【IWJ号外】ブラッディ・クリスマス!「ハマスはナチス」と主張して、大量虐殺を続けるネタニヤフ政権と、その蛮行を支援する米バイデン政権に対し、ホロコーストと反ユダヤ主義の研究者ら16人が「誤りだ」と指摘! 2023.12.26

記事公開日:2023.12.26 テキスト
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(文・IWJ編集部)

特集 中東
※新春特設のために期間限定でフルオープンにします。

IWJ代表の岩上安身です。

 「メリークリスマス!」「ハッピー・クリスマス!」とご挨拶したいところですが、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教にとって「聖地」のはずのパレスチナが血にまみれている「ブラッディ・クリスマス」に、素直にお祝いの言葉を口にするのをためらいます。

 でも、それだからこそ、本日、この悲しみに満ちた「聖夜」に【IWJ号外】をお届けします。いつも以上に踏み込んだ内容です。お読みになってみてください。そして、少しでも共感や同意されるようであれば、どうぞ、岩上安身とIWJの報道・言論活動へのご支援をよろしくお願いいたします。

「ブラッディ・クリスマス!」不法な植民地主義ユダヤ人シオニストに対する抵抗に対し、ホロコーストを口実に「ハマスはナチス」と主張して、大量虐殺を続けるネタニヤフ政権と、その蛮行を支援する米バイデン政権! その狂気の暴力に対し、ホロコーストと反ユダヤ主義の研究者ら16人が「危険な、知的・道徳的な誤りだ」と指摘! ホロコーストの史実が政治的に悪用されている!「『悪』を武力で打ち負かすというレトリックは、政治的解決でしか止められないパレスチナとイスラエルの間の暴力の連鎖を永続させるだけ」!!

 12月23日にお届けした、【IWJ号外】で、シカゴ大学のジョン・J・ミアシャイマー教授が指摘していますが、米国やイスラエル、カナダ、英国、ドイツなどで、ホロコーストと反ユダヤ主義を研究する、16人の著名な学者らが連名で、11月20日付け『ザ・ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス』誌に、「ホロコーストの記憶を悪用に関する公開書簡」を発表しました。

 この公開書簡は、イスラエルのネタニヤフ首相や、米国のバイデン大統領をはじめ、イスラエルや米国の政治家が、ハマスをナチスに例え、10月7日のハマスによるイスラエルへの攻撃を、ホロコーストやポグロム(帝政ロシアでのユダヤ人迫害)に例えて非難したことを指摘した上で、「ホロコーストの記憶に訴えることは、今日ユダヤ人が直面している反ユダヤ主義に対する私たちの理解を曖昧にし、イスラエル・パレスチナにおける暴力の原因を、危険なまでに、誤って伝えている」として、政治家や学者によるそうした発言が、「知的・道徳的な誤りだ」と批判しています。

 本日は、この公開書簡の内容をくわしくお伝えしたいと思います。

 公開書簡は、「危険な誤りだ」と断じる理由を、以下のように述べています。

<ここから特別公開中>

 以下、IWJによる公開書簡の仮訳・粗訳です。

 「イスラエルの指導者(※ネタニヤフ首相)らは、ホロコーストの枠組みを利用して、ガザに対するイスラエルの集団的懲罰を、『野蛮に直面した文明のための戦い』として描き、それによって(※イスラエル人の)パレスチナ人に対する人種差別的な考えを助長している。

 このようなレトリックは、この現在の危機を、それが生じた背景から切り離すことを、私たちにうながしている。

 (※1948年のイスラエル建国から)75年間にわたる強制移住、(※1967年の第3次中東戦争から)56年間にわたる占領、そして(※2007年の選挙でのハマス政権の誕生から)16年間にわたるガザ封鎖は、ますます悪化する暴力の連鎖を生み出した。

 これは、政治的解決によってしか、阻止することができない。イスラエルとパレスチナの間には、軍事的解決策はなく、『悪』を武力で打ち負かさなければならないというホロコーストの物語を展開したところで、すでにあまりにも長く続いている抑圧的な状況を永続させるだけである。

 『ハマスは新たなナチスである』と主張することは、ハマスの行動について、すべてのパレスチナ人に連帯責任を負わせる一方で、パレスチナ人の権利を擁護する人々には、硬直化した反ユダヤ主義的動機を植え付けることになる。

 この主張はまた、ユダヤ人を保護するためには、国際的な人権や法の遵守に反してでも、現在のガザを攻撃することが必要であると、暗示している。

 そして、『自由なパレスチナ』を求めるデモ参加者を排除するためにホロコーストを持ち出すことは、パレスチナ人の人権擁護活動への弾圧であり、『反ユダヤ主義』と『イスラエル批判』をますます混同させる。

 このような不安が増大している状況において、私たちは『反ユダヤ主義』を正しく認識し、これと闘うために、『反ユダヤ主義』について明確にしておく必要がある。また、ガザとヨルダン川西岸で起きていることに対応するためにも、明確な思考は必要である。

 そして私たちは、反ユダヤ主義の復活とガザでの広範な殺戮、さらにはヨルダン川西岸でのパレスチナ人追放のエスカレートという、同時多発的に起きている現実について、公の場での議論に、率直に取り組む必要がある。

 私たちは、ナチスドイツとの比較を安易に持ち出す人々に対し、イスラエルの政治指導者たちのレトリックに耳を傾けることを勧める。

 ベンヤミン・ネタニヤフ首相は イスラエル議会で『これは光の子と闇の子の戦いだ』と語った(この首相官邸のツイートは、後に削除された)。ヨアブ・ガラント国防大臣は、『我々は人間動物(ヒューマン・アニマルズ)と戦っており、それに応じて行動する』と宣言した。

 このような発言は、『ガザには罪のないパレスチナ人などいない』という、広く頻繁に引用される議論とともに、確かに歴史的な集団暴力(ホロコースト)の残響を思い起こさせる。

 しかし、こうした共鳴は、大規模な殺戮への反対として機能するべきものであって、大規模な殺戮の拡大を求めるものではないはずだ。

 私たちには学者として、判断力と感受性をもって、自分の言葉と専門知識を、慎重に使う責任がある。そのためには、さらなる不和を引き起こすような、対立を煽る言葉をできるだけ抑え、そのかわりに、さらなる犠牲を防ぐための言論と行動を優先する必要がある。

 だからこそ、過去を引き合いに出す場合には、現在を歪めずに照らし出すようにしなければならない。それこそが、パレスチナとイスラエルに平和と正義を確立するために必要な基盤なのである。

 だからこそ私たちは、メディアを含む公人に対し、この種の比較をやめるよう強く求めるのである」。

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 イスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領は、イスラエルによるガザへの地上侵攻前、大規模空爆が激しさを増していた10月13日の記者会見で、ハマスによる10月7日の攻撃について、「国(ガザ)全体に責任がある」と、次のように語っています。

 「『(ガザの)民間人は(※ハマスによるイスラエル奇襲攻撃に)気づいていない、関与していない』というレトリックは、真実ではない。絶対に真実ではない。彼らは立ち上がることができた。クーデターでガザを乗っ取ったあの邪悪な政権(※ハマスは選挙で選ばれた正当な政権なので、これは言いがかりに過ぎない)と戦うこともできたはずだ」。

 この発言からも、現在ガザで行われているパレスチナ民間人の大量虐殺が、「ハマス殲滅のためのやむを得ない犠牲」などではなく、最初から意図された、ジュネーブ条約で禁じられている集団懲罰であり、ジェノサイドであることは明らかです。

 25日の日刊IWJガイドの「はじめに」の冒頭で、今年は「メリークリスマス」や「ハッピークリスマス」という挨拶は口にしにくいので、その代わりにと、ジョン・レノンの、『HAPPY XMAS (WAR IS OVER).』をご紹介しました。

・はじめに~キリスト教指導者はガザ市民に連帯を示し、イエスの生誕地・ベツレヘムでのクリスマス行事をすべて中止! 他方、国連安保理では、米国によって骨抜きにされ「即時停戦」が消し去られた「ガザ地区における人道支援の拡大を求める決議案」が可決! ロシアは「『イスラエルがガザでパレスチナの民間人を殺害するための許可証』に等しい」と非難!!
会員版:(日刊IWJガイド、2023年12月25日)
非会員版:(日刊IWJガイド、2023年12月25日)

 『HAPPY XMAS (WAR IS OVER).』の歌詞を和訳して、以下に記します。

 「クリスマスだ
今年は何をした?
今年も終わり
新しい年が始まる
そう、クリスマスがやってきた
君が楽しんでいるといいな
そばにいる人も、大切な人も
老人も、若者も
メリー・クリスマス
そして新年おめでとう
良い年になることを願おう
何も怖がらなくてもいいように
そう、クリスマスがきた(戦争は終わるよ)
弱い人にも、強い人にも(君たちがそれを望めば)
裕福な人にも、貧しい人にも(戦争は終わるよ)
世界はとても間違っているけど(君たちがそれを望めば)
そしてとても幸せなクリスマス(戦争は終わるよ)
黒人にも白人にも(君たちがそれを望めば)
黄色人種にも赤い肌の米国先住民にも(戦争は終わるよ)
さあ、すべての争いをやめよう(今)
ハッピー・クリスマス」。

 パレスチナの地、旧約聖書と新約聖書の舞台で起きている悲劇を目の当たりしている、今年の血まみれのクリスマスには、同じくジョン・レノンのもう一つの歌『God』と、生前の彼の、短いインタビューを思い出してしまいます。それも、ご紹介しておきたいと思います。

 歌詞の和訳を以下に書き記します。

 「神は、痛みを測る為の概念
もう一度言うよ
神は、痛みを測る為の概念
僕は魔法を信じない
僕は易を信じない
僕は聖書を信じない
僕はタロットを信じない
僕はヒットラーを信じない
僕はジーザスを信じない
僕はケネディを信じない
僕はブッダを信じない
僕はマントラを信じない
僕はギータを信じない
僕はヨガを信じない
僕は王を信じない
僕はエルヴィスを信じない
僕はジマーマン(ボブ・ディラン)を信じない
僕はビートルズを信じない
僕はただ僕を信じる
ヨーコと僕を信じる
それが現実
夢は終わった
何て言えばいい?
昨日、私は夢を紡ぐ者だった
でも今、私は生まれ変わった
私はセイウチだった
でも今はジョンだ
そして親愛なる友人たち
ただ続けなければならない
夢は終わった」。

 曲中に出てくる「ジマーマン」は、ボブ・ディランの本名で、米国での出生名がロバート・アレン・ジマーマン。祖父母がオデッサから米国に移民してきたユダヤ人で、彼のヘブライ語の名はシャブタイ・ツィメルマン(シャプサイ・ジスル。ジスルとはイスラエルのこと)。ボブ・ディランはユダヤ人として生まれましたが、キリスト教の、しかもあのゴリゴリのキリスト教原理主義の福音派に改宗したり、またユダヤ教に戻るなどしました。

 ジョン・レノンは、キリスト教への信仰を薦めたことのあるボブ・ディランに反発してか、この『God』の中で、「ジマーマン」と、彼の出生名で、ディランを指し、「信じない」と歌っています。

 ジョン・レノンは、ボブ・ディランだけでなく、エルヴィス(プレスリー)も、自らがリーダーだったビートルズでさえも信じない、と歌います。あらゆるカリスマをあがめることを、自らに戒めるように。

 さらにはジーザス(イエス)も、聖書も信じない、とも歌っています。これは、ユダヤ教、キリスト教を全否定している、というよりも、盲信しない、と歌っているのだと思われます。血まみれのパレスチナのクリスマスを見ると、かつては過激にも聴こえていたジョン・レノンの歌詞が、実際には少しも過激ではなかったと、今になって得心させられます。

 また、「信じるのはヨーコと自分」と歌っていますがもちろん、自分たち夫婦を信じろ、と人に向かって言ったのではありません。僕は僕と自分の愛する人を信じる、と言ったのであって、それぞれが自分を信じて自分で考えて、自分の道を進もう、という意味だと思います。

 ジョンの子供の時からの考えを述べた、有名な「世界は狂人に支配されている」というインタビューは、ジョン・レノンの公式X(旧ツイッター)で見ることができます。

 以下は、インタビューでジョン・レノンが語っている内容の、IWJによる仮訳です。

 「僕たちの社会は、狂気的な目的のために、狂った人々によって運営されていると思う。僕は16歳と12歳の時に、それを悟った。

 しかし、僕は生涯を通じて、それを違った形で表現してきた。いつも同じことを表現している。でも今では、『世界は、狂人によって狂気的な目的のために運営されていると思う』という文章にまとめることができるんだ。

 もし誰かが、僕らの政府、アメリカ政府、ロシア政府、中国政府など、彼らが実際に何をしようとしているのか、どのように、何を考えているのかを紙に書いてくれるなら、僕は、彼らが何をしようとしているのかを知ることができて、とても嬉しい。

 彼らはみんな狂っていると思う。でも、そんなことを言ったら、僕は人として片付けられかねないんだよ。それこそが狂気なんだ」。

 ここに並べられている各国の偏執狂的な権力者に、イスラエルの権力者も加えても、今日、少しも違和感を感じません。

 そして、イスラエルをパレスチナに建国するように欧州のユダヤ人達を誘導したイギリスをはじめ、2000年にわたってユダヤ人を迫害してきたキリスト教の教義の一部と、その後にイスラエルのスポンサーとして「共犯者」となった米国を含め、キリスト教のもとのヨーロッパ文明(米国を含む)なるものに対して、深い懐疑の念を抱かずにいられません。

 イスラムと、ユダヤだけを悪役にして、欧米のキリスト教国の権力者らは、自らへの批判をかつても今も巧みにまぬがれています。その立ち回り方にはあざとさを強く感じます。

 「史的イエス」が、歴史上、存在したとして、それが全能の神そのものと、神の子と、聖霊が三位一体となって現れた救い主で、死後すぐに復活し、世の終わりの日(ハルマゲドン=世界最終戦争の時)に再臨し、信仰のあつい者と不信心者を分ける最後の審判が行われ、信心者は天国に、不信心者は地獄に、そしてユダヤ教徒は全員キリスト教徒に改宗する、という教義を、本気で21世紀の今、信じることができるでしょうか。

 「良識」があれば、論理的に理解することも、共感することもできないのが、当たり前ではないでしょうか。ミアシャイマー教授がイスラエルと米国の指導者と支持者に対して、放った「あなた方に良識はないのか」という言葉の通りだと思います。

 同時にこの言葉は、イスラエルと米国の政治権力者に対してだけでなく、福音派のようなキリスト教原理主義者に向けても投げかけられるべきだと思います。

 福音派のようなキリスト教原理主義者の数は、今や米国民の4人に1人にまで膨れ上がっています。彼らは、聖書を一字一句正しいと妄信し、ハルマゲドン(世界最終戦争)を確信して、篤信者(狂信者というのが正しい)は、空中携挙(キリスト教の信者のみが終末の日に、肉体もろとも空中に吊り上げられて難をのがれられる)され、キリスト再臨後、千年王国が築かれるという、SFファンタジーよりも荒唐無稽と思える終末論的な協議を信じているのです。

 しかもそのために、終わりの日の予兆とされるイスラエルの建国を支援し、最終戦争たるハルマゲドンに向けて、預言の成就を加速させようとすらしているのです。こんな狂気じみた、黙示録的な終末論への期待や狂信を、原理主義者の信徒らが信じることをやめ、キリスト教の教義の危険な部分が訂正され、無化されてもらいたいと心から願います。

 イエスの生まれた日とされる12月25日は、キリスト教がローマ帝国の国教とされる以前に信じられていた、太陽神をあがめるミトラ教の冬至祭(1年で1番太陽の弱る日に、太陽の力強さの復活を願う)でした。「史的イエス」の誕生日は不明で、ミトラ教の祭日をキリスト教の祭日にしただけのことです。

 それでも、日の出が遅く、日の入りが早い、寒い冬の日に、再び暖かい春が来ますようにと願う古代人の心情は現代人にも十分、理解も共感もできます。この日をキリスト教のドグマとは関係なく、冬至の祭日として、宗教を超えて、世界中の人々が、家族と愛する者同士で、楽しいひとときを過ごすことは決して悪いことと思えません。

 冒頭に記した『HAPPY X’MAS, WAR IS OVER』では、ジーザスも、聖書も信じないジョン・レノンが、それでもクリスマスの日を、皆が楽しんでほしい、人々が愛し合い、何よりも憎しみと戦いが終わることを切望している歌です。『GOD』とあわせて聴いてみるとその真意がよくつたわります。

 ジョン・レノンは、彼が生前、自らの運命について語っていたように、ニューヨークで射殺され、生涯を閉じました。

 彼は、もうこの世にはいませんが、21世紀の現在を生きている私たちは、パレスチナや、ウクライナでの流血沙汰が終わりますように、東アジアでの戦争準備や、イエメンや、イランとの戦争も、すべて泡と消えますように、多くの人々とともに、私も祈りたいと思います。

岩上安身

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