「権利の主体である『当事者になる』ことは、大切です」──。
2013年9月15日、京都市中京区のウィングス京都で、高齢社会をよくする女性の会・京都による9月フォーラムが開かれ、2011年に『ケアの社会学 ー当事者主権の福祉社会へ』(太田出版)を上梓した上野千鶴子氏が、自著について講演した。上野氏は、高齢化社会において、要介護状態になる高齢者や介護者が、当事者としての権利を自覚し、声を上げる大切さについて語った。
(IWJテキストスタッフ・山之内/奥松)
「権利の主体である『当事者になる』ことは、大切です」──。
2013年9月15日、京都市中京区のウィングス京都で、高齢社会をよくする女性の会・京都による9月フォーラムが開かれ、2011年に『ケアの社会学 ー当事者主権の福祉社会へ』(太田出版)を上梓した上野千鶴子氏が、自著について講演した。上野氏は、高齢化社会において、要介護状態になる高齢者や介護者が、当事者としての権利を自覚し、声を上げる大切さについて語った。
記事目次
■ハイライト
まず上野氏は、ケアとは何かを考える上で、従来の多くのケア論でなされてきた「べき」論ではなく、制度と現状のギャップを考える社会学的アプローチで、ケア論に取り組んできた経緯を説明した。
次に、ケアについての人権的アプローチとして、4つの「ケアの権利」を解説し、「相互行為であるケアには、与え手と受け手の間に絶対的な非対称性がある。ケアの受け手がケア関係から退出することができない場合、ケアは良い面ばかりではないという、両義性を忘れてはならない」とした。
続いて、障がい者自立支援運動のリーダーである中西正司氏と上野氏が出会い、ケア関係から退出することができない人をケアの「当事者」と呼ぶ、『当事者主権』(中西氏と上野氏の共著。岩波新書 2003年)が生まれた経緯を振り返りながら、上野氏は「この本で述べた『当事者運動』とは、社会的弱者の自己定義権の要求であり、自分自身の過去40年の女性運動も同様の主張であった」と話した。
さらに、「この当事者主権の『主権』とは、自分のことは自分で決めることができ、他人に譲渡することができない至高の権利である」と述べ、この権利を障がい者が自覚したことで自立概念が180度変わり、「人に助けてもらっても、自分がしたいことをする権利がある、という自覚が社会化した」と解説した。
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