IWJ代表の岩上安身です。
イスラエル・パレスチナ情勢が、緊迫の度合いを深めています。
パレスチナ暫定自治区はガザ地区の行政組織である「ハマス(HAMAS):別名アラビア語で『イスラム抵抗運動(Harakat al Muqawamaal Islamiya)』」は、7日早朝、イスラエル「領内」への大規模なロケット攻撃を開始、これにイスラエル側も大規模な空爆で報復し、死者の数は双方合わせて、1500人以上に上ると(10日現在)報道されています。
イスラエル側は、ガザ地区への徹底した報復を謳っており、さらなる犠牲者の増加は避けられそうもありません。
しかし、ハマスが、「アル・アクサの嵐作戦」と呼ぶ今回の作戦名に、注目する必要があります。今年4月5日、エルサレムにあるイスラム教の聖地「アルアクサ・モスク」へ、イスラエルの警察が侵入し、催涙弾やゴム弾を使用して350人以上を拘束しました。
このイスラム教の「聖地」を、イスラエル側が冒涜したことへの「報復」として、「アル・アクサの嵐作戦」は発動されています。号外に掲載された4本の記事をお読みいただければ、ウクライナ紛争と同じ構図に読者は気づかれるはずです。
2022年2月24日に、突如としてロシア軍がウクライナ国境を越えて侵攻してきたというストーリーは、2014年はユーロマイダン・クーデターからはじまるロシア系住民への「民族浄化」を黙殺することによって成り立っています。同じく、今月7日に、まったく予想していなかったハマスによる突然の大規模攻撃という報道も、今年4月5日、聖地であるアルアクサ・モスクへの冒涜を、まるでなかったかのように忘却することによって成立しているのです。
ガザ地区の人口は約200万人、そのうちの約45%は14歳以下の子どもたちです。
イスラエルの「挑発」に対するハマスの大規模攻撃は、イスラエル側の格好の口実として、ガザ全体を「殲滅」するような掃討作戦へと至る可能性があります。
今号外を是非ともお読みいただき、多くの方への「共有」または「シェア」をお願い致します。
■【第1弾! ハマスへの「報復」と称したイスラエルによるジェノサイド! イスラエルのギャラント国防大臣は、ガザ地区への電気、食料、燃料の遮断を表明! ガザ地区のパレスチナ人を「human animals(人間でないもの)」と断言!!】イスラエルは過去20時間で2000発の弾薬と1000トン以上の爆弾を投下! ガザを徹底破壊!!(『ミドル・イースト・アイ』、2023年10月9日)
昨日のこの日刊IWJガイドでお伝えした、パレスチナとイスラエルの大規模な戦闘の続報です。
- 「ヨム・キプール」戦争から50年、イスラエルの安全保障に衝撃! パレスチナを実効支配するハマスが「アル・アクサの嵐作戦」を展開、イスラエルに奇襲! イスラエルはハマスに宣戦布告、「鉄の剣作戦」を展開! ネタニヤフ首相は「我々は今戦争中だ」と国民に檄! ハマスの、3500発以上のロケット弾をイスラエルに打ち込むと同時に陸上部隊をイスラエル南部に侵攻させるという複合作戦について、「背景にいるのはイラン」だとイスラエル側は非難! イランから支援を受けるヒズボラも参戦! 中国は即時停戦を主張! 中東における米国の存在感の低下が露呈!
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20231010#idx-4
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/52827#idx-2
パレスチナ自治区ガザから、イスラム組織ハマスが、7日に数千発のロケット弾を発射し、戦闘員が境界を超えてイスラエルを襲撃するなど大規模攻撃を行なったことへの「報復」として、イスラエルのヨブ・ギャラント国防大臣は、ガザ地区への電気、食料、燃料の遮断を表明しました。ガザのような閉域におけるインフラの遮断は、戦争行為とはいえない、きわめて非人道的な殺戮行為です。
ロンドンに拠点を置くの中東専門のオンライン独立メディア『ミドル・イースト・アイ』は、10月9日付け記事で、ギャラント国防大臣の発言を次のように報じています。
「私はガザ地区の完全包囲を命じた。電気も食料も燃料もなくなり、すべてが閉鎖される。私たちはhuman animals(※IWJ注:人間動物、人畜、人獣など、人間ではないとの意味)と戦っており、それに応じて行動している」。
なんと、イスラエル人達が入植して、土地を暴力で奪い取り、「天井のない高い壁で囲まれた監獄」であるガザに押し込んできた、この土地の先住民であるパレスチナ人をイスラエルのギャラント国防相は、「亜人・人獣」呼ばわりしたのです。
「人間」ではない生き物に対して、水や食料など生存に不可欠となる物資を補給するなどの、「基本的人権」を保障する配慮などは不必要、ということになります。人の形をした害獣では、手段を選ばず殺せ、駆除しろ、ということになるからです!
イスラエル人のこの考え方は、たとえ銃をもった敵対者に対してであっても、絶対に許されてはならないものです!
ロマ(ジプシー)、障害者、同性愛者らとともに、ユダヤ人を絶滅させようとした(ホロコースト)ナチスでさえ、ユダヤ人を「劣等人種」としました。「劣等」であっても「人」とみなし、その上で、「生きている価値がない」として殺戮したのです。もっともナチスら究極の人種差別主義者らは、「劣等人種」以外に、「ウンターメンシュ=亜人」という、「人間に似て非なるもの」という、最大限の差別と侮辱の言葉をも用い、実際に「人間」と区別して、ユダヤ人らを大量殺戮の対象としました!
今、イスラエルのギャラント国防相の使っている「human animals=人畜、人獣」とは、この「ウンターメンシュ=亜人」と何ら変わりません。かつて、ユダヤ人(イスラエル人)が、ナチスから容赦なく浴びせられ、あらゆるものを盗まれ、殺されたその人種差別思想の極限の言葉を、あろうことか、ユダヤ人自身が用いているのです。
現代イスラエルは、その人種差別思想において、ナチス・ドイツと並んだ、というべきです! このイスラエルの非人道的な殺戮行動と、それを支える人種差別思想と情念を、無条件に支持する者は、自らをナチスと変わらないと、宣言しているようなものです。
この『ミドル・イースト・アイ』の記事は、「イスラエル空軍は、過去20時間でガザに2000発の弾薬と1000トン以上の爆弾を投下し、高層住宅20棟、モスク、病院、銀行、その他の民間インフラを砲撃したと、月曜朝発表した」と報じました。
ハマスへの報復として、これが吊り合ったものかどうかはわかりません。しかし、イスラエルにとって、ハマスとパレスチナ人は、「亜人」でしかないのですから、それが民間人であれ、どれほどの犠牲を与えようとも構わないのでしょう。
★『朝日新聞』は、10日付け記事で「9日、双方の死者数が1500人を超えた」と報じました。
この『朝日新聞』の記事によると、「イスラエル軍は(中略)これまでで最大規模となる予備役30万人を招集した」とのことです。
また、記事によると、ハマスは「イスラエル兵や民間人100人以上をガザへ拉致したとみられている」とのことで、「ハマスの軍事部門の報道官は9日の声明で、イスラエル軍がガザの住民に対して事前警告なく空爆した場合、『1回(の空爆)ごとに民間人の人質1人を処刑する』と脅迫」していると、この『朝日新聞』の記事は報じています。
一方で、このハマスによるイスラエルへの攻撃を「テロ」、イスラエルによるガザ地区への攻撃を「報復」とする大手メディアの偏向報道に、世界中から疑問の声も上がっています。
イスラエルは1948年の建国に際して、「民族浄化」ともいえる手法でパレスチナの先住民から力ずくで土地を奪っていきました。
1993年のオスロ合意にもとづいて、ヨルダン川西岸地区と共にパレスチナ自治区となったガザ地区は、2007年以来、イスラエルに軍事封鎖され、出入りの自由がなく、「天井のない監獄」とも言われています。
幅5~8km、長さ約50kmのガザ地区には、200万人のパレスチナ人が暮らし、「世界で最も人口密度が高い場所のひとつ」とされています。しかも、人口の7割はパレスチナ難民で、また、人口の約45%は14歳以下の子どもです。
地中海とエジプト国境に囲まれたガザ地区は、陸地側を幅600mほどの立ち入り禁止区域とフェンスで囲まれ、イスラエル軍に包囲された上で、数か所の検問所で、人や物の出入りが極端に制限されています。
その結果、燃料や食料、日用品、医療品などが慢性的に欠乏し、経済や生産活動が停滞して、人々は国連や支援団体からの援助物資で命をつないでいます。それを、イスラエルのギャラント国防相は、一切、遮断する、と命じたのです。水や食料も薬も、イスラエルが「人獣」と見なす相手には一切与えない、ということです。
イスラエルのネタニヤフ首相は7日、報復のため「ハマスのあらゆる施設を標的にする。ガザを無人島に変える。ガザ住民は今すぐ退避しなければならない。我々はガザの隅々までターゲットにする」と警告しました。
ネタニヤフ首相の言う「退避」とは、この「ガザ」地区の外部へ出ることは含まれていません。ガザの住民、イスラエルから見たら「人獣」たちは、ガザというこの小さな閉域の内部に閉じ込められたまま、です。退避する場所などどこにもなく、ネタニヤフ首相のこの警告など、「ガザに残っているイスラエル人は退避せよ。人獣はそのまま、その場で死ね」と言っている無慈悲な虐殺宣言に過ぎません。
ニューヨーク在住のジャーナリスト、ラファエル・シムノフ氏は、10月8日、X(旧ツイッター)に、次のように投稿しています。
「ウズベキスタン生まれでユダヤ系アメリカ人の私が、今日イスラエルに行くとしたら、『帰国』と呼ばれます。
でも、ガザ地区のパレスチナ人がイスラエルに行くと、そこに有る実家の鍵をまだ持っているにもかかわらず、それは『侵略』と呼ばれる」。
イスラエル人の国際法違反の「入植」によって、パレスチナ人は家を奪われ、追い出され、ガザ地区へと追い込まれたのです。そしてフェンスの外へ出ることができたとして、そこで自分の家の鍵を手に、家へ入ろうとしたら、「侵略」呼ばわりされ、銃を向けられ、逮捕され、下手をすると、射殺されてしまうこともあるのです。
また、ワシントンに拠点を置くデジタルニュースプロジェクト『AJ+』は、10月10日、ガザ地区に関する歴史的経緯をまとめたショート動画とともに、Xに次のように投稿しています。
「イスラエルとガザは戦争状態にある二つの国ではない。ガザは包囲下にある地域で、生活のあらゆる側面がイスラエルによって管理されている。
パレスチナ人は『国境』を突破してイスラエルに入国したわけではない。彼らは、強制的に追い出された家と彼らを隔てる柵を破壊した」。
また、8日付け『共同通信』は、7日朝に始まったハマスによる襲撃について、襲撃現場となったスデロトで、6日夜から約3000人の若者が参加して夜通し開かれていたパーティーの参加者の証言を、九死に一生を得た生存者の恐怖の体験として報じています。
しかし、ジャーナリストのジョナサン・クック氏は、10月9日、Xへの投稿で、以下のようにイスラエルの若者の、屈託のない、野蛮さを指摘しています。
「イスラエルが入植者植民地主義の最も卑猥・猥褻(obscene)な要素を完全に体現していることを示す永遠のイメージがあるとすれば、それは、200万人のパレスチナ人を収容する野外刑務所の端で、若く屈託のないイスラエル人がレイブパーティーを開催している姿である。
西側メディアは、このダンスの祭典に対するハマスの攻撃を、究極の野蛮行為として報じている。そして、それは野蛮であった。しかし、ガザという拷問室が丸見えの場所でパーティーをするのが普通だと考えていることのほうが、はるかに残酷なのだ」。
ギャラント国防大臣は、こうした状況下に置かれたパレスチナ人を「人間ではないもの(human animals)」だと宣言し、電気、食料、燃料を遮断した上、2000発の弾薬と1000トン以上の爆弾で徹底的に破壊と殺戮を行なっているのです。これは明らかな「ジェノサイド(民族浄化)」です。彼らの考えていること、していることは、その思想と行動において、ナチスと何も変わりません。
水や食べ物や燃料の遮断と、空爆の続行は、毒ガス「チクロンB」のかわりに、アウシュヴィッツにおける毒ガスと同じ閉域でイスラエル人が、「human animals=人獣」と呼んだ先住民のパレスチナ人を、ナチスが「ウンターメンシュ=亜人」と呼んだユダヤ人を殺した惨劇の再現です。
欧州で何百年間も差別され、今のポーランド、ウクライナ西部あたりではポグロム(虐殺)にたびたびあい、ナチスにあのような「最終解決」を迫られて生きのびてきたユダヤ人たちが、パレスチナ人たちの土地を奪って、まったく同じように「ヒューマン・アニマルズ=ウンターメンシュ=人獣、亜人、人畜」とみなして絶滅の対象にしようとしている、この歴史的な悲劇について、その出発点から、歴史的経緯を説き明かしています。
これがわからなければ、人類史を通じて、ユダヤ=キリスト教の引き起こした過ち=反ユダヤ主義と、そのツケをパレスチナ人に押し付けてきたヨーロッパ全体の途方もない偽善と罪を理解することはできません。
岩上安身は2018年に、イスラエル人歴史研究家イラン・パペ氏の著書『パレスチナの民族浄化: イスラエル建国の暴力』(法政大学出版局、2017年)の翻訳者のひとり、東京経済大学の早尾貴紀教授(収録時は准教授)に4回連続インタビューを行っています。ぜひ以下のインタビューを御覧ください。
また、岩上安身は、2018年から2019年にかけて、パレスチナの平和を考える会事務局長の役重善洋氏に、6回連続インタビューを行っています。こちらもぜひあわせて御覧ください。
【第2弾! イスラエルはハマスの大規模奇襲作戦を事前に知っていた!?】エジプトの情報当局が10日前にネタニヤフ首相に警告! ネタニヤフ首相は「フェイクニュース」だと否定! 一方、イスラエル人ジャーナリストは、ガザ地区の厳重な境界をハマスが突破したことを「何かおかしい、非常に奇妙だ」と指摘!! 「イスラエルの油断」という、しきりに流された第一報は、意図的な情報操作だった!?(『タイムズ・オブ・イスラエル』)
パレスチナ自治区ガザを実効支配するハマスが、イスラエルに対し10月7日に大規模な奇襲攻撃を行なったことについて、事件当初は、「イスラエルが情報をつかんでいなかった」「イスラエルの油断だった」という情報が第一報としてしきりに流されましたが、これは意図的な情報操作だった疑いが出てきました。
イスラエルとハマスの仲介役を務めることの多いエジプトの情報大臣が、イスラエルのネタニヤフ首相に対して10日前に警告していたと、『タイムズ・オブ・イスラエル』が9日付け記事で報じています。
「エジプトの情報当局者が9日、匿名を条件にAP通信に対して語った」こととして、この『タイムズ・オブ・イスラエル』が報じた記事によると、エジプトは「ハマスが何か大きなことを計画している」とイスラエルに何度も警告したが、イスラエルはヨルダン川西岸の治安弾圧に注力しており、ガザに関するエジプトの警告を無視したとのこと。
一方でこの『タイムズ・オブ・イスラエル』の記事は、ネタニヤフ首相が9日夜の国民向け演説で、この報道を「フェイクニュースだ」と表明したと報じています。為政者が使う「フェイクニュース」という言葉は、便利な言葉であり、よく注意して聞き、検証しなければなりません。
★ネタニヤフ政権は、ハマスの大規模な奇襲攻撃を許したことで、批判を受けています。この『タイムズ・オブ・イスラエル』の記事も、そうしたネタニヤフ政権の失態を追及するもののひとつとして報じられています。
しかし他方で、イスラエル国防軍の諜報部隊での勤務経験のあるイスラエル人ジャーナリスト、エフラット・フェニグソン氏は、10月7日に『サブスタック』に公開した動画記事で、ハマスの戦闘員がイスラエル軍の厳重なフェンスを突破したこと自体を「何かおかしい。非常に奇妙だ」と、疑問を呈しています。
フェニグソン氏によると、(イスラエル国内の)主流メディアはイスラエル国防軍の報道官が明らかに真実を隠していると認めているとのこと。
フェニグソン氏は、「ガザでは1年前に、こうした事態に備えた軍事訓練が行われ、現在もこの種のシナリオに備えた訓練が行われている」と指摘し、さらに「2年前、(イスラエル軍は)テロリストの侵入を警告するセンサーを備えた、地下障壁を設置した。イスラエルは最も先進的でハイテクな軍隊の一つを持っているのに、どうして国境やフェンスの突破に対してまったく反応がなかったのか?」との疑問を呈しています。
さらに、境界のセンサーが「フェンスに沿って移動する猫にも反応する」のに、「イスラエルがこれから何が起こるかを知らなかったはずはない」と述べ、さらに「なぜ境界の検問所は解放されていたのか?」とも指摘しています。
フェニグソン氏は「この奇襲攻撃は、あらゆる面で(イスラエルによって)計画された作戦のように思える」と述べ、50年前の第4次中東戦争(ヨム・キプール戦争)のきっかけとして1973年10月6日に起きた、エジプト軍とシリア軍による奇襲攻撃と「同じ日というのは偶然だろうか?」と、疑念を示しています。
- Israel-Hamas War – An Update(You’re The Voice by Efrat Fenigson、2023年10月7日)
フェニグソン氏も、この疑念が陰謀論との指摘を受けることを認めています。しかし、閣内に多数の極右を取り込んだネタニヤフ政権が「イスラエルの歴史の中で最も極右的な政権」といわれていることや、前述のようなあまりにも異常なパレスチナへの「報復=虐殺」を見ると、フェニグソン氏の疑念は、決して突飛な考えとは思えません。
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