【IWJ号外】クリス・ヘッジズ氏「ガザのジェノサイドを何もしないで見ている我々は、ネロの暴虐を愉しんでいたネロの客人と同じ」! イスラエルとともに我々も歴史に裁かれる!!(前編) 2024.8.3

記事公開日:2024.8.3 テキスト
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(文・IWJ編集部)

特集 中東
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 IWJ代表の岩上安身です。

 これまでも、たびたび、IWJでご紹介してきた、ピューリッツアー賞を受賞したジャーナリストであり、米国長老派の牧師でもあるクリス・ヘッジズ氏が、イスラエルによるガザのジェノサイドを伝える報道で、「アラブ世界ジャーナリズム賞」を受賞しました。

 ヘッジズ氏は、エジプト・カイロでの授賞式を終えると、直ちに、総選挙中の英国に飛びました。ヘッジズ氏は、6月13日、ガザにおけるジェノサイドの停止を求める、クレイグ・マレー候補の選挙キャンペーンで、イスラエルによるガザのジェノサイドについて講演をしました。

 講演の文字起こしを手掛かりに、この号外で、クリス・ヘッジズ氏による、イスラエルによるガザのジェノサイド問題についての見解をお伝えしたいと思います。

 講演の題名は「ネロの客人」。「ネロ」は、古代ローマの残虐さと暴虐で知られた皇帝です。ヘッジズ氏は、イスラエルが行っているジェノサイドをネロの残虐な行いになぞらえ、イスラエルの暴虐を止めない「我々」は、ネロの残虐を愉しんでいた「ネロの客人」と同じだ、と訴えました。

 ネタニヤフ首相は7月24日、米国連邦議会で演説をし、ガザ停戦を拒否し、対イランを想定した中東NATO軍の設置を要請し、繰り返し、スタンディング・オベーションを受けました。

 先日の号外でお伝えしたように、ネタニヤフ首相が帰国すると、さっそくイスラエルは、7月30日にはレバノンの首都ベイルートを攻撃して、ヒズボラのフアド・シュクル司令官を殺害しました。

 翌7月31日に、マスード・ペゼシキアン新大統領の就任式に出席するために、イランの首都テヘランにいたハマスの政治部門トップのムジャヒド・イスマイル・ハニヤ氏を殺害しました。ハニヤ氏は、カタールを拠点として、イスラエルとの停戦交渉を担っていました。

 さらに8月1日、イスラエルは、ガザでハマス軍事部隊のモハメド・デイフ司令官を殺害した(3週間前の攻撃による)と発表しました。

 イスラエルは、ヒズボラとイランを挑発し、紛争のエスカレーションを目指しています。ヘッジズ氏がイスラエルを暴君ネロにたとえたように、米国の支持を確認したイスラエルの暴虐はとどまるところを知りません。

 ネタニヤフ首相は、ガザでの戦闘は終わりに近づいているなどと言っていますが、これはまったくの嘘でした。現在でも、ガザでは凄惨なジェノサイドが続いています。

 『日刊IWJガイド』でもお伝えしたとおり、米国主導の停戦交渉は、遅々として進まない一方、スペインのサンチェス首相は、7月9日から11日にかけてワシントンで開催されたNATO創設75周年の首脳会議で、世界はパレスチナ人を苦しめる「このひどい人道的危機を止める」よう圧力をかける必要があると述べ、パレスチナ国家樹立に向けた国際平和会議の開催を求めました。

 サンチェス首相は、5月にも、パレスチナ国家の承認が不可欠だと述べ、アイルランド、ノルウェーとともに、欧州3ヶ国でパレスチナ自治区を国家として正式に承認する、と表明していました。

 もはや、二国家解決は不可能だ、とする意見が多くなる中、国際社会が「二国家解決」を強くイスラエルに求めていくことは、我々が「ネロの客人」になってしまわないためのひとつの道ではないか、とも思われます。特に、米国一国だけでも、イスラエル擁護一色となると、米国さえ味方になり、支援を受けられれば、イスラエルは全世界を敵に回しても構わず、パレスチナ国家樹立は断固として認めない立場を貫くつもりです。

 したがって、米国内の世論に訴えてゆくことが肝要です。

 パレスチナ側も、反目しあうパレスチナ解放機構(PLO)とハマスが、今年4月23日、「国民的合意にもとづく」暫定統一政府を発足させることで合意しています。

 この合意について、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、「アッバス議長は和平ではなく、ハマスを選んだ」などと怒りをあらわにしたと、『AFP』は報じていました。

 このように、イスラエル側は「パレスチナ統一政府」に向けた動きに、猛反発しています。そして、さらに米国もまた、「和平実現に向けた努力を大きく妨げる可能性がある」などと警告しています。

 「パレスチナ人同士を分断して反目させあい、弱体化」させようと仕向ける米国とイスラエルの支配を覆し、「二国家解決」に向かうためには、「パレスチナ統一政府」の創設は、必要不可欠です。これまでも長く実現しなかった「パレスチナ統一政府」ですが、米国を含めた国際社会が「パレスチナ国家の承認」、「二国家解決」を、改めてイスラエルに求めていくことが必要であると思われます。

 『ロイター』は、23日付で、中国外務省が、北京で21日から23日にまで、ハマスやファタハなど複数の組織と会談を行い、23日、分断を終結させて、統一政府を発足させることで合意した、と発表しました。

 『ロイター』は「合意内容には新政府樹立の期限は明記されていない」ため、「今回の合意がどこまで実効性があるかは不明」と評価しています。しかし、2023年のサウジアラビアとイランの国交正常化が北京で発表されてから合意以降、中東における重要な外交的合意は北京で行われるようになっています。もはや、米国には、中東における紛争や対立を調停する能力がない、あるいはイスラエル以外の中東のイスラム教諸国を尊重する意志がない、ということを示しています。

 少なくとも、「パレスチナ統一政府」に向けて、米国の力が及ばないところで、中東が動き始めています。

 これまで、IWJでお伝えしてきた、クリス・ヘッジズ氏による、イスラエルによって行われているガザのジェノサイドについての関連記事は、以下の通りです。ぜひ、IWJ会員となって、全文をお読みください。

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ネロの客人
クリス・ヘッジズ

2024年6月16日
https://chrishedges.substack.com/p/neros-guests

 私(ヘッジズ)は(※6月13日に)、英国のブラックバーンで、国会議員選挙に立候補している友人クレイグ・マレー[iwj-1]の選挙イベントの一環として、講演を行った[iwj-2]。最近、国会議員候補に選出されたジョージ・ギャロウェイと同様、クレイグの選挙運動の中心課題は、ガザにおけるジェノサイドである。

 彼は、恒久的な停戦と、完全かつ独立したパレスチナ国家の樹立を求め、アパルトヘイト国家・イスラエルに対するボイコット、ダイベストメント(※投資撤退)、制裁キャンペーンを支持している。

【以下、講演の文字起こし】

クレイグ・マレー「こんばんは。皆さま、ご来場いただき、ありがとうございます。私はクレイグ・マレーです。ご存知のように、私は総選挙の候補者として、ブラックバーンに来ました。

 ひとつ、はっきりと申し上げたいことは、私がここに立っているのは、ガザのジェノサイドのためだ、ということです。私は、この問題を提起し、ここで選挙を戦うために、私はここに来ました。

 今日は、普通の選挙集会とは違い、このテーマに絞って焦点をあてています。そして、多くの情報を皆さまに提供でき、思考の糧となることを願っています。

 今日は、このテーマに関して世界で最も優れた講演者2人が、このブラックバーンに来てくれたことを、大変誇りに思います。ズーム会議やそれに類したオンラインなどではなく、今日、彼らが実際にここにいるようにするため、私は人々を説得するのに苦労しました。

 二人ともここに来るために、はるばる遠くから来てくれました。私はこれから1ヶ月間、ここにいるので、私の話を聞くチャンスはたくさんあるでしょうけれども。コメディアンがよく言うように、私は今週ずっとここにいるから。しかし、おそらく、この人のお話を皆さまが聞くことはほとんどないでしょう。

 彼は、ピューリッツァー賞を受賞したジャーナリストであり、豊富な経験を持ち、アラブ世界ジャーナリズム賞を受賞[iwj-3]しました。(授賞式のあった)エジプトから来たばかりです。クリス・ヘッジズの話を聴きくのがとても楽しみです」。

 以下は、紹介されたクリス・ヘッジズ氏の単独の講演となります。

クリス・ヘッジズ「ありがとうございます。

 イスラエルは、『永続的な戦争』という『精神病』に蝕まれています。イスラエルは、アパルトヘイト(人種隔離政策)時代の南アフリカ共和国よりも、残虐な占領を正当化するために、『被害者意識』を『神聖化』しています。そのために、『道徳的に破綻』しているのです。

 イスラエルの『民主主義』は、常に『ユダヤ人のためだけのもの』でした。そして、今や(その『民主主義』は)イスラエルを『ファシズム』へと突き進ませている『過激派』に乗っ取られています。

 イスラエル人[1]とパレスチナ人[2]の双方の、人権運動家、知識人[3]、ジャーナリスト達[4]は、常に国家の監視下に置かれ、恣意的な逮捕や政府が主導する中傷キャンペーンにさらされています。

 小学校から始まるイスラエルの教育制度は、軍隊のための教化装置[5]となっています。そして、悪徳政治・経済エリートらの貪欲と腐敗が、米国と英国の反アラブ・反黒人の『人種差別の文化』とともに、『民主主義の腐敗』を映し出す鏡である、『巨大な所得格差』を生み出しています[6]。

 イスラエルが、ガザの壊滅を達成するころには―イスラエルは少なくとも今年末まで、数ヶ月間は戦争を継続すると話している―[7]、イスラエルは自らの『死刑宣告』に署名することになるでしょう。

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 西側の聴衆にうまく売り込んだはずのイスラエルでしたが、イスラエルの、『表面だけの礼儀正しさ』や、『法の支配』と『民主主義』に対する『誇示された尊重』、勇敢なイスラエル軍とユダヤ国家の『奇跡的な誕生』という『神話的な物語』は、灰燼に帰すでしょう。

 イスラエルの『社会的資本』は、使い果たされてしまうでしょう。

 イスラエルは、(※反アパルトヘイトで、パレスチナを支援する)若い世代の米国と欧州のユダヤ人を疎外してきた[8]、醜悪で、抑圧的で、憎悪に満ちた『アパルトヘイト政権[9]』であることが明らかになるでしょう。

 その『庇護者』である米国は、新しい世代が権力を握るにつれて、イスラエルから距離を置くようになるでしょう。

 イスラエルに対する大衆的な支持は、『反動的なシオニスト』と、米国の『キリスト教化されたファシスト[10]』からのものになるでしょう。彼らは、イスラエルによる古代の聖書の土地の支配は、(※イエス=救世主の)「再臨」の前兆であり、アラブ人を征服することは、『親族同士の人種差別主義』、『白人至上主義』の賛美であると考えています。

 トルコ人がアルメニア人[iwj-4]と同類であるように、ドイツ人がナミビア人[iwj-5]、後にはユダヤ人と、セルビア人がボスニア人[iwj-6]と同類であるように、イスラエルはその犠牲者と同類になるでしょう。

 イスラエルの文化、芸術、ジャーナリズム、知的活動は、絶滅するでしょう。イスラエルは、権力を掌握した『宗教狂信者』、『偏屈者』、『ユダヤ過激派』が、公共の言論を支配する[11]停滞した国家となるでしょう。イスラエルは、世界で最も『独裁的な政権』の仲間入りをすることになるでしょう。

 『専制政治』は、その期限を過ぎても、長く存続することがありえます。しかし、それは末期的なものです。イスラエルの『血の川への渇望』が、ユダヤ教の『核心的価値観』と相反するものであることは、聖書学者でなくてもわかります。

 パレスチナ人にナチスの烙印を押すなど、『ホロコースト』の皮肉な『武器化』は、『(※ガザの)強制収容所』に閉じ込められた230万人に対して、ライブストリーミングでジェノサイドを実行するときには、ほとんど効果がありません[iwj-7]。

 国家が生き残るためには、武力以上のものが必要です。国家には『象徴的なるもの(mystique)が必要』です。この『象徴性』は、国民に、国家のために犠牲になりたくなるような目的意識、礼節、そして気高ささえをも、もたらすのです。『象徴性』は、未来への希望を与えます。『象徴性』は、意味を与えます。それが国家のアイデンティティとなるのです。

 『象徴性』が崩壊し、それが『嘘』であることが露呈したとき、国家権力の中核基盤は崩壊します。私は1989年、東ドイツ、チェコスロバキア、ルーマニアの革命時に、『共産主義的象徴主義の死』について報告したことがあります。警察も軍も、守るべきものは何も残っていない、と判断したのです。

 イスラエルの衰退は、同じような無気力と無関心を生むことでしょう。イスラエルは、マフムード・アッバス[12]やパレスチナ自治政府[13](ほとんどのパレスチナ人から非難されている)のような『先住民の協力者』を、『植民地支配者の命令通りに動くような協力者』を、調達することはできないでしょう。

 イスラエルに残されたものは、非武装の市民に対する拷問[14]や致死的な暴力[15]など、『衰退を加速』させる『残虐な行為の激化』だけです。この全面的な暴力は、フランスがアルジェリアで行った戦争、アルゼンチンの軍事独裁政権が行った汚い戦争、イギリスによるインド、エジプト、ケニア、北アイルランドの占領、アメリカによるベトナム、イラク、アフガニスタンの占領がそうだったように、短期的には効果があるでしょう。しかし、長期的にみれば、『自殺行為』です。

後編に続く)


[原注]

[1]イスラエル人のハガイ・エル・アド氏は、イスラエルのB’Tselemを率いて、イスラエルの「アパルトヘイト政権」を非難し、パレスチナを支持した。

[2]パレスチナ人のイッサ・アムロ氏は、数十年にわたり、ガンジーやキング牧師のように、非暴力の抵抗を呼びかけてきた活動家。イスラエル兵を撮影して殴打されたり、接近したことでライフルで撃たれたり、軍事基地で拘束され、拷問されたという。

[3]イスラエルの著名な学者イラン・パペは、月曜日に米国に到着した後、「ハマスの支持者であるかどうか」、「ガザへのイスラエルの攻撃をジェノサイドと見なしているかどうか」について、国土安全保障省から尋問を受けたと述べた。

[4]作家でジャーナリストのギデオン・レヴィは、30年以上にわたって、占領地で何が起こっているのかについての真実を伝えてきた。イスラエルで最も嫌われている男であり、おそらく最も英雄的である。  レヴィは、イスラエル国防軍によって繰り返し撃たれ、国の路上で「パルプに殴られる」と脅され、「安全保障上のリスク」として厳重に監視されるという政府閣僚からの要求に直面してきた。レヴィは、「私のささやかな使命は、多くのイスラエル人が『私たちは知らなかった』と言える状況を防ぐことだ」と語っている。『ガザの罪(The Punishment of Gaza)』(2010)、『The Killing of Gaza: Reports on a Catastrophe』(2024)など。

[5]『イスラエルの教科書のパレスチナ:教育におけるイデオロギーとプロパガンダ』の著者、ヌリット・ペレド・エルハナン氏が、イスラエルの学校で用いられている教科書には、パレスチナ人を疎外し、イスラエル軍の軍事行動や入植活動を正当化する役割があると指摘している。

[6]「OECD諸国の中で最も小さい国の一つであるにもかかわらず、イスラエルは社会経済格差が大きく、その格差は空間的な側面がはっきりしている。社会経済的成果の弱い民族や宗教グループは、国の中心部で繁栄しているハイテク産業の恩恵を受けていない。その結果、周辺地域では雇用機会が不足し、活気ある中心部では技能が不足している。自治体間の格差はOECD諸国の中で最も大きい」。

[7]「イスラエルの国家安全保障顧問ツァヒ・ハネグビ氏は水曜日(29日)、イスラエルのガザでの軍事作戦は少なくとも年末までは続くと予想していると述べ、ラファでのハマスに対する軍事攻撃で戦争が終結するという考えを否定した」。

[8]「コーンブラット夫妻と娘の間の思想的亀裂は、イスラエルには自国を守る権利があり、その存続そのものが危機に瀕していると信じるアメリカのユダヤ人の古い世代と、イスラエルを大軍事大国であり占領軍とみなす傾向が強い若い世代との衝突である」。

[9]「イスラエルが1967年に東エルサレムとヨルダン川西岸の残りの地域を占領して以来、シェイク・ジャラのパレスチナ人はイスラエル当局の標的となり続けており、当局は差別的な法律を用いて、ユダヤ系イスラエル人の利益のためにパレスチナ人の土地と家を組織的に奪っている。(中略)差別、土地の剥奪、反対意見の弾圧、殺害や負傷など、これらすべては、パレスチナ人を犠牲にしてユダヤ系イスラエル人を優遇するように設計されたシステムの一部です。/これがアパルトヘイトです。」

[10]Chris Hedges, American Fascists: The Christian Right and the War on America, Free Press, Reprint edition(2008)

[11]クリス・ヘッジズは、2022年末、極右閣僚で構成されたネタニヤフ政権が発足した時、イスラエルが劇的に変化し、国際的な支持を失い、国内が分裂するであろうと警鐘を鳴らした。

[12]「パレスチナ自治政府の事実上の指導者である マフムード・アッバス氏は、イスラエルのジャーナリストや実業家に対し、イスラエル占領軍との協力は「神聖」であり、たとえパレスチナ自治政府がパレスチナの軍事抵抗組織ハマスの支援を受けた「政府」を樹立したとしても継続すると語った」。

[13]「ネタニヤフ首相が議会委員会の非公開会議で、パレスチナ自治政府が『うまく機能しているところでは、我々に代わって仕事をしてくれている』と語ったと報じた」。

[14]「釈放された被拘禁者や人権弁護士の証言、ビデオ映像や画像からは、過去4週間にわたりイスラエル軍が囚人に対して行ってきた拷問や虐待行為の一部が明らかになった。被拘禁者に対する激しい殴打や屈辱的な扱いには、頭を下げたままにさせたり、囚人を数える間床にひざまずかせたり、イスラエルの歌を歌わせたりするなどの行為が含まれる」。

[15]OCHAは5月27日、ガザで報告された殺された者は3万6050人に上る、と報告した。


[IWJ注]

[iwj-1]クレイグ・マレー(Craig Murray)、1958年生まれ。スコットランドの作家、人権運動家、ジャーナリスト。政治家となり、スコットランド独立のために活動。スコットランド国民党(2011年~2016年)、独立行動党(2021年)、アルバ党(2021年~2024年)を経て、2024年3月に、2024年総選挙のブラックバーン選挙区における英国労働者党(Workers Party of Britain、労働党とは別)の候補者に選出された。

[iwj-2]クリス・ヘッジズが行った講演の情報は、以下の通り。

[iwj-3]第1回テゥフィク・ディアブ大賞(Tewfik Diab Grand Prize)

[iwj-4]トルコ人とアルメニア人:19世紀末から20世紀初頭、オスマン帝国において、少数民族のアルメニア人が強制移住や虐殺された事件が起きた。100万から150万人が犠牲になったとされる。「アルメニア人虐殺事件」または「アルメニア人ジェノサイド」と呼ばれる。オスマン帝国政府による「ジェノサイド」だったと見る意見が大勢だが、オスマン帝国を継承したトルコ共和国は(ジェノサイドの要件である)計画性・組織性を否定している。  貿易や金融業に長けたアルメニア人富裕層は、オスマン帝国の中枢部とも共存共栄の関係を維持していたが、19世紀、西欧諸国との関係を深めた。アルメニア人は、キリスト教徒(アルメニア使徒教会など)が多く、イスラム教徒が主流のオスマン帝国社会との間で軋轢が生じた。  1877年の露土戦争で、ロシアがアルメニア人を支援したことから、アルメニア民族運動が興隆し、オスマン帝国社会から、敵対国と通じるテロ分子と見られるようになった。1894年にはイスラム教徒とアルメニア人の大規模な衝突が起き、オスマン政府が鎮圧に動き、2万人が犠牲となった「ハミディイェ虐殺」が起きた。  1913年、オスマン帝国内でクーデターが発生して、トルコ民族主義が興隆し、再びアルメニア人との間で緊張が高まった。第一次世界大戦が始まると、1915年、連合国側のロシアとの戦闘地域となったアナトリア東部から、アルメニア人を、シリアの砂漠地帯の町デリゾールの強制収容所へと強制移住させる「死の行進」が行われ、過酷な移動の途中で、多くのアルメニア人が犠牲となった。

[iwj-5]ドイツ人とナミビア人:ドイツは1884~1915年にかけて、現在のナミビア共和国(アフリカ西南部の国)を植民地として統治していた。1904から1908年にかけて、先住民族であるヘレロ族とナマ族が蜂起し、ドイツの過酷な対処によって、ヘレロ族8万人のうち約6万5000人、ナマ族の2万人のうち少なくとも1万人が犠牲になったとされる。犠牲となった要因は、餓死と、砂漠に追いやられたヘレロ族とナマクア族の使用する井戸に毒を入れられたことによる中毒死であった。  1904年、先住民族であるヘレロ族が蜂起(ホッテントット蜂起)すると、ドイツのロタール・フォン・トロータ将軍は、ヘレロ人そのものの殲滅を命じる通達「ドイツ領内で見つかったヘレロ人は、武装、非武装、老若男女を問わず、抹殺すること」を出した。ドイツはヘレロ族をカラハリ砂漠に追い込み、多くのヘレロ族の人々が飢えと渇きのために死亡した。生き残ったヘレロ人は強制収容所に送られ、強制労働、投打、強姦などで、数千人が命を落とした。人体実験の犠牲になった者もいたとされる。  同年、ナマクア族も蜂起したが、ドイツはヘレロ族に対するのと同様の残虐さで対応した。強制収容所へ収容したり強制労働に従事させた。  ドイツ政府は、2021年、ナミビアで行った残虐行為をジェノサイドであったと認めた。歴史家らは、ナミビアにおけるジェノサイドが、20年後のナチス・ドイツによるユダヤ人ホロコーストにつながったとの見方に同意している。

[iwj-6]セルビア人とボスニア人:ナチス・ドイツの占領下から1943年に独立した旧ユーゴスラヴィア連邦は、分権的な体制でユーゴ共産党が共和国と自治州を緩やかに束ねていた。1つの国、2つの文字、3つの宗教、4つの言語、5つの民族、6つの共和国(スロベニア、クロアチア、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロ、マケドニア)、そして国境を接する7つの国という、多様な文化をもつ多民族国家であった。1990年にユーゴ共産党が分裂すると、共和国間の対立が表面化し、1990年にスロベニア、1991年にクロアチア、マケドニアが分離独立を宣言し、ユーゴスラヴィア内戦が始まった。  ボスニア=ヘルツェゴヴィナは1992年に独立を宣言をしたが、セルビア人・クロアティア人・ムスリム人(ボシュニャク人)の3民族の勢力が拮抗していたため、深刻な対立が起きた。3民族は居住区を分られないほどに混在して生活していたため、相互に隣り合う他民族を排除する凄惨な「民族浄化」が進行した。  1995年7月、セルビア共和国とボスニア・ヘルツェゴビナ共和国の国境付近にある都市、スレブレニツァでのセルビア人部隊によるムスリム住民に対する大量虐殺が起きた。当時、国連はスレブレニツァを「安全地帯」に指定していた。セルビア人部隊は、スレブレニツァを包囲すると、ムスリムの女性達は難民となって国連施設に避難したが、男性や少年を家族から引き離し、山中で銃殺し、集団墓地に埋めた。当時のスレブレニツァの人口は3万7000人であったのに対し、犠牲者は8000人以上とされる。  スレブレニツァの虐殺は、セルビア共和国軍がボスニア=ヘルツェゴヴィナに侵攻したのではなく、ボスニア出身のセルビア人兵士によるスルプスカ共和国軍によって行われたが、「セルビア悪玉論」に傾いていた国際世論は、セルビアのミロシェヴィッチ政権を侵略者と見なした。  3民族が相互に拮抗していたボスニア紛争において、「セルビア悪玉論」を形成する原動力となったのは、米国の広告代理店「ルーダー・フィン」社による情報操作だと、高木徹は『戦争広告代理店』で詳細にレポートしている。クロアチア政府、ボスニア=ヘルツェゴヴィナ政府と契約したルーダー・フィン社は、1992年に、セルビアによる「強制収容所」と「民族浄化」というキャンペーンを張り、国際世論を動かした。高木は、ボスニア紛争の間、ルーダー・フィンが世界各地のユダヤ人団体と接触していたことも明らかにしている。  スレブレニツァの虐殺を受けて、NATOが1995年8月から9月にかけてセルビア人勢力に対して激しい空爆を加えたため、セルビア側が停戦に応じ、クリントン政権の仲介により、同年12月にボスニア=ヘルツェゴヴィナ和平合意が成立した。ボスニア=ヘルツェゴヴィナは、ボスニア=ヘルツェゴヴィナ連邦とセルビア人を主体とする(スルプスカ共和国)の二国家連合体となった。スレブレニツァの虐殺を主導したとされるスルプスカ共和国軍のラトコ・ムラディッチ参謀総長(当時)は、2021年に終身刑が確定した。

  • 高木徹『戦争広告代理店』講談社(2005年、初出は2002年)

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