中東一の軍事国家、イスラエル。ヨーロッパ各地に離散していたユダヤ人が、1948年、聖地エルサレムのあるパレスティナの土地に帰還してイスラエルを建国して以降、エジプト、イラン、シリアといったイスラム国と対立してきた。米国を中心とする西側諸国は、イスラエルに対して軍事援助を行い、核兵器の保有さえも黙認してきた。
なぜ、イスラエルはこれほどまでの軍事大国になったのか。そして、ナチス・ドイツによるホロコーストやロシアによるポグロムといった惨劇を経験しながら、周囲のイスラム国に対して攻撃を仕掛けるのはなぜなのか。
ヤコブ・M・ラブキン著『トーラーの名のおいて』(平凡社、2010.04.02)、『イスラエルとは何か』(平凡社新書、2012.06.17)の翻訳を手がけた東京理科大学教授の菅野賢治氏(専門はフランス文学)は、「私たちがユダヤ人に対して抱いているイメージは、西欧や米国のキリスト教世界で醸成されたものであり、””産地直送””のようなかたちで彼らを見ているわけではありません」と説明する。
「イェフディ(ユダヤ人)には三種類あります。一つ目が、ユダヤ教の信仰を捨てた『世俗的ユダヤ人』。イスラエル国民の大半がこの『世俗的ユダヤ人』にあてはまります。彼らは、聖書も読まなければシナゴーグにも行きません。
二つ目が、ユダヤ教の最低限の戒律を守り、ヘブライ語の聖書も少し読めるような人々。彼らは『世俗的ユダヤ人』と同族意識を持っています。
三つ目が、ハレーディーと呼ばれる伝統的ユダヤ教徒です。戒律を厳守し、ヘブライ語の聖書を徹底的に読み込んでいる。キリスト教世界が作るユダヤ人のイメージは、このハレーディを捨象しています」
菅野氏によれば、伝統的ユダヤ教徒であるハレーディたちは、シオニストやイスラエルに対して、支持するどころか、強い懸念の意を表しているのだという。
「本来、ユダヤ教徒は国家を持ちません。なぜなら、国家という偶像崇拝を避けるためです。人為で国家をつくるなどということは、神の意志に反する、と彼らは考える。つまりユダヤ教徒というのは、国家を捨てることを選んだ流浪の民なのです。したがって、イスラエルの存在を支持するはずがありません」
話題は他にも、宗教革命がユダヤ人に与えた影響、米国のキリスト教福音主義者の思想、イスラエルの植民地主義とユダヤの絶対的平和主義の違いなど、非常に多岐にわたった。
IWJ-office のみなさま、毎日、貴重な情報、ありがとうございます。
「岩上安身による東京理科大学教授・菅野賢治氏インタビュー」は、とても興味深いものでした。
イスラエルとアメリカの力関係など、なぞのままのところもあるのですが、結局、知らず知らずのうちに、強者側(あるいは多数側)の論理がすり込まれているという点が特に気になりました。
おそらく、この問題だけでなく、さまざまな問題で同様のことが起こっていて、思考停止状態になっているのだと思います。
自分が思考停止状態であることを自ら気づくことは、たぶん不可能なので、IWJは貴重です。今後とも、よろしくお願いします。
岩上さんのインタビューの動画は、とてもおもしろいです。ただインタビューするだけでなく、ご自分の意見や疑問をかなり付け加えてインタビューされているところが独特のやり方で、これが門外漢にとって、わかり安いのだと思います(その分、長いですが)。
「菅野賢治氏インタビュー」は、とても勉強になりました。
私は(岩上氏のファンであるとともに)安冨歩氏のファンだったのでIWJの会員になったのですが、菅野氏もまた応援したくなる学者だなぁと思いました。
番組を観てユダヤ人(教徒)を見る目もすっかり変わってしまい、今、「トーラーの名において」を図書館から借りて読んでいる最中です。
これをきっかけに、偏見を捨て(「自分の能力の範囲内で」ですが)正確な世界認識が得られればいいなとも思っています。
これからも良い番組をつくり続けてください。