2013年8月26日(月)19時より、東京都港区の明治学院大学にて、「激動するエジプト情勢をどうみるか~『アラブの春』後の情勢に迫る」が行われた。講師は、朝日新聞国際報道部長で、2011年1月に中東アフリカ総局長に赴任し、今年5月までの約2年半、エジプトのカイロ支局で取材活動をおこなった石合力氏。2011年1月にチュニジアのベンアリ大統領退陣で始まった、いわゆる『アラブの春』の原因や、エジプトで起きているデモの構造について語った。
また、『アラブの春』後のエジプト社会において、「若者を代表する政党がない」と述べ、若い世代が政治から距離を置いている現状を説明した。
- 石合力氏(朝日新聞国際報道部長)
- 東澤靖氏(明治学院大学国際平和研究所(PRIME)所員)
はじめに石合氏は、安倍首相の中東訪問に絡めて、原発と中東世界について、「石油の産出が豊富な中東においても、原発に対する関心は高まっている。石油は外国に売った方が儲かるので、自国で消費する量を押さえて、その分を原発で賄いたいからだ」と話した。
また、「日本の大手メディアは現場に行かない、などと言われるが、それは不本意だ。われわれは、かなり危険な取材を行っている」と述べ、約2年半のカイロでの滞在中、主に自らが撮影した写真をスクリーンに映しながら、エジプト情勢やイスラム世界について解説した。
石合氏は、フィナンシャル・タイムズに寄せられた読者の投稿を引用しながら、「イランは、シリアのアサド政権を支持しているが、湾岸諸国はアサド政権に反発している。アサド政権は、ムスリム同胞団(エジプト・モルシ元首相の支持母体)に対立。ムスリム同胞団と米国のオバマ大統領は、エジプト国軍総司令官シーシーに反対。湾岸諸国はシーシーに賛成、すなわちムスリム同胞団に対立」と複雑な関係を述べて、「今の中東情勢は矛盾に満ちている」と説明した。
さらに、「ハマス(イスラム主義のパレスチナの政党)は、ムスリム同胞団のパレスチナ支部と言われ、イランはハマスを支持しているが、ハマスは当然、ムスリム同胞団を支持。オバマ大統領はムスリム同胞団を支持するが、ハマスは反米。米国はハマスをテロ組織と見なしている。湾岸諸国は親米。トルコと湾岸諸国はアサド政権に対立。トルコはムスリム同胞団を支持。シーシーは湾岸諸国に支持されている」と続け、混迷極まる中東の状況を伝えた。