IWJ代表の岩上安身です。
24日付の米国の独立系メディア『グレイゾーン』が、イスラエルのシオニストの仰天計画をすっぱ抜きました!
『グレイゾーン』のキット・クラーレンベルグ記者は、「シオニストのシンクタンクがパレスチナ人大量虐殺の青写真を発表」という記事の中で、テルアビブに拠点を置くシンクタンク、国家安全保障とシオニスト戦略研究所が、自称ユダヤ国家最終解決策の青写真を発表したと報じたのです。
- Zionist think tank publishes blueprint for Palestinian genocide(グレイゾーン、2023年10月24日)
このシオニストの最終解決案なるものは、「ガザの全住民のエジプトへの移住と最終的な生活再建のための計画:経済的側面」なのです。
しかも、この計画は、「ガザ地区全体から避難するまたとない稀な機会」を利用すると、現在のガザ地区へのイスラエル軍の侵攻と、ガザ北部から南部への退避命令を前提としていることを、はっきりと記述してあります。ハマスの攻撃、それに対するイスラエル側の報復、というシナリオは、ガザからパレスチナ人をエジプトの砂漠へ追放するという目的のための布石だった、ということになります。
このヘブライ語の報告書を見ると、冒頭で、「現在、エジプト政府と連携してガザ地区全体から避難するまたとない貴重な機会がある」と明記しているのです。
- ガザの全住民のエジプトへの移住と最終的な生活再建のための計画:経済的側面(国家安全保障とシオニスト戦略研究所、2023年10月25日閲覧)
キット・クラーレンベルグ記者は、この報告書の筆者とその目的を、こう述べています。
「国家安全保障とシオニスト戦略研究所のウェブサイトにヘブライ語で掲載されたこの論文は、イスラエルの与党リクード党のリバタリアン会派のリーダーでもある同研究所の『投資マネージャー兼客員研究員』アミール・ワイトマンが執筆した。
文書の冒頭では、隣国エジプトには1000万戸の空き家があり、パレスチナ人を『即座に』受け入れることが可能であると述べている。そしてワイトマンは、『この持続可能な計画は…イスラエル、エジプト、アメリカ、サウジアラビアの経済的、地政学的利益に合致する』と読者に断言した」。
驚くべき計画です。これはエジプトにガザの全住民を追放する「第2次ナクバ計画」にほかなりません。あるいは「最終永久追放計画」というべきでしょうか。欧州のユダヤ人を集めて、パレスチナに追放しようと考えたクリスチャン・シオニズムの、ユダヤ版でもあります。
欧州で散々にやられた虐待を、今度はパレスチナの地で現住民に対して同じことをしてやろうというのです。他民族への虐待の連鎖、民族浄化という、究極の暴力の連鎖です。
この報告書は、その追放計画の目的を次のように記しています。
<ここから特別公開中>
「この文書では、経済的実現可能性の高い持続可能な計画が提示されます。イスラエル、エジプト、米国、サウジアラビアの経済的および地政学的利益になり、アラブ人全体の人道的再定住と復興のための即時的で現実的かつ持続可能な計画です」。
さらに、『グレイゾーン』のクラーレンベルグ記者は、これはガザの避難命令を利用したものであり、イスラエル政府内で、ここ数日進めてきた強制移住計画に呼応すると指摘しています。
「ワイトマンの民族浄化案は、イスラエル軍によってガザ北部の全市民に下された避難命令を利用しながら、イスラエルの元高官たちによってここ数日進められてきた強制移住計画と呼応している」。
しかも、この報告書では、この第2次ナクバは、「金で解決できる」と断言しているのです。暴力で殺しつつ、脅しつつ、「金を払うから立ち退け」と言う。これではまるで壮大な「地上げ」です。
「ワイトマンの不吉な青写真は、イスラエルがこれらの不動産を50億ドルから80億ドルの費用で購入することを想定している。これはイスラエルのGDPのわずか1~1.5パーセントにすぎない
『ガザを浄化するために必要なこれらの金額は、イスラエル経済との関係ではごくわずかだ』とワイトマンは指摘する。『この困難な問題を解決するために個々の数十億ドルを投資することは、革新的で安価かつ持続可能な解決策である』。
ワイトマンは、彼の計画が、事実上イスラエルが『ガザ地区を買う』ことになることを認め、その移転はシオニストにとって『非常に価値のある投資』になると主張した。彼は、この地域の『土地の条件』は、イスラエル人入植者に『多くの』高い生活水準を提供し、したがってエジプト国境近くのグーシュ・ダンでの入植地の拡大を可能にし、『ネゲブ(※注:イスラエル南部の砂漠地方)での入植に多大な推進力を与える』と主張した」。
先祖代々ガザに住んでいた住民の、ガザに対する愛情や思い出を一顧だにせず、あきれるほどに、自己中心的です。しかも、この問題を金で解決するという米国そっくりの傲慢さと卑しさです。
この計画で移住先となるエジプトについて、報告書は、多大の利益を即時にもたらすので、歓迎するはずだと記述してあると、クラーレンベルグ記者は述べています。
「エジプトはこれまで、南部のラファ国境を通過するガザ住民の大量脱出を求めるイスラエルの圧力を拒否してきたが、ワイトマンは、カイロはパレスチナ難民の大量脱出を『即時の刺激』として歓迎し、『アル=シシ政権に多大かつ即時の利益をもたらす』と主張した」。
さらに、欧州とサウジアラビアも歓迎すると報告書は主張します。
「ワイトマンは、フランス、ドイツ、サウジアラビアを含むカイロの主要債権者は、パレスチナ人の永久追放に対する『イスラエルの投資』によってエジプト経済が活性化することを歓迎するだろう、と主張した。
彼は、西ヨーロッパは『ガザの全住民がエジプトに移される』ことを歓迎するだろうと推測している。一方、リヤドは、『(住民の)ガザ地区からの撤退は、イランの重要な同盟国がなくなることを意味する』ので、この動きを受け入れると予想している」。
そして、このパレスチナ問題の最終解決というふれこみのガザ住民のエジプトへの強制移住が、実は、イスラエルの大きな実利を意味していることも、クラーレンベルグ記者は暴露しているのです。
「ガザの民族浄化(エジプトへの強制移住)は、『イスラエルに対する憎悪の炎を燃え上がらせる、絶え間なく繰り返される戦闘の終結を意味する』。さらに、『ガザ問題を解決することで、イスラエルがガザ沿岸付近で押収した膨大な(ガスの)埋蔵量から、エジプトへのイスラエル産ガスの安定供給と液化の増加が保証される』」。
さらに、報告書は、パレスチナ人が強制移住のチャンスに飛びつくと都合のいいシナリオすら描いています。
「パレスチナ人は、『ハマスの支配下で貧困にあえぐ』よりも、強制移住のチャンスに飛びつくと予想される。そのためイスラエルは、彼らがガザからカイロに『移住』するための『適切な条件を整える』必要がある。ワイトマンは、ガザの200万人の住民はエジプトの総人口の2%にも満たない、大海の一滴だと述べている」。
驚いたことに、報告書は、今しかこの強制移住のチャンスはないとイスラエル政府に行動をけしかけているのです。
「この計画が実現するためには、多くの条件が同時に存在しなければならない。現在、これらの条件は満たされており、このような機会が再び訪れるとすれば、それはいつなのか不明である。今こそ行動する時だ。今だ」。
2006年頃から始まるガザ封鎖には、その計画を提案したシオニスト人口学者のアーノン・ソファーがいたことを、クラーレンベルグ記者が明らかにしてます。
「2004年、ハイファ大学のシオニスト人口学者アーノン・ソファーは、アリエル・シャロン政権に直接、ガザ隔離の詳細な計画を打ち明けた。その内容は、イスラエル軍をガザから完全に撤退させ、シオニストの許可なく出入りできないように、厳重な監視と警備のシステムを構築するというものだった。彼は永続的な流血を予測した。
『250万人が閉鎖されたガザに住むようになれば、それは人間的大惨事になるだろう。境界での圧力はひどいものになるだろう。ひどい戦争になるだろう。だから、もし私たちが生き残りたければ、殺して殺して殺しまくるしかない。毎日、毎日だ……唯一気がかりなのは、殺戮をしなければならなくなる少年や男性たちが、どうやって家族のもとに帰り、普通の人間になれるようにするかということだ』」。
この現在まで続く、ガザの完全隔離に代わって、ワイトマンの提案する「民族浄化」は、クリーンで簡単なファンタジーだとクラーレンベルグ記者は、以下のように皮肉っています。
「国家安全保障とシオニスト戦略研究所は、ソファーが提唱したのと同じ目標を達成するための、クリーンで簡単なファンタジーを提唱している。それが成功するためには、パレスチナ人が武器を置き、永久追放の砂漠に向かうだけでいいのだ」。
これは、「パレスチナの大義」を踏みにじった独善的な計画で、「パレスチナ人が武器を置き、永久追放の砂漠に向かうこと」が、前提のファンタジーではありますが、イスラエルのシオニストたちが進めている強制移住計画と呼応している点が懸念されます。
ガザから住民を追放すれば、次は、ヨルダン川西岸からの追放がテーマになってくるのは必然的なことです。
ヨルダン川西岸へのイスラエル人の不法入植は、最初から、パレスチナ人を暴力的に追放することが意図され、武装軍人集団を入植していたことが、7月14日の『クレイドル』の調査報道で明らかとなっています。
「ジョー・バイデン米大統領は最近、ベンヤミン・ネタニヤフ政権を『これまで見た中で最も極端』と呼び、イスラエル首相の連立政権のメンバーを『問題の一部』と指摘した。
彼の発言はすぐに、イスラエルの極右財務相ベザレル・スモトリッチ、イスラエルの治安相イタマール・ベン・グヴィール、そしてヨルダン川西岸地区の不法入植者全般に注目を集めた。
しかし、イスラエルの入植者の過激主義は、ヨルダン川西岸に孤立して存在しているわけでもなく、ベン・グヴィールやスモトリッチのようなイスラエルの現極右政権の閣僚が孤立して存在しているわけでもない。イスラエル人入植者は軍や政府の要職を占めており、過激派はイスラエル軍内部で(その承認を得て)特別民兵を運営し、さらに米国の慈善団体から資金援助を受けている。
国連によれば、イスラエル人入植者によるパレスチナ人への攻撃はここ数年着実に増加しており、2022年には1日平均2件、2021年には1件であった暴力事件が、2023年には1日平均3件発生している。
今年記録された最悪の攻撃のひとつは2月26日、少なくとも400人以上の入植者民兵部隊が、フワラの町を含むパレスチナの都市ナブルスを取り囲むいくつかの村に降下した。
この入植者の攻撃は、イスラエル軍トップのイェフダ・フックス将軍によって『ポグロム(※ユダヤ人に対する無差別殺戮を指す言葉。それをユダヤ人=イスラエル人が先住民であるパレスチナ人を皆殺しにする言葉として使っている)』とまで形容され、少なくとも30軒の家屋と100台の車が焼き払われた上に、パレスチナ人男性が殺害される結果となった。
入植者の襲撃を支持し、イスラエルのベザレル・スモトリッチ財務相は、『フワラ村は一掃する必要がある。イスラエル国家がそうすべきだと思う』と公言した。
6月中旬には、さらに400人の武装したイスラエル人入植者がトゥルムサヤとその周辺の村を襲撃し、30軒の家屋と約60台の車に放火し、さらに100人以上の負傷者を出し、子どもを助けようとしていたパレスチナ人男性も殺害された。
イスラエルの現連立政権で最も悪名高い2人の極右メンバーは、スモトリッチ大臣とベン・グヴィール大臣で、2人とも不法入植地に住み、入植者運動の一員として長年活動してきた。
テロ集団との関係から人種差別の扇動に至るまで、数々の犯罪容疑に直面してきたベン・グヴィールは、アル・ハリル(ヘブロン)の過激派入植地に居住している。スモトリッチは現在、もうひとつの悪名高い入植者コミュニティであるイツハルから車ですぐのケドゥミムに居住している。
『宗教的シオニズム(※)』という名前で立候補した彼らの統一名簿は、イスラエル国民から3番目に多い得票数を確保し、現在の連立政権で第2党の地位を占めている」。
(※)宗教的シオニズム:ベザレル・スモトリッチ大臣を党首とする、宗教シオニズム党は、イスラエルの極右政党である。ゴラン高原の領有を主張するシリアの言い分も、ヨルダン側西岸地区の領有を主張するパレスチナ人の言い分にも反対し、領土に関するいかなる譲歩もしない。宗教シオニズム党は、近年、支持を集めており、2022年には2021年の得票を倍にして10%の票を集め、議席も2議席から5議席に伸ばし、連立政権入りした。
- 宗教シオニスト党(wikipedia)
シオニストの思想と行動は、明らかにナチスや反ユダヤ主義者の焼き直しです。ナチズムとシオニズムの類似性がいよいよ浮き上がってきました。イスラエルという国家は、どこまで狂って行くのでしょうか。そのシオニスト・イスラエルを断固として支持し、「私もシオニストだ」と公言したバイデン大統領のもとの米国も、その米国の「シオニズム」への加担に加わる国々も、共犯であることを忘れるわけにはいきません。
問題は、米国がシオニズムを「国教」とする国に、ますます変わりつつあることです。変わったというより、正体を露わにした、というべきかもしれません。米国が「リベラル・デモクラシー」の国家であることは「建前」に過ぎなかった、本当はシオニズムであった、ということは、今後、世界中の国々、人々が「シオニズムに反対するか?」と聞かれた時、「反対する」と答えると、「では、反米ということだな」と即断されてしまうということです。シオニズムへの賛否は、21世紀最大のイデオロギー的、政治的な課題となるのかもしれません。
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