【IWJ号外】【特別企画】南アフリカ申請書翻訳プロジェクト(第1回)序、第1章、第2章 2024.10.22

記事公開日:2024.10.22 テキスト
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(文・IWJ編集部)

特集 中東

 シリル・ラマポーザ大統領が率いる南アフリカ共和国が、2023年12月29日に、イスラエルのパレスチナ人に対するジェノサイドを告発する文書(申請書)を、国際司法裁判所(ICJ)に提出しました。

 南アフリカはBRICSの一角を成すとともに、入植してきた欧州(主にオランダ)の白人による黒人差別のアパルトヘイトに苦しみ、そこから肌の色を問わず、平等な権利を認めるようになり、「更生」し、立ち直った国です。

 そうした歴史をもつ南アフリカが、国際舞台に、パレスチナの地へ入植してきたシオニスト・イスラエルによる先住民のパレスチナ人に対する差別、暴力、虐殺、土地の略奪などを犯罪として指弾する、堂々たる文書を出すことで、世界を不当に支配してきた欧米諸国に対して、植民地支配を受け、侮蔑的に扱われてきた「グローバル・サウス」の1国として、その存在感を示しました。

 『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』(*)の著者であり、ウクライナ紛争でも、西側メディアのプロパガンダとは離れて、現実主義的な観点から事実を語ってきた、シカゴ大学のジョン・J・ミアシャイマー教授は、南アフリカが提出したこの告発文書を、「真に重要な文書」として紹介しました。

(*)ジョン・J・ミアシャイマー、スティーヴン・M・ウォルト(2007)『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』講談社、副島隆彦訳

 ミアシャイマー教授は、「イスラエルが行っているジェノサイドに関するすべての事実を1ヶ所に集め、イスラエルによるジェノサイドについて、包括的かつ徹底的に裏付けされた記述を提供している点」が非常に重要だと、指摘しました。

 詳しくは、IWJサイトにある仮訳・粗訳をお読みください。

 IWJは、翻訳ボランティアを募り、応募してくださった3名の翻訳ボランティアの皆さまに、南アフリカ申請書の全文仮訳を進めていただきました。

額田康子様:序文、3章(A)、3章(C-1、2)、4章、5章、6章(A、B)
高木康夫様:2章、3章(B-1)、3章(C-3、4、5、6、7、8)
藤原かすみ様:3章(B-2、3)、3章(D、E)、6章(C、D、E)、7章、8章
(ご応募順)

 みなさま、お忙しい中、この翻訳プロジェクトに精力的に取り組んでくださいました。ここに心より感謝の意を表します。ありがとうございました!

 注も含めると、全体で20万字を超える和文になりました。これから、10回前後に分けて、お届けします。(その1)では、序章、第1章、第2章をご紹介します。

 南アフリカの申請書が出されてから、現在に至るまでの経緯を大まかにまとめましたので、ご興味のある方はお読みください。お急ぎの方は、翻訳部分に進んでください。


■南アフリカ申請書翻訳プロジェクト(その1)序、第1章、第2章


国際司法裁判所(ICJ)は南アフリカの申請書をうけ、審理を開催

 国際司法裁判所(ICJ)は、2024年1月11日、12日と、オランダのハーグで、南アフリカの提訴を受けて審理を行いました。11日に、南アフリカ側の弁護士達が「イスラエルがジェノサイドを行っている」との弁論を展開し、それを受けて12日、イスラエル側の弁護士による反対弁論が行われました。

 ピューリッツァー賞を受賞し、『ニューヨーク・タイムズ』紙の海外特派員を15年間務めたジャーナリストであるクリス・ヘッジズ氏は、この審理をレポートし、南アフリカが提出した告発文書は、「容易には反論しがたい」と評価しつつも、たとえICJがイスラエルのジェノサイドを認定する判決を出したとしても、その判決にもとづいて行うことのできる措置は、「国連安全保障理事会の執行に依存しており、米国を考えれば、その判決は無意味なものになる」として、判決を先取りして、イスラエルを擁護し続ける米国の姿勢を強く批判しました。詳しくは、IWJが全文仮訳・粗訳した、クリス・ヘッジズ氏の記事をお読みください。

国際司法裁判所(ICJ)は南アフリカの要請をうけ、イスラエルに対して暫定措置命令を発出

 南アフリカが訴えた「イスラエルがジェノサイド条約違反を行っているか否か」の判決には数年がかかるとも言われています。パレスチナでは、連日、多数の罪なきパレスチナ人が殺され、あるいは餓死しています。南アフリカは、イスラエルのジェノサイドを少しでも早く阻むための暫定措置も要請していました。

 国際司法裁判所(ICJ)は、1月26日(現地時間)、南アフリカの要請を踏まえ、イスラエルに対し、「ガザ地区のパレスチナ人との関係において、ジェノサイド及びその扇動を防ぐための措置をとること」、「緊急に必要とされる基本的サービス及び人道支援を供給することを可能とする措置をとること」等を命じる6件の暫定措置命令を発出しました。

 国際司法裁判所(ICJ)が暫定措置命令を出したことについて、ミアシャイマー教授は、「このICJの命令で本当に重要なのは、イスラエルによるジェノサイドについて書かれていることである」と述べ、ICJが「1)イスラエルがジェノサイドを犯す意図を持っているという、確からしい証拠があること。2)イスラエルがジェノサイドを犯しているという確からしい証拠があること」を、明記したことを高く評価しました。

 6件の暫定措置命令が、4件は15票対2票、6件は16票対1票で支持され、米国も6件すべてに賛成し、イスラエルですら2件に賛成しました。

 ミアシャイマー教授は、「イスラエルにとって昨日(1月26日)が、暗黒の日であったことは明らかである。ICJの命令は、イスラエルの評判に深く永続的な汚点を残すだろうから」と、述べています。詳しくは、IWJが全文仮訳・粗訳を試みた、以下の記事をお読みください。

国際司法裁判所(ICJ)の暫定措置命令を無視し続けるイスラエル、イスラエルを擁護し続ける米国のもとでジェノサイドが続く!

 クリス・ヘッジズ氏は1月13日の時点で、2023年10月7日以来、「1万人以上の子供を含む2万3700人以上のパレスチナ人が、ガザで殺害された。数千人のパレスチナ人が行方不明で、瓦礫の下に埋もれているとみられている」と書きました。

 それから約半年後、『アルジャジーラ』のライブトラッカーによると、7月18日時点で、ガザで殺害された人々は1万5000人以上の子供を含む3万8848人、行方不明者は1万人にまで増えました。行方不明者は、瓦礫の下敷きになっていると思われ、生存の可能性は絶望的なまでに低く、合計すると、約5万人が生命を奪われているのです。

 国際司法裁判所(ICJ)の暫定措置命令が発出された後も、犠牲者は増え、約半年で1万5000人以上の命が失われました。ICJは国連機関であり、イスラエルは国連加盟国なので、ICJの命令には拘束力がありますが、現実的には、命令の履行を強制するメカニズムがありません。国内法のように、強制執行の仕組みが、穴だらけの国際法には備わってないのです。

 ICJは、5月24日、イスラエルに対し、ガザ地区での攻撃をただちに停止するよう命じました。

 ICJのナワフ・サラム裁判長は、『イスラエルはラファ地区において軍事侵攻と、パレスチナ人の『物理的破壊』をもたらし得る『その他のあらゆる行動』を『ただちに停止しなくてはならない』と命令した。ひとつの集団の『物理的破壊』とは、国際法上『ジェノサイド』を意味する」と述べています。

 しかし、この5月24日の命令以降も、イスラエルは何ひとつ態度を改めていません。イスラエルはどれだけ国際的な非難を受けても、パレスチナに対する残虐行為を続けています。イスラエルへの最大の支援国であり、国連安保理で拒否権を持つ米国が徹底的に擁護するのですから、ICJの暫定措置命令などいくら無視し続けても大丈夫、問題ない、と言わんばかりです。

2月、米国で、現役の空軍兵士が、イスラエルが行うジェノサイドに抗議の焼身自殺、そして4月から5月にかけて、コロンビア大学はじめ全米の大学に、パレスチナを支援する抗議運動が野火のように拡大!

 2月25日、現役の米空軍兵士である、アーロン・ブッシュネル氏が、ガザのジェノサイドに加担させられたことに抗議し、ワシントンDCのイスラエル大使館の前で、「パレスチナを解放せよ!」と叫びながら焼身自殺しました。

 ブッシュネル氏は、自らの焼身自殺をライブ・ストリーミングし、次のような言葉を残しています。

 「私は現役の米空軍兵士だ。私はもうこのジェノサイドに加担するつもりはない」。

  • はじめに~現役の米空軍兵士が「私はもうこのジェノサイドに加担するつもりはない」と叫びながら、在米イスラエル大使館の前で、抗議の焼身自殺! 米国よ! シオニスト・イスラエルよ! 世界よ!「パレスチナを解放せよ!」という最期の叫びを聞け! 西側メディアは「精神疾患」か「暴力」だと非難し、卑劣なスピンコントロールを展開! 彼の抗議内容の報道をも抑制する中、『ニューヨーク・ポスト』が、ブッシュネル氏は「ガザの地下にあるハマスのトンネルで、米軍が戦っている、殺人に参加しているのは米兵だ」「パレスチナで起こっているジェノサイドに米軍が関与している」と述べていたとする証言をスクープ!
    (日刊IWJガイド、2024年3月6日)
    会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20240306#idx-1
    非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/53273#idx-1

 クリス・ヘッジズ氏は、ブッシュネル氏の焼身自殺は「神聖なる暴力」であり、強力な政治的メッセージになる」だろう、と予告しました。

 ヘッジズ氏の予告が的中したのか、4月から5月にかけて、コロンビア大学をはじめとする米国の多くの大学で、野火のように、イスラエルが行っているジェノサイドに抗議し、パレスチナに連帯を示す運動が広がりました。

 『日刊IWJガイド』も、2024年5月6日(その1)、2024年5月7日(その2)、2024年5月8日(その3、4)号、2024年5月9日(その5)と、5回にわたって、米大学で広がるイスラエルへの抗議デモについてお知らせしました。

  • はじめに~米大学で広がるイスラエルへの抗議デモで、逮捕者が2100人超! 背景には、高額な学費と多額の寄付を求める経済徴兵制と、その資金をイスラエル支援の軍事産業やイスラエルに直接投資する米大学のシステムへの怒りが! 米教育省によると10年間のイスラエルへの投資で530億円の利益! イスラエルのネタニヤフ首相は「休戦合意の有無に関わらずラファに侵攻する」と表明! もはやイスラエルを止めるには軍事力しかないのでは!?(日刊IWJガイド、2024年5月6日)
    会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20240506#idx-1
    非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/53472#idx-1
  • <米国内の大学で親パレスチナ・反ジェノサイド学生運動が拡大(その2)>【4月28日、1968年当時、コロンビア大学でベトナム戦争反対デモのリーダーの一人だった年配の女性が、キャンパス内で野営する学生達の前で演説する動画が拡散される!「進み続けなさい、進み続けなさい、私達が進み続ければ、彼らは譲歩せざるを得なくなる」!】大統領選挙の年、1968年にコロンビア大学で起きたベトナム反戦の学生運動と、現在起きている親パレスチナ・シオニスト・イスラエルによるジェノサイド反対を核とした学生運動は、~(日刊IWJガイド、2024年5月7日)
    会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20240507#idx-5
    非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/53475#idx-5
  • <米国内の大学で親パレスチナ、シオニスト・イスラエルによるジェノサイド反対学生運動が拡大(その3)>【4月27日、ニューヨーク市立大学の抗議活動の学生主催者が大学当局に親イスラエル団体やユダヤ人団体などとの関係を明確にせよ、と求める!「学生達は、大学側が、イスラエルによる植民地化と(大学運営者の)関係について責任を取るように要求し始めている」! プリンストン大学では、大学当局と警察が学生達をキャンパスから排除! クリス・ヘッジズ氏「大量逮捕、停学、立ち退き、爆発に直面している全国の大学生は、ガザでの大量虐殺を止めるための最後の、そして最良の希望~】
    (日刊IWJガイド、2024年5月8日)
    会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20240508#idx-6
    非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/53477#idx-6
  • <米国内の大学で親パレスチナ、シオニスト・イスラエルによるジェノサイド反対学生運動が拡大(その4)>【4月27日、武蔵野美術大学有志が渋谷ハチ公前広場で「#NoTechForGenocide ジェノサイドに技術を売るな!デモとダイ・イン」による抗議活動! 日本でも親パレスチナ、シオニスト・イスラエルによるジェノサイド反対運動が拡大か!?】(日刊IWJガイド、2024年5月8日)
    会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20240508#idx-7
    非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/53477#idx-7
  • <米国内の大学で親パレスチナ、シオニスト・イスラエルによるジェノサイド反対学生運動が拡大(その5)>【5月2日、コロンビア大学ハミルトン・ホールで警察が発砲!? ニューヨーク市警は地元メディアの指摘を受けるまで発砲事件を隠蔽! UCLAでは、数百人の警察がキャンプを強制撤去し、209人の学生を逮捕! バイデン大統領は、「我々は人々を黙らせたり、反対意見を鎮圧したりする権威主義国家ではない」が、「我々は無法国家ではない、秩序が勝たなければならない」と、一連の親パレスチナデモに初声明!~】(日刊IWJガイド、2024年5月9日)
    会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20240509#idx-5
    非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/53481#idx-5

クリス・ヘッジズ氏講演「歴史は、イスラエルを、このジェノサイドの罪で裁くことでしょう。しかし、歴史は、私達をも裁くでしょう」

 クリス・ヘッジズ氏は、6月13日、総選挙中にイスラエルによるジェノサイドの停止を求める英国のクレイグ・マレー候補の選挙キャンペーンで、イスラエルによるガザのジェノサイドについて講演をしました。

 講演は「ネロの客人」という題名で、記事化されており、IWJはその全文を仮訳・粗訳しています。

ヘッジズ氏「イスラエルは永続的な戦争という精神病に蝕まれています。イスラエルは、アパルトヘイト(人種隔離政策)時代の南アフリカ共和国よりも、残虐な占領を正当化するために、被害者意識を神聖化しています。そのために、道徳的に破綻しているのです。(中略)

 その庇護者である米国は、新しい世代が権力を握るにつれて、イスラエルから距離を置くようになるでしょう」。

 ヘッジズ氏は、イスラエルが行っているジェノサイドを古代ローマの皇帝ネロの残虐な行いになぞらえ、イスラエルの暴虐を止めない「我々」は、ネロの残虐を愉しんでいた「ネロの客人」と同じだ、と訴えました。

 反目しあうパレスチナ解放機構(PLO)とハマスが、4月23日、「国民的合意にもとづく」暫定統一政府を発足させることで合意しました。

 スペイン、アイルランド、ノルウェーの欧州3ヶ国は、5月28日、パレスチナ自治区を国家として正式に承認する、と表明しました。

 スペインのサンチェス首相は、7月11日、ワシントンで開催されたNATO創設75周年の首脳会議で、世界はパレスチナ人を苦しめる「このひどい人道的危機を止める」よう圧力をかける必要があると述べ、パレスチナ国家樹立に向けた国際平和会議の開催を求めました。

 あまりにも遅々として進まない停戦、パレスチナ国家樹立。しかし、傍観者となって諦めてしまうのではなく、これまで起こってきたこと、これから起こることをしっかりと見極めて、ささやかながらでも行動していく必要があります。

国際司法裁判所(ICJ)が「イスラエルの東エルサレムとヨルダン川西岸地区における存在は違法であり、終結しなければならない」との判決!

 国際司法裁判所(ICJ)は、7月19日、「1967年以来、占領されたパレスチナ領土」におけるイスラエルの56年間に及ぶ長い支配は「違法」であり、その領土での存在を「できるだけ早く」終わらせる義務があるとの判決を下しました。

 19日付『エレクトリック・インティファーダ』は、今回の「諮問意見」には、約60ヶ国が、「イスラエルの占領がパレスチナの人々の自決権を侵害し、イスラエルがヨルダン川西岸とガザでアパルトヘイトまたは体系的な人種差別を実践しているという立場を表明した」と報じ、国際的な理解と支持が拡大している、と分析しています。

 イスラエルは、ICJの判決には強制力はないとして、ジェノサイドと入植活動を続けています。しかし、イスラエルに対する国際的な世論は、イスラエルにとって、より厳しいものになりつつあります。詳しくは、『日刊IWJガイド』7月24日号、7月25日号を御覧ください。

  • 国際司法裁判所(ICJ)が「イスラエルの東エルサレムとヨルダン川西岸地区における存在は違法であり、終結しなければならない」との諮問意見を認める判決! イスラエル軍はすでにガザ地区を26%支配下に! ICJの判決には実行力がなく、「イスラエルや他の国連加盟国に直接的な法的影響はない」としても、ガザでジェノサイドを続け、パレスチナ人の追放と土地の略奪を進めるイスラエルに対する国際世論の圧力が高まる!(前編)(日刊IWJガイド、2024年7月24日)
    会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20240724#idx-5
    非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/53719#idx-5
  • 国際司法裁判所(ICJ)が「イスラエルの東エルサレムとヨルダン川西岸地区における存在は違法であり、終結しなければならない」との諮問意見を認める判決! イスラエル軍はすでにガザ地区を26%支配下に! ICJの判決には実行力がなく、「イスラエルや他の国連加盟国に直接的な法的影響はない」としても、ガザでジェノサイドを続け、パレスチナ人の追放と土地の略奪を進めるイスラエルに対する国際世論の圧力が高まる!(後編)(日刊IWJガイド、2024年7月25日)
    会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20240725#idx-5
    非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/53721#idx-5

南アフリカ申請書翻訳プロジェクト(第1回)序、第1章、第2章

訴訟手続開始申立書

 下に署名した者は[i]、南アフリカ共和国政府から正当なる委任を受け、国際司法裁判所登録官に対して、以下の通り申し立てを行う:

 国際司法裁判所規程第36条(1)および第40条ならびに国際司法裁判所規則第38条に従い、南アフリカ共和国(以下「南アフリカ」という)の名において、イスラエル国(以下「イスラエル」という)に対する訴訟手続開始申立書をここに提出する。同規程第41条に従い、本申立書には、緊迫した、かつ回復不能な損失から、人々の権利を擁護するため、当裁判所による暫定措置(仮保全措置)発令要請が含まれる。

I. 序論

1. 本申立書は、2023年10月7日にイスラエルで発生した襲撃事件をきっかけに、明瞭に国民的、人種的、民族的集団であるパレスチナ人民に対して、イスラエル政府および軍部が与えている威嚇行為、またイスラエル国政府および軍部が採用し、容認し、実行している行為に関するものである。南アフリカは、すべての当事者によるすべての国際法違反を無条件に非難する。そのなかには、ハマスおよびその他のパレスチナ武装集団がイスラエルその他の国籍の市民を直接の攻撃対象とし、人質に捕った行為も含まれる。

 しかしながら、それがいかに深刻なものであっても、たとえ残虐犯罪を伴う攻撃であっても、一国の領土に対する武力攻撃は、法律的にも倫理的にも、「ジェノサイド犯罪の防止および処罰に関する1948年条約」(以下「ジェノサイド条約」または「条約」という)違反を正当化したり[1]、その抗弁としたりすることはできない。

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