多国籍企業モンサントの遺伝子組み換え(GMO)作物の種子は、雑草を枯れさせる除草剤とセットで開発された。特定の除草剤への耐性を遺伝子操作で高め、除草剤をかけても遺伝子組み換え作物だけは枯れないようにして、農作業の効率化と収益増加を目指したのである。その除草剤「ラウンドアップ」には、グリホサートと呼ばれる成分が含まれている。
2015年、WHO(世界保健機関)のIARC(国際がん研究機関)は、グリホサートの発がん性の可能性を指摘。2018年8月には、米カリフォルニア州サンフランシスコの陪審が、ラウンドアップが原因で悪性リンパ腫を発症したと訴えた男性の主張を認めて、モンサントに2億8900万ドル(約320億円)の損害賠償の支払いを命じている。
- 除草剤で末期がんに、米裁判 モンサントに約320億円の支払い命じる陪審評決(AFP、2018年8月11日)
さらに、2019年2月にはCNNが、ワシントン大学の研究チームによる「グリホサートにさらされると発がんリスクが41%増大する」という研究結果を報じている。
- 除草剤の成分「グリホサート」、発がんリスク41%増大 米研究(CNN、2019年2月15日)
米国では、食の安全を求める母親たちの市民団体、「マムズ・アクロス・アメリカ」が遺伝子組み換え食品やラウンドアップの禁止を訴える運動を展開し、規制を求める声が高まっている。しかし、日本政府はこうした流れに逆行して、 2017年にグリホサートの残留基準を大幅に緩和した。
- 「食品・添加物の一部基準を改正する件について」(厚生労働者省、2017年12月25日、PDF)
2018年12月14日、東京都千代田区の衆議院第一議員会館にて、マムズ・アクロス・アメリカ創設者のゼン・ハニーカット氏を迎えて、「アメリカを変えたママが来る!『ゼンさんと考える日本の食』」と題する院内交流・学習会が、日本の食を変えたい実行委員会の主催で行われた。

▲マムズ・アクロス・アメリカ創設者・ゼン・ハニーカット氏
ハニーカット氏は、日本がGMO作物やGMO食品を輸入して消費し続ける限り、生産地である米国での栽培は止まらず、ラウンドアップの消費量も増えるとし、「日本の役割は重要だ。日本が先頭に立ってグリホサートとヒ素の検査を実施することで、他国にも影響を広げていくことができる。『有機農業で栽培された穀物を買う国が、日本である』という未来を作ってください」と訴えた。
サンフランシスコの「ラウンドアップ裁判」の結果については、「アメリカという一国のみならず、すべての命を持つ者にとっての大勝利。今回の裁判の成り行きを見て、モンサントばかりでなく化学物質を扱う企業は、こぞって危機感を募らせている。モンサントにとって危機的状況であり、株価が暴落している現実もある」と述べた。
日本消費者連盟事務局長の纐纈(こうけつ)美千世氏は、日本での検査について、「小麦に対するグリホサート残留検査を市販品10検体に実施したところ、3つから数値が出た。私たちが普段買っているものにグリホサートが残っていることがはっきりした」と説明し、大豆についても、生産量の多い12道県の中にはグリホサートを散布しているところがあったと報告した。