2024年10月19日午後2時より、東京都千代田区のたんぽぽ舎にて、「浅野健一が選ぶ講師による『人権とメディア』連続講座『つながり合う世界』とらえ返しの焦点=パレスチナ」が開催され、東京大学名誉教授(中東イスラーム研究・世界文明戦略研究)の板垣雄三氏が登壇した。
板垣氏の講演は、4時間近くにも及ぶものだった。
板垣氏は、その講演の終盤において、現在のイスラエル・パレスチナ問題に日本が大きな責任を持つことを、次のように説明した。
「第1次世界大戦が終わり、国際連盟がパレスチナの委任統治領というのを認めることになった。
珍田捨巳(ちんだすてみ)や松井慶四郎(まついけいしろう)といった、当時の駐英大使や駐仏大使だった人たちは、サン・レモ会議(※)に出席し、『バルフォア宣言(※)』を実行するために、『英国のパレスチナ支配』という形で進めることについて、『そうだ、そうだ!!』、『結構、結構!!』、『賛成、賛成!!』と、一生懸命、賛成を叫んでいるわけですね。
※サン・レモ会議:1920年4月、第一次世界大戦後の問題を協議するためイタリアの保養地サン・レモで開かれた連合国の会議。主要議題は、同年1月ロンドンの連合国最高会議で作成されたオスマン・トルコとの講和条約(セーブル条約)を決定することであった。これにより、旧オスマン帝国領のアラブ人居住地域のうち、アラビア半島を除くシリア、レバノン、パレスチナ、イラク、ヨルダンがフランス、イギリスの委任統治領となることが確定した。
※バルフォア宣言:第一次世界大戦中の1917年に、イギリス外相バルフォアが、ユダヤ系の富豪ロスチャイルド家に送った書簡で示した、シオニズムへの支持表明。
何で日本がそんなことをしたかというと、英国のパレスチナ支配というのを応援することの見返りに、中国の山東半島でのドイツの利権を受け継ぐとか、太平洋の島々を日本の委任統治領にするとか、そういう類いのことで、日本の希望を支持してもらう、そういう引き換えみたいな格好で、英国のパレスチナ支配・統治を推進する役割を演じたわけです。
つまり、パレスチナに英国の委任統治が敷かれ、そこで『バルフォア宣言』を実行するという話で、結局、イスラエルが最終的に作られる、そういう、イスラエルが今、どうしてあそこにあるのかというところで、日本が無関係ということでは全然ないんですね。
その話が、そもそもその出発点を決めたところでは、『サン・レモ会議』で、それを最も強力に推進したのは日本なんです。
ですから、日本外交というか、それはその、今日のイスラエルがどうかということの責任は負えないというということはあるかもしれないけれども、ともかく、イスラエルという国ができることに関して、日本は無関係であったどころではない。もっともっと深い責任があるというふうに、パレスチナ人からはそう見られています。
現に、ちゃんと歴史を知っているパレスチナ人は、みんなそういうことはよくわかっています。そういう問題にもつながるわけですね(後略)」。
詳しい講義内容や、質疑応答については、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。