東郷和彦氏「一刻も早く止めるためには、アメリカがプーチンをもっとよく知らなくちゃいけない」~12.21 Ceasefire Now!今こそ停戦を~Cease All Fire Now シンポジウム3 ―登壇:伊勢崎賢治氏(元アフガン武装解除日本政府特別代表)ほか 2023.12.21

記事公開日:2023.12.27取材地: テキスト動画
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(取材、文・浜本信貴)

特集 ロシア、ウクライナ侵攻!!ウクライナのネオナチとアゾフ大隊の実態
※新春特設のために期間限定でフルオープンにします。

 2023年12月21日午後4時より、東京都千代田区の衆議院第一議員会館において、「Ceasefire Now! 今こそ停戦を~Cease All Fire Now シンポジウム3」が開催され、ウクライナとパレスチナでの争いを、どのように停戦に導けばよいのか、そのために日本にできることは何か、という問題について、講演と討論が行われた。

 シンポジウムは二部構成で、第一部では、東京外国語大学名誉教授の伊勢崎賢治氏(元アフガン武装解除日本政府特別代表)が「ガザ戦争の停戦のために日本になにができるのか」、青山学院大学名誉教授の羽場久美子氏が「パレスチナ、ウクライナ、アジアの和平と世界秩序」と題して、それぞれ基調報告を行った。

 また、この基調報告を受けて、ジャーナリストの田原総一朗氏、衆議院議員の石破茂氏(自民党)がコメントし、最後に元外務省欧亜局長で元オランダ大使の東郷和彦氏(静岡県立大学グローバル地域センター客員教授)が以下のように語った。

 非常に重要な発言なので、全文を紹介する。

 「私はウクライナ戦争に絞ってお話ししたいと思います。

 皆さまもお気づきだと思いますけども、ウクライナ戦争、今、非常なスピードで動いているんですね。それで、ものすごく大きな機会が開かれているのかもしれない。でも、それは何が動いているかということを、ちょっともう一度考えてみないとわからないと思いますので、その点に絞って申し上げたいと思います。

 ウクライナ戦争が始まってから間もなく2年になります。この間、1回だけ本当に停戦の可能性があった。これはご案内だと思いますけれども、去年の3月29日、イスタンブールでの交渉です。これは本当に素晴らしい交渉で、ウクライナが素晴らしい提案を出した。

 『ウクライナのNATO不参加』OKだと。それから、そのためには国際保障が必要だけど、その保障の中にロシアが入っても結構だと。

 それから、さらに領土に関しては、クリミアは、この時点では、今もそうですけども、ロシアの実効支配の下にありますから、その実効支配は変えないで話をしていきましょうと。これはロシアは完全に飲める。

 それからドンバス、これはちょっと難しいんですけど、この時点で国際法上のドンバスというものをロシアは認知していましたから、これを使った何らかの解決が目されていたようです。

 で、ほとんど合意できそうになった中で、最近出てきた話でですね、ゼレンスキーは本当に必死になってたんですね。僕はまったく知らなかったんですけど、この2週間くらい出回っている情報ですけども、この仲介をしたエルドアン、トルコ(の大統領)ですね。だけど、エルドアンだけじゃなくて、プーチンに非常に信用があったドイツのシュレーダー、それからイスラエルの元首相のベネット、この二人をですね、ウクライナが必死になって呼んできて、プーチンと手を打つような仲介をやってくれってことを頼んでたんですね。

 で、この二人は最近喋り始めた。で、ほとんど合意ができているところの中で、『待て』と、『そういう合意をしちゃいかん』と言ったのが、アメリカとそれからイギリスなんですね。

 せっかくそこまで合意ができていたものを、アメリカとイギリスが、『そんなことを今やってしまったら、プーチンの力を弱める、二度と立ち上がれないようなところまで弱めるってことは、できなくなるじゃないか』と。『だからもっと戦え』ということを言った結果、戦争が続いて、それが一番ビジブルに(目に見える形で)出てきたのは、4月の9日、ボリス・ジョンソンがウクライナに飛んで行って、それでキエフでゼレンスキーと会うんですけども、日程からいうともっとその前から、こういうメッセージはしっかり出ていたというふうに思えるんですね。

 ですから、これがひとつ。もうひとつは、この間に『ブチャの殺戮』ということが起きたわけですね。それで、『ブチャであんな殺戮をするロシアは本当にけしからん。だから和平はできなくなった』ということで、そういうふうに頭ができているんですけど、実はそこに非常なからくりがあった」。

<会員向け動画 特別公開中>

■全編動画 第一部

■全編動画 第二部

  • 日時 2023年12月21日(木)16:00~18:30
  • 場所 衆議院第一議員会館 国際会議室(東京都千代田区)
  • 主催 今こそ停戦を呼びかける人たち(詳細

<ここから特別公開中>

 「どういうことかというと、3月29日の時点で、ロシア軍は一斉に撤退を始めるんですね。ブチャからロシア軍がほぼいなくなって、それからウクライナ軍が入ってきたのが4月2日。で、この間ですね、3日間、3月30日、4月1日、それから4月2日と、3日間空白の時間があるんですね。

 で、その空白の時間に、ブチャの市長は『虐殺があった』というようなことは、一言も言ってないんですね。これはマスコミにみんな喋ってますから、普通の状況だったということを話していた。

 で、そこで、このブチャの虐殺という報道が出た時に、ラブロフ(ロシア外相)が直ちに『おかしいじゃないか』と。『もし虐殺があったんだったら、どうしてその3日間の間に、ブチャの市長が何も言ってないんだ』と言って、直ちに反論した。

 それで、その3日間に何があったかということについて、詳細に見てますと、ウクライナ軍が入ってきてから後、4月2日にこの『死体ゴロゴロ』というのが出てきたじゃないですか。それを仕掛けたのが、ウクライナの超過激派のネオナチですね。ネオナチの部隊がそれを仕掛けたという話が、この1年半くらいに、少しずつですけど、確実に出てるんですね。

 で、僕はこれ、本当に最初は思ってもみなかったので、びっくりしたんですけど、アメリカ人のゴードン・ハーンが、2022年の5月10日に詳細な自分で調査したものを見て、そういう結論を出さざるを得ない。

 それから、22年10月21日にイギリスのスコット・リッター。

 だけど、最も驚いたのは、今年の6月13日に出した、フランス人のアドリアン・ボケという男で、彼は、このネオナチのウクライナの超過激派、『アゾフ部隊』とずっと一緒に行動していたんですね。それで、アゾフ部隊が何をやったかということを、克明にしゃべっている。

 結局のところ、アゾフ部隊は何をやったかというと、『ロシアは悪いやつだ』というイメージを出すために、意図的に、場合によってはウクライナ人を殺し、あるいは別の死体を持ってきて仕掛けた、と。

 だけど、これは、思ったほど難しいことじゃないんですね。なぜかというと、アゾフ部隊というのは、ウクライナに対して反抗する人たちを探して、それをやっつける人ですから。ですから、ロシア軍がいる間に、例えば、彼が言っているのは、例えばロシア軍に水をあげた。これは利敵行為になると言って処刑した、というような例が、ずーーっと出ているんですね。

 こういうことをやっておいて、それでゼレンスキーからしてみると、アメリカ、それから国内の中の超過激派、その両方から圧力を受けた結果、一番いい機会を失したぞということで、4月6日に、3月31日の提案に代わる新しい提案を出すんですけど、最も要になっていた『クリミア半島を対象外にする』という文言が消えてしまったわけです。

 だから、ロシアから見ると、『これじゃあ話になりません』ということで、その後、ウクライナは今度はアメリカとNATOに対して『武器をくれ、武器をくれ』ということを言って、今日に至っていると。

 それで、戦争がその後1年くらいはウクライナに有利に展開していると、大体そういう評価が高かったですが、これが、外交というのは恐ろしいもので、今の状況は、まったく予見されないことが少なくとも4つ起きた結果、ウクライナは圧倒的不利になってきてしまった。

 これは、まあ、皆さん、御存じだと思いますけれども、まず、今年になってからの6月の反転攻勢ですね、これがうまくいかなかったと。

 それはなぜうまくいかなかったのかというと、最初に攻めたロシアも大間違いをしたのは間違いはないんですけども、その結果反省した。それで防御線、ものすごい防御線を敷いた結果ですね、ウクライナはこの反転攻勢がうまくいかないで、今日に至ってしまっている。これが第1ですね。

 それから誰も予測できなかったもうひとつの事態、これがハマスとイスラエルの戦争ですね。これはもう明らかに世界の関心が、ハマス・イスラエル戦争の方に行ってしまい、アメリカの支援がイスラエルの方に行ってしまった結果、ウクライナに対するアメリカの支援というのが先細りになってしまって、世界の関心もロシアから離れたということで、これはまったく予想できなかった、プーチン有利な時代ができた。

 それから3番目に、ウクライナの内紛。これはもう、いろんなところで今、言われていますが、僕が注目したのは10月30日の『タイム』に、『今、ゼレンスキーはウクライナで裸の王様になってしまっている。彼ひとりだけが最後まで戦うということを言っていて、それでウクライナの実権を握っている人たちは、もうそれが不可能だということをわかっている。裸の王様』(だという記事が出た)。

 それで、それを裏書きしたのは11月1日の『エコノミスト』で、これは具体的にですね、ウクライナの総司令官のヴァレリー・ザルジニーというのが、『ロシアとの戦争は一進一退の消耗戦だ。そんなに簡単に勝てない』と言って、ゼレンスキーだけはこれを否定したという。ウクライナの内部がガタガタになった。

 それから、4番目にアメリカの議会、それからヨーロッパのNATOの内部ですね。アメリカの議会は言うまでもないんですけども、ゼレンスキーは、これはまずいと思って、12月12日にアメリカの議会にすっ飛んできました。それで、上下両院の議員と懇談したんですけれども、ジョンソン下院議長ですね、これは、共和党。ジョンソン下院議長の方は、『とにかく今、これ以上、ウクライナに支援することはできない』と。『1月9日から(議論を)再開して考えましょう』と。しかし、『その時には、バイデンが責任を持って、ウクライナが勝つための戦略をきちんと出してこい』と言った。

 できないですよ。今、本当に真面目に言ったら、きちんと勝つ戦略なんか出せないということはわかった上で、こういうことを言っている。非常に状況は良くないわけですね、ウクライナにとって。

 それからNATOに関しては、ハンガリーの首相が『もうこれ以上ウクライナを支援しない』と。で、NATOというのは、本当の決断をするときには全員一致が必要ですから、とても難しい問題が起きてきている、と。

 厄介なのは、こういうことが起きているということ。これを、3月29日の交渉で何が起きたかってことを含めて、全部プーチンの頭に入っているということなんですね。

 他の世界は、『まあ、あの時はこういうことがあった』と思っていても、全部プーチンの頭に入っているということが、12月14日のプーチンの4時間にわたる、ほとんどメモなしの演説ですね、そこで、プーチンはよく聞いている、と。なるほど、と。今言った、いくつかの点というのが全部、彼の頭に入っているということがよくわかるような発言をしているわけです。

 それで、これ(12月14日のプーチンの演説)はモデレーターがいて、モデレーターも最初の質問の時に、その一番肝のところで、『いつ平和が来るのか?』と質問しているんですね。これは、世界の関心事でもあり、しかし、ロシア人の関心事でもある。『いつ平和は来るのか?』と。

 それに対してプーチンは、『自分の戦争目的が達成した時だ』と。で、その戦争目的は3つあると。ひとつは、『ウクライナの非ナチス化』。それからもうひとつは『ウクライナの非軍事化』。それから『ウクライナの中立化である』と言って、で、この3つの目的というのは、戦争を始めた時に確かに彼が言ったことなんですけども、意味が変わってきている。

 それはなぜかというと、まず、『非ナチス化』に関しては、もともとステパーン・バンデラという、完全なナチ協力者が、第2次世界大戦の終わりの時に、ナチスと一緒に戦っていたと。このバンデラの扱いというのが問題なんですけども、バンデラの扱いだけではなくて、バンデラの系統で、今、ウクライナの内部を牛耳っている『アゾフ部隊』ですね。『アゾフ部隊』が跋扈しているこのウクライナに対して、『非ナチス化』と言って当然じゃないか、と。これがひとつ。

 それからもうひとつは、『非軍事化』。『非軍事化』に関しては、『我々はイスタンブールで、非軍事化のための一定のパラメーターを合意していた』と。『ところが、米欧・ウクライナは、その合意をストーブの中に投げ込んでしまったじゃないか』と。

 つまり、もうほとんど平和ができるようなところで、誰がそれを止めに入ったのか? 米欧じゃないか、と。で、その米欧が、これプーチンの表現ですが、『ストーブにその約束を投げ込んしまった以上、やっぱり我々としては、戦わざるを得ないところに追い詰められてるんだ』と。

 それからその後に、全体情勢が有利になっている中で、プーチンは、『ウクライナの南東全体は、親ロシアだった。なぜなら、彼らは歴史的にロシア領だったからである。黒海全領域は露土戦争(19世紀の帝政ロシアとオスマン帝国との戦争)の結果、ロシアに割譲された。ウクライナに何の関係があるのか。クリミアとも黒海周辺とも、何の関係もウクライナにはない』と。

 『オデッサはおしなべてロシアの都市だ。我々はそのことを知ってるし、誰でもそのことをよく知っている』。

 これは読む人が読むと、恐ろしいですよね。オデッサまでロシアだということを、1度こういうふうに言い出した時に、今、プーチンがどこまで作戦を立て直そうとしているかというのは、わからない。

 で、最後にアメリカとの関係は、『我々はアメリカと関係を築く用意がある』と。で、『アメリカの国内的変化、それから他の国を尊重すること、妥協への模索、制裁・軍事的手段による解決をやめること。そうすれば、全面的な関係が復活される。ただ、まだそういう条件は、アメリカとの関係では満たされていない』。

 これは、読み方によっていろいろありますけども、でも、アメリカに対して若干の『今だったら、あなたは動く余地がありますよ。今だったらね』というメッセージのように、僕は聞こえると思うんですね。

 それで最後に、一体この戦争はどうなるか、ということですが、伊勢崎先生がおっしゃったように、僕も、最終的には、これは対話しかないと思うんですよ。対話。

 今だったらば、アメリカがそこを思い出せば対話の余地があるよ、ということを、チラっと見せている。これ、アメリカが本当に乗る気があったら、僕は、プーチンは乗ってくると思うんですね。

 それで、いろいろ報道の中で、アメリカが対話をしたいということは、チラッチラッと出ているんですが、詰めていくと、全部瓦解していくんですね。

 で、最後に、これをじゃあ、日本としてどうしたらいいのか、と。僕は、日本はですね、やる気があれば絶対に動ける、強力な球を持っていると思うんですね。

 その球は何かというと、太平洋戦争の終結。あの時、何が起きたかというと、あの、(1945年8月10日と14日)2回の(昭和天皇の)『ご聖断』を受けて、ポツダム宣言を受け入れた時に、日本側はあの当時の主戦派と言われる人たちも、それから和平派と言われている私の祖父の東郷茂徳、佐藤尚武、それから、その主戦派と言われていた阿南大将(阿南惟幾 あなみこれちか)以下の人全員、ひとつだけ、『国体の護持』、つまり今から見ると信じられないことだと僕も思うんだけど、『皇室の安泰』というものを、もし保持できなかったら最後まで戦う、という点で一致していたわけですね。あの時の日本はね。

 そこで、日本がその最後の条件を出した時に、その『条件』というときつすぎるんだけど、我々の了解としては、『国体は護持される』という了解のもとに、ポツダム宣言を引き受けると言った。これに対して、アメリカがもしそれに対して、国体を認めないという表現を出していたら、我々民族もいなくなってたかもしれないくらいの、危機的な状況だったんだけども、この時、アメリカは日本のことをよくわかっていた。

 ひとつはグルー(ジョセフ・クラーク・グルー、日米開戦時の駐日米国大使)以下の知日派の人たち。

 それから、もうひとつは、アメリカはいずれこういう時期が来る、と言って、ルース・ベネディクトという文化人類学者、日本語も一言もできない彼女に研究させて、それで『天皇制の意義』とか、そういうものについて、『まず、十分の知識を持て』と。つまり、敵を知っていたわけですね。あの時、アメリカは敵のことをよく勉強していた。

 その結果、答えとしてはね、『将来の日本の政体は自由に表明された日本国民の意思による』という返事をしてきて、それで、和平派は『これでいい』と。なぜなら、天皇と国民との関係は『敬愛』にもとづく関係だから、これでいい、ということで、最後のご聖断で、戦争が終わることができた。

 つまり、今、一刻も早く止めるためには、やっぱり何といっても、アメリカがプーチンをもっとよく知らなくちゃいけないんですよね。プーチンのことをよくわかった上で、どこで手が打てるか。これはアメリカしかできない。なぜかって、もう代理戦争だということですから。

 それで、日本はそのことはアメリカに言えるんだ。言えるんだと思うんですね。それは説得力があるの。なぜかと言うと、1945年に、本当に日本は、それで救われているから。

 だからやっぱり、結局伊勢崎さんが言われた、僕は『対話』だと思うんですよ。しかし、『対話』ってのは、やっぱり国の命運をかけて相手を理解するってところに踏み込まなかったら、本当の『対話』にならない。

 で、そういうことで、岸田さんがそういうやるかね? と。わかりません。

 わからないけども、非常に大きな可能性を、僕は、日本は持っていると思います」。

 なお、東郷氏の上記発言の内容については、東郷氏の著書『プーチンvs.バイデン――ウクライナ戦争の危機 手遅れになる前に』(ケイアンドケイプレス、2022年10月)の第四章「失われた停戦のチャンス」で、より詳しく論じられている。

 第二部では、衆議院議員の阿部知子氏(立憲民主党)、元『世界』編集長でジャーナリストの岡本厚氏、衆議院議員の櫛渕万里氏(れいわ新選組)、市民連合めぐろ・せたがや共同代表の鈴木国夫氏、サステナ代表のマエキタミヤコ氏らが加わり、討議が行われた。

 登壇者の報告や、討議の様子など、シンポジウムの詳細については、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。

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