岩上安身によるインタビュー 第270回 ゲスト ベル=アベス・ネダール氏 2013.2.8

記事公開日:2013.2.8取材地: テキスト動画独自
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

特集 中東
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 2013年2月8日(金)16時45分過ぎから、京都市左京区の京都大学吉田南キャンパスで、アルジェリアのモスタガネム大学准教授であり、京都大学の客員研究員、ベル=アベス・ネダール氏へのインタビューが、岩上安身によって行われた。アルジェリア人質事件にからめてアルジェリアの概要、その言語社会と文化背景、またイスラム教世界などについて話を聞いた。

■ハイライト

  • 通訳 西山教行教授(京都大学大学院人間・環境学研究科)

 言語教育学博士のベル=アベス・ネダール氏は、京都大学大学院の人間・環境学研究科の客員研究員として、約5ヶ月間、滞日している。はじめに、岩上が「今回、アルジェリア人質事件が起こった。多言語社会をキーワードに、まず、アルジェリアという国の概要をお話し願いたい」と切り出した。ネダール氏は「アルジェリアは、北アフリカに位置し、アフリカで一番広く、世界でも10番目の領土を持つ。アラブ連盟、アフリカ連合に属し、民族ではアラブ人とタマジクト人で人口3500万人。言語には、ポエニ語がルーツの方言アラビア語、方言のひとつであるタマジクト語、130年間の植民地支配によるフランス語、コーランの言語でもある古典アラビア語が存在する」と説明した。

 ネダール氏自身の母語と民族的ルーツは、「民族的にはアラブ・ムスリム。母語はアルジェリア・アラビア語」だという。岩上は「ポエニ語とは、ポエニ戦争に関連するのか?」と質問。ネダール氏が「ポエニ語は、ローマ時代に北アフリカで使われていて、そこにアラビア語が混合した言葉だ」と説明すると、岩上は「では、アルジェリアの言語は、時代によっていろいろな言葉が重なった地層のようなもの、と理解できる」とコメントした。

 続けて、岩上は「アルジェリアの言語の歴史を紐解くと、さまざまな民族の去就が読み取れる」と話し、ビザンチンの前、バンダル語などの歴史について尋ねた。

 ネダール氏は「バンダル語は、言語としては不明だが、文化としてアルジェリアにあった。マグレブ3カ国とは、アルジェリア、モロッコ、チュニジア。広い意味では、モーリタニア、西サハラ、リビアを加えることもある」と答えた。

 岩上が、ネダール氏の論文に「アルジェリアの言語状況はバベルの塔のようだ」とあったことに触れて、その意味を尋ねると、ネダール氏は「言語学者が『バベルの塔』と言うと、多言語社会のことを差す。バベルの塔は、人間が神に到達したいと増長して建設したところ、神が怒り、塔を破壊した。同時に、それまでひとつの言葉で生きてきた人間に、いろいろな言語を与えて分断してしまった。多言語社会の中で、コミュニケーションができなくなった状態を表している」と語った。

 さらに、岩上から「現在のアルジェリアは、言語的にどういう状況か」と聞かれると、ネダール氏は「アルジェリアの多言語状況は、豊かさの源でもある。しかし、争いは存在する。アラブ化政策とフランス語との対立はあるが、フランス語はアルジェリア独立戦争で勝ち得た戦利品と考えて、吸収すると主張する人たちもいる」とした。また、岩上が「論文に、フランス占領下で識字率が上がり、教養人が育ち、独立精神を学んだ、とあった。つまり、フランスによる占領が、独立や革命思想をもたらしたということか」と聞くと、「アルジェリア人は、フランス語を使って独立した。逆説的だが、占領期間の抑圧が母国語も作り出していた」と述べた。

 ネダール氏は「アルジェリアは1962年に独立した。『自分たちの起源に戻ろう。植民地支配時代の、アラブの人格否定の傷を癒さなければいけない』とアラブ・ムスリムを目ざし、イスラームとアラブ民族主義に基づいたアイデンティティを作ろうとした。しかし、アラブ民族主義とイスラームは真逆の考え方だ。アラブ民族主義は非宗教的、脱宗教主義。なぜなら、アラブ人すべてがムスリムではなく、10%がキリスト教徒なのだ。アラブ民族主義は、シリア、レバノンから生まれた考え方で、複数の宗教よりもアラブ民族を重要視する考え方。植民地主義の汚点が、アラブ民族主義の求心力でもある。アラブ民族主義は、キリスト教公認。イラク、シリア、エジプトが、アラブ民族主義の中枢国家だ」と説明をした。

 岩上が「今回のアルジェリア人質事件は、どういう犯罪集団が引き起こしたのか」と質問すると、ネダール氏は「今回の事件は、アルジェリア人にもたいへんな迷惑。犯人たちは国際テロリスト集団だ。エジプト人、リビア人、チュニジア人、ニジェール人、モーリタニア、マリ、カナダ、フランス国籍の者もいた。アルジェリア政府の行なった救出作戦は、アメリカ、フランス、イギリスは承認していた。残念な結果になったが、唯一残された作戦でもあった。さもなければ、もっと悲劇を招いただろう」と述べた。また、「貧富の差がテロリズムを生む、としたらそれはテロリズムを正統化してしまう。世界に貧富の差は存在するが、テロがない国もある。重要なのは、テロリズムの問題から見るのではなく、富の再分配を考えることだ」などと語った。

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