【IWJ号外】騙されてはならない!! クリス・ヘッジズ氏が、米国がガザで建設を進めている「仮桟橋」は、「パレスチナ人の海への永久追放」を目的としたものだと警告! 2024.4.11

記事公開日:2024.4.11 テキスト
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(文・IWJ編集部)

特集 中東

 IWJ代表の岩上安身です。

 イスラエルによるガザ地区のパレスチナ人に対するジェノサイドの総仕上げである、イスラエル軍によるラファ地上侵攻がいつ本格的に始まるのか、緊張が続いています。イスラエル軍がラファへの地上侵攻を本格的に始めたら、どれだけのパレスチナ人を殺すつもりなのか、見当もつきません。

 4月1日に、ガザに食料を支援しているNGO組織「ワールド・セントラル・キッチン(WCK)」の、英国人3人を含む欧米系の7名の職員がイスラエル軍によって殺害された事件以降、世界的にイスラエルへの非難がさらに強まり、米国もイスラエルに圧力をかけています。

※はじめに~米バイデン大統領が態度を急変! イスラエルのネタニヤフ首相に「最後通告」!? ガザの市民や外国の支援団体関係者の保護を徹底しないなら、米国は「イスラエル支援を見直す」と警告! イスラエルは渋々、ガザ北部エレズ検問所を解放決定! 急変のきっかけは、米食糧支援NGO「ワールド・セントラル・キッチン」へのイスラエル軍による攻撃で、死亡した7人のうち6人が白人だったから!? イスラエルは昨年10月7日以来、米国製兵器で3万3000人以上のパレスチナ人を殺害! 有色人種でムスリムならば、いくら殺してもいいのか!? イスラエルと米国の姿勢に、あからさまに表れているレイシズム!(日刊IWJガイド、2024.4.8号)
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 クリス・ヘッジズ氏は、3月18日、『サブスタック』で「イスラエルのトロイの木馬―――ガザの地中海沿岸に建設されている『仮桟橋』は、飢餓を緩和するためではなく、パレスチナ人を船に乗せて、永久追放するためのものである」と題する記事を公開しました。

 クリス・ヘッジズ氏は、4月4日の『号外』でもお伝えしたように、ピューリッツァー賞を受賞した作家・ジャーナリストであり、同時に長老派の牧師でもあります。彼のイスラエル批判や道徳的正義感の源泉には、おそらくはこの長老派の牧師としての信仰や思索があり、シオニズムに共感する福音派的なキリスト教原理主義とは一線を画すものであると思われます。

 同時に、彼は何よりも、目の前にある事実を直視する、リアリズムのジャーナリストです。

 ヘッジズ氏は、米国が主体となって建設を進めている「仮桟橋」の表向きの目的は、支援物資をガザ地区に流入させることだが、分配のシステムもなければ、支援物資を運ぶドライバーとトラックもない、まったく具体性を欠いた「絵に描いた餅」だと指摘しています。

 しかも、その仮桟橋を通じて流入する支援物資を管理するのは、イスラエル側であり、中立的な立場にある第3者機関が管理するわけではありません。

 ヘッジズ氏は、この「仮桟橋」を、援助の窓口にするという米国やイスラエルの主張は口実に過ぎず、その本当の目的は、「230万人のパレスチナ人をどこに追放するか、という問題の解決策」だと分析しています。

 米国とイスラエルにとって、国際社会の非難を回避しつつ、イスラエル軍のラファ地上侵攻を実施するための最大の難問は、「ラファに集めたパレスチナ人をどこに追放するか」です。

 当初は、イスラエルの外部、隣接するエジプト国内の国境沿いの砂漠地帯に、テント都市を作らせて、そこにパレスチナ人を「永久追放」するという筋書きがあったように見えますが、結局はエジプトでハマス勢力を養い、イスラエルの安全保障を脅かすことになると懸念したのか、エジプト側があくまでも拒否しているのか、エジプト側への追放は始まっていません。

 3月13日付『アルジャジーラ』は、イスラエルは、ガザ地区中部に「人道的島々」を設けて、パレスチナ民間人約140万人を移送する計画を立てている、と報じました。

 しかし、10月7日以降、広島原爆2個分に相当する、イスラエル軍による爆撃を受けてきたガザ地区は、中部も北部も壊滅的に破壊されており、パレスチナ人が北部や中部に戻っても住めるような家はありません。

 『ロイター』は4月9日、イスラエルは、ラファ地上侵攻に備えてパレスチナ人を避難させるための12人用テントを、4万張注文したようだ、と報じました。しかしそれでも、最大48万人しか収容できません。また、そのテントもどこに設置するのか、それによって地上進行からパレスチナの民間人達が難を逃れることができるのか、判然としません。

 そもそも、イスラエルが「パレスチナ人のいないガザ」を目指しているとすれば、パレスチナ人を北部・中部に戻しても、そこに再定住させ、パレスチナのための街を復興させるはずがない、と推測されます。

 4月8日付『タイムズ・オブ・イスラエル』によると、ホワイトハウスとの電話会談の後、ネタニヤフ首相は、安全保障閣僚会議を招集し、その中で閣僚らは、イスラエルのアシュドド港とガザ北部のエレズ検問所を通じた援助物資の輸送を許可することを決議しました。

 米国務省のマシュー・ミラー報道官は4月8日、今週の後半には、エレズ検問所からの援助物資の搬入が始まる可能性があると述べています。しかし、なぜエレズ検問所だけなのでしょうか。ラファ検問所の近くには、数千台の援助物資を積んだトラックが待機しており、ガザに援助物資を搬入できる検問所は6つあります。

 これも、パレスチナ人を本気で中部に避難させるつもりなのではなく、すべてのパレスチナ人に「死か、ガザからの永久追放か」を選ばせる、という筋書きが背景にある、とすれば、イスラエル側が6つある検問所の1つしか開けず、非効率な空中輸送や海上輸送に固執する理由も理解できます。

 イスラエルは、援助物資を積んだトラックを陸路でガザに入れさせず、地中海側から米国などが建設する仮桟橋から入らせる、援助物資を空中投下するといった非合理・非効率的な方法をとってきましたが、WCKスタッフ殺害事件を受けて、陸路からの搬入を少しだけ拡大しました。

 4月7日には、322台の援助トラックがガザ地区に入ったとイスラエル国防省が発表しました。これは10月7日以来、1日の合計としては最多となる、とイスラエル側は胸を張りますが、10月7日以前の1日にトラック500台には及びません。

 また、イスラエルは7日、1旅団だけを残して、ガザ南部カーン・ユニスからイスラエル軍を撤収させた、と発表しました。

 撤収の理由について、ヨアヴ・ガラント国防大臣は、「軍隊は将来のガザでの作戦に備えて準備を進めている」と、明確に述べています。つまり、撤収は、イスラエル軍を一時的に休ませ、ラファ地上侵攻の準備を整えるのが目的ということであり、決して停戦に向かうものではありません。

 ガザ南部カーン・ユニスからのイスラエル軍の撤収が、イスラエルによるガザのパレスチナ人に対するジェノサイドの緩和や、ラファへの地上侵攻の取りやめを意味するではない、と考えられる根拠は、ほかにもあります。

 10日付『タイムズ・オブ・イスラエル』は、イスラエルのネタニヤフ首相は4月8日、イスラエル軍がガザ南部の都市ラファで攻撃を開始する日付を設定したと述べた、と報じました。

ネタニヤフ首相「(ハマスに対する)勝利にはラファに入り、そこにいる(ハマスの)テロリスト大隊を排除することが必要だ。そうなるだろう。日程は決まっている」。

 米国務省のマシュー・ミラー報道官は、ネタニヤフ首相の発言について、イスラエルによるラファ侵攻の日程について米国は説明を受けていないなどと弁明しています。しかし、イスラエル軍が米軍の支援を受けて侵攻作戦を行っていることはすでに明らかで、米国政府が何も知らない、などというのは白々し過ぎます。

 ネタニヤフ首相は、具体的な日程を、彼の口からは表明してはいませんが、「人質全員を解放し、ハマスに対する完全勝利を達成する」という発言は繰り返しています。

 米国だけではなく、英国もイスラエルに武器を送り続けています。

 英国の元上級判事3人と英国法曹界600人以上が、「英国がガザ地区でのジェノサイドに加担する恐れがある」として、イスラエルへの武器売却を中止するよう、政府に求めました。

 8日付『CNN』によると、英国のキャメロン外相は7日、英国によるイスラエルへの支持は「無条件ではない」と述べ、イスラエルが「国際人道法を順守することを期待する」と表明しました。

 しかし9日、同時付『ロイター』によれば、キャメロン外相は「英国企業によるイスラエルへの武器売却を停止するつもりはない」と明言しています。英国政府は結局、「二枚舌外交」を行っているのだと言わざるをえません。

 イスラエルや米国・英国など西側諸国が、いかに人道的な配慮をしているかのように取り繕っていても、米英、並びにドイツなどの欧州各国が、武器支援をやめない限り、停戦はありえず、ガザにおけるジェノサイドも続きます。

 米国が「仮桟橋」を建設している真の目的は、「ガザへの支援ではなく、パレスチナ人の海への永久追放」であるというヘッジズ氏の指摘に注目すれば、ダブルスタンダードを続ける米国、英国、イスラエルのひそかな狙いが浮かび上がってきます。

 以下、IWJが全文を仮訳・粗訳した、クリス・ヘッジズ氏の「イスラエルのトロイの木馬」です。


イスラエルのトロイの木馬
―――ガザの地中海沿岸に建設されている「仮桟橋」は、飢餓を緩和するためではなく、パレスチナ人を船に乗せて、永久追放するためのものである

クリス・ヘッジス
2024年3月18日

 桟橋は物が入ってくるのを許し、物が出るのを許す。そして、強制的な飢餓政策を含む、殺人的なガザ包囲網を止めるつもりのないイスラエルは、230万人のパレスチナ人をどこに追放するか、という問題の解決策を見つけたようだ。

 アントニー・ブリンケン国務長官が、(2023年)10月7日以降の最初の訪問(※IWJ注1)で提案したように、アラブ諸国がパレスチナ人を受け入れないのであれば、パレスチナ人は船で漂流することになるだろう。1982年のベイルートでは、約8万5000人のパレスチナ解放機構メンバーがチュニジアに船で送られ、さらに2万5000人が他のアラブ諸国に流された(※1)。

 イスラエルは、ガザでも同じように、海路での強制送還がうまくいくと期待している。

 そのため、イスラエルは、バイデン政権が建設中の「仮桟橋」を支持している(※2,3)。表向きは、ガザに食料と援助物資を届けるための「仮桟橋」だが、その食料と援助物資の「配給」は、イスラエル軍が監督する。

 「存在しないドライバー、存在しないトラックが、存在しない分配システムに供給される必要がある」と、バイデン政権の元援助担当高官で、現在は国際難民支援団体の代表を務めるジェレミー・コニンダイクは、『ガーディアン』紙に語った(※4)。

 この「海上回廊」は、イスラエルの「トロイの木馬」であり、パレスチナ人を追放するための策略なのだ。空から投下された食料の包みと同様に、少量の海上援助は、迫り来る飢饉を緩和することなどできない。そんなつもりはないのである。

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