「『ロシアとどうやって停戦していくか、一日でも早く休戦できるか』ということを考えろと、ゼレンスキーに言いたい」~6.4 シンポジウム 平和を求め軍拡を許さない女たちの会「安全保障のジレンマ」 2023.6.4

記事公開日:2023.6.9取材地: テキスト動画
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(取材、文・浜本信貴、六反田千恵、文責・岩上安身)

 2023年6月4日午後1時30分より、専修大学神田キャンパス7号館にて、シンポジウム「平和を求め軍拡を許さない女たちの会『安全保障のジレンマ』」が開催された。

 シンポジウムでは、東京大学名誉教授・千葉大学国際高等研究基幹特任教授の藤原帰一氏が、「安全保障のジレンマ」と題した基調講演を行った。

 この講演を受け、「平和を求め軍拡を許さない女たちの会」の田中優子氏(法政大学・前総長)、上野千鶴子氏(東京大名誉教授)、奥谷禮子氏(ザ・アール創業者)、望月衣塑子氏(東京新聞記者)が、藤原氏を加えてディスカッションを行った。

 藤原氏の講演のタイトルとなっている「安全保障のジレンマ(Security dilemma)」とは、「軍備増強や同盟締結など、自国の安全を高めようと意図した国家の行動が、別の国家に類似の措置をうながし、実際には双方とも衝突を欲していないにもかかわらず、結果的に衝突につながる緊張の増加を生み出してしまう状況」を指す概念である。

 藤原氏は、先の2度の世界大戦、そして、現在進行形のウクライナ紛争などを例にあげて、この概念についての解説を行った。ただ、その内容たるや、アカデミックな装い、紳士然としたふるまいとは裏腹に、米国の「代理戦争」を正当化するプロパガンダを忠実になぞったものだった。

 ディスカッションでは、「平和」、「軍拡」に関連する様々なテーマが俎上にあがる中、「マスメディアへの不信」もその一つとなった。田中優子氏からは「マスコミから情報を取っていても、しょうがないかもしれない」との発言もあった。

 また、奥谷禮子氏からは次のような発言もあった。

 「私、いつもテレビに出て思うんですが、最近、防衛省の研究所の輩が、やたらにもう、毎日、何か『戦争を起こさないと損するよ』みたいな評論ばっかり。

 ましてや、ロシアとウクライナの戦争も、他の国の戦争で、何か、それをどうのこうの、ここで、何人死んでどうのこうのとかって言ってること自体が、何をこの人たちは考えているのかなと。

 要するに、身近で、日本でこういう戦争も起こりますよ、起こりますよ、っていうことを、もう洗脳を毎日、国民に対して、洗脳教育しているのかなと思うぐらい。(中略)

 そういうこと自体も、マスコミ自体が、もう、ちょっと頭がおかしくなってんのかなっていう感じがするんですね。

 毎日、毎日、テレビのモーニングショーで、主婦たちですよ、朝起きて、ご飯を作っているような主婦たちに対して、いつ戦争が来るかもしれません、戦争が来るかもしれませんよって。

 そのために、税金が上がってもしょうがないですよ、消費税上げてもしょうがないでしょう、という洗脳教育を、毎日やらされているという、この恐怖感。

 これ、やっぱり皆さん、持たないといけないと思いますよ」。

 「ウクライナ紛争」については、参加者から次のような質問もあった。

望月氏「(前略)ウクライナに関してですね、『ウクライナの人々が抵抗しているんだから、支持すべきだ』、『ロシアに組み込まれたら、地域では侵略に反対する人々が皆、ひどい目にあう』など、いろいろな主張があるのですが、これにどのように反論することができるのか? もしかしたら、この方は、『休戦協定』をやるべきではないか、とかですね、そういった思いもあるのかなあと。

 このまま、日本も武器支援、殺傷能力はないものは出すけれども、いわゆる防衛装備品の幾つかを提供するとか、欧米とはまた違った装備品の提供ということをやっていますけれども、こういったことでですね、休戦することが今一番いいんじゃないかというような声も、ちょっと、一方では出ていますけれども、このあたり、藤原さん、お願いします」。

藤原氏「ウクライナに対する侵略は、『戦争として認めることができる戦争』ではないです。明確な『侵略戦争』です。

 これは、『国家の防衛を脅かした』というだけじゃなくて、虐殺を展開してるんですね。この戦争の一般市民に対する殺戮は大変な規模に上ります。『あっちもこうじゃないか』という議論は立てようがあるんですね。

 アメリカの戦争では、実に多くの方が空爆によって亡くなられました。アフガニスタンでもイラクでもそうですし、その意味では、ベトナムでもそうです。空軍力に依存する戦争をアメリカが展開したことが、一般市民の殺傷とつながっていたんですね。

 しかしながら、ウクライナはさらにひどいです。一般市民の居住地をミサイルで破壊することをしている。これは誤爆ではなくて、実際に、それを狙って行った攻撃です。

 さあ、ここからが問題です。これが『侵略戦争』であるということは、侵略された側が戦うことは、『正しい戦争』そのものなんですよ。

 これは、国連、国際法から見てもそうなりますし、一般に、『自衛権の行使』としても、そうなるのですが、ただ、自衛権の行使として正当であり、正しい戦争であるとしても、戦争が、さらに大きな『エスカレーション』を起こした場合には、正しくても、それによって生まれる犠牲が、その正義を裏切る結果になることが生まれます。

 で、現在、まさに、そういう戦争が展開している最中なんですね。その点で、ウクライナの戦争について、これはウクライナは正しくないとか、撤退すべきだ、とかいうことは、とてもじゃないけど言えたものではない。

 しかしながら、『エスカレーション』は、絶対に避けなければいけないですし、(中略)、これが中国に対する戦争につながっているんですね。訳のわからないつながりができちゃったんです。

 ですから、一つの戦争が起こった時には、ほかの戦争に飛び火する危険があるということを考えておかなければいけない。

 一言申し上げますが、『軍拡』という言葉を使っていますが、私はこの言葉に賛成なんですけど、一般に、日本で使われている言葉は『防衛』であり、『防衛費』であると思います。防衛する側が、ということが、政策の正当化につながっているわけですね。

 犠牲者が最善の戦略といえば、とんでもない言い方になるんですけれども、自分たちが『犠牲にされる』側なんだからと考えたときには、どんな政策でも正当化ができるんです。

 ここで、戦争における『正義』の問題と並んだ、まったく別の問題があります。それは、戦争が正当かどうかということと、戦争によって生まれる犠牲が、どれほどの規模に上るのかという課題です。それを考えた場合には、ウクライナの抵抗は正当であると同時に、これが膨大な犠牲者を生み出す戦争になる可能性があることを認識しなければいけない。

 曖昧な言い方だということを承知していますけれども、私から申し上げることができるのは、それくらいです」。

 藤原氏は、何が言いたかったのか。

1. ウクライナ紛争は、ロシアによるウクライナに対する明確な『侵略戦争』である。
2. ウクライナは戦うのが正しい。正しい戦争である。
3. ウクライナに戦うなとは言えない。
4. 正しい戦争であっても、犠牲は出る。
5. 戦争には正義と犠牲の両面があることを理解すべき。
6. ウクライナでの一般民間人の被害は、アフガニスタン・イラクよりもはるかに酷い。
7. ウクライナ紛争の『エスカレーション』は絶対に避けなければいけない。

 まず「1.ウクライナ紛争はウクライナに対する明確な『侵略戦争』である」とは、この紛争の歴史と原因を直視しようとしない反知性主義的な断定であり、「ロシア=悪、ウクライナ=善」という単純化された米国主導のプロパガンダの劣化コピーに他ならない。

 ウクライナ紛争に先立つこと8年前の2014年から、ウクライナ政府は、ウクライナ国内のマイノリティーであるロシア語話者への差別と弾圧に抗して、自治を求める声をあげた東部のドンバス地方2州に対して、武力攻撃を加え続けてきた。ウクライナ国内の内戦である、このドンバス紛争の延長線上に、ウクライナ紛争は位置づけられる。ドンバス紛争に言及せずに、2022年2月24日の、ロシアによる侵攻から、戦争が突然始まったかのように語るのは、ペテンに等しい。

 このような内戦が起きたのは、ひとえにウクライナ政府が、自国内に居住するロシア語話者(ウクライナ国籍のウクライナ国民だが、ロシア語でコミュニケーションする人々)に対して、ロシア語の教育や文化の否定や、ウクライナ語話者でないと公務員になれない等、差別的政策を次々と打ち出した。その差別政策がエスカレートしてゆくと、ロシア系住民に対して、ウクライナ民族主義者やネオナチが路上で無差別に暴力をふるい、そうした暴力を警察は取り締まることなく、放置することが日常となった。

 これはまさに民族浄化というべきものであり、その結果、ロシア語話者の多い東部の2州では、自警団組織ができて、自治を求め、さらには砲弾まで落としてくるウクライナ政府軍と、小銃を持って対峙することになったのである。

 2022年にロシア軍が侵攻するまで、8年間も、ウクライナはこうした国内の自国民に対して武力攻撃を行なってきた。こうした武力攻撃やマイノリティの虐殺は、明確に国際法違反であり、国際法にもとづかなくても道徳的に許されない罪悪である。

 こうしたウクライナ政府の犯罪を、西側の政府もマスメディアも藤原氏のような知識人も、片目をつぶって見逃し、放置し続けた。その責任も問われるべきである。いや、東大名誉教授などというおごそかなタイトルを掲げる「知識人」なら、人から問われる前に、自ら問うべきであろう。

 この紛争が、ウクライナの背中を米国が後押ししている「代理戦争」であることが誰の目にも明らかになってもなお、ロシアの侵攻だけが悪であると断じる藤原氏の、公正さと知的誠実さを極端に欠いた姿勢は、「知識人」の名に価しないものであろう。

 米国の国際政治学者ジョン・ミアシャイマー教授は、「2006年4月にNATOがウクライナとジョージアをNATOの一員とすると決めたことが、今日のウクライナ紛争の主因」だと指摘している。

 ミアシャイマー教授は、米国がウクライナを武装させるなど関与を深めて「ウクライナが事実上NATOの一員となりつつあったこと」が、ロシアに存亡の危機をかけた脅威を与えたことが、今回のウクライナ紛争の大きな原因だと指摘している。

 藤原氏自身も「曖昧な言い方」だと言っているが、2.から5.を要約すると、「ウクライナは正しい戦争をしているのだから、その犠牲に耐えられるだけ戦い続ければいい(撤退しろとはとても言えない)」ということになるのだろう。

 このシンポジウムには「平和を求め軍拡を許さない」という趣旨が掲げられているが、藤原氏はむしろ「正義という名の戦争」と「犠牲」を求めている。藤原氏には犠牲になる人々のために戦争を終わらせるべきだという視点はない。こうした藤原氏の態度は、米政府高官の声明のテンプレそのままである。

 ブリンケン米国務長官はじめ、米政府高官は「ウクライナに戦うなとは言えない」「ウクライナ自身が決めること」といった趣旨の発言を繰り返しており、米政府のステートメントのテンプレとなっている。

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■全編動画

  • 日時 2023年6月4日(日)13:30~
  • 場所 専修大学神田キャンパス7号館(東京都千代田区)
  • 主催 平和を求め軍拡を許さない女たちの会(詳細

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