ロシア・ラブロフ外相インタビュー(第3回)バイデン政権は「民主主義サミット」開催で「脱国連」の動きを加速! ウクライナの停戦提案を米英が後退させた! ウクライナ代表団はゼレンスキーにロシア側提案を見せなかった! 2022.8.23

記事公開日:2022.8.23 テキスト
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(文・IWJ編集部 文責・岩上安身 2022年8月23日時点で加筆・アップ)

 ロシア外務省が2022年4月25日(日本時間26日)に、国営テレビ『チャンネル・ワン』の番組『ビッグゲーム』で放送されたセルゲイ・ラブロフ外相へのインタビューを、テキストにしてホームページに掲載した。

 このインタビューで、ラブロフ外相が、「第三次世界大戦」「核戦争」の危機について語ったことだけは、日本も含めた西側メディアでもセンセーショナルに取り上げられた。

 しかし、IWJが独自にこのインタビュー全文を仮訳してみたところ、西側メディアが一切報じていない、米国やNATO、ウクライナにとって不都合な真実が、数多く指摘されていることがわかった。

 もちろん、ロシア国営テレビによるロシア外務大臣へのインタビューであるから、ロシア国民に向けてウクライナ侵攻を正当化するためのプロパガンダの側面があることは否定できない。

 しかし、インタビューで語られたラブロフ外相の言葉の中には、歴史的な奥行きと視野の広さがあり、新たな知見も得られる。ロシアを「敵視」するならば、なおのこと、「敵」の思考を知らなければならない。

 既にお届けしている第1回と、第2回では、バイデン政権との間で行われてきた戦略兵器削減条約の延長に関する話し合いを、米国側が放棄したことや、米国の単独覇権主義、米国だけは自分達の「ルール」のもと、国際法や国連に拘束されず何をしても許されるという「例外的な国家」観を有していることを、ラブロフ外相が批判している。

 第3回の今回は、まず、米国やNATOの主張する「民主主義」が、搾取のためのご都合主義に過ぎないことがラブロフ外相によって指摘される。

 ラブロフ外相は、国連が「民主主義国家」にも「権威主義的な国」にも、国家の持つ主権的平等に差別を設けていないことを指摘している。そして、国連安保理での常任5か国の拒否権について、「拒否権がなければ国連は国際連盟と同じ、消滅の運命にあった」と述べ、拒否権を切り下げて、大国が脅迫や強制によって多数を得ることを「危険な傾向」だと批判している。

 また、バイデン大統領が「民主主義サミット」を通して、「反国連」組織を作ろうとしているなど、西側は国連に代わる様々な組織を「増殖」していると指摘。しかも「民主主義サミット」招待国には、民主主義的でないとされてきた国々が含まれ、彼らを都合よく米国が取り込み、利用しようとしているというのである。

 一方、ウクライナとの交渉についてラブロフ外相は、2022年3月29日にトルコのイスタンブールで行われた対面での停戦交渉の舞台裏を明かした。

 この中でラブロフ外相は、停戦交渉にのぞんだウクライナ側代表の交渉姿勢から、米英が紛争を長引かせようとしていることを見て取る。

 さらにウクライナ側代表団が、ゼレンスキー大統領にロシア側の提案を見せていなかったことが明らかにされる。

 詳しくは、記事本文を御覧いただきたい!

▲インタビューに答えるセルゲイ・ラブロフ外相(右)(ロシア外務省のホームページから)、Серге́й Ви́кторович Лавро́в

記事目次

国連は「民主主義国家」も「権威主義的な国」も国家主権の平等が原則!

 以下、インタビュー仮訳第2回からの続きである。

インタビュアー「あなたのおっしゃったこと(第2回で民主党も共和党も米国が『例外的な国家』という言葉を使っているという指摘)は、ワシントン政権でも否定されないと思います。彼らはそれを、もう少し違う言い方をするでしょうが。彼らはこう尋ねるでしょう。『外務大臣、権威主義的な国も民主主義的な国と同じ権利を持つべきだと真剣に主張しないのですか?』」

ラブロフ外相「私はそうします」

インタビュアー「あなたがそうするので(そして彼らはこれを受け入れられないと思うので)、これはモスクワとワシントンの間の主要な概念の違いの一つです。NATOは厳密には『防衛同盟』であり、ロシアは何も恐れることはないと言われていますね(中略)」

ラブロフ外相「よく理解しています」

インタビュアー「NATOという『民主主義国家の同盟』に対して、ある国が間違った行動を取り始めた場合、その国の行動によっては、不愉快な結果になる可能性があります。(中略)ウクライナをめぐる危機はどうでしょうか。

 ウクライナでの紛争が深刻化し、ロシアと米国を中心とするNATOとの間に大きな立場の相違と相互不信がある中で、今日のウクライナの平和的解決の交渉の見通しはあるのでしょうか」

ラブロフ外相「米国は、欠点のない民主主義国家であると自負する他のすべての国々と同様に、国家の主権的平等を主要原則とする国連憲章に署名し、批准しています。

 民主主義国家はより多くの権利を持ち、独裁国家、独裁者、君主制国家はより少ない権利を持つべきだとは言っていません。国連加盟国が持つ権利に区別があるとは言っていません」

▲1945年、米、英、ソ連、中華民国が招集し、50か国が参加した「サンフランシスコ会議」で国際連合憲章が採択され、国際連合設立を決定した。画像は同会議で演説するハリー S. トルーマン米大統領(1945年6月26日)。(Wikipedia)、President Harry S. Truman in United Nations conference

安保理の「拒否権」のおかげで、国連は消滅を免れた! ところが西側は今、拒否権を切り下げようとしている!

ラブロフ外相「安保理がありますね。ちょっと特殊な条文です。

 ルーズベルトがなぜ、拒否権を持つ5か国の常任理事国からなる安全保障理事会にこだわったか。それは国連が国際連盟のような運命を繰り返さないようにするためです。もし、ルーズベルトが始めた制度がなかったら、国連は国際連盟と同じように、とっくに忘却の彼方へ消えていたかもしれません。

▲国際連合安全保障理事会の、ウクライナの平和と安全の維持に関する会合(2022年7月29日、UN Photo/Loey Felipe、Security Council meeting on the maintenance of peace and security of Ukraine

▲国際連盟は1920年発足、1946年解散。第一次世界大戦の反省のもとに生まれたが、第二次大戦の勃発を防げなかった。写真は国際連盟本部が置かれたパレ・デ・ナシオン(現国際連合ジュネーヴ事務局)。(Wikipedia、Yann Forget、Palais des nations

 大国がその特権を行使し、自分たちの間で交渉することができないとき、良いことは何も生まれません。拒否権によって、少なくとも何年もの間、合意を得ることができました。

 今、米国をはじめとする西側諸国は、拒否権を切り下げようとしています。彼らは、安保理の特権を、国連総会に移したいと考えています。そこで彼らは、『腕ずく』、脅迫、代表団の銀行口座や子どもたちの教育機関に関わる脅迫に至るまで、強制的に、無理やり達成した多数派を獲得することができます。

 これは危険な傾向です。だからこそ、5つの拒否権を持つ安保理は、国際法の『最後の砦』なのです。それ以外のものはすべてが置き換えられています」

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