【IWJ号外】ピューリッツァー賞ジャーナリスト、クリス・ヘッジズ氏が、ガザのジェノサイドを「米国が資金を提供し、武器輸送で維持している」、「西側諸国が誇る道徳や人権尊重は、すべて嘘」と批判! 2024.4.4

記事公開日:2024.4.6 テキスト
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(文・IWJ編集部)

特集 中東

 IWJ代表の岩上安身です。

 ピューリッツァー賞を受賞した作家・ジャーナリストであり、『ニューヨーク・タイムズ』の海外特派員を15年間務めた、米国のフリージャーナリスト、クリス・ヘッジズ氏が、3月30日、イスラエルによるガザ地区のパレスチナ人に対するジェノサイドは、米国が武器を供与しなければ不可能だと指摘し、西側諸国が誇らしげに掲げてきた「道徳や人権尊重はすべて嘘」であることを暴いた、と論じる記事を『サブスタック』上に発表しました。

 クリス・ヘッジズ氏は、1956年、米国バーモント州セントジョンズベリー生まれで、長老派の牧師でもあります。ハーバード大学の神学学校で大学院教育を受け、1983年には神学の修士号を取得するために復学しています。

 記事の題名は「予告されたジェノサイド ――ガザでの大量虐殺は、イスラエルが数十年前に始めたプロセスの最終段階である。この事態を予見できなかった者は、アパルトヘイト国家の性格と最終目標が見えていなかったのだ」です。

 ヘッジズ氏は、ガザ地区で行われている凄惨なジェノサイドについて、「米国が資金を提供し、武器輸送で維持している」と指摘、このジェノサイドは「我々(西側諸国)が誇る道徳や人権尊重は、すべて嘘である」ことを暴いている、と訴えています。

 ヘッジズ氏は、西側諸国が誇らしげに掲げる「道徳や人権尊重」や「法の支配」には、有色人種、特に貧しく弱い立場にある人々は数に入らず、西側諸国は「人種差別的な暴力によって世界支配を確実にしている」と批判しています。

 世界中に「ライブ配信で」進められているガザでのジェノサイドを西側諸国は支援し続けていますが、その「嘘」については、パレスチナ人だけではなく、西欧列強の植民地支配や侮蔑的な差別に苦しんできたグローバル・サウスに住むすべての人々、アメリカ先住民の虐殺と黒人奴隷の搾取の上に建国された米国の、白人以外の米国人達は、「何世紀にもわたって、身を持って知っている」とヘッジズ氏は述べています。

 イスラエルが求めるラファへの地上侵攻、即ち、ガザのパレスチナ人の最終絶滅のための攻撃をめぐって、米国とイスラエル、国際社会とイスラエル・米国の間の緊張が日に日に高まっています。

 ラファへの地上侵攻を強行しようとするイスラエルに対して、国連安保理は3月25日、ラマダン期間中の停戦を決議しました。「停戦」を含む決議案に対して拒否権を発動し、採択を阻止し続けてきた米国がついに屈した形ですが、米国はまだこの決議案には「法的拘束力はない」などと、恥知らずにも、国連憲章に反する主張をし続けています。

  • 【第2弾! 国連安保理でガザ停戦を要求する決議が採択されるも、米国務省報道官は「決議は執行義務を負うものではない」と、その法的拘束力を一方的に否定! イスラエル外相は、イスラエル軍は人質全員が解放されるまで戦闘は停止しないと宣言!】安保理決議の拘束力は国連憲章第25条に明記! ラマダン期間中のガザ地区における即時停戦要求を含む決議の採択では、議場に拍手が沸き起こる! イラン人専門家は「この拍手は、戦争を継続させようとするバイデンの努力に対する計り知れない憤りを反映している」とコメント!(米国務省、25日ほか)(日刊IWJガイド、2024.3.28号)
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 3月28日には、国際司法裁判所(ICJ)が、イスラエルに対して、パレスチナ自治区ガザのパレスチナ人に基本的な食料を遅滞なく届けるために必要かつ効果的な措置を講じるよう全会一致で命じました。

 イスラエルは、ラファへの全面的な地上侵攻こそまだ強行してはいないものの、連日、空爆その他の攻撃・殺戮は続けていますし、全面的な地上侵攻についても、「やるかやらないかではない、いつやるかだ」と強硬な姿勢を示し、ガザでのジェノサイドをやめる気配は一切ありません。

  • 【第2弾! 国際司法裁判所が28日にイスラエルに対して基本的な食糧を難民に届けるように命令! しかし、日々、イスラエル軍は、ハマス掃討とは何の関係もない単なる人殺しを無差別に続行!】(『ロイター』2024年3月29日ほか)集団で狂っていないとできない凶行!! 何が「神に選ばれし民」なのか!?(日刊IWJガイド、2024.3.30号)
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 バイデン政権は、表ではイスラエルに対して「民間人の犠牲者を少なくすべきだ」などと注文をつけたりしていますが、これは偽善的な仮面に過ぎず、その裏ではイスラエルがパレスチナ人を殺戮するための武器・弾薬支援を切れ目なく継続しています。

 『ワシントン・ポスト』は29日、バイデン政権はイスラエルに「1800個以上のMK84・2000ポンド爆弾と、500個のMK82・500ポンド爆弾」などを含む新たな武器支援をするとスクープしました。

 MK84・2000ポンド爆弾は、イラクなどで用いられた「バンカーバスター」の一種です。地方では爆発せず、地中深くで爆発し、ハマスの地下トンネルを破壊します。『CNN』は、昨年12月の時点で、すでに500発以上がガザ地区に投下されたと分析しています。

 MK84・2000ポンド爆弾は、周辺300m圏内、つまり直径にして600mの範囲への殺傷能力を持つとされています。概算になりますが、MK84・2000ポンド爆弾4つで少なくとも1km四方を破壊することができる能力があることになります。

 ガザ地区の総面積は、365平方キロメートルです。つまり、365×4個=1460個のMK84・2000ポンド爆弾でガザ地区を絨毯爆撃すれば、ガザ地区に生きるものをすべて爆殺し、ガザ地区を破壊し尽くすことができる計算となります。バイデン政権は、絶滅させる以上の量のMK84・2000ポンド爆弾をイスラエルに提供しています。途方もないジェノサイドへの加担であり、米国こそが、ジェノサイドの主犯であり、イスラエルはその実行犯であるとも言えます。

  • 【第3弾! バイデン政権は、ガザでジェノサイドを続けるイスラエルへの武器支援を新たに承認! 300m以上離れた人々を殺傷する能力をもつ2000ポンド爆弾1800個以上も含まれている!】これは破壊力から言ったら、核分裂を起こさず、放射能をばら撒かないだけの大量破壊兵器! 核兵器の投下と匹敵する破壊力、ガザ住民の絶滅力をもち、その後、イスラエルに接収する土壌を放射能汚染しない! イスラエルと米国は、虐殺後の跡地利用すら考えている!(『ワシントン・ポスト』、2024年3月29日)(日刊IWJガイド、2024.4.1号)
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 世界銀行や欧州連合(EU)と国連が発表した、イスラエル・ハマス戦争を巡る新たな報告書によれば、イスラエルによるガザへの軍事攻撃で、約185億ドル(約2兆8000億円)相当のインフラが破壊されました。3日付『ブルームバーグ』などが報じました。

 ガザ地区のパレスチナ人の約74%が失業しており、同地域の域内総生産(GDP)は、昨年10-12月(第4四半期)に86%減少しました。

 同報告書は、「現在進行中の紛争によってガザ経済が受けた衝撃は、最近の経済史上で最大級となっている」と警鐘を鳴らしています。

 バイデン政権高官らとイスラエル政府高官らの会談が続いていますが、それはラファへの地上侵攻を止めるようなものではなく、いかに国際社会の批判をかわしながら、ガザのジェノサイドを完遂するかの会談であろうと推測されます。

 クリス・ヘッジズ氏は、2月初旬の段階で、いち早く、イスラエルはガザで「飢餓ジェノサイド」を行っている、と暴きました。爆弾は強力ですが、その犠牲者は今のところ、数万人の規模です。しかし、「飢餓ジェノサイド」は、食料支援を妨害すれば、数ヶ月もかからずに数百万人を餓死へと追いやることができます。まさに、パレスチナ人の公開絶滅計画です。ナチスのホロコースト以上の邪悪さです。

 イスラエル軍は、10月7日以来、避難所にもなっている病院や国連学校への攻撃や、ガザへの医療や水・食料などの人道支援をする団体への非人道的な攻撃を続けています。

 4月1日、イスラエル軍は、ガザへの人道支援をしている慈善団体「ワールド・セントラル・キッチン」の車列を空爆し、英国人3名、ポーランド人1名、オーストラリア人1名、カナダと米国の二重国籍1名、パレスチナ人1名の、合計7名を殺害しました。2日付『AP通信』などが報じています。

 4月3日付『ロイター』によると、同日、「ワールド・セントラル・キッチン」の創設者で、スペイン出身の著名シェフ、ホセ・アンドレ氏は、イスラエル軍が車列を「組織的に1台1台」狙ったとの見方を示しました。アンドレ氏は、「ワールド・セントラル・キッチン」はイスラエル軍と打ち合わせをした上で活動しており、「(イスラエル軍は)我々のチームが、車3台で、あの道路を移動していることを知っていた」と証言しています。

アンドレ氏「誤った位置を空爆したというような単に不運な事態ではない。(中略)

 1.5、1.8キロメートルに及ぶ非常に明確な人道支援車列で、車の屋根には非常にカラフルなロゴがあった。我々が誰で、何をしているのかは非常に明確だ」。

 このイスラエル軍による「ワールド・セントラル・キッチン」の車列への冷酷な攻撃に対して、米国・英国など、イスラエルを熱心に支持する国々からも非難の声が上がっています。

 バイデン大統領は「イスラエルは、民間人に切実に必要な援助を届けようとしている援助関係者を保護するために十分な措置を講じていない」とイスラエルを批判し、支援団体のメンバーが殺害されたことについて「激怒し、悲痛な思いをしている」と述べました。

 真剣にそう思うならば、米国大統領として、イスラエルへの軍事支援を、なぜ、ただちに打ち切らないのか、とバイデン大統領には問いたいと思います。恐るべきダブルスタンダード、戦慄すべき欺瞞ぶりです。

 無残なことですが、この「ワールド・セントラル・キッチン」の車列への攻撃は、他の支援団体の動きを止めました。イスラエル軍の悪辣なもくろみ通りです。

 米国はキプロスから海上輸送でガザ地区に食料などを届ける道を開き始めましたが、慈善団体からの支援物資約240トンを積んだ船が、到着してからわずか1日後にガザから引き返しています。複数の慈善団体がガザ地区への食料配達を一時停止することを決めました。

 飢餓状態にあるガザのパレスチナ人にとっては、致命傷となる食料供給の一時停止です。まさに、飢餓ジェノサイドを行なっているイスラエルにとって、狙い通りの流れとなっています。

 ガザでのジェノサイドが、完遂を目指して着実に進められています。本来ならば、マスメディアは、連日大きく取り上げ、強く非難するべきですが、西側のマスメディア、とりわけ日本のマスメディアは、目をそむけて、この陰惨な事態を大きく報じようとしません。

 クリス・ヘッジズ氏は、人々を無知のままにしておく罪、無知のままであろうとする人々の罪について、鋭く核心をついた批判を行っています。

 「我々は無知を装うことはできない。我々はパレスチナ人に何が起こっているかを知っている。パレスチナ人に何が起きているのをか知っている。これからパレスチナ人に何が起こるかも知っている」。

 この状況にいち早く警鐘を鳴らしてきた、クリス・ヘッジズ氏の現状についての論考を、IWJでは全文仮訳・粗訳しました。

 ぜひ、お読みいただき、この犯罪を見過ごしている日本のメディアの罪、そして知ろうとしない人々の罪について、ぜひ、お考えをめぐらせていただきたいと思います。


予告されたジェノサイド
―――ガザでの大量虐殺は、イスラエルが数十年前に始めたプロセスの最終段階である。この事態を予見できなかった者は、アパルトヘイト国家の性格と最終目標が見えていなかったのだ。

クリス・ヘッジズ
2024年3月30日
https://chrishedges.substack.com/p/a-genocide-foretold

 ガザで驚くべきことは何もない。

 イスラエルによるジェノサイドの恐ろしい行為は、すべて事前に広く予告されていた。何十年も前から。

 パレスチナ人の土地の略奪は、イスラエルの入植者植民地計画の心臓部である。略奪は、1948年(※IWJ注1)と1967年(※IWJ注2)に、劇的な歴史的瞬間をもたらした。

 歴史的なパレスチナの広大な土地が占領され、数十万人ものパレスチナ人が民族浄化された。また、東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区では、ゆっくりとした動きで着実に土地の窃盗と民族浄化が進んでおり、収奪も段階的に行われてきた。

 (2023年の)10月7日、ハマスとその他の抵抗勢力によるイスラエル侵攻は、1154人のイスラエル人、観光客、出稼ぎ労働者を死亡させた。ハマスらは、約240人を人質に取り、イスラエルに、イスラエルが長年切望してきたこと、つまりパレスチナ人の完全抹殺の口実を与えた。

 イスラエルは、ガザの医療施設の77%、通信インフラの68%、ほぼすべての自治体や政府の建物、商業、工業、農業の中心地、あらゆる道路のほぼ半分、ガザの43万9000戸の60%以上、住宅建築物の68%を破壊した(※1)。

 10月25日に、イスラエル軍は、ガザ市のアル・タージ・タワーを爆撃し(※IWJ注3)、子供44人と37人の女性を含む101人を殺害し、数百人を負傷させた。難民キャンプでさえ、抹消された(※2)。

 難民キャンプも10月25日のジャバリア難民キャンプへの攻撃(※IWJ注4)では、69人の子どもを含む少なくとも126人の市民が死亡し、280人が負傷した(※3)。

 イスラエルは、ガザにあるすべての大学を損傷させて破壊し、それらの大学は現在閉鎖されている。13の図書館を含むその他の教育施設の60%も破壊された(※4)。さらに、208のモスクや教会、150年にわたる歴史的記録や文書が保管されていたガザの中央公文書館など、少なくとも195の遺産も破壊された(※5)。

 イスラエルの戦闘機、ミサイル、無人機、戦車、砲弾、艦砲は、ベトナム戦争以来、かつてないレベルの焦土作戦を進め、長さわずか20マイル(※25マイルとする)、幅5マイル(8km)しかないガザ地区を、日々、粉砕している。

 イスラエル軍はガザに、核爆弾2発分に相当する2万5000トンの爆薬をすでに投下しており、その多くの標的は人工知能が選択している。難民キャンプや密集した市街地、いわゆる「安全地帯」にも、無誘導弾(「ダム爆弾」、※IWJ注5)や2000ポンドの「バンカーバスター」爆弾(※IWJ注6)を投下している。殺されたパレスチナ人の42%は、イスラエルに逃げるよう指示された、この「安全地帯」にいた。

 170万人以上のパレスチナ人が家を追われ、超過密なUNRWAの避難所、病院の廊下や中庭、学校、テント、あるいはガザ南部の野外などに避難することを余儀なくされ、悪臭の漂う生ごみの汚水プールのそばで生活していることも多い。

 イスラエルは、ガザ地区で、1万3000人の子供と9000人の女性を含む、少なくとも3万2705人のパレスチナ人を殺害した(※6)。これは、イスラエルが、1日あたり換算で、75人の子どもを含む187人もの人々を殺戮していることを意味する。

 イスラエルは、136人のジャーナリストを殺害している(※7)。その多くは、意図的に標的にされた人々である(※8)。

 ガザ地区の医療従事者の4%にあたる340人の医師、看護師、その他の医療従事)も殺害した。

 これらの数字は、死体安置所や病院(そのほとんどが機能していない)で登録された死者しかカウントしていないため、実際の死者の数を反映しているわけではない。行方不明者を含めると、死者数は4万人をはるかに超える(※9)。

 医師達は、麻酔なしで手足を切断せざるをえない。ガン、糖尿病、心臓病、腎臓病など、重篤な病状を抱えた人たちは、治療が受けられずに亡くなっているか、まもなく亡くなるだろう。

 毎日100人以上の女性が、ほとんど医療なしで出産している。流産は300%も増加した。(※10)

 ガザのパレスチナ人の90%以上が、深刻な食料不足に苦しんでおり、人々は家畜の飼料や草を食べている(※11,12,13)。子供達は、飢餓で死につつある(※14)。

 パレスチナ人の作家、学者(※15)、科学者やその家族は追跡され、暗殺されている。

 7万5000人以上のパレスチナ人が負傷し(※16)、その多くが生涯不自由な生活を余儀なくされることになるだろう。

 1967年以来占領されているパレスチナ地域の人権状況に関する国連の特別報告者であるフランチェスカ・アルバネーゼは、「記録された死者の70%は、一貫して女性と子どもである」と、3月25日に発表された報告書の中で書いている(※17)。

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