2022年のインフレ危機は、半世紀前の70年代の2度の「石油危機」を思い起こさせる。中東の産油国がOPEC(石油輸出国機構)を組織して石油減産で合意し、その結果、石油価格が急騰、石油を輸入する国々、特に日本は敗戦直後のハイパーインフレにつぐインフレ(福田首相は「狂乱物価」と命名)に見舞われた。これが73年の第1次石油危機、79年の第2次石油危機である。
今回は中東の産油国に加えて、ロシアもOPECプラスとして「石油減産」に合意し、原油価格を吊り上げた。輸入に依存している日本にとっては、死活問題となる事態である。
しかも減産合意後、米国から「罰する」と威嚇されても、中東産油国の一角、UAE(アラブ首長国連邦)のムハンマド大統領は、ロシアのプーチン大統領のもとに向かった。以前ならまず米国のホワイトハウスへ向かったところだ。中東産油国が、米国よりロシアを優先し始めたという、世界情勢の劇的変化が如実にうかがえる。
一方、ホワイトハウスは声明を発表し、産油国の「減産」に「失望」を表明したものの、石油備蓄の放出をはじめ、「インフレ抑制法」などの様々な対策を進めていると、原油価格高騰対策に、自信をのぞかせた。
しかし他方で、複数の米民主党議員が相次いで、減産に同意したサウジアラビアに対し、「武器売却と安全保障協力を凍結する」などの脅迫的発言を行っている。この事実は、バイデン政権の「自信」に満ちた発言は表向きの「建前」に過ぎず、インフレを抑制できないために11月8日の中間選挙で、与党・民主党が敗退するのではないか、という「危機意識」が、サウジへの脅しにつながっているより、こちらが「本音」の発言ではないかとうかがわせる。
ムハンマドUAE大統領と会談したプーチン大統領は、「ロシアとUAEの貿易額は2021年に65%も急増」など両国の急激な結びつきを強調した。ムハンマド大統領も、「我が国に4000社ものロシア企業が進出している」とした上で、一層の関係強化への期待を述べた。
UAEなどOPEC諸国が米国ではなく、窮地にあるはずのロシアを選んだ意味は重要であり、経済的には原油高の継続、政治的には中東と中露が同盟に近い関係を結ぶ可能性さえ示唆する。
エネルギ-資源をめぐって、世界が大きく変わりゆく時、日本の針路はどうあるべきなのか? 今や、対米追従一本槍の外交ではなく、独自外交で自己の生存を自ら切り開いていく姿勢が求められているのではないか?
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