山田正彦元農水相が表明!「憲法で保障された安全な食糧への権利について、戦後初めて裁判所が判断する、大きな裁判だと思っている」〜2.3 種子法廃止等に関する違憲確認訴訟 判決言い渡し前の記者会見 2023.2.3

記事公開日:2023.2.5取材地: テキスト動画
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(取材、文・城石裕幸)

 戦後、米、麦、大豆といった主要な農産物について、それぞれの地域にあった安全で優良な種子を開発するよう、都道府県に管理を義務付けた「主要農産物種子法」を廃止する、「種子法廃止法」が、2017年の通常国会で、わずか10時間の審議で成立し、2018年4月1日に施行された。

 農家や消費者ら1533名を原告として、この種子法の廃止が、違憲だと訴える、種子法廃止等に関する違憲確認訴訟の判決が、2023年3月24日午後3時、東京地方裁判所で言い渡される。

 判決を控えた2023年2月3日、弁護団と原告が、東京司法記者クラブで記者会見を行った。

 会見を行ったのは、弁護団の田井勝弁護士、山田正彦弁護士(元農水相)、平岡秀夫弁護士(元法相)、原告で消費者代表の野々山理恵子氏。

 これまで主要農作物の種子の生産は、都道府県の管理のもとで、地域にあった安全で多様な品種の開発と管理が行われていた。しかし、種子法廃止によって、種(たね)の生産に参入した民間企業が、少数の品種を効率的に広めようとすることが懸念されている。

 会見で田井弁護士は、「現在、稲の品種は300種あるといわれていますが、一方で、世界の種子市場では、民間8社でシェア占有率が78%といわれています。民間8社が独占して、同じものを広めることで、日本でも多様な種子生産がなくなるのではないかと、裁判で訴えてきました」と語った。

 さらに田井弁護士は、「民間企業による種子市場の中には、遺伝子組み換え食品があり、これが米(コメ)にも入ってくるのではないか」と述べ、種子法で義務付けられていた、自治体の管理のもとでの生産物の審査がなくなることにより、「種の安全性、ひいては食の安全が懸念されると訴えてきました」と説明した。

 この違憲確認訴訟では、種子法廃止が「憲法25条(健康で文化的な最低限の生活を営む権利)の権利侵害、食糧への権利侵害」だと訴えている。これについて、田井弁護士は、以下のように解説した。

 「私たちの日本国憲法には、『食』という言葉は出てきません。しかしながら、世界人権宣言、社会権規約などでは、飢餓から防ぐという食糧の権利が明記されています。

 我が国でも、これが憲法25条で保障されるべきだ、そして今回の種子法廃止が、食糧の権利の侵害だということを訴えています」

 元農水相の山田正彦弁護士は、「戦後初めて、憲法で保障された食の安全、安全なものを持続的に安定して提供するという権利について、裁判所が判断することになる。そういう意味では、大きな裁判だと思っている」と語った。

 裁判は、2019年5月に東京地裁に提訴され、2020年8月が第1回期日、2022年10月7日に結審となった。

 IWJ記者は、この裁判の間に、ロシアによるウクライナ侵攻が始まったことや、2022年8月にラトガース大学が学術誌『Nature Food』に、核戦争が起これば『核の冬』で、限定的な核戦争でも日本の人口の半数以上が、全面的な核戦争ではほぼすべてが2年で餓死するという研究結果を発表したことなどをあげ、「こうしたことが、食糧安全保障という観点で、裁判に何か影響を与えたとお感じでしょうか?」と質問した。

 これに対して、田井弁護士は次のように答えた。

 「食糧安全保障、当然核戦争もそうですが、コロナ禍でなかなか穀物輸入が(できない)という話、それからウクライナの問題に際して小麦がなかなか輸入できないとか、そういうことがあります。これも当然、裁判の中で訴えてきました。

 大事な時に輸入が途絶えてしまうという危険がある。だからこそ、日本の穀物を守っていく必要があると。穀物自給率を上げていくべきだと。その中において、その穀物の種を守る種子法が廃止されるのは、まさに逆行しているというのは、この裁判で訴えております。

 食料自給率、穀物自給率のことは、東大の鈴木(宣弘)先生が研究、発表されておりますが、鈴木先生が法廷で証言してくださいましたし、意見書も出していただいています。

 そんな主張も展開しているところです」

 また、山田弁護士は、この田井弁護士の答えを次のように補足した。

 「種子法廃止撤回法案を野党が出して、自民党がその審議に応じて、まだ国会では継続審議中です。

 だから自民党としても、今、食料自給率の問題を考えていますが、種はたいへん大事だという意識はおありだと思います」

 田井弁護士によると、原告が裁判で訴えていること(請求の趣旨)は、次の5点である。

(1)種子法廃止法は憲法違反である。

(2)原告で一般農家の館野廣幸氏が、廃止された種子法にもとづいて生産された種子を用いて、主要農作物を栽培できる地位にあることの確認。

(3)原告で消費者の野々山理恵子氏が、廃止された種子法にもとづいて生産された種子を用いて栽培された主要農作物の、供給を受ける地位にあることの確認。

(4)原告で採種農家の菊地富夫氏が、自ら所有する圃場が、種子法にもとづく圃場として指定される地位にあることの確認。

(5)原告1533名についてそれぞれ、慰謝料として1名につき1万円の損害賠償請求。

 種子法廃止違憲訴訟を行っている「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」は、東京地裁宛に、司法が憲法判断に踏み込み「種子法廃止は違憲」「食料への権利」を認めるよう求めて署名活動を展開している。

 弁護団らはこの日、オンライン署名サイト「Change.org」と用紙で集められた合計2万3353筆の第1次分の署名を、東京地裁に提出した。

 署名は2月24日まで、以下のサイトで行われている。

■【ピックアップ】「私たちの日本国憲法には『食』という言葉は出てきません」~種子法廃止等に関する違憲確認訴訟 判決言い渡し前の記者会見

■全編動画

  • 日時 2023年2月3日(金)13:00~
  • 場所 司法記者クラブ(東京都千代田区)
  • 主催 TPP交渉差止・違憲訴訟の会

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