3月16日、クリミア自治共和国およびセヴァストーポリ特別市で、ロシアへの編入を問う住民投票が行われ、96.77%がロシアへの編入への賛成を示した。投票率は80%を超えた。
投票で問われたのは、ロシアに編入されるか、あるいは自治権を定めた1992年のクリミア独自の憲法に戻るかという二択だった。
クリミア自治共和国の人口構成は、2001年のウクライナ国勢調査データでは、ロシア系住民は58%、ウクライナ人は24%、クリミア・タタール人は12%である。住民投票前は、ロシア系住民以外がロシア編入に賛成するかは不明であるとされており、クリミア・タタール人は投票をボイコットするのではないかとも報じられていた。しかし、結果としては、ロシア系住民に限らず、大半の住民がロシアへの編入に同意を示したことになる。
住民投票の結果は正当か?
開票が行われるなか、クリミアの首都シンフェロポリの中心では、喜ぶ人々がレーニン像のまわりに集まって、歌や踊りで祝ったという。花火が打ち上げられ、「我々はロシア人であり、そのことを誇りに思う」と書いた横断幕が掲げられた。
- 2014年3月16日付 NPR記事「クリミア人たちはウクライナを離脱しロシアに編入する投票をした」(現在、当該ページ削除)
昨年12月のキエフのデモでは、レーニン像が引き倒され、その台座にウクライナの旗やEUの旗が掲げられた。レーニンはソ連共産党の象徴、つまりロシア支配を表していたものだった。今回シンフェロポリでは、レーニン像を囲んで人々は喜びを表したとすれば、これを、ウクライナの中心部とクリミアの人々の抱いていた感情の違いを明らかに示した象徴的な出来事と考えることができるだろう。
ウクライナ政府は、この住民投票を憲法違反であるとして、認めていない。アレクサンドル・トゥルチノフ大統領代行は、住民投票に先だって、あらかじめ、住民投票の結果は「ロシアの捏造だ」とさえ述べている。
住民投票の結果が「捏造」だったのかどうかは、監視機関が機能していたかどうかが鍵となるだろう。クリミア議会は10日に全欧安保協力機構(OSCE)に監視団の派遣を要請したが、OSCE側がクリミア自治共和国が国家ではないという理由から監視団派遣を拒否した。
- 2014年3月11日付 読売新聞記事「クリミア議会、OSCEに住民投票の監視団要請」(現在、当該ページ削除)
- 2014年3月12日付 読売新聞記事「OSCE、選挙監視団送らず…クリミア住民投票」(現在、当該ページ削除)
だが、フランス、ドイツ、イタリアなど23ヶ国から135人の国際監視団が入ったほか、1240人のクリミア国内の監視人とともにEUメンバー、国際法専門家、人権活動家などが監視を行った。かれらの監視のもとで、住民投票は非常に透明性の高い状況で行われたという。ロシア・トゥデイ紙などに投票所の写真が載せられているが、投票は穏やかに行われているように見える。
住民投票の結果が「捏造」だったとは必ずしも言い切ることのできない状況で、投開票は行われたと考えられる。そうなると、問われるのは、住民投票そのものが、ウクライナ政府の主張するように「憲法違反」なのかどうかということになるだろう。
クリミア・セヴァストーポリ独立宣言の意味
今回のロシアのクリミアの併合について、佐藤優氏の意見をぜひ、聞きたい。