「I am not Abe」――。今、この言葉が、大きな反響とともに拡散されている。
発言の主は、元経産官僚の古賀茂明氏だ。テレビ朝日「報道ステーション」にコメンテーターとして出演した際、シャルリー・エブド事件に際して使われた「Je suis Charlie(私はシャルリー)」をもじって、この言葉を使ったという。
イスラム国による日本人殺害予告事件は、湯川遥菜さん、後藤健二さん2人の死という、最悪の結末で終わった。
古賀氏は、経産官僚を務めた経験から、今回の日本政府、とりわけ首相官邸と外務省の対応に、非常に強い違和感を覚えたという。
すでに報じられている通り、後藤健二さんは、昨年2014年11月頃にイスラム国に拘束され、そのことを外務省は後藤さんの妻からの連絡により把握していた。古賀氏によれば、そのため外務省は、今回の安倍総理による中東歴訪にリスクを感じ、首相官邸に対して取りやめるよう進言していたのではないか、という。
それでも中東歴訪が行われたのは、「首相官邸が却下したか、あるいは、外務省が言えなかったかのどちらかだろう」と、古賀氏は推測した。
今回の人質殺害で、「日本人のイスラム国に対する報復感情を政府が煽っている」とみている古賀氏は、今後、自衛隊が米軍の共同作戦に参加することになり、自衛隊員に死者が出れば、「さらに憎悪と恐怖が煽られ、偽りの正義が膨らんでいくことになる」と警鐘を鳴らす。
新刊『国家の暴走』(2014年9月、角川書店)で、集団的自衛権行使容認や特定秘密保護法による、日本の「軍事立国化」に対して警鐘を鳴らす古賀氏。今回のイスラム国による日本人人質殺害事件とあわせ、「軍事立国」に向けて「暴走」する安倍政権の外交・安全保障、そして経済政策について、2月2日(月)、岩上安身が話を聞いた。
安倍総理の中東歴訪、「非常に違和感」
岩上安身(以下、岩上)「本日は元経産官僚の古賀茂明さんをお迎えしました。報道ステーションでのご発言が、大きく取り上げられていますね」
古賀茂明氏(以下、古賀・敬称略)「ものすごい量の意見がTwitterに寄せられているそうです。私はあまり見ていないので、ちょっとよく分からないのですけど」
岩上「報道ステーションで『I am not Abe』とご発言されました。この真意についてお聞かせください」
古賀「後藤さんの解放を願う方が、”I am Kenji”というスローガンを掲げていました。後藤さんは、信頼の輪を構築することを目指していた方です。
安倍さんのせいで後藤さんが殺された、という指摘がありますが、それはちょっと言い過ぎかな、と思います。
11月はじめまでに、外務省は後藤さんが捕まっていることを知っていました。そのことは、官邸に情報が行っていたはずです。そして、米国にも情報はすぐに上がります。そういう状況の中で、安倍総理が中東歴訪をし、エジプトの演説で『イスラム国と闘う周辺各国に2億ドル程度の支援をする』と発言しました。この経過は、官僚から見ると非常に違和感があります。
(人質がいる以上、)中東を歴訪するのは、得策ではありませんでした。しかしそのことを、外務官僚は官邸に言えなかった。あるいは、却下されたということではないでしょうか」
「やはり、確信犯なんですよ」
古賀「そして安倍総理は、そのことを逆に利用したのだと思います。あの文言(エジプトでの演説)は、外務官僚であれば、絶対に書かないものです。
では、どうしてそこまで官邸が強気になれたのか。事前にお金を払って解決していれば、米国に対して顔向けできなくなります。安倍総理は今回、中東に行って、米国や英国とともに有志連合の一員であると認めてほしかったのではないでしょうか。
米国は人質事件の際、トルコに協力しろと圧力をかけましたが、トルコはそれに従いませんでした。トルコは貫き通して、人質を取り返したんです。米国からすれば、そんなトルコと比べ、安倍総理は『よくできた子』ということになります。
やはり、確信犯なんですよ。今回の中東歴訪は。人道支援のためではなく、欧米と肩を並べたい、という目的のために行われたのでしょう。イスラエルとの会談は、そのためにこそセットされたのでしょう。
人質事件が発覚した後、日本政府は、『人道支援』という表現を強調することに切り替えましたよね。それは、人道支援のための中東歴訪だったのに、イスラム国という「ならず者」が攻撃してきた、というロジックを作るためでした。
『I am Kenji』こそが、日本の心であり、憲法の心であると思います。しかし安倍総理が、それと違うことを言って歩いているわけですね。だから我々日本人は、『I am Kenji』と『I am not Abe』をセットで世界に発信すべきではないでしょうか」
「戦争をするための13本の矢」とは
岩上「元フジテレビアナウンサーの長谷川豊さんが、古賀さんを批判して、『ソースを出せ』と言っています。しかし、安倍総理は2014年9月23日にエジプトのシシ大統領と会談し、『空爆でイスラム国壊滅を』ということを言っているんですね。
古賀さんは、昨年(2014年)『国家の暴走』という本を刊行されています。帯に、『安倍政権による軍事立国化を食い止めよ』とあります。日本の経産官僚が、『軍事立国』を進めようとしているという、驚くべき内容です」
古賀「安倍総理は、軍事力を背景として、米国や英国と同様に世界を仕切ることができるようになることを目指しているのだと思います。そのために、『戦争をするための13本の矢』がセットされている。日本版NSC、特定秘密保護法、集団的自衛権行使容認などがそれです」
岩上「今回、非常時なのだから、政府がやっている時は黙っていろ、という同調圧力がかかりました。しかし、戦争というのは、常に非常時ですよね」
古賀「そうなると、マスコミが自粛して、政権に有利な情報だけが流れていきます」
岩上「報道ステーションの方には、圧力がかかっていないのでしょうか」
古賀「社内では、やはりすごい圧力がかかっているそうです。それだけではなく、ネットウヨクの人たちから、出演しているコメンテーターにすごい量のメールが送られてくるそうです」
「私たちは今、どこに連れていかれようとしているのか」
できれば全文見せてもらいたい。ジャーナリズムとは、真実を白日のもとにさらして巨悪の暗躍を防ぐものだと思う。多くの人が知ることが大切なのに、それを発信者側が阻害するのは本末転倒ではないでしょうか。生活がかかっているかもしれないけど、その生活を脅かすのはややゆがんだ今の権力者なのであって、利権だ、著作権だ、と向こうと同じことを言っていては打倒できないと思う。敵の価値観を無視してそんなものは要らないという気概、これに向こうはびびると思っています。金、安全、食い物、欲しいだろ?と罠を仕掛けてきます。これを悪魔というんだと思いますが、釈迦は大地を触ることで悪魔を退けたといいます。すなわち、個人であるが個人ではない、この星も含めた命だと。思えば必要なものはたいがいこの世界がくれます。悪魔の言いなりになる必要はないわけです。とはいえ、現金ゼロでは取材も無理でしょうし、お金を払ってるサポータの人の権限を不当に侵すことは不平等ですし、自分は記事を見ることをあきらめます。しかし情報は雨水のように誰でも触れられるものでなくては意味がないと思う。