「ロシアから日本にパイプラインを引く」――。この驚きの提言を唱えているのが、世界平和研究所主任研究員で、『シェール革命の正体~ロシアの天然ガスが日本を救う』(PHP研究所)、『日露エネルギー同盟』(エネルギーフォーラム新書)などの著書がある、藤和彦氏である。
エネルギー政策の専門家である藤氏は、現役の経済産業省の官僚であるとともに、内閣官房に出向した経験も持つ。エネルギー政策に加え、地政学や安全保障といった観点からも、日本および世界のエネルギー問題を分析する、幅広い視野の持ち主である。
藤氏によれば、エネルギー源の多様性という観点からすると、日本は極めて危うい状況に置かれており、「先進国の中で最も石油を消費し、そのうち9割が中東に依存している」状況だという。
そこで藤氏は、日露間のパイプライン敷設により、廉価な天然ガスを安定的に供給することを提案する。また、パイプライン網を充実させることは、「相互確証抑制効果」を高め、地域の安全保障の強化につながると述べた。
日本とロシアがパイプライン敷設という「エネルギー同盟」を結ぶことの地政学的な意味とは何か。岩上安身が3時間を超えるロングインタビューを行った。
- 収録 2014年5月23日(金)18:00~
- 場所 IWJ事務所
ウクライナ危機とロシア産天然ガス
昨年から今年にかけて、ウクライナの首都キエフでの反政権運動の高まりは、ロシアとウクライナとの関係の緊張を招いた。とりわけクリミア半島の編入以後、西側では、「ロシアが悪い」という報道に偏っている。こうしたバイアスについて藤氏は、「ロシアを悪とみなす冷戦思考が残っている」ことと、弱小国であるウクライナに対する「判官びいき」がある、と冷静に分析。現実にはウクライナはロシアからパイプラインを通じて供給されている天然ガスの代金を滞納しており、述べ、ロシアの言い分にも一定の理があると指摘した。
「ウクライナは現在、ロシアに対して35億ドルもガス代を滞納しています。ロシアは3年に1回くらい、懲罰的にガスを止めていますが、支払いが滞ったためです。過去、ウクライナは、ロシアからEUに続くパイプラインから違法にガスを抜き取って盗んだこともある。親ロシア派の人物(クチマ)がウクライナの大統領だった時も、同様のガス抜き取りが起こり、ロシアは懲罰的にガス供給停止の措置をとったことがあります」
ウクライナの肩をもつ欧米の中でも、ロシア批判の急先鋒に立つのは米国である。その米国は、天然ガスの3割をロシアからの供給に頼るEU諸国に対し、ロシアとの対立の深まりから、欧州でガス供給の危機が起きた場合、米国のシェールガスを提供するので大丈夫だと請けあっている。実際に、米国は「シェールガス革命」によって、欧州の需要を満たすことができるのか、という問いに、藤氏は「まったく現実味がない」と一蹴し、米国では逆に天然ガス生産が減少している事実をあげた。
「2011年から2013年にかけて、米国は天然ガスを掘らなくなっています。リーマン・ショックで天然ガスと石油はドンと価格が落ちたのですが、石油は運輸のため、つまりガソリンとして用いるために生産が回復してきています。しかし工業生産に用いる天然ガスは、回復していない。米国の景気が回復していないからです。そこで米国としては、シェールガスからシェールオイルへと移行しています」
また藤氏は、「シェールガス・オイルは、これまで採れない場所からむりやり採っているので、採掘コストが最低でも3倍かかる」と指摘。したがって「まだまだ現在のシェールガスの価格水準では、生産回復にはならない」と述べた。
中露のガス供給契約
プーチン大統領は5月20、21日と上海を訪問し、習近平国家主席とトップ会談。40兆円規模、年間380億立方メートルの天然ガス供給計画の正式合意をかわした。これに加え、中露は20日から26日までに、東シナ海において大規模な合同軍事演習を行っており、両国は資源と軍事の同盟を築きつつあることを内外にアピールした。
中露のガス供給契約に関して藤氏は、「合意がなされたという報道を見たときにはびっくりしました」と言う藤氏だが、続けて「ただ中身を見たら、やっぱりなと思いました」とも述べ、30年間で40兆円の取り引き、と報じられているのに、単価はいくらなのか明示されていない点に注目した。「20日の段階では、価格交渉で決裂か、と西側の報道では出ていました。まだ中露で価格は決まっていない、とみます」。そう語り、サハリンやシベリアに眠るガスを、日本にパイプラインを通じて送るアイデアを締める必要はないと強調した。
天然ガスのパイプラインを敷没する交渉では、インフラの初期投資にかかる費用が莫大であり、生産国は、設備投資がすんだあとでは価格交渉で立場が弱くなる。トルコですら、ロシアからのパイプラインが敷没し終わった後、値下げを要求し、ロシアは応じざるをえなかった。まして相手は大国の中国である。パイプラインの完成後に、再度価格交渉してくるだろう、と藤氏は読む。
「ロシアにとって、それならば日本に売りますよ、という交渉カードは欲しいところでしょう」
日本には中露間に割って入り、世界一高い価格で買わされているLNG(液化天然ガス)の代わりに、安価で安定的に天然ガス供給を受けられるチャンスがまだある、ということだ。
相互確証抑制効果と経済合理性
藤氏によれば、「パイプラインを敷設すると、資源を供給する国と、消費する国との間で戦争をしづらくなるという状況」が起こるといい、これを「相互確証抑制効果」と呼ぶ。
(※)パイプラインがもたらす「相互確証抑制効果」について藤氏の著書『シェールガス革命の正体』には以下の説明がある。「現在、あらゆるエネルギーが「燃料間競争」にさらされていることから、生産国が仮に恣意的に供給ストップという一方的な行動に及んだ際には、消費国は失った燃料を他から調達することに奔走すると同時に、これまで利用してきたパイプラインに対する不信感から二度とこれを使用することはなくなるであろう。天然ガスの巨額の輸出代金を得られなければ、生産国は大きな損失を発生させてしまう。長距離パイプラインは、いったん敷設してしまえば、他に移動させることは不可能であり、輸出を変更することも物理的に不可能だからである」。
また、資源国が「政治の武器」として消費国に対して迫るという通説について藤氏は、「消費国にとって資源は生命線ですが、それ以上に資源国は政治の武器として資源を扱う余裕はないという状況になっていると思います」と話し、次のように説明した。
「ロシアはモノカルチャーですから、石油や天然ガスをなるべく長期的に安定して供給し続けるのが安全保障戦略です」。米国がウクライナの内政にコミットし、同時に欧州諸国に、ロシアに対する制裁を呼びかけている。欧州も表面的には米国に同調しているが、実際には天然ガスの3割をロシアに依存しており、欧露で全面的に断交、ロシアを経済的に封じ込めるといった戦略は現実的にとれない。
「実際、ウクライナ政変が起きてから今まで、ロシアからEU諸国への天然ガス供給は減るどころか3%増と、わずかながら増えてさえいるんです」。言いかえると、欧露が戦争に至らないのは、パイプラインで結びついているからであり、戦争を抑止する効果がある、ということなのだ。
集団的自衛権行使容認は、日本のNATO加盟への布石か?
藻・も、だっただろうか・・。海にも藻がある。この藻をエネルギーにする、そんな研究者が日本にいるらしい。
コレ、日本一新の会からのDVDにあった。一度しか観ていませんから、再度観てみます。
20110702放送の愛川欽也パックインジャーナルで特集していた、鈴木清美氏が実践している”海流発電”を日本が利用しない手はない。その事を日本人はもっと知るべきだし、この藤氏の主張にももっと耳を傾けるべき。
日本はエネルギー戦略もアメリカ一国に依存し過ぎなのは自明の理です。原発・石油など全てのルート確保を頼っています。
これに風穴を開ける気概の有る外務官僚と政治家を造りださないと日本は独立できません。
藤氏の発言には傾聴する点はありますが、一気にパイプは難しいでしょう。先ずは液化施設をハバロスクなどに設置する方が賢明でしょうね。
これを行える政治家を育てれば、従属からも解放されるでしょうが、これを阻止しようとしているアメリカ属国派の政治家・官僚・マスメディアが暗躍しているのが日本です。
自民党なんてのはそのトップですよ。「美しい国を取り戻す」とか「戦後レジユームからの脱却」とか言いながら、摺り寄るんですからみっともないものです。