クリミア編入後の世界 難しい日本の立ち位置 〜2014年第5回国際地政学研究所ワークショップ 2014.5.16

記事公開日:2014.5.21取材地: テキスト動画
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(IWJ・藤澤要)

 5月16日、東京市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷で2014年第5回国際地政学研究所ワークショップが行われた。

 キーノートスピーチは「クリミア編入にみるロシアの影響圏的発想」と題され、兵頭慎治氏(防衛省防衛研究所 地域研究部米欧ロシア研究室長)が発表を行った。

 兵藤氏は、国際関係におけるロシアの行動には「影響圏的発想」があると指摘。ほぼ旧ソ連領に相当する「地上影響圏」に加え、近年のロシアは、北極およびオホーツク海に広がる「洋上影響圏」を自らの影響が及ぶ範囲だとみなし始めているという。兵藤氏は「この二つがあり、そこに外国勢力が侵入してきて、ロシアが反発を示している、このような構造がある」との見解を示した。

 キーノートスピーチに先立ち当日の趣旨説明を行った柳澤協二氏(国際地政学研究所理事長)は「この問題はロシア・ウクライナ間だけでなく、国際秩序維持においても大きな問題だ」と発言した。

■ハイライト

  • 登壇 兵頭慎治氏(防衛省防衛研究所)/柳澤協二氏(国際地政学研究所所長)

「影響圏」を防衛しようとするロシア

 2008年のグルジア紛争は「ロシアが影響圏を死守しなければならないと自覚させる出来事」だったと兵藤氏は指摘。国際社会の非難の中、ロシアはグルジア領内のアブハジアと南オセチアの独立を一方的に承認したが、ロシアにはグルジアがNATOに加盟することを未然に防ぐ意図があったのだと兵藤氏は述べた。

 ロシアは2009年に「国防法」改正を行い、軍隊の海外展開を可能にする法整備を進めていた。改正された「国防法」によれば、「ロシア領外のロシア国民の保護」「ロシア領外の部隊への攻撃」「ロシアに対する他国からの要請」「海賊取締・船舶航行の安全確保」などの理由により軍の国外派遣が可能である。

 ただし、一国の法律に基づいた軍派遣であっても、国際法から逸脱した行動であれば、国際社会からは「軍事介入」とみなされる。そこでロシアはクリミア編入に際して、「あれはロシア軍ではない、自警団(self defense force)だ」というロジックを用いた、と兵藤氏は指摘。

 「自警団」によるクリミアの掌握後、住民投票に基づいた編入の意志を担保した上で、ロシアとクリミアとの間で主権国家どうしの「対等な条約」が結ばれ、編入が行われた。この一連の流れを根拠に、ロシアはクリミア編入を軍事介入によるものではないと主張している。

中国がロシアの影響圏に侵入

 ロシアによるクリミア編入に関して「あまりメディアでは指摘されていないファクター」として兵藤氏が挙げたのが中国だ。中国が地上・海洋双方でロシアの影響圏を脅かすような行動を取るときに、ウクライナとの関係が見え隠れするためである。

 習近平国家主席が昨年、「大シルクロード構想」と称して、中国から欧州へとつながる「経済協力ベルト」の推進を開始した。その一環として、中国は、ウクライナにも経済進出を行っている。「クリミアにおよそ30億ドルを投資しインフラ整備などを推進している。また、緊張が続くウクライナ東部で人民解放軍系の組織が300ヘクタールの農地を租借している」

 さらに中国は旧ソ連兵器をウクライナから輸入するほか、砕氷船・「雪龍(スノードラゴン)」を購入している。この「雪龍」は北極点付近の新航路開拓について成果を上げている。これに加え、昨年7月には、オホーツク海に中国海軍の艦艇5隻が入り込んだ。

 昨年12月には当時のウクライナ大統領ヤヌコヴィッチ氏が訪中し「友好協力条約」を締結した。この条約には、「ウクライナが核の脅威に直面した際には、中国が安全を保証する」という一文が入っているという。

日本を誘うロシア

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