「食」を軽視し、米国・多国籍企業の「奴隷」となった「セルフ兵糧攻め」の日本を「飢餓」が襲う!~岩上安身によるインタビュー第1116回 ゲスト 東京大学大学院農学生命科学研究科・鈴木宣弘教授 2023.4.3
「種子を支配するものが世界を制する」――。
この言葉どおり、日本は今まさにグローバル資本に国を支配されようとしている。
主要農作物種子法(種子法)の「廃止法」が2017年4月に成立したことで、種子法は2018年3月末で廃止されることが決まった。種子法は1952年、日本が主権回復してから間もなく成立した法律で、この法律こそが食糧難にあえぐ戦後日本の食料安全保障を支えてきたといわれている。
種子法は米、麦、大豆といった「基礎食料」について、その良質な種子の安定的な生産と普及を「国が果たすべき役割」と義務づけた。品質向上のための農業試験場の運営など、国が責任をもって予算を配分し、結果、長期間をかけてコシヒカリのような良質な米が全国で誕生し、今日の食卓に並んでいる。
しかし、TPP協定と日米2国間合意に伴い設置された「規制改革推進会議」の農業ワーキンググループが昨年10月に種子法廃止を提案してから、事態は急展開を迎える。
TPP日米2国間合意文書は、「日本政府は(略)外国投資家その他利害関係者からの意見および提言を求める。意見及び提言は(略)定期的に規制改革会議に付託する。日本国政府は規制改革会議の提言に従って必要な措置を取る」と規定している。
つまり、規制改革推進会議という機関は、まさにモンサントのような多国籍企業の要求を受け入れ、これを日本政府に提言する、「多国籍企業の要求受け入れ窓口」という役割を担っている機関なのである。そして日本政府は「規制改革会議の提言に従って必要な措置」を取らねばならない。強調しておくが「ねばならない」のだ。IWJの会員であれば、よく御存知の通り、日本の軍事的な安全保障政策の決定権は、「日米合同委員会」が事実上握っているが、規制改革推進会議はまさに「経済版・日米合同委員会」である。
種子法の廃止による悪影響はさまざま考えられる。優良種子の提供が不安定になることや種子の価格の不安定化、廃業する農家の増加、輸入米の増加、そして企業による遺伝子組換え(GM)種子やF1種子(ハイブリッド種=異なる性質の種を人工的にまぜ合わせてつくった雑種の一代目)の販売加速など、考え始めればきりがない。
GM食物は、適合する除草剤とセットで種子が販売される。一度GM種子が使用されると、元の栽培法には戻れない。こうした販売方法が普及することで、生産者である農家の選択肢が狭まり、日本の農業は多国籍種子企業に支配されてしまい、そうなれば日本の食料安全保障は崩壊して、自国の命運をグローバル資本にゆだねることとなっています。
「日本の種子(たね)を守る会」の山田正彦・元農水大臣によると、現時点で37%しかない日本の食料自給率は、種子法廃止の影響で、14%程度にまで下がる可能性もある。自力で種から作物を育てられない国が、国民の生命を守りきれるだろうか。安倍政権はあれだけ「安全保障」を声高に叫びながら、生命を保障する「食料安全保障」を多国籍企業に売り渡してしまおうとしているのだ。これほどの「売国政策」があるだろうか。
種子を支配するものが世界を制す。日本の食料主権がこのまま外資に奪われていいのか。我々の日々の暮らしと健康を支える食べ物の安全性が損なわれていいのか。この特集を通じて、全国民に熟考していただきたい。
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