IWJ代表の岩上安身です。
10月7日に起きた「ハマスの奇襲攻撃」の際、音楽祭会場にいたイスラエル民間人を殺害をしていたのは、ハマスだけではなく、イスラエル軍だった、という衝撃の情報が出てきました!
11月14日、元国連大量破壊兵器廃棄特別委員会(UNSCOM)主任査察官のスコット・リッター氏が、「10月7日のハマスによるイスラエル攻撃――今世紀最も成功した軍事襲撃」を発表し、レイム音楽祭襲撃事件(別名「レイムの大虐殺」)において、「10月7日にイスラエル人を最も殺したのは、ハマスや他のパレスチナ人派閥ではなく、イスラエル軍そのものであることが判明した」と主張しました。
- The October 7 Hamas Assault on Israel――The Most Successful Military Raid of this Century(Scott Ritter Extra、2023年11月14日)
イスラエル国防軍もまた、自国の市民を殺害していたのであれば、今、イスラエルが行っているガザ地区の包囲・地上作戦の「正当性」は一切なくなります。
自国民を殺しておいて、ハマスに罪をなすりつけ、「報復」と称してハマスだけでなく、罪のないパレスチナの民間人を無差別大量虐殺し続けているのですから、これが事実なら「悪魔の所業」です!
日本政府(外務省)はこのようなイスラエル支援を表明していますが、日本政府と岸田政権は虐殺に加担するのか、という問い詰めを、我々国民は、突きつけていかなければなりません。
イスラエルは、自衛のため、報復のためと主張してガザでの大虐殺を行い続けていますが、その起点となった「10月7日のハマスの奇襲攻撃」に、イスラエルの嘘がまぎれこんでいたら、イスラエルの不道徳は決定的なものとなります。
IWJは、260人以上の犠牲者を出した音楽祭襲撃事件を生き延びたイスラエル人女性、ヤスミン・ポラトさんの証言がイスラエル公営ラジオで、「イスラエル軍が自国の市民を射殺した」と証言したことをご紹介しました。
ポラトさんは、音楽祭の会場から数キロ先のキブツ・べエリまで逃げ、そこである夫婦に匿ってもらいますが、9日にイスラエル軍がやってきて、人質になっているイスラエル市民もテロリストを区別せず、猛烈な十字砲火を浴びせかけ、多くのイスラエル市民が亡くなったと証言しました。
音楽祭襲撃事件でパートナーと多くの友人を失ったポラトさんが偽証する動機は見当たりません。その証言も具体的で説得力があります。
ポラトさんの証言を検証・紹介した『エレクトリック・インティファーダ』(10月16日)は、ハマス軍上級司令官であるサレハ・アル・アロウリ氏が、イスラエルがいわゆる「ハンニバル指令」(イスラエル軍が捕虜となることを許さず、ある兵士が捕虜となれば、その捕虜を殺害することになっても圧倒的な武力を行使することを認めるプロトコル)を用いた可能性があると述べたことを紹介しています。
9日にキブツ・ベエリを襲撃したイスラエル軍は、同じように、レイムの音楽祭会場で作戦を行った7日の深夜から8日の朝にかけて、「ハンニバル指令」を捕虜になった兵士だけでなく、人質となったイスラエル一般市民に対しても、拡大解釈をして、「応用」して軍事行動し、殺害した可能性はありえます。
以下、スコット・リッター氏による「10月7日のハマスによるイスラエル攻撃――今世紀最も成功した軍事襲撃」の全文仮訳の前半を、ご紹介します。
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10月7日のハマスによるイスラエル攻撃
今世紀最も成功した軍事襲撃
スコット・リッター
今日、世界が直面している多種多様な地政学的問題を評価するためのさまざまな分析アプローチについて議論する際に、私がよく引用する真理がある。問題の本質と無関係な解決策は、文字通り、解決策にはならない。
イスラエルは、ハマスが、ガザ・バリア・システム(※ガザを封鎖するシステム)の重要な部分を構成する、さまざまなイスラエル軍基地や軍事施設化された入植地(キブツ)に対して行った攻撃を、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロになぞらえた大規模なテロ行為とみなしている。
イスラエルは、死者数(約1200人。死者のうち200人がパレスチナ人戦闘員であったことが判明したため、イスラエルは下方修正を発表した)を引き合いに出し、集団レイプ、子供の斬首、非武装のイスラエル民間人の殺害など、ハマスが行ったと主張する多種多様な残虐行為を詳述することで、この特徴(※残虐さ)を裏付けている。
<ここから特別公開中>
イスラエル人犠牲者のほぼ3分の1は、軍人、警備員、警察官である。さらに、10月7日にイスラエル人を殺したナンバーワンは、ハマスや他のパレスチナ人派閥ではなく、イスラエル軍そのものであることが判明した。
最近公開されたビデオ(※IWJ注1)では、イスラエルのアパッチ・ヘリコプターが、キブツ・レイム近郊の砂漠で開催された「ノヴァ・スッコト・ギャザリング(※Supernova Sukkot Gathering、音楽祭を指す)」から逃げようとするイスラエル市民に無差別に発砲している。イスラエル政府がハマスの背信行為の例として示した車両の多くは、イスラエルのアパッチ・ヘリコプターによって破壊された。
(※IWJ注1)スコット・リッター氏はビデオを特定していないが、イスラエル国防軍が『X』に投稿した動画が最も最初のものである。
- Israel Defense Forces(@IDF)(日本時間2023年10月8日午後6時25分、現地時間8日午前11時25分)
同様に、イスラエル政府は、ハマスによって殺害されたとする民間人約112人の死者数を引き合いに出し、「レイムの大虐殺」と呼んでいることを広く公表している。
しかし、生き残ったイスラエル市民や戦闘に参加した軍人の目撃証言によれば、殺害された人々の大半は、イスラエル軍兵士や戦車が、市民が隠れているか、ハマスの戦闘員が人質にしている建物に向けた砲撃で、死亡したという。
イスラエル軍がレイムを奪還するのに2日かかった。それは、戦車が民間人の住宅に発砲し、居住者の上に倒壊させ、しばしば炎上させ、中にいた人々の遺体を焼失させた後であった。
イスラエル政府は、キブツで人骨を確認するために法医学考古学者のサービスを利用しなければならなかったことを公表し、ハマスが居住者の家を燃やしたとほのめかしている。しかし、実際は、イスラエルの戦車が、破壊と殺戮を行ったのだ。
この光景(イスラエルのアパッチヘリコプターによるイスラエル市民への攻撃映像)は、ガザのバリア・システムに沿った他のキブツでも繰り返された。
イスラエル政府は、キブツを、純粋に民間人であるかのように扱っているが、いわゆる『民間人』と呼ばれる住民から集められた複数のキブツの武装警備チームが、ハマスの攻撃者を撃退するために時間内に動員できたことを公表している。
現実には、すべてのキブツが、ハマスによって武装野営地として扱われ、あたかも軍事目標であるかのように攻撃されなければならなかったのである。
さらに、イスラエルが国防軍(IDF)の数個大隊を、ヨルダン川西岸に移転させるまでは、各キブツには約20人の国防軍(IDF)兵士が駐屯していた。ハマスがこの攻撃を1年以上前から計画していたことを考えると、ハマスとしては、この20人の国防軍(IDF)兵士がまだ各キブツに駐留していると想定し、それに従って行動しなければならなかった。
イスラエル政府は、ハマスが40人の子どもの首をはねたという主張を撤回せざるを得なくなり、ハマスがイスラエル人女性のレイプや性的暴行に関与したという信頼できる証拠を何一つ示していない(※IWJ注2)。目撃者の証言によれば、ハマスの戦闘員たちは、規律正しく、断固とした態度で、攻撃においては致命的であったが、民間人の捕虜を扱うときには礼儀正しく、穏やかであったという。
(※IWJ注2)信頼できる証拠を何一つ示していない:日刊IWJガイド10月20日号で、イスラエルのプロパガンダが嘘であることを示した。
・はじめに~「ハマスが子ども40人を斬首」「イスラエル人女性を強姦」というデマ報道を拡散したバイデン米大統領!「ハマスは民間人を殺害、イスラエルの攻撃は戦争法を尊重」と見え透いた嘘を重ねて、イスラエルによるパレスチナ人に対する虐殺を支援! 18日のテルアビブでの演説では、またしても「子どもたちは虐殺され、赤ん坊は屠殺された。家族全員が虐殺された。強姦、斬首、生きたまま焼かれた」根拠不明のデマで憎悪を煽り立て、「米国は永遠にユダヤ人国家のために立ち上がる」と宣言!
会員版:(日刊IWJガイド、2023.10.20日号)
非会員版:(日刊IWJガイド、2023.10.20日号)
なぜ、イスラエル政府は、10月7日のハマスによるガザ防壁システムへの攻撃をテロ行為と決めつけるような、虚偽で誤解を招くようなシナリオをわざわざ作るのか、という疑問が生じる。
なぜなら、10月7日に起きたのはテロ攻撃ではなく、軍事襲撃だったからだ。この2つの用語の違いは、10月7日の出来事をテロ行為とレッテルを貼ることで、イスラエルは莫大な損失の責任を自国の軍事、治安、情報サービスからハマスに転嫁している。しかし、もしイスラエルが、ハマスのしたことが実際には軍事作戦であったと認めるなら、イスラエル軍、治安当局、諜報機関の能力が問われることになるし、彼らの作戦を監督・指揮する政治指導者の責任も問われることになる。
もしあなたがイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相なら、これは一番避けたいことだ。
(以下、後編に続く)
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