【IWJ号外】クリス・ヘッジズ氏「ガザのジェノサイドを何もしないで見ている我々は、ネロの暴虐を愉しんでいたネロの客人と同じ」! イスラエルとともに我々も歴史に裁かれる!!(前編) 2024.8.3

記事公開日:2024.8.3 テキスト
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(文・IWJ編集部)

特集 中東

 IWJ代表の岩上安身です。

 これまでも、たびたび、IWJでご紹介してきた、ピューリッツアー賞を受賞したジャーナリストであり、米国長老派の牧師でもあるクリス・ヘッジズ氏が、イスラエルによるガザのジェノサイドを伝える報道で、「アラブ世界ジャーナリズム賞」を受賞しました。

 ヘッジズ氏は、エジプト・カイロでの授賞式を終えると、直ちに、総選挙中の英国に飛びました。ヘッジズ氏は、6月13日、ガザにおけるジェノサイドの停止を求める、クレイグ・マレー候補の選挙キャンペーンで、イスラエルによるガザのジェノサイドについて講演をしました。

 講演の文字起こしを手掛かりに、この号外で、クリス・ヘッジズ氏による、イスラエルによるガザのジェノサイド問題についての見解をお伝えしたいと思います。

 講演の題名は「ネロの客人」。「ネロ」は、古代ローマの残虐さと暴虐で知られた皇帝です。ヘッジズ氏は、イスラエルが行っているジェノサイドをネロの残虐な行いになぞらえ、イスラエルの暴虐を止めない「我々」は、ネロの残虐を愉しんでいた「ネロの客人」と同じだ、と訴えました。

 ネタニヤフ首相は7月24日、米国連邦議会で演説をし、ガザ停戦を拒否し、対イランを想定した中東NATO軍の設置を要請し、繰り返し、スタンディング・オベーションを受けました。

 先日の号外でお伝えしたように、ネタニヤフ首相が帰国すると、さっそくイスラエルは、7月30日にはレバノンの首都ベイルートを攻撃して、ヒズボラのフアド・シュクル司令官を殺害しました。

 翌7月31日に、マスード・ペゼシキアン新大統領の就任式に出席するために、イランの首都テヘランにいたハマスの政治部門トップのムジャヒド・イスマイル・ハニヤ氏を殺害しました。ハニヤ氏は、カタールを拠点として、イスラエルとの停戦交渉を担っていました。

 さらに8月1日、イスラエルは、ガザでハマス軍事部隊のモハメド・デイフ司令官を殺害した(3週間前の攻撃による)と発表しました。

 イスラエルは、ヒズボラとイランを挑発し、紛争のエスカレーションを目指しています。ヘッジズ氏がイスラエルを暴君ネロにたとえたように、米国の支持を確認したイスラエルの暴虐はとどまるところを知りません。

 ネタニヤフ首相は、ガザでの戦闘は終わりに近づいているなどと言っていますが、これはまったくの嘘でした。現在でも、ガザでは凄惨なジェノサイドが続いています。

 『日刊IWJガイド』でもお伝えしたとおり、米国主導の停戦交渉は、遅々として進まない一方、スペインのサンチェス首相は、7月9日から11日にかけてワシントンで開催されたNATO創設75周年の首脳会議で、世界はパレスチナ人を苦しめる「このひどい人道的危機を止める」よう圧力をかける必要があると述べ、パレスチナ国家樹立に向けた国際平和会議の開催を求めました。

 サンチェス首相は、5月にも、パレスチナ国家の承認が不可欠だと述べ、アイルランド、ノルウェーとともに、欧州3ヶ国でパレスチナ自治区を国家として正式に承認する、と表明していました。

 もはや、二国家解決は不可能だ、とする意見が多くなる中、国際社会が「二国家解決」を強くイスラエルに求めていくことは、我々が「ネロの客人」になってしまわないためのひとつの道ではないか、とも思われます。特に、米国一国だけでも、イスラエル擁護一色となると、米国さえ味方になり、支援を受けられれば、イスラエルは全世界を敵に回しても構わず、パレスチナ国家樹立は断固として認めない立場を貫くつもりです。

 したがって、米国内の世論に訴えてゆくことが肝要です。

 パレスチナ側も、反目しあうパレスチナ解放機構(PLO)とハマスが、今年4月23日、「国民的合意にもとづく」暫定統一政府を発足させることで合意しています。

 この合意について、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、「アッバス議長は和平ではなく、ハマスを選んだ」などと怒りをあらわにしたと、『AFP』は報じていました。

 このように、イスラエル側は「パレスチナ統一政府」に向けた動きに、猛反発しています。そして、さらに米国もまた、「和平実現に向けた努力を大きく妨げる可能性がある」などと警告しています。

 「パレスチナ人同士を分断して反目させあい、弱体化」させようと仕向ける米国とイスラエルの支配を覆し、「二国家解決」に向かうためには、「パレスチナ統一政府」の創設は、必要不可欠です。これまでも長く実現しなかった「パレスチナ統一政府」ですが、米国を含めた国際社会が「パレスチナ国家の承認」、「二国家解決」を、改めてイスラエルに求めていくことが必要であると思われます。

 『ロイター』は、23日付で、中国外務省が、北京で21日から23日にまで、ハマスやファタハなど複数の組織と会談を行い、23日、分断を終結させて、統一政府を発足させることで合意した、と発表しました。

 『ロイター』は「合意内容には新政府樹立の期限は明記されていない」ため、「今回の合意がどこまで実効性があるかは不明」と評価しています。しかし、2023年のサウジアラビアとイランの国交正常化が北京で発表されてから合意以降、中東における重要な外交的合意は北京で行われるようになっています。もはや、米国には、中東における紛争や対立を調停する能力がない、あるいはイスラエル以外の中東のイスラム教諸国を尊重する意志がない、ということを示しています。

 少なくとも、「パレスチナ統一政府」に向けて、米国の力が及ばないところで、中東が動き始めています。

 これまで、IWJでお伝えしてきた、クリス・ヘッジズ氏による、イスラエルによって行われているガザのジェノサイドについての関連記事は、以下の通りです。ぜひ、IWJ会員となって、全文をお読みください。

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ネロの客人
クリス・ヘッジズ

2024年6月16日
https://chrishedges.substack.com/p/neros-guests

 私(ヘッジズ)は(※6月13日に)、英国のブラックバーンで、国会議員選挙に立候補している友人クレイグ・マレー[iwj-1]の選挙イベントの一環として、講演を行った[iwj-2]。最近、国会議員候補に選出されたジョージ・ギャロウェイと同様、クレイグの選挙運動の中心課題は、ガザにおけるジェノサイドである。

 彼は、恒久的な停戦と、完全かつ独立したパレスチナ国家の樹立を求め、アパルトヘイト国家・イスラエルに対するボイコット、ダイベストメント(※投資撤退)、制裁キャンペーンを支持している。

【以下、講演の文字起こし】

クレイグ・マレー「こんばんは。皆さま、ご来場いただき、ありがとうございます。私はクレイグ・マレーです。ご存知のように、私は総選挙の候補者として、ブラックバーンに来ました。

 ひとつ、はっきりと申し上げたいことは、私がここに立っているのは、ガザのジェノサイドのためだ、ということです。私は、この問題を提起し、ここで選挙を戦うために、私はここに来ました。

 今日は、普通の選挙集会とは違い、このテーマに絞って焦点をあてています。そして、多くの情報を皆さまに提供でき、思考の糧となることを願っています。

 今日は、このテーマに関して世界で最も優れた講演者2人が、このブラックバーンに来てくれたことを、大変誇りに思います。ズーム会議やそれに類したオンラインなどではなく、今日、彼らが実際にここにいるようにするため、私は人々を説得するのに苦労しました。

 二人ともここに来るために、はるばる遠くから来てくれました。私はこれから1ヶ月間、ここにいるので、私の話を聞くチャンスはたくさんあるでしょうけれども。コメディアンがよく言うように、私は今週ずっとここにいるから。しかし、おそらく、この人のお話を皆さまが聞くことはほとんどないでしょう。

 彼は、ピューリッツァー賞を受賞したジャーナリストであり、豊富な経験を持ち、アラブ世界ジャーナリズム賞を受賞[iwj-3]しました。(授賞式のあった)エジプトから来たばかりです。クリス・ヘッジズの話を聴きくのがとても楽しみです」。

 以下は、紹介されたクリス・ヘッジズ氏の単独の講演となります。

クリス・ヘッジズ「ありがとうございます。

 イスラエルは、『永続的な戦争』という『精神病』に蝕まれています。イスラエルは、アパルトヘイト(人種隔離政策)時代の南アフリカ共和国よりも、残虐な占領を正当化するために、『被害者意識』を『神聖化』しています。そのために、『道徳的に破綻』しているのです。

 イスラエルの『民主主義』は、常に『ユダヤ人のためだけのもの』でした。そして、今や(その『民主主義』は)イスラエルを『ファシズム』へと突き進ませている『過激派』に乗っ取られています。

 イスラエル人[1]とパレスチナ人[2]の双方の、人権運動家、知識人[3]、ジャーナリスト達[4]は、常に国家の監視下に置かれ、恣意的な逮捕や政府が主導する中傷キャンペーンにさらされています。

 小学校から始まるイスラエルの教育制度は、軍隊のための教化装置[5]となっています。そして、悪徳政治・経済エリートらの貪欲と腐敗が、米国と英国の反アラブ・反黒人の『人種差別の文化』とともに、『民主主義の腐敗』を映し出す鏡である、『巨大な所得格差』を生み出しています[6]。

 イスラエルが、ガザの壊滅を達成するころには―イスラエルは少なくとも今年末まで、数ヶ月間は戦争を継続すると話している―[7]、イスラエルは自らの『死刑宣告』に署名することになるでしょう。

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