1月16日、アルジェリア南東部イナメナスで起きた武装勢力による人質事件で、21日、日揮の日本人社員7人の死亡が確認され、最悪の事態を迎えた。現在、日本政府は、残る日本人の人質3人の安否を確認中である。
この事件の背景については、号を改めて論ずることにしたい。フランスによるマリへの軍事介入の経緯や、中東とアフリカにに立ちこめるきな臭い空気を論ずるためには、深い分析と取材が必要である。私は本日(1月23日)13時より、中東の国際関係、イスラムと西欧世界との関係に詳しい、同志社大学大学院教授の内藤正典教授に緊急インタビューを行ったので、まずはそちらをご覧いただきたい。
※安倍総理の英語論文「アジアの民主主義セキュリティダイヤモンド」については、2013年1月21日の文化放送「夕やけ寺ちゃん」にて、岩上安身が詳細な解説を行いました。
その動画記事はこちらから→文化放送「夕やけ寺ちゃん活動中」 2013.1.21
【2013/01/23 内藤正典氏(同志社大教授)インタビュー】岩上安身によるインタビュー 第265回 ゲスト 内藤正典氏(同志社大教授) 2013.1.23
日本に話を戻すと、このアルジェリア人質事件に関連して早速、自衛隊法改正の発言が出てきている。自民党の石破幹事長は20日の記者会見で、この事件に関連して、「今の自衛隊法では、外国で動乱が起こり、命からがら空港や港にたどり着いた場合でも、安全が確保されなければ自衛隊機で輸送できないということになる。(自衛隊法の)見直しの議論が必要だ」と述べ、海外で紛争などが起きて、日本人が危険な地域に取り残された場合、自衛隊を派遣して救出や輸送ができるよう、自衛隊法を改正すべきだという考えを示した(※)。
(※)NHK「石破幹事長“在外邦人救出に自衛隊を”」
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130120/k10014926541000.html
また、菅義偉官房長官も、22日午前に行われた記者会見で、自衛隊法改正を、与党の議論を踏まえ政府として検討する考えを表明した。
(※)日経新聞「自公、自衛隊法改正を検討 邦人の迅速な救出で」
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2200D_S3A120C1EB2000/
新聞の報道をみると、政情不安定なアルジェリアにおいて、「現地の防衛駐在官が少なかった。もう少し数を増やす必要がある」という論評が目立つ。確かに、この指摘はそのとおりかもしれない。
しかし、「救出のために自衛隊を投入する」となると、まったく現実的な話ではなくなる。外国に武器を持って入るということは、他国の主権の侵害にあたる。仮にマリ侵攻や今回のアルジェリア事件を契機として、自衛隊を他国に投入するとしたら、相手国が容認しない場合、それは「侵略行為」とみなされる。「人質解放のために、誰も差し向けないのはおかしい」などと、単純な論理で議論を進めるべきではない。
安倍政権は、その誕生前から、憲法改正と集団的自衛権の行使容認をかかげながら、自衛隊を国防軍として、海外派遣を可能にしようとしている。安倍総理は、2月に予定されている日米首脳会談に向け、集団的自衛権の行使容認について、あらためて検討を求める考えを示している。こうした日本の「右傾化」に対して、当然のことながら懸念の声が世界中から上がり始めている。そして意外なことに、米国からも「これは危ないのではないか」とい危惧する声が上がっているのだ。
米国ネオコン(新保守主義)による植民地化の一途をたどりつつある安倍政権ーー見たくもない現実をぐいぐい押し付けられる72号なのである。
日本の右傾化は、世界中から懸念されているにもかかわらず、『アジアの民主主義セキュリティダイアモンド』なる論文で、
安倍首相は対中包囲網構築の必要性を激しく訴えているのだそうだ。
やめてくれ…と、心底思う。せめてこの号を通じ日本の現実を直視し、食い止めるための行動が広がればと願う。