都道府県の管理によって安全・良好な種子生産をする「種子法」の廃止は、憲法上の権利「食料への権利」を侵害し違憲だとして、全国の農家(一般農家・採種農家)と消費者が、国を被告に、同法の復活等を訴えた訴訟は、2023年3月24日、東京地裁で敗訴判決が出された。
原告側は4月6日、東京高裁に控訴し、同日、弁護団の山田正彦弁護士(元農水相)、古川健三弁護士、田井勝弁護士が、東京都千代田区の司法記者クラブで記者会見を行った。
概要を説明した田井勝弁護士は、3月の判決の中で、一定の評価すべき点を指摘した。
判決は、採種農家の原告が、種子法廃止によって「自らの土地が圃場指定される地位」を喪失していることから、「現実かつ具体的な危険または不安が認められる」として、この地位の「確認」を求めた訴えを審議する必要(=確認の利益)を認めた。
さらに、国が主張する、種子法の代わりに作られた県の種子条例により圃場指定は可能だという点に関しても、「法廃止前と同程度の財政基盤が保障されておらず、ゆえに、同原告に確認の利益があることは変わりない」とした。
また、「食料への権利」については、「憲法25条で保障される余地がある」とも言及された。しかし結局、「種子法が国民の権利を保障しているとまでは言い切れない」として、訴えは退けられた。
判決ではその他、種子法廃止法案の審議時間がわずか10時間であったこと、野党議員の質問に対する政府の返答・資料提出がない中で法案が採決された点も指摘された。
田井弁護士は、3月の判決は「不当判決」ではあるが、こうした点では「一歩前進」だとした。
その上で、控訴審では、「国民の権利性」、特に採種農家の権利性が認められるかが「大きな争点」だとした。
古川、山田両弁護士も、様々な観点から控訴審への争点や種子法廃止の問題点を指摘。山田弁護士は、三井化学アグロ株式会社が育成、販売する水稲品種「みつひかり」の種子が、「交配不良により純度低下が確認され」「令和5年は供給できない」とされた例等をあげ、種子法廃止によって種子生産を民間に任せる危険性を指摘した。
会見について詳しくは、全編動画を御覧いただきたい。