「米国によるウクライナでの『代理戦争』モデルの失敗はアジアに有利」~岩上安身によるインタビュー 第1082回 ゲスト 現役経産官僚、経済産業研究所コンサルティングフェロー 藤和彦氏 2022.7.21

記事公開日:2022.7.25取材地: テキスト動画独自
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(文・IWJ編集部)

特集 ロシア、ウクライナ侵攻!!
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 7月21日夜6時半より、「経済制裁に苦しむのはロシアではなく資源不足に喘ぐ日本!? 財政が『限界』を迎えるウクライナも『破綻国家』への道を突き進む! 岩上安身による現役経産官僚、経済産業研究所コンサルティングフェロー 藤和彦氏インタビュー」と題して、岩上安身による現役経産官僚、経済産業研究所コンサルティングフェロー 藤和彦氏インタビューを生中継した。

 藤和彦氏は、1960年生まれ。1984年に通商産業省に入省後、JETRO研修生として1991年からドイツに留学、1998年には石油公団へ出向された。石油公団での経験を通して、エネルギー資源の問題に精通されている。

 藤氏は『シェール革命の正体~ロシアの天然ガスが日本を救う』(2013年、PHP研究所)、『日露エネルギー同盟』(2013年、エネルギーフォーラム新書)などの著書で、「ロシアから日本に天然ガスパイプラインを引く」ことを提案した。

 2003年には内閣官房へ出向、内閣情報調査室内閣参事官、内閣情報分析官をされた。

 岩上が「いわゆる内調っていうと、すごく怖い感じ」で、「日本のスパイ組織の中枢みたいなイメージがあるんですよね」と言うと、藤氏は「そういうイメージが大事ですから」と笑いながら、内調の経験を通じて、経済産業の問題を考える上でも、外交安全保障を視野に入れる必要を感じだと述べた。

藤氏「ここ(内調)に7年半、8年いたものですから、経産省がつまらなくなってしまって。トータルの、外交安全保障政策の中での経済政策って、あたりまえなんですけれども。あまりにもいろんな世界を見過ぎてしまったので、経産省に戻ってもしょうがないな、と」。

 藤氏は、2011年、公益財団法人世界平和研究所へ主任研究員として出向後、2016年から経済産業研究所上席研究員、現在は経済産業研究所コンサルティングフェローをされている。

 インタビューは、ウクライナ紛争の戦況から始まった。岩上が、戦線がウクライナ東北部から中部、南部まで長く伸びている現状、欧米諸国が提供した長距離砲が紛争をエスカレートさせ、長期化させている現状について整理した。

 藤氏は、ウクライナ国民にとっての長期化の悪影響を懸念していると述べた。

藤氏「戦争が始まってから、ウクライナの人が500万とか600万人くらい、海外に出たと聞いていますが、今、2~300万人くらい戻ってきているんですね。

 その方達がまた出ていかなくちゃいけないってことになってしまうと、非常に気の毒だなと」

岩上「生活の再建が成り立ちませんものね」

藤氏「はい。それが心配です。これから冬に向けて(紛争が長期化すれば)困るのはウクライナの人たちですから。

 それを考えると、今のウクライナはほとんど言論統制されており、ゼレンスキー大統領が言っていることはすべて正しいことになっていますけど、本当に民意がゼレンスキー政権についているかというと、ちょっと疑問がありますね」。

岩上「ゼレンスキーの政権がまるで自由と民主主義の砦であり、ヒーローであり、西側諸国は直接ロシアに対して拳を振るうことはできないけれども、ゼレンスキーを後押しすることによって、自由・民主主義陣営と、権威主義・専制陣営という、適当な陣営をつくって、そこには聖なる戦い、『聖戦』があるんだと。

 そんなことをしきりと、いろんな方、例えばEUのトップの女性(フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長)とかが演説されるんですが、鼻白むんですよね。

 ウクライナの実態、ゼレンスキー政権の実態を知っていれば、そんなわけないだろうと」。

 岩上は、プーチンが独裁的で、ロシア社会がマフィア社会だということは事実だとし、89年から94年にかけてのソ連崩壊を含む激動期、足掛け6年にわたってロシアを取材していた時の話をした。

岩上「その時に初めて気がついたのは、この国(ロシア)は全然、全体主義社会じゃないと。建前ではそうなっているけれども、全部『裏』がある。その裏経済・闇経済抜きに語れない。

 その闇経済がソ連崩壊によって爆発的に表に現れて、オリガルヒが現れてくるわけですけれども。オリガルヒっていうと、ただの金持ち、ホリエモンなんかと一緒に考えているようなんですが、本当にマフィアそのものですから。マフィアが経済帝国を持っているようなものなんです。それが沢山あるわけです。
 
 そういうものを相手にしているんだよっていう自覚もなく、右も左も、『ウクライナ万歳』、『ウクライナ応援するぞ』。

 ウクライナ人ひとりひとりは可哀想なんですよ。だけれども誰を応援しているのかっていう話なんです。そこらあたりがおかしいなって」

藤氏「ろくな政治家が育たなかった、ウクライナの悲劇ですよね」。

 最新の戦況では、ロシア軍がザポリージャ原発にミサイルシステムを配備し、そこから周辺地域への攻撃を行なっていることがわかっている。

岩上「これはちょっと驚いたんですが。(侵攻当初)ロシア軍は原発を確保していきました。おそらく、ウクライナ軍を信用できないので、自軍で原発を確保して、ミサイルを撃ち込ませないように」

藤氏「たしか、ゼレンスキーは核兵器をつくると言ってましたからね」

岩上「そうですね。核をよこせ、保有するといったことを言ってました。そういうことを含めて、自分たちで原発を確保しておくのだろうと思っていたんですが、なんとザポリージャ原発にミサイルシステムを配備して周辺地域を攻撃し始めた、と。これは考えたな、というか、驚きました。

 どうなんでしょう、戦略家、各国の軍人もこれにはびっくりしたんじゃないでしょうか。

 原発を持ってる国は、そこを他国(の軍隊)に占拠されて、そこからミサイルを撃ち出されても、ミサイル拠点を攻撃することはできないわけですね」

藤氏「IAEAを含めて、国際法が想定していない事態がすでに起きているということですね。

 でもこれに対して、ウクライナが無人機で攻撃をしたという話も出ています。即座に無人機攻撃をしていますから。結構大変なことが起きています」。

  『ロイター』は20日、ロシア国防省の発表として、ザポリージャ原子力発電所をウクライナのドローン(無人機)2機が、18日に攻撃したが、原子炉は損傷しなかったと発表した、と報じた。

 岩上は、ウクライナ軍の戦略は「人間の盾」だったが、今度は「原発を盾にするロシア軍」に対して、原発が破損する可能性があっても、ミサイル発射拠点にされた自国の原発を攻撃するウクライナ軍について、「恐ろしいな」と、驚きを隠せなかった。

岩上「これ、戦史上、ものすごく画期的なこと、変な話ですけど、(視聴者に向かって)気を悪くしないでください、誰も考えたことがないと思うんですが」

藤氏「パンドラの箱が開きつつありますね。本当に怖いです」

岩上「原発を国内に持つ国の戦略家は、日本も原発を持っているんですから、中国軍でもロシア軍でも、地上に上陸してきて、いきなり日本の原発を確保して、そこからミサイルを発射する事態っていうのを想像すればいいんですよ」

藤氏「よく自衛隊の方から、なんで日本海側に原発をつくったんだと、よく文句を言われていました」

岩上「(藤氏が原発を所管する)経産省(のキャリア)だから。経産省の方としては、それを守ってくれるのが自衛隊だよとか、言わないんですか」

藤氏「いや、頭をボリボリするしかないですよね」。

 藤氏は、原子力安全委員会には、テロ対策など必要ない、という人もいるが、いま、まさしく、原発のテロ対策が必要だという事態が来つつあると、指摘した。

岩上「テロどころか、直撃のミサイルにも耐えなきゃいけないし、ミサイルを防衛するだけじゃなくて、日本の場合は海岸線にあるから、上陸してすぐ確保されちゃうわけでしょう」。

 藤氏は、まさかミサイルが飛んでくるなんて、誰も考えていなかったと思う、と述べた。

岩上「自民党の、敵基地攻撃論、反撃能力とかいろいろ名前を変えていますけど、敵が中距離ミサイルを撃ってくる拠点を攻撃するんだといいますが、それが自分の原発だったら、もうどうにもならいないじゃないですか」

藤氏「アメリカとか欧州では、いま、『原発ルネッサンス』とか言ってますが、これでもし、とんでもないことになったら、原子力という選択肢がなくなります」

岩上「本当に直視しなきゃいけないですよ」。

 インタビュー導入部から、衝撃的なお話になりました。

 藤氏は、2014年にお話いただいた天然ガスパイプラインの「相互確証抑制効果」について、かつてドイツでは、ロシアからの天然ガスパイプラインの敷設が、相互の信頼を醸成し、東西ドイツ統一に大きく貢献したと言う人が多いと述べた。藤氏は、ドイツは「相互確証抑制効果」の最高の成功事例だったと指摘した。

 しかし、今回のウクライナ紛争で、ドイツはこれまでの東方外交と資源エネルギー政策を反転し、ノルドストリーム2を止め、ロシア産天然ガスの大幅な削減を決めた。藤氏は、これはドイツ経済にとって破壊的な影響を及ぼすだろうと述べた。岩上も、米国が欧露の関係を分断し、平和で安定的な繁栄の道を潰してしまったと指摘した。

 藤氏は、資源エネルギーの高騰、米国と欧州の自滅的なインフレ、インドのルピーの暴落、中国の経済不振などをあげ、現在の流れは「グレート・デプレッション=大恐慌」に向かうのではないか、という予測を示した。

 続いて、藤氏が7月13日に『ビジネスジャーナル』に発表された「政府、「節ガス」検討へ…ロシア・サハリン2、日本へのLNG供給減は考えにくい」についてお話をうかがった。

 藤氏は「サハリン2」に関するロシア側の国有化ともいうべき措置の狙いは、英国のシェル社に対する措置にあり、日本への供給を削減することは目的ではないという見立てを示した。ロシアも欧州に売れなくなった天然ガスの売り先を探しているので、日本への供給を止める余裕はないだろうという分析である。

 もうひとつ、藤氏が7月12日に『デイリー新潮』に発表された「財政破綻、人口減少だけではない 破綻国家となりつつあるウクライナの窮状」についても、お話をうかがった。

 
 ウクライナのGDPは40%マイナス、関税収入は4分の1になっているが、ウクライナの支出は青天井で増えており、いつデフォルトになるか分からない状態である。湯水のように供与されている武器の代金もいずれ支払わなければならない。

 『ロイター』(21日)によると、ウクライナ中央銀行は21日、通貨フリブナの対米ドルレートを25%切り下げ、1ドル=36.5686フリブナとした。

 岩上は、崩壊寸前とも言えるウクライナの現状に対し、官僚の中にもウクライナへの支援とロシア敵視をおかしい、「いい加減ストップ」と思っている人もいるのではないか、と問うた。

藤氏「(日本の官僚がウクライナ支援をするのは)ロシアがウクライナに勝ったら、次のウクライナはアジアだという呪文が効いているんじゃないでしょうか」

岩上「台湾とか日本がウクライナのようなポジションに立つんだからやめてくれと、中国対米国で、俺たちを巻き添えにするのはやめてくれっていうしかないですよね」

藤氏「申し訳ないですけど、私も見てると、日本の外交当局は自分の頭で考えて日本独自の国益を追求してると思えないですね」。

 藤氏は、米国がしきりと中国を挑発していることに懸念を示した。

藤氏「(ウクライナでの)『代理戦争』モデルがロシアに対して成功すれば、アメリカは2匹目のドジョウを狙うと思いますね。今、ものすごく中国に対して挑発を始めているじゃないですか。3年前のウクライナと同じだと思います。

 とはいえ、今回のように経済制裁は効かない、武器支援をやろうと思っても(ウクライナ紛争で多くを供与したので)もうできない、これは大変なことですね。

 だから、今回、『代理戦争』モデルが失敗するっていうことは結果的には、安全保障上、アジア(諸国)にとっては有利じゃないかと思います。

 『代理戦争』で、そんな『いいとこ取り』はできないとわかってもらったほうが、日本の国益を考えたら、そう思わざるを得ないんです」

岩上「本当にその通りです。アメリカに思いとどまってもらって。うまくいかないなと。

 日本のメディアも市民にも、ウクライナとロシアのこの紛争を、そういう目で見てもらいたいですよね」。

 この後、インタビューでは、ウクライナで進むゼレンスキー政権の独裁化と、再側近の解任で政権内部の異変、武器の闇市場、麻薬、人身売買など「マフィア帝国」であるウクライナの実態について話が及んだ。

岩上「アメリカ『代理戦争』モデルさえ崩せば、極東で悪戯を始めないでよ、と」

藤氏「歴史上、こんなにインモラルな戦争はないと思いますよ。アメリカの国益をウクライナ人の血で成り立たせようって、僕はものすごく倫理的に問題があると思うんですけどね」

岩上「おっしゃる通りだと思います」。

 ウクライナ紛争は、「ウクライナ=善、ロシア=悪」という図式では解けない。米国による「代理戦争」としての実態を見誤れば、気がついた時には、台湾と日本が「次のウクライナ」になる。

■ハイライト

  • 日時 2022年7月21日(木)18:30~
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

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