「紛争当事者同士でまとまりそうになると、支援国がかき回す。これが内戦と言えるだろうか」――忘れ去られた「シリア内戦」の今 2015.6.25

記事公開日:2015.7.6取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根)

特集 中東
※7月6日テキストを追加しました!

 「シリアでの紛争を『勧善懲悪、独裁と民主化の闘い』などと煽っているのは、外野のサウジ、トルコ、カタールだ」──。シリアの内戦は重層的で、一般的な「内戦」という言葉では言い表せないと、東京外国語大学教授の青山弘之氏は語った。

 2015年6月25日、東京都府中市の東京外国語大学で、「イスラーム国台頭から1年 特別講演会 忘れ去られた『シリア内戦』の今」が開催された。同大学教授の青山弘之氏と中東調査会研究員の高岡豊氏の講演のほか、共催のサダーカ、学生サークルのシリア研究会からの報告も行われた。

 高岡氏は、「『イスラーム国』はシリア、イラクを跨いで存在し、既存の国境を壊す。それは、国家の基盤を根こそぎ覆してしまうため、世界から危険視されている。私たちは『イスラーム国』の脅威だけに立ち向かえばいい、と短絡的に考えてしまうが、実はそうではないことも承知すべきだ」とした。

 また、対応策のひとつとして、「テログループはトップを駆逐しても終わらない。『イスラーム国』への参加者は社会への不平不満を持っているので、その根を絶つ方策を考えるべき。暴力に訴えずに社会不満を解消する方法を定着させることだ」と提言した。

 シリア研究会のメンバーは、「日本が70年間、戦争をしないことは驚きのひと言に尽きる。平和を愛する姿があるからこそ、日本人が大好きだ」というシリアの大学生の言葉を紹介した。

 青山氏はシリアの今後について、「現在、反体制組織とシリア政府が和解交渉を行い、ジュネーブ会議、カイロ会議、モスクワ会議など、各プロセスでいろいろな動きがある。ただし、シリア内戦の当事者同士が和解したとしても、大国のロシア、イラン、アメリカ、トルコ、サウジアラビアが終らせる努力をしなければ、シリアに平和は決して訪れない。残念ながら、『イスラーム国』の問題もシリアの紛争も、すぐには解決しないだろう。だからこそ、忘れないでフォローし続けることが大切だ」と語った。

記事目次

■ハイライト

  • 講師 青山弘之氏(東京外国語大学教授)、高岡豊氏(中東調査会研究員)
  • 日時 2015年6月25日(木) 17:30~
  • 場所 東京外国語大学(東京都府中市)

2006年、すでに「イスラーム国」を名乗る

 青山氏は、「2014年6月下旬、『イスラーム国』が『カリフ制』樹立を宣言し、国際社会の脅威として台頭してきた。これは長年の中東情勢から生まれた結果だ。今日は、その中東の過去を検証することから現状を把握し、今後の対応を見出す機会にしたい」と口火を切った。

 シリアの内戦は重層的で、われわれが思い浮かべる「内戦」という言葉では言い表せない部分が、今日の混乱の原因だと語る青山氏は、「『イスラーム国』台頭のきっかけとなった『シリアの内戦』は、民主化や独裁政権の打倒を目指した2011年の『アラブの春』のようなものではない」と言い重ねて、高岡氏にマイクを引き継いだ。

 高岡氏は、「イスラーム国」について、次のように説明した。

 「『イスラーム国』の行動は、1991年、対ロシアのアフガニスタンでの戦闘から始まり、米軍のアフガン進攻から、2003年のイラク戦争でイラクに移り、『アラブの春』の後の混乱に乗じて再び勢力を盛り返した。2006年10月、すでに彼らは『イラク・イスラーム国』と名乗っていた。トップを『信徒たちの長(おさ)』と呼び、首相、厚生相、戦争相、殉教者相もいる国家を形成していた。一時、衰退するが、シリア内戦で息を吹き返した」

すべての武装勢力が人殺し、という点では同じ

 青山氏から、「シリア内戦に関わった武装勢力は、アル=ヌスラ戦線やシリア自由軍など数多くあるが、なぜ、『イスラーム国』だけが注目されるのか」と尋ねられた高岡氏は、「すべての武装勢力が人殺し、という点では同じだ」と断った上で、「イスラームの主義主張の有無が組織を分ける基本的な見方。そして、イスラーム主義者同士で、誰がトップになるかを競い、仲違いしている状態だ。彼らは戦術面に違いがある」と応じ、このように続けた。

 「その中でも『イスラーム国』はシリア、イラクを跨いで存在し、既存の国境を壊す。それは、国家の基盤を根こそぎ覆してしまうため、世界から危険視されている。私たちは『イスラーム国』の脅威だけに立ち向かえばいい、と短絡的に考えてしまうが、実はそうではないことも承知すべきだ」

「シリア内戦」はアルジャジーラが煽って始まった

 「シリア内戦」「シリア難民」という言葉に違和感を持つという青山氏は、シリアで起きた混乱について、このように説明した。

 「シリアにも波及した『アラブの春』は、カタールや湾岸諸国がバックに控える衛星放送のアルジャジーラが煽っていたことが、あとになってわかった。シリアでの5万人程度のデモを、アルジャジーラは『政権を揺るがすデモ』とねつ造報道を行い、アサド政権が、それに過剰反応してデモを弾圧した。すると、2011年9月、アメリカ、サウジアラビア、トルコが一斉にアサド政権の正当性を否定し、経済制裁を課した。それに反応して、ロシア、イラン、レバノンなどがアサド政権を支援。この段階で、内戦というより国際紛争の様相を呈してきた。同時期に、離反兵を中心にした自由シリア軍が反体制運動を始めた」

 高岡氏が、「サウジ、トルコ、カタールは自由シリア軍への支援として、資金援助と武器供給を行った。トルコ、ヨルダンは、自国に基地も供与した」と補足し、青山氏は、「2011年11月頃から、リビアの戦闘員など、ならず者たちが自由シリア軍に移入。民主化の旗印だったものが、過激派組織に変わっていく。一方で、シリア国民連合ができて、アメリカなど西側諸国が支援する。そんな混沌とした中、ダーイシュ(イスラーム国)が分離独立した」と一連の経緯を解説。「ちなみに、昨日(2015年6月24日)アメリカは、シリア国民連合のメンバーと家族全員を、ポテンシャル・テロリスト(潜在的なテロリスト)に指定した」と言い添えた。

 高岡氏も、「『イスラーム国』は弱体化していたが、シリアに争乱が起こり、アル=ヌスラ戦線というダミーを作る。そこから資金や武器を調達、滅亡寸前の状態から回復した。2013年4月、アブー・バクル・アル=バグダーディがISIL(ダーイシュ)を宣言し、ヌスラ戦線の反ISILたちと袂を分つ。ここからアルカイーダとISILが敵対するようになった」と述べた。

他国の欲望がうごめく国際紛争

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“「紛争当事者同士でまとまりそうになると、支援国がかき回す。これが内戦と言えるだろうか」――忘れ去られた「シリア内戦」の今” への 1 件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「紛争当事者同士でまとまりそうになると、支援国がかき回す。これが内戦と言えるだろうか」――忘れ去られた「シリア内戦」の今 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/250560 … @iwakamiyasumi
    人、モノ、金、メディアから「イスラーム国」の今後を占う。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/618029280446955520

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