ネタニヤフ氏勝利でパレスチナ国家がさらに遠のく!? イスラエルは好きなことが何でもできる!? 高橋和夫・元放送大学教授がIWJの直撃取材にこたえて警告! 「ホルムズ海峡封鎖でイラン攻撃がありえる」! 2019.4.25

記事公開日:2019.4.25 テキスト
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(文・翻訳:尾内達也 文責:岩上安身)

特集 中東

 4月9日に行われたイスラエル総選挙の最終結果は、ネタニヤフ首相の現与党、右派「リクード」が35議席を獲得した。ガンツ元軍参謀総長率いる中道政党連合「青と白」も35議席を獲得して並んだ。しかし、全体で観ると、右派勢力が過半数の65議席―― リクード(35議席)、シャス(8議席)、ユダヤ・トーラ連合(8議席)、イスラエル我が家(5議席)、右派連合(5議席)、クラヌ(4議席)――を獲得した。

イスラエルのルーベン・リブリン大統領は、過半数の64名の国会議員が首相に次期連立内閣の組閣を勧告した段階で、ネタニヤフ首相に次期政権の成立を求めることになる。

▲ルーベン・リブリン・イスラエル大統領(Wikipediaより)

▲ネタニヤフ・イスラエル首相(Wikipediaより)

 通算13年首相の座にあるネタニヤフ氏が続投した場合、初代首相で「建国の父」とされる故ベングリオン氏の首相在任期間を今夏にも超え、最長となる見通しである。権力者が上記間、権力の座にとどまれば、必然的にその権力は強化され、独裁状態に近づく。ネタニヤフ政権は、その強力な権力を何の目的のために用いるつもりなのか。

イスラエル人がネタニヤフを選ぶのに抵抗がないのは徴兵制のため!?

 イスラエルの選挙結果を受けて、イスラエル出身の家具職人で秩父在住の平和運動家のダニー・ネフセタイ氏は、次のようにツイートしている。

 「徴兵制によって自分の子どもが必ず入隊すると知っていながらイスラエル人が選挙で右派政権を再び選びました。狂っています!」

 「イスラエルの総選挙。右傾化が止まりません。なぜ? 徴兵制によって代々18才の若者全員が入隊します。そして彼らの親が『これから3年戦争がないように・・・』と祈りますがときに しかし! この親たちが入隊反対をしません! なぜなら、この30年前、彼らも入隊をしたから・・・30年後彼らの孫も・・」

 ネフセタイ氏は、日本がどんどん右傾化しイスラエルに似てきていることを非常に懸念している。IWJでは、イスラエルの今と日本の現状について、岩上安身がダニー・ネフセタイ氏にインタビューを行っている。ぜひ、ご覧いただきたい。

 ネタニヤフ氏の勝利を受けて、アラブ世界では、パレスチナ国家樹立の夢が、これまでなく遠のいたという印象が広がっているという。

▲ダニー・ネフセタイ氏(Facebookのプロフィールより)

 4月10日付けのニューヨーク・タイムズによれば、ネタニヤフ首相は、トランプ政権との緊密な関係を利用して、米国にエルサレムをイスラエルの首都と認定させ、ゴラン高原のイスラエルの主権を認めさせただけでなく、選挙の投開票日の数日前に、ネタニヤフ氏が勝った場合、ヨルダン川西岸の少なくとも一部を併合すると公約を述べたという。

 こうした選挙戦略がネタニヤフ氏の勝利につながったと、ニューヨーク・タイムズのベン・ハバード記者は分析している。つまり、イスラエル国民の多くがネタニヤフ首相の唱えた強硬策を支持した、ということである。シオニズムが、「民主主義」という「手段」で正当化されてしまった感が否めない。

 米国の影響も見逃せない。米国によるイラン核合意離脱やパレスチナ自治政府への経済制裁、選挙直前に行ったイラン革命防衛隊のテロ組織認定なども、米国によるネタニヤフ再選への強力な支援となった可能性は否定できない。

 前述の10日付けのニューヨーク・タイムズ紙の記事の中で、アラブ首長国連邦の政治学者、アブダルクハレク・アブドゥラ氏は、パレスチナの悲惨な現状についてこう述べている。

 「アラブ民族は最悪の状態にある。パレスチナ人はかつてないほど分断され、イスラエルはかつてないほど強力になっている。トランプがイスラエルを支援しているため、イスラエルは好きなことが何でもできる」。

ホルムズ海峡封鎖になれば米・イスラエルによるイラン攻撃がありえる!?

 ネタニヤフ再選と同時に、米国とイスラエルによるイラン敵視政策はにわかに緊張の色を帯びてきた。

 ポンペオ米国務長官は、4月22日、イラン産原油の輸入を全面的に禁止すると発表した。これによって、日本や中国を含む8か国の国と地域の輸入特例措置が解除され、イラン原油を輸入した場合、米国からの制裁を受けることになる。

 IWJは再び高まる中東での戦争の危機について、高橋和夫・元放送大学教授に現状をどう見るべきかうかがった。

 「この米国の措置は、イスラエル総選挙の後に発表されたもので、イスラエルの有権者に影響を与え、ネタニヤフ再選を直接後押したものとは言えない。イスラエルは米国にイラン叩きをして欲しいと思っていたのは間違いないが、米国のイラン原油全面禁輸にイスラエルの総選挙の結果が影響を与えたという証拠は文献的になかなかない。

 ネタニヤフが総選挙で勝とうが負けようが、米国は全面禁輸に踏み切るつもりだったのではないだろうか。ネタニヤフの対立候補の『青と白』のガンツ候補もイランと交渉しようという感じはなかった。この米国の措置は、イラン革命防衛隊のテロ組織認定など、一連のトランプ政権によるイラン叩きの最終段階が来たものだと観ている」と述べている。

 また、高橋元教授は、イランがその報復として警告しているホルムズ海峡の封鎖が行われた場合、米国・イスラエルによるイラン攻撃はありえると次のように懸念を示した。

 「イランが本当に海峡を封鎖してしまえば、その可能性はある。もっともありそうなのは、ホルムズ海峡のイランの艦艇を米軍が攻撃して、米国側がホルムズ海峡を開け続けるというシナリオである」

 また、高橋元教授は「これまでイランは米国による制裁で暴発してしまえば、米国に攻められることがわかっていたので、それを避けてきたが、経済制裁が続けば暴発の可能性が徐々に高くなってくる」と危惧を示している。

 仮にホルムズ海峡が封鎖されてしまえば、原油価格は高騰し70年代のオイルショックから狂乱物価の二の舞になるかもしれない。

 この米国によるイラン原油全面禁輸がホルムズ海峡の封鎖を招き、世界経済への打撃になるかどうか。その鍵を握っているのは、ロシアの動向である。

 ロシアがイランをどのように支援するか。たとえば、米軍のベネズエラ侵攻を食い止めているロシア製の長距離地対空ミサイルS-300(Antey 2500バージョン)システムは、戦闘機、爆撃機、戦闘攻撃機、弾道ミサイルさえも、標的にする対空能力がある。このシステムの命中率は85%~90%で、米軍の最新鋭戦闘機F35にも対応している。

▲ロウハニ・イラン大統領(Wikipediaより)

 S-300システムは、Wikipediaでも記述されているとおり、2016年8月には、イラン中部フォルドゥの原子力施設付近に配備されている。2017年3月4日には、イラン軍はS-300の発射実験を実施し成功したと発表している。

 このように、イランは領域内に高性能のロシア製のS-300対空システムをいつでも実戦配備できる状態にあり、リビアのように米国による一方的な爆撃を受けるとは考えにくい。米国によるイラン原油全面禁輸の波及効果は、ロシアのイラン領内での軍事動向という視点から、引き続き注目していく必要がある。

イスラエルが西岸のパレスチナ人を追放する!

 4月8日付けのニューヨーク・タイムズは、ネタニヤフ首相が、再選キャンペーンの中で、極右の有権者向けに行ったヨルダン川西岸の一部併合という公約について、パレスチナ人たちの声を紹介している。

 ニューヨーク・タイムズのリチャード・ペレス-ペンナ記者によると、多くのパレスチナ人は、ネタニヤフの考え方はほとんど変わっていないと言っているという。というのは、二国間の和平プロセスはとうに死んでしまい、最初からイスラエルは併合の方向を向いていたからだという。

 ヨルダン川西岸の都市、ラマラの活動家、ファディ・カランは「事実は、併合はこの50年ずっと行われてきた。ただ、直接併合だと言わなかっただけだ」と述べている。

 ラマラを拠点にする政治学者で世論調査の専門家、カーリル・シカリは次のように述べている。

 「パレスチナ市民の多くは、すでにこれがイスラエルの最終目標だと考えている」「実際には、パレスチナ市民はもっと悪いことを考えている」「つまり、パレスチナ人はイスラエルが西岸のパレスチナ人を追放すると考えている」

▲ヨルダン川西岸の都市、ラマラ(Wikipediaより)

再選されたら、西岸地区のイスラエルの主権を主張してゆく!

 ネタニヤフ首相は、もし再選されたら、西岸地区のイスラエルの主権を主張してゆくと選挙公約ではっきりと述べている。こんなことを行えば、国際法違反であるばかりか、オスロ合意の破棄につながる。

 共謀するイスラエルと米国。そしてこの二か国の悪いところを追随していく安倍政権。この三国が、ネタニヤフ首相の5期目続投を踏まえて、軍事国家化、シオニズム、レイシズムなどでさらに協調を強め、世界から孤立した「悪の枢軸」になっていくことが懸念される。

▲トランプ大統領(Wikipediaより Official portrait of President Donald J. Trump, Friday, October 6, 2017. Official White House photo by Shealah Craighead)

 岩上安身は昨年、イスラエルによるパレスチナ弾圧の起源「大災厄(ナクバ)」について、東京経済大学の早尾貴紀准教授に、連続インタビューを行っている。

 またキリスト教国家である米国がなぜこれほどまでにイスラエルひいきに傾くのかという謎を解くために、「非ユダヤ人のシオニズム」を意味する「ジェンタイル・シオニズム」について、「パレスチナの平和を考える会」事務局長・役重善洋氏にインタビューを行っている。

 ぜひ、以下のURLよりご覧いただきたい。

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  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    第五次中東戦争という悪夢が始まりかねない。

    ネタニヤフ氏勝利でパレスチナ国家がさらに遠のく!? イスラエルは好きなことが何でもできる!? 高橋和夫・元放送大学教授がIWJの直撃取材にこたえて警告! 「ホルムズ海峡封鎖でイラン攻撃がありえる」! https://iwj.co.jp/wj/open/archives/447493 … @iwakamiyasumi
    https://twitter.com/55kurosuke/status/1122085393619271680

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