2024年4月1日午後2時より、東京都千代田区の衆議院第一議員会館にて、「『今こそ停戦を』呼びかける人たち」の主催により、「今こそ停戦を Cease All Fire Now!『停戦をためらう構造について』シンポジウム5」が開催された。
登壇者は、伊勢崎賢治氏(元アフガン武装解除日本政府特別代表)、岡本厚氏(岩波書店元代表取締役社長、元『世界』編集長)、田原総一朗氏(ジャーナリスト)、和田春樹氏(東京大学名誉教授)、羽場久美子氏(青山学院大学名誉教授・国際政治学者)、阿部知子氏(立憲民主党・衆議院議員)。
IWJがこれまで報じてきた「『今こそ停戦を』呼びかける人たち」の記事は、以下を御覧いただきたい。
岡本氏は、このシンポジウムの主旨と主催者の活動を振り返り、以下のように述べた。
「今日は、ウクライナ・ロシア戦争の『停戦をためらう構造について』ということで、話をしていきたいと思っております。
パレスチナの即時停戦を求めるということでは、大体皆さん、市民運動も平和運動も一致するんですけれども、ウクライナの停戦についてだけはなお、議論があって、賛成・反対、入り乱れている感じであります。
私たちは、停戦を求めるということで、ウクライナ戦争が始まった2022年からシンポジウムをやって、今日が5回目になります。(中略)
今日の『ウクライナ・ロシア露戦争の停戦をためらう構造について』の議論というのは、いろんな意味で、本質的な議論なんですね。
実は5月くらいに、我々はもう1回声明を出そうということで、いろいろな方々にご意見を求めるメールを差し上げたんですけれども、その中に、田中優子さん、法政大学の総長をやられた方ですけれども、から返信がありました。
その一部を読み上げますと、田中優子さんは、以前から、ウクライナ戦争も『即時停戦すべきだ』ということでは、私たちと論調を一致させて、例えば、和田春樹さんと対談などをされたんですけれども、ひとつは、ウクライナ戦争が時間を経て、今の時点で改めて、停戦の方法と、その後の考えをめぐらしたときに、停戦の仕方によっては、再びロシアなどの侵略が起こりかねないと思われる、と。
で、国連総会は、ロシア軍は即時、完全かつ無条件に撤退せよという勧告とともに、非難決議をロシアに対して4回出している、と。もちろん、戦争終結に向けた、外交的、政治的解決に向けた国際世論が重要ですけれども、その努力は、ウクライナ、ロシア双方に向けて行うべきであると。
今、ウクライナに対して『諦めろ』というメッセージを出すことは、『今後の侵略にも耐えろ』ということになってしまうのではないかということを、田中さんは言われています。
米国の撤退可能性が出てきた今日、この状況から、『諦めて停戦しろ』というメッセージを、私たちはウクライナに対して投げかけていいのだろうか、ということが言われています。
これは、何て言いますか、私たちにとってみたら、非常にある意味で本質的な議論になるかと思います。
これに対して、どういうふうに考えを言うかということについては、我々自身の中の考えを整理するという意味でも、大事な時期になっているのではないかというふうに思います。
あらかじめ申し上げておきますと、私たちはウクライナの人たちに対して、『あきらめろ』ということを言ったことはないんですね。しかし同時に、これ以上『戦争を続けろ』と言うこともできないと思います。
つまり、『降伏しろ』ということもできないし、それから逆に『戦って死んでこい』というふうにも、我々は言えないと思います。なぜかというと、私たちは戦争をしている当事者ではないからなんですね。
侵略を受けた側でもないし、今、戦争をしている側でもないと。
そして、これは私の考えですけれども、原点としては『殺すな、殺されるな』ということだと思うし、ウクライナに対して言っているのではなくて、国連とか、あるいは中国、インド、トルコ、ブラジルなんかの国、そして、日本も含めて、『間に入ってもらえないか』と。『間に入って、停戦、戦いを止めて、その間に入って交渉してもらえないか』ということが、私たちのおおよその議論だったというふうに思います。
実は、私は20年ぐらい前に、ある憲法をめぐる会議をやっていたんですけれども、その中の議論として、坂本義和さんという国際政治学者の方と、樋口陽一さんという憲法学者の間で議論が交わされたことを覚えているんですね。
坂本先生からは、『日本の中国の侵略に対して、我々はそれに抵抗する中国の人たち、人民解放軍に対して、支持してきたじゃないですか』と。あるいは、『ベトナム戦争が起きたときに、アメリカのベトナム侵略に対して、抵抗するベトナムの人たちを支持してきたじゃないですか』と。
『だとしたら、憲法9条を持っているけれども、私たちには抵抗権や自衛権はあるのではないか』ということを、坂本先生は、国際政治学の立場から言われました。
それに対して、樋口先生は『いや、抵抗権はあるけれども、それが武装の抵抗になるかどうかは、また別の話じゃないか』というようなことを言われたことを記憶しているんですね。
これは、実は、戦後の憲法をめぐる議論については、ずっとこのことが言われていて、『抵抗』はあるけれども、しかしそれは『武装の抵抗』なのか、『そうではない抵抗』なのか、あるいは、『専守防衛』というのをどう考えるのか、それは『正しい』ことなのか、『正しくない』ことなのか、ということを、これは、決着がつかないまま、これまで議論をされてきたのではないかというふうに思います。
今日は、ある意味で、この戦後の憲法論を含めてですね、大きな議論について、結論は出ないかもしれませんけれど、我々自身の中で、ちょっと考えを闘わせてみたいというふうに思います」。
詳細は、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。