「イスラエルがどんな戦争犯罪、人道に対する罪を行っても一度も裁かれなかった。こういう国際社会の『伝統』がジェノサイドを可能にしている」!!〜岩上安身によるインタビュー第1144回 ゲスト 早稲田大学文学学術院教授・京都大学名誉教授・岡真理氏 2024.2.2

記事公開日:2024.2.11取材地: テキスト動画独自
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(文・IWJ編集部)

特集 中東
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 2024年2月2日、岩上安身は早稲田大学にて、早稲田大学文学学術院教授・京都大学名誉教授である岡真理氏にインタビューを行った。

 岡教授は、アラブ文学の専門家である。東京外国語大学アラビア語科・同大学大学院修士課程の在学中に、パレスチナ人作家ガッサーン・カナファーニーの小説を通してパレスチナ問題、アラブ文学と出会った。エジプト・カイロ大学に留学、在モロッコ日本国大使館専門調査員、京都大学大学院人間・環境学研究科教授を経て、早稲田大学文学学術院教授に就任した。

 2023年10月7日に起きた、パレスチナ自治区ガザの武装抵抗勢力によるイスラエルへの奇襲攻撃と、その報復としてのイスラエルによるガザへの侵攻を受けて、岡教授は10月20日に京都大学で、23日に早稲田大学で、緊急講演を行った。

 さらに岡教授は、この2つの講演内容をまとめた『ガザとは何か〜パレスチナを知るための緊急講義』(大和書房)を、2023年12月24日に上梓された。

 岩上安身によるインタビューでは、この本の内容と、その後の4ヶ月間に行われているイスラエルによるパレスチナ人ジェノサイド(民族浄化)、南アフリカによる国際司法裁判所(ICJ)への提訴とICJが命じた仮処分命令、そのICJの仮処分命令への報復のようにイスラエルが突如指摘した、10月7日の奇襲攻撃への国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)職員の関与と、米欧日などによるUNRWAへの資金拠出停止などについて、詳しく話をうかがった。

 岡教授は、日本で「ハマスによるテロ攻撃」と報道されている、10月7日の奇襲攻撃について、日本のメディアの偏った報道姿勢を批判した。

 ひとつは、攻撃の主体がハマスだけではなく、「ハマス主導による、さまざまなガザのグループ諸派による共同の作戦」であるということである。

 つまり、日本では「ガザ地区を実効支配しているイスラム主義武装勢力」であるハマスによるテロ攻撃だと報じられているが、2006年の第2回パレスチナ評議会選挙で勝利したハマスは、「イスラム主義を掲げる抵抗組織」であり、10月7日の奇襲攻撃は、植民地帝国主義によって建国されたイスラエルによる暴力や支配、2007年から続くイスラエルによるガザ封鎖での、過酷な人権侵害に対する、パレスチナ人の抵抗運動だという指摘である。

 もうひとつは、10月7日の惨劇を生き延びたイスラエル人女性、ヤスミン・ポラットさんの証言である。ポラットさんは、イスラエル軍が、キブツ(生活共同体)に逃げたイスラエル人を殺害し、キブツにあるイスラエル人の住宅を破壊したと、イスラエルの国営ラジオで証言している。ポラットさんは、彼女を捕虜にしてキブツ・べエリに立て籠ったパレスチナ人戦闘員が、「非常に人間的に扱ってくれた」とも述べている。

 しかし、この証言は、イスラエルメディアの『ハアレツ』紙でさえ報じたにもかかわらず、日本の主流メディアではまったく取り上げられない。岡教授は、「日本政府はいろいろな形で、このジェノサイドに共犯関係になっている。それにメディアも加担している」と述べ、「日本のメディアが、いったいガザに関してどういう報道を行ったのか、という検証は、絶対に必要だ」と強く指摘した。

 このヤスミン・ポラットさんの証言について、IWJは2023年11月6日の【IWJ号外】で報じた。

 また、元国連大量破壊兵器廃棄特別委員会(UNSCOM)主任査察官のスコット・リッター氏による「10月7日にイスラエル人を最も殺したのは、ハマスや他のパレスチナ人派閥ではなく、イスラエル軍そのもの」だという指摘も紹介している。

 岡教授は、パレスチナ問題について「決して、今起きていること、あるいはその暴力の根源というものを理解するのに、聖書までさかのぼったり、あるいはクルアーンを読んだりする必要はない」と述べ、「端的に言って、これはヨーロッパにおけるレイシズムの問題であり、植民地主義的侵略の話であり、それに対してパレスチナ人が、占領及び植民地支配からの解放を求めて抵抗して闘っている。構図自体は非常にシンプルだ」と断言した。

 その上で岡教授は、「イスラエルという国家は、パレスチナ人に対する暴力的な民族浄化によってつくられた」と指摘し、ヨーロッパの植民地主義とレイシズム、民族浄化について、次のように語った。

 「ヨーロッパ人は、非ヨーロッパ人を、自分たちとは対等な人間であるというふうにはみなさなかった。(中略)

 その後、普遍的人権という考え方が誕生して以降もなお、それは続いていく。

 ですから、自分たち以外のものを、劣等性、あるいは同じ人間と見なさないという発想は、ナチスだけではなく、それはずっとヨーロッパの帝国にあったし、それを近代において、日本も我がものにすることによって、植民地支配を行った。

 パレスチナに自分たちの国をつくるんだ、というシオニストも、やはりそうしたパレスチナに住んでいるアラブ人というものに対して、ヨーロッパのキリスト教徒が持っていたのと同じレイシズムを持っていた。

 それがここに来て、本音があらわになった。

 だからこれは、私はナチス・ドイツだけでなく、そうした近代の500年のヨーロッパの植民地主義の歴史の中でとらえないといけないのではないかと思います」。

 さらに岡教授は、イスラエルのシオニストが、ガザのパレスチナ人を殲滅したいと考える理由を、次のように語った。

 「封鎖されたところに閉じ込められて、こんな生活、こんな人生、こんな未来に希望もないような、とにかく支援で生き延びるのがやっと、というような、そんな生活をしていて、それがいいなんて思う者は誰もいないですよね。

 『なぜ自分たちはこういう状況に置かれているのか』と言えば、イスラエルが封鎖しているからであり、『なぜ75年経っても故郷に帰れないのか』と言えば、イスラエルが帰還を認めていないからであり、そうすると、このガザのパレスチナ人、その7割は、(イスラエル建国によって住んでいた土地を追われた)難民なわけです。

 彼らが求めるのは、とにかく国際社会がパレスチナ人の民族的権利だと言っている、その実現。すなわち、故郷への帰還であり、占領からの解放であり、人間として人間らしく生きることである。

 それは、この人たち(イスラエルの閣僚などシオニスト)が、維持存続させようとしている、ユダヤ人至上主義国家であるところのイスラエルというものの解体を意味するわけですから、そういう意味では、ハマス支持者であろうとなかろうと、ガザのパレスチナ人というのはみんな、今あるようなイスラエルのありようにあらがう者たちである。

 だから殲滅の対象。だから(パレスチナ人は全員)ハマスとイコールなんだという、そういうことになると思います」。

 岡教授はこのインタビューの中で、パレスチナ人権センター代表のラジ・スラーニ弁護士が「とにかくパレスチナに国際法を適用してほしい、それだけでいいんだ」と語ったことをあげ、次のように語っている。

 「もう、もうそれだけで、これら(イスラエルによるパレスチナ人殺害の)すべてが不可能になるんです。

 言いかえれば、これまでイスラエルが、どんな戦争犯罪、どんな人道に対する罪を行っても、それが一度も裁かれてこなかった。こういう国際社会の、まさに『伝統』が、今のこのジェノサイドを可能にしてしまっているんです」。

■ハイライト

  • 日時 2024年2月2日(金)18:30~
  • 場所 早稲田大学戸山キャンパス(東京都新宿区)

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