「尖閣に安保適用」――。4月24日付けの大手各紙朝刊の一面には、この文言が踊った。来日中のオバマ大統領が安倍総理との日米首脳会談で、尖閣諸島が対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用範囲内であると、大統領として初めて明言したのである。
しかし、米国側が、尖閣諸島について日米安保が適用されると明言したのは、実はこれが初めてではない。2010年と2013年、クリントン前国務長官から、日米外相会談において既に同様の趣旨の発言が飛び出している。今回の日米首脳会談におけるオバマ大統領の発言は、これまでの米国の態度を何ら変更するものではないのである。
外交・安全保障を専門とする軍事ジャーナリストの田岡俊次氏は、4月25日(金)、岩上安身のインタビューに応じ、「米国は二枚舌を使っている」と指摘。今回の日米首脳会談で安保5条の適用を持ち出しつつ、中国と「不衝突、不対立の関係を望む」とする米国の姿勢について、「日本と中国、両方にいい顔をするという米国の戦略がすけて見える」と語った。
- 日時 2014年4月25日(金)
- 場所 IWJ事務所(東京都港区)
集団的自衛権、米国の思惑と安保法制懇の矛盾
安倍総理が前のめりで推進する、解釈改憲による集団的自衛権の行使容認。今回の日米共同声明には、「米国は、集団的自衛権の行使に関する事項について日本が検討を行っていることを歓迎し、支持する」との文言が盛り込まれている。その一方、4月22日に石破茂・自民党幹事長と会談したアーミテージ元国務副長官は、「集団的自衛権を急ぐ必要はない」「まずは経済を優先すべき」と語るなど、米国は、一見すると矛盾したメッセージを日本に対して送っている。
田岡氏は、米国の意図をその都度忖度するかのように、集団的自衛権行使容認に向けた報告書を準備している安倍総理の私的諮問機関「安保法制懇(安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会)」について、その議論の矛盾点を指摘した。
例えば、安保法制懇が集団的自衛権の「5事例」のひとつとしてあげている「米国を攻撃した国に武器を供給する船舶に対する強制検査」、いわゆる「臨検」について田岡氏は、「航海の自由を侵害し、船が籍を置く旗国の主権の侵害にも当たるから、交戦国にだけ許される権利で『国の交戦権はこれを認めない』とする憲法に明白に触れる」と指摘。「これを認めるとなると重大な問題だ」と語った。
「集団的自衛権で何を達成しようとしているのか、まったく分からない。安全保障で重要なのは、軍事力を増強するのではなく、敵を減らすこと。米中が接近し、米国は中国と和解しろと言っているのだから、和解すればいいだけの話だ」
緊迫続くウクライナ情勢、クリミア編入は「ズデーテン併合」ではない
緊迫が続くウクライナ情勢。東部のドネツクなどでは、政府側と親ロシア派勢力による武力闘争が続いている。
国際政治の表と裏を検証するインタビュー(対談)。目から鱗が何枚も落ちるかもしれません。