中国人民大学国際戦略研究所長ワン・イーウェイ氏「中国は米国の覇権に挑戦するつもりも、米国を追い詰めるつもりもない。共存できる新しいモデルができるかどうかが重点だ」~7.20 ユーラシア協調安全保障体制をどう構築するか(第2日目) 2024.7.20

記事公開日:2024.8.2取材地: テキスト動画
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(取材、文・浜本信貴)

 2024年7月19日(金)と20日(土)、東京都千代田区の明治大学グローバルフロントにて、一般社団法人・アジア連合大学院(GAIA)機構による国際シンポジウム「ユーラシア協調安全保障体制をどう構築する」が開催された。

 2日目の20日は、メインプログラムの前に、若い世代の研究者と学生が自らの研究テーマについて発表する「若手研究会」が行われた。

 メインプログラムは、1日目の第1部~第3部に続き、第4部~第6部の3つのセッションと、1つの講演、そして、特別記念挨拶の5部構成で行われた。

 第4部は、「日本軍拡路線を反転する―アジア協力安全保障への道」と題し、東洋学園大学客員教授でGAIA機構副理事長の朱建栄氏が司会を務めた。

 東京外国語大学名誉教授の伊勢崎賢治氏は、ウクライナのように、敵対する大国や軍事同盟の狭間に位置するノルウェーやアイスランド、アジアでは韓国や日本などの「緩衝国家(バッファーステイト)」が、しばしば「代理戦争」の戦場となるというテーゼをもとに、国連の役割などについて論じ、ウクライナとロシアの戦争について解説した。

 東京新聞記者の望月衣塑子氏は、第4部のメインテーマと同様の「日本軍拡路線を反転する―アジア協力安全保障への道」というタイトルで講演を行なった。

 朝日新聞の元記者で、SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)元研究員の田岡俊次氏は、「このままで行くと、日本は中国と戦争をすることに、おそらく、なる」とした上で、「それがわかっていながら、黙って見ているというわけにはいかない」との危機感にもとづいて、台湾有事勃発のシナリオについて、批判的に論じた。

 元内閣官房副長官補・元防衛庁防衛研究所所長の柳澤協二氏は、「台湾有事」について、「特に学者やメディア、国会議員らが前提としていることに、相当な勘違いがある」として、その「勘違い」を分析することで、アジアの安全保障について語った。

 第5部のテーマは「アジア脱炭素社会を構築する―戦略の先端をつかむ」。京都大学名誉教授で国際アジア共同体学会(ISAC)の松下和夫氏が司会を務めた。

 東北大学東北アジア研究センター教授の明日香壽川(あすか じゅせん)氏は「政治ヘゲモニーと技術ヘゲモニー―いかに評価し、いかに対応すべきか」と題し、政治と科学技術は不可分であること、そして、中国、日本、世界の、温暖化を含めたエネルギー政策をどのように評価し、どのように対応していくべきかについて、提言した。

 長岡技術科学大学教授の李志東氏は、「世界の自動車電動化を先導する中国のとりくみ」というテーマで講演し、「中国はなぜ、電気自動車の分野で世界をリードできたのか」について解説した。

 元・拓殖大学教授の朱炎氏は「中国の半導体産業の発展―米国制裁の影響と国産化の進展」と題して講演を行い、いわゆる「米中半導体戦争」というものの現状について、報告を行った。

 名城大学経済学部教授の李秀澈(リ スウチョル)氏は、「アジア脱炭素社会を構築するための戦略」というテーマで講演を行った。

 第6部は、「ユーラシア通商環境共同体への道―戦略力の構築へ」と題され、司会は、GAIA機構学術顧問で名古屋市立大学特任教授の中川十郎氏が務めた。

 高麗大学前総長で泰斎大学学長のヨム・ゼホ氏は「北東アジアの社会・経済共同体―ビジョンと戦略」と題して、北東アジアにおける共同体の構築、そして教育・文化の領域での交流、21世紀から22世紀にかけて発展するアジアの総合的な政策について語った。

 立命館大学大学院政策科学研究科教授の周瑋生氏は「協働と統合によるユーラシア通商環境共同体の構築 日中第三国市場協力等を事例に」と題して講演を行った。

 法政大学社会学部教授・自然エネルギー財団特任研究員の高橋洋氏は「東アジアにおける電力貿易の可能性」と題した講演を行った。

 慶応大学・京都大学名誉教授・日本中国友好協会副理事長の大西広氏は、「『ユーラシア通商環境共同体』という提案との関係で」と題し、必然的にロシアを含んでしまう「ユーラシア共同体」という枠組みの中での経済協力の可能性について語った。

 第7部では、中国人民大学国際戦略研究所長であり、中国における「一帯一路」政策の専門家である王義桅(ワン イーウェイ)氏による招請講演「中米の戦略的ゲームと一帯一路のハイクォリティー発展」が行われ、王氏は「一帯一路」の新しい変化について語った。

 王氏は、講演の中で次のように語った。

 「中国はアメリカの覇権体系に挑戦するつもりはありません。アメリカを追い詰めるつもりもありません。それこそ、アメリカも他の国も共存できるような新しいモデルができるかどうか。

 今まで、多くの国をアメリカ中心に守るためのシステムから、各国が共に発展できるような道があるかどうか。

 それこそ、私の今日の話の重点です」。

 プログラムの最後は、特別記念挨拶となり、立教大学元総長・教授である郭洋春氏の司会により、自然エネルギー財団副理事長で元三菱銀行取締役の末吉竹二郎氏、中央アジア・コーカサス総合調査会長であり、元日銀国際局参事の田中哲二氏が挨拶を行った。

 シンポジウムの詳細については、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。

■全編動画

若手研究会

第四部

第五部

第六部

第七部

  • 日時 2024年7月20日(土)10:00~18:00
  • 場所 明治大学 グローバルフロント1階 グローバルホール(東京都千代田区)
  • 主催 一般社団法人・アジア連合大学院(GAIA)機構・国際会議(詳細1 詳細2
  • 共催 国際アジア共同体学会(ISAC)、一般社団法人一帯一路日本研究センター(BRIJC)

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