モンサントの除草剤と遺伝子組み換え作物(GMO)のエサを与えた実験マウスに発がんが!! 岩上安身による仏カーン大学・セラリーニ教授インタビューを収録! 日米貿易協定によりGMO飼育米国牛肉が日本にも大量輸入される!! 2019.11.3

記事公開日:2019.11.3 テキスト
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 私たちの「食」の安全に大きな影響をもたらす、農薬と遺伝子組み換え作物に関する実験で世界にショックを与えた、フランスのカーン大学教授・ジル=エリック・セラリーニ氏。2008年から2年間、氏は200頭のラットに異なるパターンの食餌を与えて詳細な動物実験を行い、衝撃的な結果を得た。

▲2019年10月31日、東京・青山で講演を行ったセラリーニ氏。(IWJ撮影)

 セラリーニ氏は、大規模集約農業で大量に使用される殺菌殺虫剤のうち、世界市場で46%を占める除草剤分野に着目した。なかでも、1974年以来アメリカのモンサント社(2018年バイエルによって買収された)が製造販売する除草剤「ラウンドアップ」は、世界最大の売り上げを誇る。そしてラウンドアップに耐性を持つ遺伝子組み換え作物は、同社が3カ月だけ行ったずさんなテストを根拠に、使用許可が与えられたという。

 自らの実験をふまえ、2012年にフランスで出版した著書『食卓の不都合な真実』(日本語版2014年)で、セラリー二氏は、科学的権威と政治権力にはびこるようになった、無気力と惰性そして私欲にもとづいて行われる許可の承認を、「マフィア的」だと指摘した。

 実験では、ラウンドアップ除草剤に耐性のある遺伝子組み換えのトウモロコシや、ラウンドアップを含んだ汚染水をラットに餌として与え、ラットの体にどのような変化が起きるのかを観察した。

 そのような餌を摂取したラットの多くに、ゴルフボールを思わせる非常に大きな腫瘍で体が腫瘍ができ、ラット全体が高い死亡率を示した。変形したラットの画像は世界中に配信され、人々に強い衝撃を与えた。この実験結果に脅威を感じたモンサント側はセラリーニ氏を激しく攻撃、その裏工作によって論文が掲載誌から削除される事態さえ起こった。

▲腫瘍で変形した実験用マウスの画像を背景に語るセラリーニ氏。右は有機農産物のシェフ、ジェローム・ドゥーズレ氏で、ともに遺伝子組み換え作物や農薬の危険を訴えている。(IWJ撮影)

 著書の中でセラリーニ氏は、福島の原発事故についても言及している。事故以前、日本の専門家たちが事故のリスクをほぼゼロだと見なしていた事に対して、政治家と補助金漬けの企業の支持があったのだろうとみなしている。これは、補助金が使われる大規模集約農業においての、遺伝子組み換え作物に対する許可承認の怠慢と共通する。

 しかし、瞬時に汚染を引き起こす核爆発とは異なり、遺伝子組み換え作物による生体汚染は時間とともに蓄積していく。だからこそ、時間をかけて、次世代への影響まで見越したテストを行わなければならなかったのである。モンサントが行った実験はわずか3か月であって不十分であり、セラリーニ教授が行った実験のように、マウスが世代交代する2年間という時間をかけなければならなかった。

 この問題は、日本人の多くにとって、もはや他人事ではすまされない。

 米国産牛肉が大量に輸入されることにつながる日米貿易協定承認案が、今年の10月24日、衆議院で審議入りした。遺伝子組み換え作物は、米国では家畜の飼料としてごく当たり前に使われている。

 セラリーニ氏の実験によって立証されたのは、使用濃度に関係なく、ラウンドアップ除草剤の化学的残留物は遺伝子組み換え作物に堆積し、それを摂取したラットに腫瘍を生じさせ、死に至らせるという事実である。そんな遺伝子組み換え作物を食べて育つ牛と、それを日々口にする私たち。生体汚染はこうして連鎖していく。

 遺伝子組み換え作物を摂取することによる健康被害が心配されるのはもちろんだが、日本の畜産業への懸念もある。日米貿易協定によって、米国産牛肉にかけられている関税が現在の38.5%から、最終的に9%まで引き下げられることになれば、国内の生産者は米国に圧倒され、日本の食糧自給率もさらに下降する。日本の畜産農家が安全な飼料で国産ブランドを守ろうとしても、現実には不可能な事態が迫りつつある。

 日米貿易協定と遺伝子組み換え作物、それらをめぐる食の安全保障の問題は、日本にとって非常にホットな話題にもかかわらず、マスコミではタブー扱いされ、報道がきわめて乏しいのが現状である。IWJは、遺伝子組み換え作物の危険性にいち早く着目し、設立当時からこの問題を追及し続けてきた。

 セラリーニ氏は、私たちの食と農をめぐる恐ろしいこの事実を日本人に伝えるべく来日した。東京で2019年10月31日に開催された講演会は満員で、同氏は実験の概要やその後の経緯、私達がとるべき対処などについて訴えた。

IWJではセラリーニ氏に直接お話をうかがうべく、11月1日に岩上安身によるインタビューを収録した。衝撃的な実験結果が公にされたのは2012年のことだが、今回は食の安全保障に不安が高まる中で、今世界では何が起きているのかということを、セラリーニ氏から直に詳しくうかがった。ぜひ今回のインタビューにご期待いただきたい。

 セラリーニ教授へのインタビュー録画は後日配信予定で、日程が決まり次第お知らせするので、ぜひご覧いただきたい。

 また、今年3月に行った、岩上安見による山田正彦・元農林水産大臣のインタビューをご覧いただくと、ラウンドアップ除草剤などについて、よりお分かりいただけると思われるので、こちらも合わせてご覧いただきたい。

 セラリーニ教授へのインタビューは、先方から岩上安身を指名してきたことから実現した。岩上安身とIWJがこれまでに、多国籍企業による遺伝子組み換え食品や農薬について、危機感を持って報じてきた積み重ねが評価されたからだろうと思われる。

 2012年に報じられたセラリーニ教授の研究発表については、「岩上安身のIWJ特報」で詳細に報じている。

 また、2013年には、セラリーニ教授を追ったフランス人のジャン=ポール・ジョー監督によるドキュメンタリー映画『世界が食べられなくなる日』が、日本で公開され、IWJでも監督のトークを報じた。

 さらに2012年に、モンサント社の遺伝子組み換え作物等の実態に迫ったフランスのドキュメンタリー映画『モンサントの不自然な食べ物』の監督でジャーナリストの、マリー=モニク・ロバン監督に岩上安見がインタビューした。

 2015年5月9日に行われた岩上安身による西尾正道氏インタビューでも、セラリーニ教授の研究について取り上げている。

 除草剤ラウンドアップの主成分であるグリホサートの小麦への残留問題については、以下の記事もぜひ、あわせてご覧いただきたい。

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