2025年2月25日、岩上安身による現代イスラム研究センター理事長・宮田律(みやた おさむ)氏インタビューを撮りおろし初配信した。
岩上安身による宮田氏へのインタビューは、昨年12月30日に初配信した1回目に続き、今回が2回目となった。
現代イスラム政治の専門家である宮田氏は、中東情勢についても多くの著書を執筆している。2024年4月には、ガザ紛争について『ガザ紛争の正体~暴走するイスラエル極右思想と修正シオニズム』(平凡社新書)を上梓し、2025年1月16日には、新著『イスラエルの自滅~剣によって立つ者、必ず剣によって倒される』(光文社)が発売された。
この2冊をあわせ読むと、パレスチナ人をジェノサイドし続ける残酷な現象面だけでなく、彼らが、「神」という妄想のもとに、好き勝手やる特権的な自由が、自分達だけには、ユダヤ=キリスト教徒には、神から許されているという、深い、傲慢な確信に支えられていることがわかる。この終末論的な病い、傲慢さと非科学的な宇宙観・世界観とが相まって、終末論的妄想が世界をふり回していることが、よく見える。
2025年1月15日、トランプ大統領の就任に間にあわせるかのように、ガザでのイスラエルとハマスの戦闘の停戦が発表され、19日に停戦が発効した。
ところがトランプ大統領は、停戦後のガザを米国が勝手に接収し、所有して、パレスチナ人を追放し、リゾート経済開発をする、と表明した。
これについて宮田氏は、2月5日、フェイスブックへの投稿で、「新たな『民族浄化』計画」だと指摘し、その背景にトランプ大統領の娘婿ジャレッド・クシュナー氏の発言があったことを、次のように紹介している。
「昨年(2024年)3月にトランプの娘婿のジャレッド・クシュナーがガザ地区の海岸沿いの土地は非常に価値があるかもしれないと述べ、イスラエルはガザ地区を『浄化』するにあたり民間人を立ち退かせるべきだと提案したことによって始まった。
クシュナーはホワイトハウスを去った後、資金の大半をサウジアラビア政府の政府系ファンドから得たプライベートエクイティ会社を設立した。
彼はその資金数百万ドルを、ガザを含む占領地で使用されている軍事・安全保障装備で中心的な役割を果たしているイスラエルのハイテク企業に投資した。
クシュナーはガザでの戦争を『少し残念な状況ではあるが、イスラエルの観点に立って、私は住民を避難させ、その後一掃するために最善を尽くす』と述べた」。
このクシュナー氏の発言について、インタビューで宮田氏は、「つまり、ここにはパレスチナ人に対する思い入れとか、感情移入というのは、まったくない」と指摘し、「ナチス時代のユダヤ人の強制移住を彷彿させるもの」だと述べた。
さらに宮田氏は、フェイスブックに次のように記している。
「24年5月にイスラエルの『エルサレム・ポスト』紙は、ネタニヤフ首相の戦後ガザ地区に関する構想『ガザ2035』を発表した。
その構想が書かれた文書には『ゼロからの再建』が強調され、この言葉にはネタニヤフ首相のガザに関する目標、つまりガザを徹底的に破壊し、その後に新しい都市をゼロから設計し、立て直すという目標が表れていた」。
これについて宮田氏は、インタビューで「つまり、クシュナーとか、あるいは今のトランプとかという人と同じ目的」だと指摘し、「おそらく彼らはどこかで、そういう構想を話しあって協議していたんじゃないかな、という気がします」との見解を示した。
インタビューの後半では、「15ヶ月に及ぶ戦争は中東地域に何をもたらしたか?」と題して、宮田氏に解説していただいた。
イスラエルとハマスが1月15日に合意したガザ停戦は、第1段階として、最初の6週間で、ハマスがガザで拘束しているイスラエル人の人質33人の解放と引き換えに、イスラエルは刑務所に収監しているパレスチナ人数百人を釈放する、とされている。
停戦16日目から開始される第2段階では、残るイスラエル人の人質の解放、イスラエル軍の全面撤退、「持続可能な平穏の回復」の実現のための交渉が行われる。
最終段階の第3段階では、ガザの復興と、残された人質の遺体の返還を実現する、とされている。
インタビューで宮田氏は、「ガザ戦争は6週間の停戦合意に至ったが(その先はわからない)、恒久的な和平にはほど遠い」との見方を示した。
宮田氏は、「ネタニヤフ首相は、6週間の停戦後に戦闘の再開とハマスへの勝利を、極右のスモトリッチ財務相に約束した」との報道があることを指摘し、「おそらくその通りだと思う。停戦が終わったら、即、ガザに攻撃を仕掛けて、トランプの構想の実現をはかっていくだろう」との見方を示した。