トランプ米大統領が「イラン核合意」離脱を表明! きな臭さが一挙に高まったのはイスラエルのネタニヤフ首相がイランによる核兵器開発の「証拠」公表から! 最大の関心事はトランプ大統領がどう動くかに!! 2018.5.9

記事公開日:2018.5.10取材地: テキスト
このエントリーをはてなブックマークに追加

(文:松本聰)

特集 中東

 ドナルド・トランプ米大統領は2018年5月8日、国連安保理・常任理事国5ヶ国(米国・英国・フランス・中国・ロシア)にドイツを加えた6ヶ国(P5プラス1)とイランとの間で結んだ核合意から離脱すると発表した。同時に、米国が合意に基づいて解除していた制裁を「最高レベル」で再開すると強調した。

▲核合意離脱を表明したトランプ大統領

 「イラン核合意」をめぐり、きな臭さが一挙に高まった発端は、トランプ大統領の「合意」を継続する大統領令への署名が2週間後に迫った4月30日、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がイランの核兵器開発に関して、5万5000ページの文書と183枚のCDからなる「証拠」を公表したことだった。

 これはトランプ大統領に対し、「イラン核合意」からの離脱を求める動きであることは、5月2日の日刊IWJガイドで既報の通りである。ガイドでは「イラン核合意」についてもまとめているので、御一読いただきたい。

IAEAは無論、イスラエル軍の参謀総長でさえ疑問を抱くイランの「核開発」

 このイスラエルが示した「証拠」について、国際政治学者の高橋和夫さんはTBSラジオで以下のような指摘をしている。

 「イランが核兵器の開発計画を持っていたということは周知の事実です。2005年前後からイランは核兵器開発を放棄していますが、それ以降の資料は出てきていません。詳細という点では非常に興味深い資料ですが、基本的には新味がないというのが多くの専門家の見方です」

 IWJでは、5月17日(木)午後2時30分から岩上安見による高橋和夫氏インタビューを中継する予定である。こちらもぜひ御覧いただきたい。

 イスラエル軍のガディ・エイゼンコット参謀総長でさえ、3月末には、イスラエルのハアレツ紙の取材に答えて「同合意は、種々の欠陥はあるものの、10年から15年の間よく機能しイランの核への野望を押しとどめている」とはっきり述べている。

 さらに、IAEAは「2009年以降、イランが核兵器開発に携わっていると言う信頼できる指摘はまったくない」と語っており、核協議の終了を警告している。「核合意からの離脱は核物質の監視ならびに共同の政治的協議にとって大きな損失だろう」と、IAEA事務局長の天野之弥氏は語っている。

 トランプ大統領による「イラン核合意」への署名の期限となる5月12日が近づくにつれ、世界の動きもあわただしくなっていった。

核合意離脱後、米国が次に考えていることは?

 アントニオ・グテーレス国連事務総長は5月3日、新たな合意文書が打ち立てられないかぎり、この合意を離脱するようなことを考えてはならないと釘をさし、「JCPOA(イランの核問題に関する最終合意文書「包括的共同作業計画」は重要な外交的勝利だと私は思う」と述べていた。

 4月24日・27日に相次いで訪米したエマニュエル・マクロン仏大統領とアンゲラ・メルケル独首相につづいて、5月5日にテリーザ・メイ英首相がトランプ大統領と電話会談。ホワイトハウスは、「トランプ大統領が『イランが二度と核兵器を保有することがないとの確証を望んでいる』と強調した」と発表している。

 翌6日からは、イラン核合意維持を表明していたボリス・ジョンソン英外相が2日間ワシントンを訪問。現地の記者会見では「英米そして欧州のパートナーたちは、中東地域の安定を脅かすイランのこのような振る舞い、核兵器開発やヒズボッラーのようなテロ組織支援、ミサイル開発計画に断固たる態度で立ち向かうために一致団結している」と強調した。

 一方の当事者であるイランのロウハニ大統領は、意見を二転三転させている。彼は5月6日、米国の合意からの離脱を「かつてないほどに後悔させられることになろう」と述べていたが、その翌日7日には、「欧米諸国がイランの期待を保証するならテヘランは合意にとどまる」と言を翻している。

 イラン系フランス人で、パリの社会科学高等研究院教授(社会学)のFarhad Khosrokhavar氏は「イスラエルとサウジアラビアは、(対イランでは)米国が無条件で支持してくれると感じていることもあり、ここ20年で最も戦争の危険が高まっていると言える」と警鐘を鳴らしている。

 米離脱後の最大の関心事は、トランプ大統領がどう動くかに移ってきた。

 イラク戦争を目の当たりにしたイスラエルの望みは、米軍がイランにも侵攻し、政権転覆することだ。ジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の好戦的姿勢から、米国はイランを軍事攻撃し、「中東大戦争」が始まるのではないか。ジャーナリストの田中宇氏は自身のニュースサイトでそんな一般的な予測を書いた後、現実を直視ししてこう言う。

 「トランプはイスラエルの言いなりの中東和平案を作り、サウジに対し、その和平案をパレスチナ人に了承させろと求めている。この和平案でパレスチナ問題が解決したことにして、イスラエルとサウジを連合させ、その連合体にイラン潰しを主導させ、米国がそこに協力するのがトランプのシナリオだ」

 田中氏の分析通り、これまで激しく敵対してきたイスラエルとサウジアラビア両国だが、サウジアラビアのムハンマド皇太子は4月2日付の米アトランティック誌のインタビューで、「イスラエルの人々は自国の土地で平和に暮らす権利がある」と述べたと毎日新聞が伝えている。

 5月12日(土)午後2時30分からは、岩上安見が田中宇氏にインタビューする予定である。ご期待いただきたい。

IWJの取材活動は、皆さまのご支援により直接支えられています。ぜひ会員にご登録ください。

新規会員登録 カンパでご支援

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です