【IWJ号外】イスラエルのギャラント国防大臣は、パレスチナ人を「ヒューマンアニマルズ(人畜)」と呼ぶ! しかしこの発言を日本のマスメディアはまったく報じず! 東京経済大学の早尾貴紀教授に取材! 2023.10.13

記事公開日:2023.10.13 テキスト
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(文・IWJ編集部)

特集 中東

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IWJ代表の岩上安身です。

 イスラエルのギャラント国防大臣は、パレスチナ人を「ヒューマンアニマルズ(人畜)」と呼びました。ナチスがユダヤ人達を滅ぼすとき「劣等人種」「ウンターメンシュ=亜人、人間のような生き物」と呼んだことに重なります。

 しかし、このあからさまな差別発言を日本のマスメディアはまったく報じませんでした。

 IWJ記者は、東京経済大学の早尾貴紀教授に取材しました。

 早尾教授は、ギャラント国防大臣の言葉には「『殺していい、集団として虐殺していい』という含意がある」と指摘し、10月7日に突如ハマスの攻撃が始まったかのように報じ、イスラエルの自衛権を正当化する日本メディアの報道に「偏向の自覚がない」と批判しました。

 10月7日にパレスチナ自治区ガザを実効支配するハマスが、イスラエルへの奇襲攻撃を行ったことに対し、イスラエルのヨブ・ギャラント国防大臣は9日、ガザ地区への電気、食料、燃料の遮断を表明した上で「私はガザ地区の完全包囲を命じた。電気も食料も燃料もなくなり、すべてが閉鎖される。私たちはヒューマンアニマルズ(※IWJ注:人間動物、人畜、人獣など、人間ではないとの意味)と戦っており、それに応じて行動している」と述べました。

 しかし、日本の大手メディアは、ガザの封鎖は報じても、このギャラント国防大臣のパレスチナ人への「ヒューマンアニマルズ=人獣、人畜」という差別発言を一切報じていません。

 IWJ記者は、これについて、イスラエル人歴史研究家イラン・パペ氏の著書『パレスチナの民族浄化: イスラエル建国の暴力』(法政大学出版局、2017年)の共訳者のひとり、東京経済大学の早尾貴紀教授に取材しました。

IWJ記者「イスラエルのギャラント国防大臣が発言した『ヒューマンアニマルズ』という表現について、ナチスがユダヤ人を『ウンターメンシュ(亜人=人間のようなもの)』と呼んで虐殺の対象としたのと同じではないかと思うのですが」。

早尾教授「イスラエルとパレスチナにおいて、とりわけ占領下のパレスチナ人に対して、『あいつらは人間じゃない、動物だ』という発言というのは、イスラエル社会の中でしばしば見聞きされることです。

 それは、イスラエルの中のアラブ人に対しても同じです。アラブ人、パレスチナ人に対する侮蔑的な表現の手法として、例えば壁の落書きなどにも見られます。

 『ルート181〜パレスチナ―イスラエル 旅の断章』という、2005年に山形国際ドキュメンタリー映画際で最優秀賞を受賞した映画をご存知でしょうか? ミシェル・クレイフィとエイアル・シヴァンという、ユダヤ人とパレスチナ人のふたりの監督によるドキュメンタリー映画なんですが、その冒頭に、建築労働の現場で、現場監督のユダヤ人がパレスチナ人労働者に対して、『あいつらは動物だ』と言い放つ場面があります。

 他民族をまとめて動物や虫として表象すること自体は、レイシズムに広く見られる手法ですが、単に『劣ったもの』という差別以上に、『殺していい、集団として虐殺していい』という含意があると思います。

 私が共訳の形で翻訳した、イラン人研究者ハミド・ダバシ氏の『ポスト・オリエンタリズム〜テロの時代における知と権力』(作品社、2017年)という本の序章には、アメリカの雑誌でイラン人をゴキブリの集合としてイラストで表現した事例が紹介されています。ゴキブリというのは、つまり、駆除対象である、というわけです。ハミド・ダバシ氏も指摘していますが、単なる侮蔑・差別を超えて、虐殺ないし絶滅ということが含意されています。

 ですので、(ギャラント国防大臣の発言も)虐殺や絶滅といった、攻撃的で暴力的なものを正当化するものだと思います」。

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IWJ記者「このギャラント国防大臣の『ヒューマンアニマルズ』という発言は、日本のマスメディアではほとんど報じられていません。こうした日本のマスメディアのイスラエル寄りな報道については、どのように思われますか?」

早尾教授「私もネットメディアでは見ますが、新聞、テレビ等のいわゆる大手メディアでは出てこないですね。

 今回の(武力衝突の)スタートラインが、10月7日に突然始まったかのように報じていることからもわかるように、メディアにはイスラエルに偏っているという自覚が、たぶんないんだと思います。

 もちろんイスラエル市民の犠牲を出したのは事実ですが、偏向の自覚がないままに、ハマスの奇襲が10月7日に突然始まったかのように描いている。なぜこうなったかということを問わずに、まずイスラエルが被害を受け、それゆえに報復が、対抗措置が正当化されている。自衛権の正当化という名前で、イスラエルのやっていることを容認する、ということになっていると思います」。

IWJ記者「7日にハマスが音楽イベントを襲撃したことについて、日本では『休日に和やかに歌い、踊ってた何の罪もない市民が襲撃された』と、許されないテロ行為として報じられています。しかし、海外のジャーナリストの中には、『天井のない監獄』であるガザの目の前で、そうしたイベントを行っていたことの異常さを指摘する声もあります」。

早尾教授「音楽イベントに参加していた人たちに、パレスチナ人への差別意識が明確にあったかというと、それさえもないくらい、無意識・無自覚だったと思います。

 ガザ地区のすぐそばだということは、そこは1947年の国連の分割決議のラインから見ても、おそらくはユダヤ人国家としては認められていない、想定されていない範囲の地域だったはずです。つまりそこは、第一次中東戦争で、軍事的にイスラエルが奪い取った地域です。

 ガザ地区の住民は、7割が難民ルーツのパレスチナ人ですから、構造的に言えば、その場所はパレスチナ人から奪い取った土地であるというのが事実です。

 イスラエル人であれ、外国人であれ、そのイベントに集まっていた人たちに、そういう自覚が、完全に欠落しているということだと思うんです。

 それが文化的なイベントであり、まったく非政治的な集まりなのだから、その人たちが殺害されるのはひどい、というのは、確かにそうなんです。

 ですが、自分たちが略奪した土地にいて、そしてその略奪された人たちが、ガザとのボーダーを挟んですぐそばにいる。奪われた人たちが壁の向こう側にいて、その人たちの目と鼻の先でイベントをやっているわけです。

 それをパレスチナ側の歴史、あるいは占領という視点から見れば、傲慢なイベントであると。歴史感覚や政治感覚においては、あまりにも鈍感な振る舞いだと思います」。

 早尾教授が日本のメディアについて語った「10月7日をスタートラインとして、突如ハマスの攻撃が始まったかのように報じている。偏向の自覚がないまま、なぜこうなったかということを問わずに、自衛権のみを正当化している」という指摘は、まるでウクライナ紛争が、2022年2月24日に、ロシアの侵攻によって突如始まったかのように報じる姿勢と、そのまま重なりあいます。

 岩上安身は2018年に、早尾貴紀教授(収録時は准教授)に4回連続インタビューを行っています。ぜひ以下のインタビューを御覧ください。

 また、2018年3月30日から始まった、イスラエルによるガザでのパレスチナ人殺戮について、IWJはハミド・ダバシ氏が『アルジャジーラ』に寄稿した記事「『西側メディア』と大衆欺瞞」を仮訳して報じました。こちらもぜひ、あわせてご一読ください。

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