【IWJ号外】元『ニューヨーク・タイムズ』記者クリス・ヘッジズ氏、南アフリカがICJに提訴したイスラエルによるジェノサイドの審理を詳報!「正義を要求し、バイデンの責任を問わねばならない」と訴え! 2024.1.16

記事公開日:2024.1.16 テキスト
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(文・IWJ編集部)

特集 中東
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 IWJ代表の岩上安身です。

 元『ニューヨークタイムズ』記者クリス・ヘッジズ氏が、南アフリカが国際司法裁判所(ICJ)へイスラエルによるガザでのジェノサイドを告発した裁判をめぐり、1月11日と12日にオランダのハーグで行われた審理について、『サブスタック』の自らのアカウント『ザ・クリス・ヘッジズ・リポート』に、1月13日付で「ジェノサイドの事例」と題した記事を発表しました。

 ヘッジズ氏は、1956年米国バーモント州セントジョンズベリー生まれ、現在67歳。ピューリッツァー賞を受賞した作家であり、『ニューヨーク・タイムズ』紙の海外特派員を15年間務めたジャーナリストです。

 この記事の中で、11日に行われた、南アフリカ側の弁護士たちによる、イスラエルがジェノサイドを行っているという指摘、12日に行われた、イスラエル側の弁護士による反論について、詳しく報じた上で、ヘッジズ氏は、イスラエルのジェノサイドの共犯者である米バイデン政権について、批判を繰り広げています。

 ヘッジズ氏は、たとえICJがイスラエルのジェノサイドを認定する判決を出したとしても、「国連安全保障理事会の執行に依存しており、米国に拒否権があることを考えれば、その判決は無意味なものになる」と指摘しています。

 さらにヘッジズ氏は、ICJに裁判官を擁する各国政府に対し、米国が「容赦なく圧力をかけるだろう」との見方を示し、「自国もジェノサイドの訴えに直面しているロシアと中国は、イスラエルを有罪とすることが、自国の利益にならないと判断するかもしれない」と予測しています。

 しかしヘッジズ氏は、バイデン政権がイスラエルによるガザでのジェノサイドに手を貸していることを指摘し、「ジェノサイドは、政治的問題ではない。道徳的な問題なのだ。いかなる代償を払っても、ジェノサイドを行う者や、その共犯者を支持することはできない」と訴えて、次のようにこの記事を締めくくっています。

 「私たちは、パレスチナ人や南アフリカの法律家たちとともに、断固として立ち向かわなければならない。正義を要求しなければならない。ガザでのジェノサイドについては、バイデンの責任を問わねばならない」。

 以下に、IWJが全文仮訳・粗訳した、クリス・ヘッジズ氏による記事、「ジェノサイドの事例」をご紹介します。

 ぜひお読みください。

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ジェノサイドの事例
ガザのパレスチナ人と虐殺との間に立ちはだかるのは国際司法裁判所だけかもしれない。
クリス・ヘッジス
2024/01/13

 「<私は叫び、あなたは叫び、私たちは皆叫ぶ(アイスクリームの広告などで使われる古くからある言い回し『アイ スクリーム、ユー スクリーム、ウィー オール スクリーム、フォー アイスクリーム』の一部)by ミスター・フィッシュ(このミスター・フィッシュについては不明)>

 南アフリカが国際司法裁判所(ICJ)に提出した、イスラエルをジェノサイド(大量虐殺)で告発する84ページに及ぶ詳細な準備書面は、容易には反論しがたいものだ。

 イスラエルによる無差別殺戮キャンペーン、住宅、病院、浄水場などのインフラの徹底的な破壊、そして飢餓を武器として使用することに加え、政治的・軍事的指導者たちがガザを破壊し、230万人のパレスチナ人を民族浄化しようとする、虐殺のレトリックが示されている。

 こうした要素は、イスラエルをジェノサイド(大量虐殺)で訴える強力な根拠となる。

 イスラエルが南アフリカを『ハマスの法的代理人』だと中傷したこと(※IWJ注)は、イスラエル側を弁護しようがない何よりの例証だ。停戦を求め、パレスチナの人権を守るために行われたデモを『反ユダヤ主義』だと決めつける人々によって、この中傷が繰り返されている。イスラエルは、その大量虐殺が世界中にライブ配信されているため、実質的な反論ができないのだ」。

(※IWJ注)
・【第2弾! 国際司法裁判所(ICJ)で南アフリカは「イスラエルの空爆と地上攻撃はガザの『人口の破壊』を狙っていると主張」! イスラエルは「我々は今日、南アがテロ組織ハマスの法的な代理人になったという、史上最大の偽善を目の当たりにした」と反発!】(『ロイター』2024年1月12日、『タス通信』2024年1月11日)
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 「しかし、だからといって裁判官たちが、南アフリカの主張を認める判決を下すとは限らない。アントニー・ブリンケン国務長官は、南アフリカの訴追を『根拠がない』と述べている(※IWJ注)が、国連加盟国から選ばれた判事たちに対する米国の圧力は、強烈なものになるだろう」。

(※IWJ注)
・【第4弾!「1人のユダヤ人」であることをアピールしてきたブリンケン米国務長官が、テルアビブで「日々のガザ地区の民間人の犠牲、とりわけ子供たちの犠牲があまりに多すぎる」とイスラエルを批判!】しかし『アルジャジーラ』は米国やイスラエルの言動を「ICJでの訴訟への対応」と冷ややかに指摘! イスラエルだけでなく、彼らを諌めてみせる米国の権力者の言動も、ポーズに他ならない。本気でそう思うならば、米国はただちにイスラエルへの資金提供と武器提供を停止すべき! 米国の支援なくしては、戦えないと、当のイスラエル側が認めている!(『BBC』、2024年1月10日)
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 「ホロコーストを武器として使用し、パレスチナ人への残虐行為を正当化しているイスラエルにとって、判決でジェノサイドが認定されることは、拭い去りがたい汚点となるだろう。それは、『ユダヤ人は永遠の犠牲者である』という、イスラエルの主張を根底から覆すことになる。

 また、イスラエルが非武装のパレスチナ人を無差別に殺害し、ガザという世界最大の野外刑務所を建設し、さらにはヨルダン川西岸と東エルサレムを占領していることの正当性を打ち砕くだろう。

 これは、イスラエル・ロビーとその米国内のシオニスト支持者たちが、『ユダヤ国家』への批判やパレスチナ人の権利への支持を『反ユダヤ主義』と同一視し、非難されることから免罪されてきた状況を、一掃することになるだろう。

 10月7日に、ハマスと他の抵抗勢力が、ガザを取り囲むフェンスを突破して以来、1万人以上の子供を含む2万3700人以上のパレスチナ人が、ガザで殺害された。

 (※ハマス側の攻撃で)約1200人(※のイスラエル人と外国人)が殺害されたが、イスラエルの戦車隊やヘリコプターのパイロットが、捕虜とともに約200人の人質を意図的に狙って殺害したことを示す、有力な証拠がある。

 数千人のパレスチナ人が行方不明で、瓦礫の下に埋もれているとみられている。イスラエルの攻撃により、6万人以上のパレスチナ人が負傷し、その大半が女性と子供だ。さらに、子供を含む数千人以上のパレスチナ市民が逮捕され、目隠しをされ、番号をつけられ、殴られ、下着姿にさせられ、トラックに乗せられて、どこかへ連れ去られた(※IWJ注)」。

(※IWJ注)
【第2弾! イスラエル軍がガザで拘束した大勢のパレスチナ民間人男性を下着姿で目隠し、拷問!】SNSで拡散した画像に、イスラエル政府報道官は「全員テロ容疑者」だと主張! この拷問と開き直りこそが「テロ」ではないか!?(『アルジャジーラ』、2023年12月10日)
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 「裁判所が判決を出すまでには、数年かかるかもしれないが、南アフリカは裁判所がイスラエルに対し、軍事攻撃の停止の仮処分措置を出すよう求めている。この仮処分は、本質的には恒久的な停戦を要求するものだ。

 この仮処分決定は、2、3週間以内に出されるかもしれない。この決定は、裁判所の最終的な判決にもとづくものではなく、南アフリカが提起した裁判の根拠にもとづいている。

 この仮処分が、イスラエルによるガザでの作戦を『ジェノサイド』と定義するものではないが、裁判所がイスラエルに対して、ガザでの敵対行為の終結を求めることは、南アフリカの弁護士が『ジェノサイド的な性格の行為』と呼んだように、ジェノサイドの可能性があると確認されることになる。

 この事件は、戦争犯罪と定義されるものであっても、具体的な犯罪の記録によって決定されるわけではない。それは、ジェノサイド条約で定義されているように、ジェノサイドの意図、つまり、国家、民族、人種、宗教的集団の全部または一部を、根絶やしにしようとする意図によって、判断される。

 これらの行為には、2000ポンド爆弾によって、難民キャンプやその他の民間人密集地域を標的にすること、人道支援の妨害、医療システムの破壊が含まれる。その中には、子供や妊婦への影響もある。国連の推計によれば、ガザには約5万人の妊婦がおり、毎日160人以上の赤ちゃんが産まれているとされている。

 そのほか、イスラエルの有力政治家や将軍たちによって繰り返されている、ジェノサイドに関する発言も含まれている。

 ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ガザを旧約聖書に登場するイスラエル人と敵対する国アマレクになぞらえ、『アマレクの男、女、子供、動物を皆殺しにせよ』という聖書の指示を引用した。

 ヨアヴ・ガラント国防相は、パレスチナ人を『人間動物(ヒューマン・アニマルズ)』と呼んだ。

 イスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領は、南アフリカの弁護士たちが法廷で語ったところによれば、ガザに住むすべての人が、10月7日に起きたことに対して責任があると述べた。なぜなら、彼らはハマスに投票したからだ。

 しかし、ガザの半分以上は、投票権のない子供たちだ。たとえ、ガザの全住民がハマスを支持していたとしても、それが彼らを正当な軍事目標とみなす理由にはならない。戦争のルールでは、彼らは依然として民間人であり、保護を受ける権利がある。また、国際法では、武力闘争によって占領に抵抗する権利も認められている。

 イスラエルの犯罪を、南アフリカのアパルトヘイト政権が行った犯罪と比較した南アフリカの弁護士たちは、戦争マシーンであるイスラエルの政治システムの、頂点から底辺までジェノサイドの意図が広がっている証拠として、イスラエル兵がパレスチナ人の死を祝福し、『無関係の民間人はいない』と歌いながら踊るビデオを、法廷に提出した。

 南アフリカの弁護士らは、しばしば『身元不明』の遺体が埋められる集団墓地の写真を、法廷に提出した。

 『新生児を含め、誰一人として犠牲を免れた者はいない』と、南アフリカの弁護士アディラ・ハシム上級弁護士は、法廷で説明した。

 南アフリカの弁護士は、法廷で、『第一のジェノサイド的行為は、ガザにおけるパレスチナ人の大量殺害である』と述べた。

 そして、『第二のジェノサイド的行為は、ジェノサイド条約第2条Bに違反して、ガザのパレスチナ人に与えた深刻な身体的または精神的被害である』と、彼らは述べた。

 南アフリカを代表するもう一人の弁護士で、法学者であるテンベカ・ングクカイトビ氏は、『イスラエルの政治指導者、軍司令官、公職に就いている人々が、組織的かつ明確な言葉で、ジェノサイドの意図を宣言した』と主張した。

 イスラエル外務省のリオール・ハイアット報道官は、木曜日に行われた3時間の審理を、『一連の虚偽で根拠のない主張によって誇張された、歴史上最も偽善的なショーのひとつ』と呼んだ。

 彼は『南アフリカは、ハマスが戦争犯罪を犯すために、イスラエルに戻ることを認めようとしている』と非難した。

 イスラエルの法律家たちは、金曜日(1月12日)の反論で、南アフリカの告発を『根拠がない』『不条理で馬鹿げている』『名誉毀損にあたる』と主張した。

 イスラエルの弁護団は、『衛生状態の悪化や清潔な水の不足から、飢餓や伝染病が蔓延している』という国連の報告にもかかわらず、人道支援を妨げるようなことはしていない、と述べた。

 イスラエルは、病院を『ハマスの司令部』と呼び、攻撃を擁護した。

 イスラエルは裁判所に対し、『自衛のために行動している』と述べた。

 イスラエル側の弁護士クリストファー・ステーカーは、『いかなる紛争でも、避けられない死者や人的被害は、それ自体がジェノサイドの意図を明示するものではない』と述べた。

 イスラエルの指導者たちは、ハマスがジェノサイドを行ったと非難している。しかし、法的に、ジェノサイドの被害者であればジェノサイドを行うことが許される、などということはない。

 また、ハマスは国家ではない。したがって、ジェノサイド条約の締約国ではない。そのため、ハーグ(※ICJ)は、ハマスに対して司法管轄権を有していない。

 イスラエルはまた、パレスチナ人に対し、攻撃する前にその地域から避難するよう警告し、『安全地帯』を提供していると主張している。しかし、南アフリカの弁護士が文書で示したように、『安全地帯』はイスラエルによって日常的に爆撃され、多数の民間人が犠牲になっている。

 イスラエルと米バイデン政権は、裁判所による一時的な軍事行動の差し止め命令を阻止しようとしている。それは、裁判所がイスラエルに対して、軍事攻撃の停止を強制できるからではなく、すでに破滅的な光景が目に見えているからだ。

 ICJの判決は、国連安全保障理事会の執行に依存しており、米国に拒否権があることを考えれば、イスラエルに対する不利な判決が出ても、無意味なものとなる。

 バイデン政権の第二の目標は、イスラエルがジェノサイドを行っていると認定する、有罪判決にならないようにすることだ。

 バイデン政権は、このキャンペーンで容赦なく、法廷に裁判官を擁する各国政府に対し、イスラエルを有罪としないよう、強く圧力をかけるだろう。

 ハーグに裁判官を擁するロシアと中国は、自国もジェノサイドの訴えに直面しており、イスラエルを有罪とすることは、自国の利益にならないと判断するかもしれない。

 バイデン政権は、非常に皮肉なゲームをしている。『イスラエルによるパレスチナ人への無差別爆撃を止めようとしている』と自認していながら、議会承認を迂回して、『ダム(無誘導)』爆弾を含む、イスラエルへの武器供給を加速させている。

 『ガザでの戦闘を終わらせたい』と主張する一方で、国連での停戦決議には拒否権を行使し、『法の支配を守る』と主張する一方で、ジェノサイドを阻止するための法的メカニズムを破壊している。

 バイデンとブリンケンが口にする言葉の端々に、シニシズムが染み込んでいる。このシニシズムは、私たちにも及んでいる。

 バイデン政権は、ドナルド・トランプに対する我々の嫌悪感が、バイデンを大統領にとどまらせる原動力になるだろうと信じている。

 他の問題ならば、そうかもしれない。しかし、ジェノサイドに関しては、ありえないだろう。

 ジェノサイドは、政治的問題ではない。道徳的な問題なのだ。いかなる代償を払っても、ジェノサイドを行う者や、その共犯者を支持することはできない。ジェノサイドは、あらゆる犯罪の中で最も悪しき犯罪である。それは、悪の最も純粋な表現である。

 私たちは、パレスチナ人や南アフリカの法律家たちとともに、断固として立ち向かわなければならない。正義を要求しなければならない。ガザでのジェノサイドについては、バイデンの責任を問わねばならない」。

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