【IWJブログ】ウクライナ東部の混乱――ロシアとアメリカは何を狙うのか 2014.7.20

記事公開日:2014.7.20 テキスト
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(取材・文・翻訳:ゆさこうこ、文責:岩上安身)

特集 IWJが追う ウクライナ危機
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 ウクライナ東部で親ロシア派勢力の動きが活発になっている。3月16日にクリミア自治共和国でロシアへの編入を問う住民投票が行われ、96.77%がロシア編入に賛成を示した。これを受けてロシアとクリミア自治共和国は編入条約を締結することとなった。そして今、ウクライナ東部の都市では、クリミアのロシア編入に続こうとする動きが起こっている。

ウクライナ東部は「第二のクリミア」になるのか

 4月6日、ウクライナ東部のドネツク、ルガンスク、ハリコフの三都市で、親ロシア派のデモ隊が州庁舎や保安庁州支部を占拠した。さらに5日にはマリウポリでロシア系住民が検察当局に侵入した。これらの親ロシア派勢力が要求しているのは、ロシア編入の是非を問う住民投票である。彼らはロシアのプーチン大統領に支援を求めている。

 7日には、ドネツクとハリコフのデモ隊は「ドネツク人民共和国」「ハリコフ人民共和国」の創設を宣言するにまで至っている。また、ルガンスクでも「ルガンスク人民共和国」の樹立の宣言の準備が進められているという。

 8日にはウクライナ警察がこれらの庁舎を奪還したと報じられていた。だが、その一方で、9日にルガンスクでは親ロシア派勢力が保安庁に侵入しバリケードを強化したとも伝えられている。

 12日には、ドネツク州スラビャンスクで、市庁舎や警察署やウクライナ保安局に1000人以上のデモ隊が押し入り、建物を占拠し、ロシア国旗を掲げた。治安部隊とデモ隊との衝突で死傷者が出ている。また、スラビャンスク近郊のクラスヌイリマンの警察署も占拠されたという。

 ウクライナのアワコフ内相は、これらの占拠を武装勢力によるものだと発表した。ただし、報道された写真や映像を見ると、必ずしもデモ隊の全員が「武装」しているわけではない。

▲ドネツクで抗議する人々(4月12日、写真:AFP)

▲ドネツクで抗議する人々(4月12日、写真:AFP)

ウクライナ東部の動きは「工作」?

 こうした親ロシア派のデモ隊の動きを受けて、ウクライナ政府やアメリカの非難はロシアに向けられている。

 ウクライナのトゥルチノフ大統領代行は、抗議行動をロシアによる「国家分断工作」であるとし、ヤツェニュク首相も「ウクライナの分断が目的」としている。

 また、アメリカ・ホワイトハウスのカーニー報道官は、「親ロシア派分離主義者がウクライナ東部で行っていることについて、アメリカ政府はロシアが背後にいると考えているか」という記者からの質問に対して、「ロシアがウクライナに圧力をかけた結果だと考えている」と回答した。さらに「これらのデモ参加者たちの一部は地元住民ではなく雇われた人々であるということを示す大きな証拠がある」と述べ、「我々はプーチン大統領とロシア政府に、ウクライナを不安定にさせる動きを止めるよう呼びかけ、さらなる軍事的介入に警告を発する」とした。

 さらにアメリカのケリー国務長官も、ロシアのラブロフ外相に対して、ウクライナ東部で起きている事態が「自然派生的なものには見えない」と述べたと、サキ報道官が発表した。

 「ケリー国務長官は、ラブロフ外相に、アメリカがこの24時間にハリコフ、ドネツク、ルガンスク、マリウポリで起こっていることを注視していると伝え、これらのことは自然派生的には見えないと述べた。国務長官は、これはロシアの支援を受けて慎重に画策されているというウクライナ政府の主張に言及した」。

 さらに4月13日には、アメリカ国防省は「ウクライナの情勢悪化にロシアが支援している証拠」を発表した。ロシアの情報機関のエージェントがウクライナ東部で暗躍していると主張している。

 「ウクライナ政府は、ロシアの情報機関が、ウクライナ東部の親ロシアの武装抵抗グループの指揮に直接関わっていると示唆している。さらに、ウクライナ政府は、ロシアの保安局に雇われたという人物を拘束した。その人物は、ウクライナの南部と東部で、市庁舎占拠などの転覆作戦を実行するよう指示を受けたという。これらの証拠すべてが、ウクライナは”内戦”の縁にあるというロシア政府の主張を否定するものである」。

▲アメリカ国務省のサイト。トップページに「ウクライナの情勢悪化にロシアが支援している証拠」が掲載された。「4月12日、組織化され専門的な作戦を用いる親ロシア過激派が、6つの都市で複数の行政施設を掌握した。過激派は防弾チョッキと迷彩柄の軍服を着用し、ロシア製の武器を携行していた」(4月13日)

▲アメリカ国務省のサイト。トップページに「ウクライナの情勢悪化にロシアが支援している証拠」が掲載された。「4月12日、組織化され専門的な作戦を用いる親ロシア過激派が、6つの都市で複数の行政施設を掌握した。過激派は防弾チョッキと迷彩柄の軍服を着用し、ロシア製の武器を携行していた」(4月13日)

活躍する「傭兵」

 「『ウクライナは“内戦”の縁にある』というロシア政府の主張は嘘だ」と米国論者は主張している。つまり米国は、ウクライナ東部における事態は、ウクライナ人同士の純然たる内輪のもめ事ではなく、外部からの介入がある、ということを主張しているのであり、その「外部からの介入者」とは、もっぱらロシアのことを指している。

 一方、ウクライナ東部の親ロシア派の動きを押さえ込むために、ウクライナ暫定政府は「外国」の民間警備会社に治安維持を委託しているという。民間警備会社とは穏当に聞こえるが、小火器をもって武装し、発砲も辞さない、要するに「傭兵」である。

 この点について、ロシアのラブロフ外相は懸念を示す声明を発表した。

 「入手した情報によると、ウクライナ国軍と兵士は、非合法的武装組織”右派セクター”出身の兵士とともに、ドネツクなどウクライナ南東部に集結している。彼らは、現キエフ政権に対して抗議するウクライナ南東部の人々を武力で押さえ込む任務に就いている。非常に懸念されるのは、民間軍事組織であるグレイストーンから約150人のアメリカ傭兵が、ソコルからの兵士のふりをして紛れ込み、この作戦に参加していることだ」。

 グレイストーンとは、イギリス陸軍出身者が設立した民間警備会社である。カナダ・オタワ大学の経済学者ミシェル・チョスドフスキー氏も、傭兵が「ウクライナ東部で活動しているアメリカとNATOの支援を受けた軍事会社に組み込まれている」と指摘している。

 こうした傭兵の活躍について、アメリカの民主党議員のデニス・ジョン・クシニッチ氏は、警告を発する。クシニッチ氏は、外国の民間警備会社が内戦勃発のリスクを高めるとして、「政治的・軍事的にセンシティブな状況においては、民間警備会社が関わるのは全く望ましくない。なぜなら、彼らは紛争が大きくなることで実際に利益を得るからだ。彼らは戦争を煽り、そこから利益を得るのだ」と語る。

 ウクライナ政府が外国の民間企業に治安維持をアウトソーシングしているという状況にあるわけだが、その資金はIMFから流れている。莫大な負債を抱えるウクライナは現在IMFから援助を受けているからだ。クリニッチ氏は、「今ウクライナの資金はIMFからの資金だけだ。誰がこれらの民間の軍隊に支払っているというのか?」と指摘する。

 IMFをはじめ西側からの資金がウクライナに入り、それが米英の「傭兵」を肥え太らせる。こうしたことは、「外部からの介入」ではないのだろうか?

  • 2014/4/9 RIAノーボスチ記事「意見:アメリカの傭兵が利益のためにウクライナで全面的な戦争を始め得る」※削除済み

ウクライナのネオ・ナチが、その「反ユダヤ主義」的な正体をあらわす

 「右派セクター」が、ウクライナ東部の「最前線」に参戦しているという点にも留意する必要がある。ウクライナがまともな法治国家であれば治安任務にあたるのは内務省のはずである。あるいは内乱と呼べるレベルに至ったならば、国軍の出動もありうるだろう。法治国家なら、民間の武装勢力の存在を認めないはずである。

 ところがウクライナ政府は、国軍の兵士とともに、非公式な武装勢力の「右派セクター」の「参戦」を認めているという。「右派セクター」は反ユダヤ主義的な極右であることは明らかであり、ウクライナ西部を拠点とする、反ロシア、反ユダヤ主義的なウクライナ民族主義の系譜が根強いものであることは、大阪大学助教・赤尾光春氏へのインタビューをご覧いただければおわかりいただけると思う。

 ウクライナ暫定政権が街頭で抗議をする「極右」を公認する段階から、武装した「極右」を認め、利用し始めることで、これまで封じ込められてきたウクライナ社会の病理ともいえる反ユダヤ主義が社会の表層に噴出してきた。

 ウクライナ東部で激しい動きが起こっている裏で、ウクライナ南部のオデッサでは静かな破壊が行われた。8日夜、オデッサにあるホロコースト犠牲者の記念碑に、ナチのかぎ十字のシンボルが落書きされたのだ。また、2月にはストルイで、ナチスに対して戦ったソヴィエト軍の犠牲者の記念碑「ソヴィエト兵」が壊されている。

 2月にキエフで最終的に政権転覆を成功させたのは、反ユダヤ主義・反ロシアの「右派セクター」連合だったが、「右派セクター」には、新内閣でいくつかのポストを得たスボヴォダ党などとともに、「ブラウン・シャツ」というグループが含まれている。「ブラウン・シャツ」とは、ナチスの突撃隊の呼び名だった。共産党が「赤」と呼ばれるように、「茶色」「褐色」はファシストの別名である。現在のウクライナでは、ネオ・ナチと反ロシアは判別し難いものになっている。

 問題なのは、何のとがめを受けることもなく台頭し、暫定政権と「軍事的」なパートナーシップも組んでオペレーションを遂行することが可能なのか、という点である。困惑させられるのは、ウクライナのこうしたネオ・ナチには、アメリカが絡んでいるという見方があることだ。

 ボイス・オブ・ロシアは、ウクライナの政権転覆を支援していたのはアメリカのCIAやネオコン論者だったとした上で、「クーデターを実行したのが右派セクターだということは知られている。また、ウクライナの国会と新しい”政府”がアメリカと右派セクターとその連合によって選ばれたということも知られている」と主張している。

 「非合法のアメリカ傀儡のウクライナ大統領オレクサンドル・トゥルチノフは、ウクライナとウクライナ人にとって裏切り者だ。彼の権力は、ワシントンによって支払われ、もたらされたものであるとともに、右派セクターの力によって、そして彼らのクーデターが成功したことによって可能になったものだ。今、トゥルチノフは、まさに彼を権力の座に就かせたネオ・ナチを厳しく取り締まっている」

 ここで記されている通り、ウクライナ内務省は、ウクライナ民族主義者たちに対し、犯罪捜査も行っている。一方では、ウクライナ極右の一部はウクライナ官憲に追われ、別の一部は、ウクライナ軍と組んで親ロシア派の一掃に当たろうとする。ウクライナ極右に明暗が分かれている気配である。

 話を戻して、ネオ・ナチの台頭は米国が関与しているという謀略論だが、これを唱えているのがボイス・オブ・アメリカというロシアメディアであることから、割り引いて考える必要があるのは当然だろう。

 ところが、である。ウクライナで勃興するネオ・ナチにアメリカが絡んでいるという見方は、アメリカの一部でも共有されているのだ。米国の権威ある外交政策関専門誌であるフォーリン・ポリシーは、「そう、ウクライナ政府には悪者がいる」という記事を掲載した。「不快な事実だが、キエフの現政権の中にいる相当数の人々、そして彼らを政権に就かせた抗議者たちは、実際にファシストだ」と述べ、「アメリカのジョン・マケイン議員はキエフでの集会でスボヴォダ党の党首であるチャフニボクと一緒に演台に立ち、抱き合った。そしてデモ参加者たちに向かって、“自由な世界はあなたたちとともにある。アメリカはあなたたちとともにある”と明言した」と論じた。

 米国にわずかに残っている「良心」は、米国とイスラエルにとっての地政学的利益の飽くことなき追究のためであれば、あろうことかハーケンクロイツを掲げるネオ・ナチとも組んでしまう無節操さに、いたたまれなくなっているらしい。

 そんなことにはおかまいなく、12日、右派セクターのリーダーであるディミトリ・ヤロシュ氏は、支持者に総力戦を呼びかけた。「右派セクターは結集し、ウクライナの主権と領土保全を守るために決行する準備をせよ」と映像でメッセージを発している。ヤロシュ氏は、次期大統領選への出馬を表明している。

ロシアの軍事侵攻の可能性

 3月以来、ロシアはウクライナ東部のロシアとの国境地帯に着々とロシア軍の増兵を行っていると言われている。

 しかし、ロシアのラブロフ外相は、クリミア以外のウクライナ領土がロシアに編入されることを望んでいないと述べた。また、ロシア外務省のルカシェヴィチ報道官は、10日に、ロシアはウクライナで軍事行動を行っていないと言明した。

 NATOは、ロシア側のこうした言い分をまったく取りあおうとしない。

 4月2日、NATO(北大西洋条約機構)のフィリッブ・ブリードラブ最高司令官は、ロシア軍は侵攻の命令が出れば12時間以内に侵攻可能なよう準備が整っているとの見方を示した。また、NATOのラムスセン事務総長も、1日のNATO外相会議において、ロシア軍が即応体勢にあると述べた。

 ロシアはいつでも軍事侵攻可能だ。それは周知の事実であるように思えるが、ここに来てNATO幹部はそれを煽り強調するかのような言動を取り始めている。

NATOとシリア

 ここで、ウクライナ東部から一転して、視線を南へと転じよう。

 クリミア半島のそのさらに南、黒海をはさんだ対岸にトルコがあり、さらにその南にシリアがある。セヴァストーポリから、ダマスカスまで直線距離にして、およそ1260km。

▲黒海周辺諸国の位置関係

▲黒海周辺諸国の位置関係

 長い内戦が続いているシリアでは、昨年、アサド政権が化学兵器を使用したとして、米国が先頭に立って武力介入を呼びかけ、戦争寸前にまで至った。

 このシリアへの武力介入に「待った」をかけたのがプーチン率いるロシアである。その外交ゲームはあたかもチェスの攻防を見るが如くだった。

 シリアとウクライナでのそれぞれの内乱は、遠く隔たった別世界で起きている出来事のように思われがちである。だが、ウクライナ東部—クリミア—トルコ—シリアと、南北の縦軸で見ると意外にもそう遠くない近接した空間での事件であることがわかる。このどちらにも、ロシアとNATOが関わっている。

 最近のNATO関連の動きを確認しておこう。

 2013年8月末、NATOはシリアに軍事介入しないことを決定した。だが、NATOとして軍事介入しないとしても、NATO加盟国がシリアに関わり始めている。シリアの隣国、トルコだ。

 3月23日、トルコのエルドレアン首相は、トルコの領空を侵犯したとしてシリアの戦闘機を撃墜したと発表した。このトルコの行動を、挑発的だと見る向きもある。実際にシリアは「敵対行為」とみなしている。

 最近漏洩されたトルコ情報機関長官のハカン・フィダン氏とトルコ外相アハメト・ダブトグル氏の会話によって、トルコがシリアとの戦争を挑発するために自作自演を行おうとしていたことが分かった。これについて、トニー・カルタルッチ氏は、「トルコが隣国シリアに対する最近の露骨な行動を続け、責めを負っているが、NATO加盟国とNATOがトルコの行為を非難しないままでいるということは、この軍事同盟全体が共謀であることを示している」と指摘する。そして、「トルコが、シリアとの戦争を挑発するために、自国内での攻撃計画を暴露され、自作自演攻撃を実際に実行するいかなる試みも、トルコとNATOのやり口の両方をますます弱めるだけだろう」と結論づけている。

 NATOはシリアへの正式な軍事介入の機会を逃したわけであり、また、トルコによる戦争挑発も失敗する可能性が強まってきた。こうした一連の出来事によって、NATOはその権威を失いつつあるように見える。

ウクライナ情勢とNATO

 活動の場を失ったNATOが向かう先はどこだったのか。それが、ウクライナだったのではないか。

 ウォール・ストリート・ジャーナルやロイターは、アフガニスタンでの任務を終え、存在意義を失いつつあったNATOに新たな役割を与えたのがウクライナ問題だったと主張している。

 ウォール・ストリート・ジャーナルは「ロシアのクリミア編入を受けてNATOに新しい目的ができたことも鮮明にしている。NATOはわずか数週間前まで、アフガニスタンでの作戦を終える中で世界でのNATO自体の任務をどう定義するか苦労していた」と論じ、 ロイターは「アフガニスタンでの役割が終わりに近づくにつれて存在意義が問われていた北大西洋条約機構(NATO)だったが、ここにきて息を吹き返している」と論じている。

 ウクライナ情勢とロシア軍の動きが、NATO強化の口実と存続のための根拠(レーゾンデートル)を与えたわけだ。

 ウクライナはNATO加盟国ではないにもかかわらず、NATOはウクライナが軍備を更新するための支援を検討しているという。このようなウクライナに対する手厚い支援と、この問題への介入の目的が何であるのかを考える必要があるだろう。

  • 2014年3月31日 毎日新聞記事「<対ウクライナ>NATOが軍事支援検討 露軍の展開けん制」※該当ページなし

アメリカの失策?

 一方で、アメリカの求心力が落ちているという声もある。ロシアのクリミア編入を機にアメリカはロシアに対する経済制裁を始めたが、これについて、ポール・クレイグ・ロバーツ氏は、オバマ政権のロシアに対する制裁の脅迫がアメリカを失墜させることになると論じている。

 「他の国々は、アメリカ政府が世界のドル基準を濫用することにもはや我慢できなくなっている。アメリカ政府は、アメリカの政治的ヘゲモニーに抵抗する国々の経済にダメージを与えるために、ドル建ての国際決済制度を活用している」。

 さらに、ロバーツ氏は、NATOの崩壊についても言及している。

 「今年、NATOが崩壊するかもしれないし、EUでさえも崩壊するかもしれない。アメリカ政府が企てたウクライナの無謀なクーデターとロシアに対する制裁の脅迫は、NATOの傀儡国家を危険な状態へと推し進めている」。

 また、「ヨーロッパ諸国はアメリカ政府が操作するロシアとの衝突の矢面に立つつもりはない。アメリカ政府はヨーロッパに戦争と犠牲を差し出すが、ロシアと中国は貿易と友好を差し出している」と述べる。

 ロバーツ氏の説を裏付けるかのように、ヨーロッパ諸国は実際に、対ロシアの経済制裁に加わるような行動には出ていない。「ロシアの声」は「米国は、対ロ経済制裁に漕ぎ着けることが出来なかった。欧州はうまく立ち回った。口では米国を支持しながら、行動において一線を越えることはついに肯んじなかった」と報じている。

プーチン大統領からヨーロッパへのメッセージ

 こうしたヨーロッパ諸国の態度に訴えかけようとするかのように、4月10日、ロシアのプーチン大統領はヨーロッパ各国の首脳に宛ててメッセージを発信した。

 このメッセージの中で、プーチン大統領は、ウクライナ独立以降、ロシアがいかにウクライナ経済を支えてきたかを実例と数値を挙げながら示した。ロシアからウクライナに供給する天然ガスの価格の値引きや、2013年12月にウクライナに対する30億ドルの融資をしたことなどが書かれている。そうしたロシアの実績を強調しながら、プーチン大統領はヨーロッパ各国に痛烈に問いかけた。

 「ロシア以外の国はこのような支援をしなかった。ヨーロッパの国々はどうだろうか?ウクライナに対する支援の意向を表明するだけで、実際に支援をしていない。約束しただけで、実際の行動は行われていない」。

 さらには、「ウクライナの経済危機はEU加盟諸国との不均衡な貿易によって生じたものだ」とまで述べている。そして、ロシアとともにウクライナを支援するようヨーロッパ諸国に呼びかけた。

 「ロシアがウクライナ経済を安定化させ回復させる努力を行うつもりであることは言うまでもない。しかし、単独でではなく、ヨーロッパ諸国と平等に行う。ロシアがウクライナを支えるために長年単独で行ってきたような、現実的な投資・貢献・出費を考える必要がある」

 このプーチン大統領からのメッセージに対して、ドイツのメルケル首相は、「真摯に受け止めなければならない」と反応した。EU外相会議で話し合われる予定だという。

ドイツの反応

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「【IWJブログ】ウクライナ東部の混乱――ロシアとアメリカは何を狙うのか」への2件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見より) より:

    マレーシア航空機撃墜は突如起きたことではない、伏線は何本も引かれていたのだ。現在、そして未来を知るためにも、読んでほしい。

  2. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見より) より:

    ウクライナを巡って大国の思惑が交錯し、チェスの駒のように振り回される現状を解説した良記事。今のウクライナがここにある、必読記事!

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