「あなたは、あなたらしく生きていい。これが自由や人権の根源」 〜「若者憲法集会」高遠菜穂子氏 黒澤いつき氏 2014.6.22

記事公開日:2014.6.22取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・花山/奥松)

 「国民は、自分たちの自由や人権を守るために、国家権力をコントロールできなければならない。法で国家を縛る。これが立憲主義という考え方」──。

 2014年6月22日、東京都内で「若者憲法集会」が開かれた。午前中の分科会に続き、めぐろパーシモンホールで14時から全体会が行われ、憲法の解釈を変更してまで「戦争する国づくり」を進める危険性について、ゲストの高遠菜穂子氏と黒澤いつき氏が警鐘を鳴らした。

 2004年、イラクに派遣されていた自衛隊の撤退を要求する武装勢力に、誘拐された経験のある高遠氏は、「テロの世界には、身内が拷問殺害されたような人たちが集まる。敵に対する憎悪という強いモチベーションを持っている。命令で動く兵士とは違う」とし、「集団的自衛権を行使して、自衛隊が米軍と一緒に行動するとなれば、間違いなく日本人が標的になる」と危惧した。

 「明日の自由を守る若手弁護士の会」共同代表の黒澤氏は、紙芝居の形で立憲主義や憲法の意味を解説し、時の政権が解釈によって憲法を変更したり、社会の閉塞感の打破や景気対策のために改憲をしようとするのは、「憲法が何なのかわかっていない人の発想で、的外れだ」と断じた。

 なお、若者憲法集会の実行委員会は、翌6月23日、内閣府と国会議員に対し、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認をしないことなどを要請した。

■ハイライト

  • 全体会 ゲスト 高遠菜穂子氏(イラク支援ボランティア)/黒澤いつき氏(明日の自由を守る若手弁護士の会)
  • (全体会に先立って行われた分科会、全体会後のデモ行進は録画に含まれません)

戦場に武装して入ることは「撃ってください」ということ

 高遠菜穂子氏はイラクの現状を、「今、イラクはニュースになっている。突然、イラクの報道が出たのは、イラク北部のモスルをISISというアルカイダ系過激派武装組織が占拠したからだ。しかし、こういうことがモスルで起きたのは初めてではない。この1年間に5回くらい、同じようなことがあった。今回は規模が大きかったので報道されただけ。モスルの人たちは、イラク戦争後、ずっとこういう状況にある。夜になると戦闘の音が聞こえる。イラク警察とアルカイダ系と言われる人たちが、夜、町の中で戦闘しているのだ」と述べ、「戦闘の原因も、単純なものではない」と語った。

 高遠氏は「戦場に武器を持って行くということは、どういうことか。『訓練を受けた自衛隊員であれば、生きて戻れる』と話した人がいた。しかし、私が知っている、今のテロの世界では無理だ」と言う。

 「まず、テロの世界にいるのは、国家の軍隊ではない。どういう人が武装勢力になっているかというと、身内が拷問殺害されたような遺族たちで、敵に対する憎悪という強いモチベーションを持っている。命令で動く兵士とは違う」

 「このようなところで、武器はお守りにならない。むしろ、武器の携行はターゲットにされて撃たれることを意味する。だから、戦場に武装して入っていくことは『撃ってください』と言うようなもので、絶対にやってはいけない」と述べた。

戦争放棄の9条の力

 「日本にいると『過激派は処刑をする残虐な人たち』という情報が入ってくる。しかし、その残虐性は、彼らがイスラム教徒だから、シーア派、スンニ派だから、ということではないと実感している。彼らは、最初からモンスターだったわけではない」と話し、虐殺や拷問が次の襲撃を産む、負の連鎖について触れた。

 「そういう残虐性は、すべての人間の中に必ずある。ただ、私たちがそうならなかったのは、日本国憲法9条があったからだと思う」

 高遠氏は「今のイラクには、解決策がないと言われており、ある宗教関係者は『イラクの憲法を改正しなければいけない。今のマリキ独裁政権を維持させているのは、憲法に問題がある』と語っている。解決策がなくて、疲れ果てて、最後の最後にすがろうとしているのが憲法なのだ」と語った。

失ってわかる、自由や平和の大切さ

 黒澤いつき氏は立憲主義について、「近代市民革命の時期に、天賦人権という考えが生まれた。自由は、誰かからもらうものではない。人権とは、人が生まれながらにして持っているもの。そして、それは誰にも奪われないもの、という思想。だから、国民は自分たちの自由や人権を守るために、国家権力をコントロールできなければならない。法で国家を縛る。これが立憲主義という考え方だ」と語り、次のように続けた。

 「およそ近代の民主主義国家というものは、すべて、この思想を土台にしている。日本国憲法は、日本国民が国家権力、日本の政権に対して突きつけるもの。日本国憲法の前文が『日本国民は』という主語で始まっていることからも想像できる。それが、法律と憲法の決定的な違いであって、近代における憲法の本質である」

 そして、若者憲法集会のテーマに触れ、「自由や人権憲法を身近に感じようということ。日本でなんとなく暮らしている私たちにとって、自由や平和を大事だとか、あってよかった、と皮膚感覚で感じる瞬間はそんなにない。身近に感じることは、すごく難しいこと。もし、そういう瞬間があるとすれば、それは自由や平和が侵害された時だ」と指摘した。

 「すべて国民は、個人として尊重される」という、日本国憲法の第13条について、黒澤氏は「シンプルな条文。これは簡単に言うと『あなたは、あなたらしく生きていい』ということ。これが、すべての近代思想の自由や人権の根源となっている。ここにいる全員が、自分たちのかけがえのない自分らしさ、個性を持っているのだ」と若い聴衆に語りかけた。

 「13条は、自分らしさを大事にして、尊厳ある人間として生きていい、というメッセージ。だからこそ、言いたいことを、言いたい時に言う自由、なりたい職業を目指す自由、行きたい時に行きたい所へ行く自由は、なくてはならない。すべての民主主義国家の土台に流れるメッセージだ」。

国籍をチェックされ「日本人は問題だ」

(…会員ページにつづく)

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「「あなたは、あなたらしく生きていい。これが自由や人権の根源」 〜「若者憲法集会」高遠菜穂子氏 黒澤いつき氏」への6件のフィードバック

  1. @toropikoさん(ツイッターのご意見より) より:

    確かに高遠さんのいうように戦場のリアリティを持ってる日本人は少ないだろう。せいぜい戦車に乗って記念写真 

  2. @kumogasukiさん(ツイッターのご意見より) より:

    高遠菜穂子さんのイラクの報告、必聴です。

  3. @yagiutinaさん(ツイッターのご意見より) より:

    39’過ぎ「イラク解決策がないと言われる中、宗教関係者イスラム哲学者が揃って『憲法の改正しかない』と話し合っていた。人間にそれほど憲法が重要とは」

  4. @yagiutinaさん(ツイッターのご意見より) より:

    空爆に遭った相棒が報復の負の連鎖に陥ろうとしていた時、伊江島の非暴力運動をした阿波根 昌鴻(あはごん しょうこう)の写真集を発見し、留まる事ができた

  5. @yagiutinaさん(ツイッターのご意見より) より:

    高遠さん「学生のうちに短期でも海外(どこでも)行ってみて欲しい。その国のTVを見て欲しい。外から見る日本の姿と内から見る姿のギャップが大きいのでは」 声を上げよう! 私たちの命と自由のために 若者憲法集会

  6. @NIDONEINUさん(ツイッターのご意見より) より:

    テロの世界の戦場では、武器を持っているとターゲットになる。空爆を受けた人達はどこから来た武器か見ている

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