「休戦期間を設ければ設けるほど、最終的な犠牲者の数は増える」ガザ情勢についての、佐藤優氏が語る独自の見解とは?~11.29東京大地塾「ガザ問題」「創価学会池田大作名誉会長のご逝去について」 2023.11.29

記事公開日:2023.12.14取材地: テキスト動画
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(取材、文・浜本信貴)

特集 中東

 2023年11月29日、午後4時より、東京・千代田区の参議院議員会館にて、東京大地塾が開催された。「ガザ問題」、「創価学会池田大作名誉会長の逝去」などのテーマについて、元外交官で作家の佐藤優氏と鈴木宗男参議院議員が登壇・講演し、会場に集まった参加者と質疑応答などを行った。

 佐藤氏は「ガザ問題」、特に休戦について、独自の論点を披露し、次のように注意を促した。

 佐藤氏「イスラエルは確かに、ハマスというテロリスト集団に対しては、(民族や人種を理由に)『属性排除』している。ただし、ハマスは辞めることができるからね。だから、イスラエルは『南部に行きなさい』と言ってるのは、ハマスの戦闘員以外の構成員に呼びかけているわけで、『南部に行けば、ハマスと見なさないから掃討の対象になりませんよ』というメッセージなんだね。

 ユダヤ人であることは辞めることはできないから、だから、辞めること、離脱することができる人たちに対する『属性排除』と、辞めることができない属性に対する排除って意味、全然違うよね。

 だからこれは、ナチスに対する『属性排除』っていうのを徹底的に、戦後、アメリカも行ったし。アメリカ行かれた人さ、入国カードあるでしょう。『ナチス運動に参加しています』っていう項目があるよね。そこにチェック印を付けたら入国できないんだよ、今でも。

 だから、今でも、ナチスに所属し、ナチス運動をやっている人というのは、その属性だけでアメリカは入国させない。ナチスはアメリカの地を一歩も踏ませないっていうのを、今でもやってるわけ。しかし、これは、ナチスじゃない人には関係がないわけでしょ。ハマスもそれと一緒だよね。

 それでね、今回、休戦ということで、休戦が、みんな『いいことだ、いいことだ』『人道的に意味がある』ということで、確かにね、人道的に、民間人のいるところに、食糧や水がわたるというのはいいこと。

 ただし、その時に、ハマスも戦闘力をつけて…、私は、(ハマスの地下)トンネルに関しては一つ疑問をもっているの。

 あのトンネルが本当にガザで終っているんだろうか? シナイ半島まで抜けているんじゃないか、とか、シナイ半島まで抜けているんだったら、人質をトンネルの中を探して、見つからなかったっていうのも、エジプトのシナイ半島の地下まで逃げているんだったら、見つかんないよね。

 イスラエル軍がエジプトの主権は侵害できないから、シナイ半島の中に入れないから。

 トンネルの中で、みんな真っ暗な中、目隠しされているわけでしょう。移動させられたら、どこにいるかわかんない。トンネルが、もし、シナイ半島に通じていると仮定するならば、そこから戦闘員用の弾薬とか食料品とかが入ってくるのね。

 そうすると、いずれにせよ、休戦期間を設ければ設けるほど、最終的な犠牲者の数は増えるんです」(後略)。

 佐藤氏の見解は、イスラエルに寄り添った立ち位置なのか、と思うほど、合点のいかないものであった。「休戦期間を設けると、最終的な犠牲者の数は増える」という言い方だが、「最終的」とは、どのラインを指しているのか?

 それは、イスラエルにとってのまことに都合のよい話である。

 ハマスの完全な殲滅、そしてそれにともなうガザでの徹底的な殺戮と破壊を通じて、ガザのパレスチナ人をガザから全員追い出してしまうことが「最終的」なゴールラインとされているのではないか。

 国際社会は休戦を求めているのではなく、停戦を求めているのであり、それは恒久的な停戦であって、イスラエルの不当・不正義な暴力を今、否定するものである。

 ガザとヨルダン川西岸の土地から出ていかなければならないのは、イスラエル軍と、不法なユダヤ人入植者たちであり、恒久的な停戦の先に、パレスチナ国家が建設され、パレスチナ人の安全が守られることを、望んでいるのである。

 我々が望む「最終的なゴール」とは、そこであり、佐藤氏とはそもそも立脚点が違いすぎると言わざるをえない。

 ウクライナ紛争の際には、ロシアだけが悪魔化されることに意義を模したてた鈴木宗男氏と佐藤優氏だが、イスラエル問題となると、モサドに友人が多いことを著作にもよく著している佐藤氏は、ごく自然にシオニスト側に立って、ものを言っているようで、落胆せざるをえない。

 また、池田名誉会長の逝去が今後の創価学会、および、公明党に与える影響について、論点を整理するためとして、朝日新聞に掲載された、宗教学者・島田裕巳氏へのインタビュー記事(※)を引き合いに出し、そこでの島田氏の意見を全否定する形で解説を行った。

 池田名誉会長の逝去に関する内容、参加者との質疑応答の内容など、記者会見の詳細については、全編動画を御覧いただきたい。

■全編動画(前半)

■全編動画(後半)

  • 日時 2023年11月29日(水)16:00~
  • 場所 参議院議員会館 1階 講堂(東京都千代田区)
  • 鈴木宗男事務所 サイト内告知

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