トンキン湾事件の再来!? ホルムズ海峡付近での石油タンカーへの「攻撃」という戦争の口実を作る米国!? 2019.5.16

記事公開日:2019.5.16 テキスト
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(文・翻訳:尾内達也 翻訳協力:小野坂元)

特集 中東

 CNNの報道によると、5月12日にホルムズ海峡に近いアラブ首長国連邦(UAE)のフジャイラ沖で、石油タンカー4隻が攻撃を受けたということである。1隻はUAE船籍、もう1隻はノルウェー船籍で、残る2隻はサウジアラビアの保有するタンカーだった。

▲フジャイラ沖(✖印)(Wikipediaより)

 5月13日付けのニューヨーク・タイムズは、「複数の米国高官はこの攻撃にイランが関与したと疑っているが、イランあるいはその代理機関が関係したという決定的な証拠はまだ何もないと警告する高官も数名いる」と報道し、イランの関与を消極的ながら示唆している。

 また、同じ記事の中でニューヨーク・タイムズは「トランプ政権は、証拠になる情報を提供していないが、イランが米国の厳しい経済制裁に反発して米軍を攻撃するために、中東の代理機関を現在、動員中だと主張している」と報道し、今回のタンカー攻撃にイランが関与している印象を作り出している。

▲ニューヨーク・タイムズ本社(Wikipediaより)

 他方、5月13日付けのワシントン・ポストは、「サウジアラビアもUAEもサウジのタンカーが損害を受けた証拠になる写真を撮っていない。サウジのファリ・エネルギー相は、この攻撃で負傷者も石油流出もないので、この攻撃の責任は問わないと述べた」と証拠の写真もなく、実際の損害も生じないことを認める報道をしつつも、続けて「しかし、イランが中東の米軍を攻撃する計画を練っているという機密情報を米国が受けたとする発表後、米国・イランに緊張が高まったと同時にこの事件は起きた」と、まるで、この機密情報が、イランによるタンカー攻撃の根拠であるかのように伝えている。

▲ワシントン・ポスト紙のHP

 ニューヨーク・タイムズにもワシントン・ポストにも、この「タンカー攻撃情報」には米軍の工作の可能性があるという視点がまったく欠けている。この「機密情報」の発表とこの「タンカー攻撃情報」が同時である点こそ、逆に、疑わしいとは考えないのだろうか。

 こうした西側メインストリーム・メディアの報道とはまったく異なる視点から、RTがこの事件を伝えている。RTは、ロシア連邦政府の実質的な国有メディアだが、それだけに、日本を含む西側メディアが米国の発表や外交政策を無批判に前提にしてしまうのと対照的に、米国や西側メディアに対して批判的な視点を維持している。

 5月14日付けのRTの記事「ホルムズ海峡はトンキン湾か? トランプはイランが『なにかこと』を起こせば『重大な損害』を被ると警告」は、このタンカー攻撃問題の核心を突くものである。

▲トンキン湾(Wikipediaより)

 トンキン湾事件とは、ベトナム戦争の引き金になった事件である。1964年8月、北ベトナム沖のトンキン湾で北ベトナム軍の哨戒艇がアメリカ海軍の駆逐艦に2発の魚雷を発射したとされる事件で、これをきっかけに、米国は本格的にベトナム戦争に介入していった。1971年6月にニューヨーク・タイムズが「ペンタゴン・ペーパーズ」を入手し、この事件が米国による捏造と判明したものである。

▲ペンタゴン・ペーパーズをリークしたダニエル・エルズバーグ(Wikipediaより)

 RTのヘレン・バイニスキー記者は、西側のメインストリーム・メディアを批判して次のように述べている。
 
「アラブ首長国連邦(UAE)の沖合で4隻の石油タンカーに損害を与えた『破壊工作』の責任は、『イランもしくはイランの支援を受けた代理人たち』にある。メインストリーム・メディアは、そうした匿名の『米国高官たち』から親切にも提供を受けた情報を息せききって引用している」

▲RTのHP

 さらに、イラクの大量破壊兵器保有という米国の「物語」の嘘を引きながら、西側の記者たちを次のように批判している。

 「どんなシニカルな記者なら『カーブボール』の勇敢さに疑問を提示できるだろうか。つまり、大量破壊兵器神話で百万人のイラク人の運命を閉じ込めているときに、サダム・フセインの『移動式生物兵器実験室』の秘密を漏らした内部告発者の勇気に疑いを挟めるだろうか。だが、騙されやすい記者たちは、匿名の高官がどうしてそう考えたのかを検証することなく、またしても匿名高官の話を鵜呑みにしている」

▲サダム・フセイン・イラク大統領(Wikipediaより)

 バイニスキー記者は、被害を次のようにまとめて、イランが破壊活動を行った可能性が低いことを指摘している。

 「各タンカーの側面に数メートル幅の穴が開いたが、負傷者も死者も出ていない。ペルシャ湾で『破壊』されたタンカーからは一滴の石油さえも流出していない」

 「もしイランが軽率にもこうした紛争のリスクを冒すとすれば、かなり現実的な損害を与えようとするだろう。しかし、そうした一見、自殺行為も、米国の戦争の前哨戦ではよくあることである。シリアのバッシャール・アサド大統領は、バラク・オバマ米国大統領が、アサドが米国流の本気の民主主義を経験しないで済むように、化学兵器を使用するなと警告した悪名高いレッドラインを発表してから、数日後に、化学兵器を使用して自国市民を攻撃したとされている」

▲オバマ前大統領(Wikipediaより。President Barack Obama is photographed during a presidential portrait sitting for an official photo in the Oval Office, Dec. 6, 2012.Official White House Photo by Pete Souza)

 このように、米国による戦争開始のための工作、いわゆる偽旗作戦は、枚挙にいとまがない。現在、進行中のタンカー破壊事件も、米国の戦争開始の口実ではないかと批判的に考えて、事態の推移を注意深く見守る必要がある。

 IWJでは、米国のイラン敵視の背景にイスラエル・米国の緊密な関係があり、イスラエル・米国という2国間の過去に例がない親密な同盟関係が、いかに世界にとって危険なものか、を検証しています。ぜひ、あわせてお読みください。

 また、米国のイスラエル偏愛の背景には、米国のキリスト教福音派の予言成就願望とユダヤロビーの存在がある。IWJではこの問題に造詣の深い放送大学・高橋和夫名誉教授へのインタビューを行っています。現在の中東問題の核心が語られています。ぜひご覧ください。

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