール大学教授(歴史学)で、『トーラーの名において』(平凡社)『イスラエルとは何か』(平凡社新書)などの著書で知られるヤコヴ・M・ラブキン氏が来日。ユダヤ教徒でありながら、パレスチナの地にユダヤ人の祖国建設を目指す「シオニズム」運動を批判するラブキン氏に、10月23日、岩上安身がインタビューした。通訳を務めたのは、東京理科大学教授の菅野賢治氏。

 中東一の軍事国家、イスラエル。ヨーロッパ各地に離散していたユダヤ人が、1948年、聖地エルサレムのあるパレスティナの土地に帰還してイスラエルを建国して以降、エジプト、イラン、シリアといったイスラム国と対立してきた。米国を中心とする西側諸国は、イスラエルに対して軍事援助を行い、核兵器の保有さえも黙認してきた。

 なぜ、イスラエルはこれほどまでの軍事大国になったのか。そして、ナチス・ドイツによるホロコーストやロシアによるポグロムといった惨劇を経験しながら、周囲のイスラム国に対して攻撃を仕掛けるのはなぜなのか。

 シリアの首都ダマスカス郊外で化学兵器が使用されたとされる事件をめぐり、アメリカを中心とする欧米諸国が軍事介入の姿勢を強めている。アメリカは化学兵器がアサド政権により使用されたと断定。議会の承認を得るとしつつも、国連安保理の決議なしで攻撃に踏み切る構えを見せている。オバマ大統領はG20で各国首脳と面会し、軍事介入への理解を求めている。

 この日、岩上安身がインタビューした元シリア大使で『シリア~アサド政権の40年史』(平凡社新書、2012.06.15)の著書がある国枝昌樹氏は、「アメリカがいまだ決定的な証拠を持っていないということが、報告書から読み取れる」と指摘。この段階で軍事介入に踏み切ることは「拙速だ」とアメリカ政府を批判した。

 21日、シリアの首都ダマスカス郊外で化学兵器が使われたとされる問題を巡り、アメリカ、イギリス、フランスを中心とする欧米諸国は軍事介入を行う姿勢を強めている。アメリカのカーター国務長官は26日、報道陣に対し声明を読み上げ、化学兵器がアサド政権側により使用されたと断定。「責任を取らせる」と語り、攻撃の準備を進めていることを明かした。地中海東部には、すでに米海軍のミサイル駆逐艦4隻が配備されている。

 緊張が高まるなか、シリア情勢に詳しい東京外国語大学の青山弘之教授は、岩上安身のインタビューに応え、「アサド政権側が化学兵器を使用した証拠は今のところ存在しない」と指摘。アメリカ、イギリス、フランスは、状況証拠を積み重ねてアサド政権を批判しているに過ぎない、と語った。そのうえで、「軍事行動により、アサド政権を倒すこともできなければ、化学兵器を取り除くこともできない。合理性がないし、そもそも成果が期待できない」と述べ、軍事行動に前のめりな欧米諸国の姿勢を批判した。

 国際政治学者で、放送大学教授でもある高橋和夫氏が16日、岩上安身のインタビューに応え、エジプト全土に広がっているデモをはじめとして、イスラエル・パレスチナ問題やシリア情勢について、さらにはイランの核開発やクルド人の問題など、中東が抱える諸問題について、幅広い視点から解説を行った。

 エジプトでは、2011年の1月から2月にかけて大規模な反政府デモが起こり、ムバラク大統領が辞任。およそ30年間にも及んだムバラク政権が崩壊した。翌年5月と6月に行われた選挙によって、ムハンマド・ムルシが大統領に選出されたが、今年7月、軍部によるクーデターが発生。解任される事態となった。

 先日トルコから帰国された同志社大学大学院教授・内藤正典氏に25日、岩上安身がインタビューを行い、トルコ騒乱の背景やシリア内戦の動向、イランやイスラエル、米国などを含む周辺諸国の国際情勢について、幅広くお話をうかがった。

 内藤氏は、エルドアン政権が新自由主義経済政策を採っていると言われていることについて、「エルドアン政権が新自由主義的な政策を採ったかと言えば、それは当たっていない。ここ10年ぐらい、国営企業の民営化を外資に買収するケースも多く、新自由主義っぽく捉えられがちだが、トルコは伝統的に保護主義的で不採算な分野が多々あり、財政赤字がひどかった。エルドアン首相は、その借金を返さなければならないと思っているだけ。新自由主義のシンパシーは持っていない。弱肉強食の論理はイスラム的な道徳に反する」と分析。

 トルコは反政府デモの盛り上がりを見せ、シリアは内戦が長期化、米国の直接介入による泥沼化が懸念され、イランは核開発問題で揺れ動いている。中東諸国の緊迫した情勢について、21日、その専門家である日本女子大学教授の臼杵陽氏に、岩上安身がインタビューを行った。

 現在の中東情勢の背景について、エルドアン政権の「新オスマン主義」、トルコのアラブ民族主義運動、トルコ・イラン関係、「アラブの春」とトルコ・シリア関係、シリア内戦をめぐる米・露、周辺諸国の思惑など、話は多岐に渡った。

 2013年4月12日(金)15時から、イラク支援ボランティアの高遠菜穂子氏が、岩上安身のインタビューに応えた。イラク戦争で米軍が使用した劣化ウラン弾や白リン弾などについて、実際に撮影された現地の生々しい映像と写真を交えながら、その被害実態を語った。

 白リン弾とは、煙や光を発生させる砲弾の1種で、一般的には煙幕や照明弾として使用されると言われている。しかし、白リンは自然発火性物質であり、空気に触れると些細なことで発火し、物質そのものが無くなるまで燃え続けるという性質を持つ。そのため、人が白リン弾の被害を受けると、皮膚の火傷だけにとどまらず、身体の内部までも焼かれるため、白リン弾は「非人道兵器」だとして国際的な批判も強い。

 小泉政権、第一次安倍政権、福田政権、麻生政権で内閣官房副長官補を務め、自衛隊のイラク派遣から撤退にまで関わった経験を持つ柳澤協二氏が岩上安身のインタビューに応じ、「官僚機構が日米同盟だけを前提に政策を作ってきた」と当時を述懐。「日米同盟のために日本があるのではなく、日本の安全のためにこそ日米同盟がある。現状では、日米同盟が自己目的化してしまっている」と語った。

 2013年2月8日(金)16時45分過ぎから、京都市左京区の京都大学吉田南キャンパスで、アルジェリアのモスタガネム大学准教授であり、京都大学の客員研究員、ベル=アベス・ネダール氏へのインタビューが、岩上安身によって行われた。アルジェリア人質事件にからめてアルジェリアの概要、その言語社会と文化背景、またイスラム教世界などについて話を聞いた。

 2013年1月28日(月)18時30分より、東京都内のIWJ事務所で、国際政治学者の六辻(むつじ)彰二氏(国際関係学博士・日本大学文理学部人文科学研究所研究員)のインタビューが行われた。アルジェリアでの人質事件やその背景、アフリカの情勢などについて、岩上安身が話を聞いた。

 「『アル・カイダ』というのは呪文のような言葉」。2013年1月23日(水)、京都市上京区の同志社大学で行われた同志社大学教授の内藤正典氏へのインタビューで、氏はこう述べ、アル・カイダの関与が言われるだけで、思考停止してしまう欧米社会、日本のマスメディアに言及。アルジェリア人質事件においては、このことが一つの原因で、フランスのマリへの侵攻が正当化されたと内藤氏は解説した。

注目記事ピックアップ

 「メディアが『I am Kenji』の運動を大きく取り上げ、後藤健二氏を英雄視する発言が氾濫した時点で、湯川遥菜氏はアウトだと思った」──。加藤朗氏は、ネットメディアの台頭により、従来とは異なる情報管理の必要性を指摘した。

 国際地政学研究所による今年2回目のワークショップ「イスラム国問題とどう向き合うか」が、2015年2月19日、東京・市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷で開かれた。今回は、中東の過激派組織「イスラム国」の問題が緊急テーマに浮上し、邦人2人の人質事件をめぐる、メディアの前のめりの報道姿勢を問題視する議論が熱を帯びた。

 「もし日本政府にとって捕虜が大切なら、急ぐことです」――。

 「イスラム国」と独自のパイプを持つイスラム法学者・中田考氏。イスラム国による邦人人質事件発生を受け、中田氏は自身のパイプを使って交渉にあたることができると明言し、注目を集めた。

 中田氏は外務省にも協力を申し出たが、結局、日本政府は中田氏を起用することはなかった。しかしこの間も、中田氏は独自のパイプを使って「イスラム国」側と交渉を続けていた。2月7日放送のTBS「報道特集」がスクープした。

 何度もパレスチナ自治政府のガザ地区に現地取材を行なっているフリージャーナリストの志葉玲氏は、イスラエルによる空爆で瓦礫の山となったガザ地区の惨状を、写真を使って説明した。

 イラクや、レバノンの紛争地も見てきた志葉氏は、それらと比較しても「2009年のガザほど、徹底的に町が破壊されたところはない」と語った。国連が運営する学校に避難した人々に対しても、イスラエル軍は容赦なく爆撃を行なったという。

 イラク戦争の開戦から11年がたった3月20日、衆議院第二議員会館で、「イラク戦争の検証を求めるネットワーク」主催による集会が開かれ、かつてイラク戦争の際、クウェートに派遣された元航空自衛隊員の池田頼将氏が講演した。

 池田氏は、米国の独立記念日にあたる2006年7月4日、クウェートのアリ・アル・サレム基地において、米軍主催のマラソン大会に参加。トップを走る米兵2人を追い抜き、先頭に躍りでた直後、米軍関係の大型バスに跳ねられ、数メートル先の砂漠まで弾き飛ばされた。

 ジャーナリストの志葉玲氏は、イラク戦争に対する小泉元首相の責任を問い質す。さらに、現在、安倍政権が集団的自衛権行使容認や憲法9条改正を進めようとしているのは、「イラクのマリキ政権を支援するためでは」との懸念を示した。

 イラクは今、どのような状態に置かれているのか。イラクホープネットワークと青山学院大学人権研究会は27日、イラクで人道支援活動を行っている高遠菜穂子氏と、海外で医療支援を行う形成外科医の森岡大地氏を招き、青山学院大学でイラク医療支援報告会を開催した。

 「シリアのダマスカスで化学兵器が使われた1ヶ月後の入国だったので、大変緊張しました」ーー。

 第三部は、IWJ記者の鈴木美優によるシリアレポートから始まった。シリアの首都ダマスカスで化学兵器が使用された疑いが浮上し、米国などによる武力介入がささやかれていた昨年8月。一ヶ月後の9月に、シリア入国を予定していた鈴木記者は、当時の心境をこのように話した。

 「アラブの春」と呼ばれる中東の民主化運動が起こってから2年。そうした動きはシリア、イラン、トルコなど周辺諸国に飛び火し、今なお血なまぐさい対立を継続させている。シリアでは、アサド政権と反体制派との戦火によって、犠牲者は10万人を超すという。

 不安定化の一途をたどる中東情勢について、28日、専門家らがこうしたパレスチナ周辺国の政治体制や、民衆運動と国際諸国の動きについて、講演会を行った。主催したのはJAPAC(日本・パレスチナプロジェクトセンター)で、彼らは特定の政党や宗教その他団体の枠を超え、パレスチナの人々との様々な交流を通し、彼らの自由と独立を支援していくことを目的としている。講演会は「パレスチナ第2次インティファーダ連帯集会」と銘打ち行われた。

 内戦が続くシリアの平和回復を求め、21日、東京の明治学院大学白金キャンパスでシンポジウムが開かれた。共催したのは、明治学院大学と、青年海外協力隊や明治学院大学の学生を中心として設立された有志の団体「シリア支援団体サダーカ」。同団体は、世界最大級のインターネット署名プラットフォーム「Change.org」で、シリアの内戦停止を呼びかける署名運動を行っている。

 この日のシンポジウムに出席した「サダーカ」代表の田村雅文氏は、シリア国内から脱出した難民の多くが生活するヨルダンの現状を紹介。「シリア人はもちろん、難民を受け入れるヨルダン人も疲れきっている」と述べ、内戦の早期解決を訴えた。

 家族とともにトルコからドイツへ移住した「フセインおじいちゃん」の奮闘を、ユーモア溢れる視点で描いた映画「おじいちゃんの里帰り」。日本での公開を前に、来日したヤセミン・サムデレリ監督に、岩上安身と同志社大学大学院教授の内藤正典氏がインタビューした。

 2013年8月26日(月)19時より、東京都港区の明治学院大学にて、「激動するエジプト情勢をどうみるか~『アラブの春』後の情勢に迫る」が行われた。講師は、朝日新聞国際報道部長で、2011年1月に中東アフリカ総局長に赴任し、今年5月までの約2年半、エジプトのカイロ支局で取材活動をおこなった石合力氏。2011年1月にチュニジアのベンアリ大統領退陣で始まった、いわゆる『アラブの春』の原因や、エジプトで起きているデモの構造について語った。

 2004年4月、イラク戦争開戦の翌年、自衛隊のイラク撤退を要求する武装勢力によって拘束された高遠菜穂子さん。釈放後も、拠点をヨルダンに移し、イラク支援活動を続けてきた。2013年1月、特定非営利活動法人、ヒューマンライツナウと共同で「イラクチーム」を結成し、現地の医療状況と子どもたちの健康調査を行うため、イラク・ファルージャに一ヶ月間滞在。2013年4月11日、その報告会を行った。

 2013年3月19日(火)17時30分から、衆議院第2議員会館第1会議室にて「院内学習会『イラク戦争の10年と日本』を問う」が行われた。イラク戦争開戦から約10年が経過し、イギリスではイラク戦争独立検証委員会によって戦争の検証が行われている。一方、日本では、検証を求める声はあるが、岸田文雄外務大臣は定例会見で、「イラク戦争を検証するつもりはない」といった旨の発言をしており、政府が動く気配はない。院内学習会では、イラクの現状と検証すべき課題が語られた。

「IWJ特報」&「岩上安身のニュースのトリセツ」

 前回お送りした「東京大学名誉教授・板垣雄三氏インタビュー」第1弾では、イスラエルによるガザ侵攻とウクライナ危機との間に引かれた、隠された線分について取り上げた。中東を超えて、イスラエル国家の影が伸びていたのである。

 第2弾となる今回、話は、マレーシアという、日本人にとっては意外な存在から展開する。板垣氏によれば、マレーシアのナジーブ首相が、2013年1月23日にガザ地区を訪問したことが、すべてのきっかけだったのだという。

 最悪の結末を迎えた今回のイスラム国邦人人質事件をめぐり、安倍政権の失策として指摘されている点がいくつかある。

 なぜ湯川氏が拘束されてから以降「イスラム国」(以下、ISと略す)に対して刺激するような発言を繰り返してきたのか。湯川氏については、救出のための対策らしい対策をほとんど何もとってこなかった。

 なぜ、安倍首相は、このナーバスな時期に、イスラム社会の神経を逆なですることをいとわずに、イスラエルとの軍事を含むパートナーシップを世界にアピールしてみせたのか。

 結末は、あまりにも無惨だった。

 日本だけでなく、世界が固唾を飲んで見守っていたイスラム国による人質殺人予告事件。

 殺害はたびたびの延期のあとに、しかし「予告」通りに行なわれた。

メルマガ「IWJウィークリー」より

 中東で発見された油田をめぐって、イギリスとドイツが激しく争っている、まさにそのころ始まったのが、第一次世界大戦でした。

 一九一四年月二八日、セルビアのサラエボで、オーストリア・ハンガリー皇太子夫妻がセルビアの青年に銃撃され死亡しました。このサラエボ事件が第一次世界大戦の発端です。

 オリーブ畑の中、シリア人のカーレク氏を先頭に無言で走る。重い荷物を持ちながら、足場の安定しない畑の中を走るのはかなり体に応えた。すぐ近くにトルコ兵の基地があり、国境沿いに監視カメラがある。狙われにくいよう、身を低くしてジグザグに走らなければならない。

 オリーブ畑を抜けると、有刺鉄線フェンスが敷かれていた。カーレク氏はおそらくここを目指していたのだろう、フェンスには一部壊された箇所があり、鉄線に触らないようくぐり抜けることができた。カーレク氏とはここで別れ、今度は広大な草原を突っ切れと言われた。草原の反対側のオリーブ畑で、ムスタファと通訳のアフメドが手を振って「走れ、早く来い!」と手で合図していた。

 3〜400mくらいあっただろうか。障害物も何もない草原を走るのはさすがにヒヤヒヤした。上を見れば監視カメラと山の上に建つトルコ軍基地が見える。走っては歩き、また走っては歩きを繰り返した。「走れ!」とまたムスタファ氏らが手で促した。

 ようやく、オリーブ畑内に入った。ついに、シリア入国だ。

 「中東」と聞くと、危険なイメージを抱く人が多い。そんな土地を、私は女一人で旅したことがある。

 6年前の3月、私はヨルダン、イスラエル、シリア、レバノンの地を歩いていた。イスラエルがレバノンを空爆して、半年が経った頃のことだ。

 当時、旅行者なら必ずと言っていいほど持ち歩く『地球の歩き方』のヨルダン・シリア・レバノン版は絶版となっており、ガイドブックが手に入らなかった。仕方なく、地図帳の中東のページを拡大コピーして持っていく始末。

 トランジットのドバイの空港で、もう一つのガイドブックの大手、『ロンリープラネット』を立ち読みして、目ぼしいゲストハウスの住所を控えて現地へ向かった。

2件のコメント “【特集】神と石油と暴力と~世界の鍵を握りつつ、混迷を深める中東特集

  1. テレビ・新聞はもちろん、学校でも教えてくれなかった中東の過去・現在・未来が見えてくる珠玉の記事の数々。あなたの世界を広げてくれるはず。

  2. ガスと通貨とビジネスと。

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