ガザ紛争の解決へ向け、日本の与野党国会議員による超党派 人道外交議員連盟(会長:自由民主党・石破茂衆議院議員)の総会が、2024年6月4日、東京都千代田区の衆議院第一議員会館で開かれた。
伊勢崎賢治・東京外国語大学名誉教授が講演し、国際法を踏まえた解決への方策と、日本の役割を提示した。司会は、同議連呼びかけ人の立憲民主党・阿部知子衆議院議員。
はじめに、衆議院外務調査室が、「パレスチナ・ガザをめぐる国際法関連の動きについて」と題し、国際司法裁判所(ICJ)によるイスラエルへの停戦命令や、国際刑事裁判所(ICC)によるネタニヤフ首相やガラント国防相、ハマス幹部らへの逮捕状請求などに至る経緯を紹介した。
これを受けて伊勢崎氏は、「国際法の実効性は、恣意的に構築される言説空間(narrative)に左右される」という前提を指摘。
ガザに関して一番強力な言説は、「シオニズムに反することは、即ユダヤ人差別である」というもので、国際社会に非常に影響を及ぼしているとした。
もう1つは、「ガザ戦争は、2023年10月7日に(ハマスの攻撃で)突然始まった。それはテロ行為で、ハマスはテロリストだから、せん滅するしかない」という言説であり、これが非常に問題だという。
これが、国際人道法で厳禁する、集団懲罰を押し進めるイスラエルと、それを擁護し続けてきた米国の正義の原動力になっているからである。
伊勢崎氏は、10月7日のイスラエル側の犠牲が、実はイスラエル軍による誤射によるものである可能性や、イスラエル軍が、敵に拉致されそうな自国兵士をあえて殺す「ハンニバル命令」が実行された可能性を指摘した。
さらに、10月7日のハマスの行為は、それ以前から連綿と続く戦争の中で起きた戦闘の一つとして議論されるべきであり、「ハマスの攻撃はテロではなく、連綿と続く戦争の中で起きた、一つの奇襲反撃だ」と指摘。
犠牲者は、国際慣習法上の比例原則にもとづいて、イスラエル側、ハマス側、双方が犯した第二次被害として、平等に、その違法性が査定されるべきだとした。
この視点は、「ハマスの絶対悪魔化」が席巻する西側世論とはかけ離れているが、それは一般の凶悪事件でも機能する「推定無罪」の原則と共通するものだと指摘。
この冷静な視座にもとづく言説を広めることが、イスラエルの非人道的行為を一刻も早くやめさせるための、我々の行動に不可欠だとした。
その上で伊勢崎氏は、「我々の具体的行動とは何か?」「日本に求められるものは何か?」について論を展開。
日本の人道外交における重大な盲点等を含めて、矢継ぎ早に提案・要望を列挙し、同席した国会議員や、外務省担当者に突き付けていった。
その後、自民党の中谷元衆議院議員をはじめ、参加した多数の与野党議員から、活発な質疑が行われた。
詳しくは、全編動画を御覧いただきたい。