「暴力の背景にはイスラム国の困難がある」 イスラム国を止めるには中東世界への日本人の理解、支援が必要〜現代イスラム研究センター理事長・宮田律氏が会見 2015.1.28

記事公開日:2015.1.28取材地: テキスト動画
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(IWJ・原佑介)

特集 中東
※1月28日テキストを追加しました!

 「イスラム国」による邦人人質事件発生から1週間が過ぎた。人質のひとり、湯川遥菜氏はすでに殺害されたとされ、残る人質のひとり、ジャーナリストの後藤健二氏も、24時間以内にヨルダンで拘束中のサジダ・リシャウィ死刑囚を解放しなければ殺害すると予告されている。

 イスラム国が定める期限が差し迫る1月28日、日本外国特派員協会で、現代イスラム研究センター理事長・宮田律氏が記者会見を開いた。中東の専門家である宮田氏は、日本の中東支援政策の中で、イスラム国支配下にある人たちの存在が忘れ去られている、と指摘した。

 宮田氏は「いろんなチャンネルを使い、イスラム国の支配地域に置かれている『忘れられた人たち』への支援を考えていったほうがいい」と提言。

 「日本人はイスラム世界への理解を深め、関心を持ち続けて欲しい。イスラム国の暴力の背景には、彼らの困難があることを日本人が理解し、支援の手を差し伸べることが必要だ」と語った。

 以下、会見の模様を掲載する。

■ハイライト

イスラム世界で好意的にみられる「日本」

宮田律(以下、宮田・敬称略)「簡単に、今回の事件の印象と考えを結論的に述べてみたいと思います。私はイスラム諸国のほとんどを回っていますが、その経験から、イスラム諸国の日本に対する感情はよかったと思います。第二次世界大戦で米国に破れ、終戦から19年後には東京五輪を開いたように、日本は、戦後、めざましい復興を遂げました。

 それに比べると、アフガン、イラクはなかなか復興せず苦しんでいる。日本の復興への称賛の思いがイスラム諸国にはあった。それに、日本は東南アジアには軍事介入した過去があるが、アラブ、イスラム諸国には軍事的に関わったことはありませんでした。

 経済的に日本が発展を遂げたことや、イスラム諸国では自動車や家電、カメラなど、日本製のものが多いんです。日本のテクノロジーもアラブ・イスラム世界には、好感を持ってみられてきたと思います」

イスラム国は中東の中で唯一の「反日国」

宮田「最近、アラブ・イスラム世界の側からの日本へのイメージが、ともすれば崩れていると思います。イスラム諸国には親日国が多いが、唯一の反日国がイスラム国かな、という印象があります。

 今回の人質事件では、世界の矛盾が凝縮するかたちで表れている気がします。中東イスラム世界の地図を見ると、イラク戦争を経て、アラブの春を経て、そしてイラク、シリアは戦乱状態にあるし、北アフリカでも紛争のベルトは広がりつつある。

 やはり現状や将来に希望を持てない若者たちが増えていることから、暴力的な集団が支持を集めて勢力を拡大しているという印象を持っています。

 暴力は許されませんが、中東イスラム世界の現状を考えれば、武装集団に入ることによってのみ生活手段を得ることができる、という若者たちが少なからずいるということです」

暴力の連鎖を断ち切るための支援が必要

宮田「暴力的な集団の活動を抑制するには、暴力的に制圧するよりも先に、社会や経済の再生を図っていくことを考えていくべきだと、ずっと思っています。

 ブッシュ政権時、『9.11』を受け、『テロとの戦い』ということを言い出したが、イラク戦争には正当な根拠はなかった。アフガンでもいまだに駐留を続け、イラクにも再び軍事介入を行っています。テロとの戦いは有効でなく、911以前よりもテロは増え、テロが起こる地域も一層、広大になっています。

 オバマ政権は『イスラム国の根絶には3年間かかる』と言っていますが、正確な根拠はない。オバマ政権の任期はあと2年もなく、イスラム国撲滅のために3年間かかるというのは、無責任な印象を受けます。

 今の進展の中で、安倍首相は中東を訪問し、『イスラム国と闘う国々に2億ドルを拠出する』と話しました。それはいいことですが、支援の中で『忘れられている人たち』がいるという印象を受けます。『忘れられている人たち』とは、『イスラム国の支配下に置かれている人たち』です。

 中東支援を考えれば、イスラム国の支配地域に置かれている人たちへの支援は難しいかもしれませんが、しかし、何らかの支援を与えなければ、支配下の人たちは、これからもずっとイスラム国を支持していくのではないかと思います。

 いろんなチャンネルを使い、イスラム国の支配地域に置かれている忘れられた人たちへの支援を考えていったほうがいいと思います。イスラム国にもメンツがある。日本がイスラム国に対して貢献するような、今の国際情勢では怒られるかもしれないが、例えば衣料品の供与などの人道上の支援をしても、そんなに大きな国際的批判を浴びないのではないか、という気がします」

「暴力の背景には彼らの困難がある」

宮田「長期的には、暴力的な集団の勢いは止めなければいけないとは思うが、それを支持している人たちがいるということを国際社会は忘れてはいけない気がします。

 イスラム国を支持している人がいれば、分断を図ることがイスラム国の暴力を弱めるのではないか、そのためには現在のイラク政府の努力も必要です。

 イラク政府はシーア派主体の政権ですが、イラク北部のスンニ派への福利を図らなかったことがイスラム国の台頭を招き、イスラム国を支援している旧サダム・フセイン政権時代の軍人の支持、支援を招いてきた。

 イスラム国を長期的に弱体化するには、イラク北部の人たちの福利向上、経済発展を実現するような関与こそ、日本をはじめとした国際社会に求められているのではないかと思います。

 私は日本国民として、中東イスラム世界で信頼され続ける日本であって欲しいと考えています。

 政府には、彼らの信頼や期待に応えられる政策をとってほしい。イスラム世界は日本から遠く、歴史的な関わりも深くはないが、日本人はイスラム世界への理解を深め、関心を持ち続けて欲しい。こういった暴力の背景には、彼らの困難があることを日本人が理解し、支援の手を日本人が差し伸べてほしい、という気がします」

イスラム国に魅力を感じる日本人

 質疑応答へ。

記者「日本からもイスラム国へ渡ろうとした学生がいたが」

宮田「日本にイスラム国の活動に関心を持つ若者がいれば、それは、中東イスラム世界と同じ背景、動機からではないかと思います。

 日本でも格差社会が顕著で、大学を出ても思い通りの職には就けない、ということがあります。社会的な疎外感から、自分たちを受け入れてくれるイスラム国の支配地域に入って活動しよう、という思いの人たちがいても不思議ではない。

 昨年(2014年)9月末、『イラクニュース』が、40人の日本人がイスラム国にいる、と報じました。数は正確ではないかもしれませんが、目に見える形で、イスラム国に、日本人メンバーがいることは間違いない。自分たちの活動を、日本よりもイスラム国に見出したい、という背景があるのだと思います」

「日本の良好なイメージを維持することは日本人の安全を高める」

(…会員ページにつづく)

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「「暴力の背景にはイスラム国の困難がある」 イスラム国を止めるには中東世界への日本人の理解、支援が必要〜現代イスラム研究センター理事長・宮田律氏が会見」への1件のフィードバック

  1. 40人あまりいる より:

    宮田さんのお話を拝聴しました。危機の時にこそ「忘れられた人たち」のことを考えるのは適切と思います。「イスラム国」にまだ、日本人がいることを考えると、後藤さんの生還を粘り強く、続けていくことが、今はまだ、わかりませんが、きっと、のちのちためになる、と思います。

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