「情報量が格段に少ない日本、まるで情報鎖国」〜高遠菜穂子氏・泥憲和氏が講演、イラクの惨状を訴え日本政府の態度を批判 2014.11.2

記事公開日:2014.11.6取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(IWJテキストスタッフ・関根かんじ)

特集 中東

 「日本の外務省はイラク戦争について、いまだに『大量破壊兵器があったための戦争を(日本は)支援』と表明している」──。高遠菜穂子氏は、イラク戦争の検証をしない日本政府の姿勢、日本の報道の偏向ぶりに疑問を呈した。

 また、アメリカ帰還兵のPTSD被害や、戦死者より多い自殺者の問題、ホームレスなどになって社会復帰できない元軍人の悲劇を語り、将来、集団的自衛権の行使によって、日本でも同様の問題が引き起こされるとして、自衛隊員へのバックアップ体制を憂慮した。

 イラク支援ボランティアの高遠菜穂子氏が、2014年11月2日、兵庫県姫路市内で開催された「高遠菜穂子×泥憲和 憲法公布69年シンポジウム『武力をもたない』が一番つよいか」で講演を行った。日本とイラクとの往来を続けている高遠氏は、日本では十分に報道されない、イラク戦争後から「イスラム国(IS)」の出現に至るまでのイラク情勢、戦闘被害の現実などを生々しく語った。

 元自衛隊員の泥憲和(どろ・のりかず)氏もマスコミの偏向報道を指摘し、先日の宮中晩餐会でのオランダ国王の踏み込んだ発言を取り上げて、次のように語った。「戦時中、インドネシアにいたオランダ人女性20数人が日本軍の慰安所に連行された。白馬(しろうま)事件と呼ばれ、戦後、将校たちには死刑と懲役刑が下されている。しかし、安倍首相が慰安婦問題を否定したことに、今、オランダは猛反発している。そういうことも含め、日本のマスコミは一切報道しない」。

 また、泥氏は憲法9条の下で「戦わない軍隊」をアピールした自衛隊イラク派遣の特殊性を語り、集団的自衛権行使容認の危険性を訴えた。

■ハイライト

  • 講演 高遠菜穂子(たかとお・なほこ)氏(イラク支援ボランティア)「イラク危機の現状から憲法9条を考える」(※要請により講演中のスライドは撮影しておりません)
  • 発言 泥憲和(どろ・のりかず)氏(元自衛官)「憲法9条からみた自衛隊イラク派遣の教訓」
  • (※質疑応答は録画に含まれません)

情報鎖国の日本

 主催者挨拶に続いて登壇した高遠氏は、「イラク戦争から11年が経過しているが、昨年末から最悪の状況になった」と口火を切った。14年間の海外ボランティア活動のうち、11年間をイラクに費やした高遠氏は、日本の報道の偏向ぶりに言及し、「日本に帰国すると情報鎖国になる。(日本のメディアだけに接していると)情報量が格段に減る」と話す。

 そして、中東の地理関係とイスラム教について説明し、「イラクの最大宗派はスンニ派。マスコミなどは宗派対立と言うが、実際はもっと複雑だ。サダム・フセイン元大統領は、政教分離で宗派間結婚も許し、宗派対立はまったくなかった」と述べた。

 続けて、自身の活動拠点でもあったファルージャ、ラマディの様子を語った。「ラマディのすべての公園は、墓に変貌している。アメリカ兵によるイラク人捕虜の拷問、虐待が問題になったアブグレイブ刑務所のあった街は、現在は夜でもひとりで平気で歩ける。しかし、50キロほど離れたイラク第2の都市モスルは戦争状態だ」。

戦死者より多い、帰還兵の自殺

 2003年、米国のブッシュ大統領とイギリスのトニー・ブレア首相が、「イラクは大量破壊兵器を保持」「サダム・フセイン大統領はアルカイーダと通じている。テロ支援国家、悪の枢軸」と表明。国連査察団が700回、500ヵ所を調査し、大量破壊兵器はなかったと報告したにもかかわらず、米英側はこれを無視して戦争へ突入した。2年後に「大量破壊兵器はなかった」と訂正しているが、日本の外務省では、いまだに「大量破壊兵器があったための戦争を支援」と表明し続けていると、高遠氏は言う。

 そして高遠氏は、アブグレイブ刑務所に2003年に1年間勤務したのち、良心的兵役拒否をした米兵の話を紹介。米軍のグアンタナモ収容所(キューバ)の拷問マニュアルをアブグレイブでも使用したこと、イラク人の被害者から聞いた凄惨な拷問の様子などを語った。

 一方で、アメリカ兵にはPTSD被害が広がっており、戦死者より多い4000人が自殺している現実も明かした。また、高遠氏自身がアメリカの帰還兵病院で見たことを語り、帰還兵たちが抱える社会的な問題を指摘。その上で、将来、日本で集団的自衛権が行使された場合に、PTSDなどのケアに関して、自衛隊には帰還兵の受け皿がないことに懸念を示した。

水頭症、無脳症など先天異常児の多いイラク

 高遠氏がファルージャ総合病院のボランティア活動で調査したところ、新生児の先天異常が14.4%あり、1994年頃から小児がん、白血病が増加しているという。イラクの医師たちは20年以上、アメリカとイギリスを訴え続けているが、WHOとイラク政府は合同調査を行い、使用兵器との因果関係を否定している。

 高遠氏はファルージャ総攻撃のスライドを見せながら、アメリカ軍の残虐行為を説明。皮膚が焼けただれ、腐敗しない遺体の多さから、白燐弾、劣化ウラン弾の使用を指摘。さらに、「妊産婦に出産前のエコー検診がないので、水頭症、無脳症、脊椎ニ分裂症(二分脊椎症)などの子どもが、そのまま生まれるケースも多い」と悲惨な実態を訴えた。

180万人の避難民であふれるクルド人自治区

 また、クルド人自治区には180万人の難民が押し寄せているが、イスラム国に改宗を強要された異教徒たちが半数、その他はファルージャ、ラマディの迫害された避難民たちで、病死者も続出している現状だという。

 高遠氏は「マイノリティのヤジディー教徒たちは改宗しないと斬首だ。それを止めさせるべく、国会議員が議会で泣いて懇願したが、そういうニュースも日本では流されない。結局、イラク市民も米軍に救援を求めるしかなくなってしまったが、それを世論は批判している」と情報の混乱ぶりを指摘した。

 そして、話題はシーア派のマリキ前首相の暴政に移った。100万人が参加した反テロ法撤廃を求める金曜デモへの無差別鎮圧、スンニ派指導者の拷問殺害事件、2007年にかけてスンニ派住民3万人の虐殺など、壮絶な実態を高遠氏は語り、最期にイスラム国について、イラクの宗派間のとても複雑な内実を説明した。

オランダ人女性20数人が慰安所に連行された白馬事件

 休憩後、元自衛官の泥憲和氏の講演「憲法9条からみた自衛隊イラク派遣の教訓」に移った。「元自衛官として感じる集団的自衛権の危機感をネットで書いたら反響が大きく、人前で話すようになった」と述べ、前述の高遠氏の話を裏付けるように、日本での報道の偏向ぶりから話し始めた。

(…会員ページにつづく)

アーカイブの全編は、下記会員ページまたは単品購入よりご覧になれます。

一般・サポート 新規会員登録単品購入 330円 (会員以外)

関連記事

「「情報量が格段に少ない日本、まるで情報鎖国」〜高遠菜穂子氏・泥憲和氏が講演、イラクの惨状を訴え日本政府の態度を批判」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「情報量が格段に少ない日本、まるで情報鎖国」〜高遠菜穂子氏・泥憲和氏が講演、イラクの惨状を訴え日本政府の態度を批判 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/201948 … @iwakamiyasumi
    現地の声を代弁するお二人の話は聞き逃せない、メディアが報じることはないのだから。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/530317311811411968

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です