日本と韓国は子供の発達障害大国!? 日本でも尿検査を!世界はグリホサートの禁止に向かっている~12.14アメリカを変えたママが来る!「ゼンさんと考える日本の食」 2018.12.14

記事公開日:2019.1.14取材地: テキスト動画
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(取材:八重樫拓也 文:花山格章)

特集 TPP問題|特集 種子法廃止!「食料主権」を売り渡す安倍政権
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 多国籍企業モンサントの遺伝子組み換え(GMO)作物の種子は、雑草を枯れさせる除草剤とセットで開発された。特定の除草剤への耐性を遺伝子操作で高め、除草剤をかけても遺伝子組み換え作物だけは枯れないようにして、農作業の効率化と収益増加を目指したのである。その除草剤「ラウンドアップ」には、グリホサートと呼ばれる成分が含まれている。

 2015年、WHO(世界保健機関)のIARC(国際がん研究機関)は、グリホサートの発がん性の可能性を指摘。2018年8月には、米カリフォルニア州サンフランシスコの陪審が、ラウンドアップが原因で悪性リンパ腫を発症したと訴えた男性の主張を認めて、モンサントに2億8900万ドル(約320億円)の損害賠償の支払いを命じている。

 さらに、2019年2月にはCNNが、ワシントン大学の研究チームによる「グリホサートにさらされると発がんリスクが41%増大する」という研究結果を報じている。

 米国では、食の安全を求める母親たちの市民団体、「マムズ・アクロス・アメリカ」が遺伝子組み換え食品やラウンドアップの禁止を訴える運動を展開し、規制を求める声が高まっている。しかし、日本政府はこうした流れに逆行して、 2017年にグリホサートの残留基準を大幅に緩和した。

 2018年12月14日、東京都千代田区の衆議院第一議員会館にて、マムズ・アクロス・アメリカ創設者のゼン・ハニーカット氏を迎えて、「アメリカを変えたママが来る!『ゼンさんと考える日本の食』」と題する院内交流・学習会が、日本の食を変えたい実行委員会の主催で行われた。

▲マムズ・アクロス・アメリカ創設者・ゼン・ハニーカット氏

 ハニーカット氏は、日本がGMO作物やGMO食品を輸入して消費し続ける限り、生産地である米国での栽培は止まらず、ラウンドアップの消費量も増えるとし、「日本の役割は重要だ。日本が先頭に立ってグリホサートとヒ素の検査を実施することで、他国にも影響を広げていくことができる。『有機農業で栽培された穀物を買う国が、日本である』という未来を作ってください」と訴えた。

 サンフランシスコの「ラウンドアップ裁判」の結果については、「アメリカという一国のみならず、すべての命を持つ者にとっての大勝利。今回の裁判の成り行きを見て、モンサントばかりでなく化学物質を扱う企業は、こぞって危機感を募らせている。モンサントにとって危機的状況であり、株価が暴落している現実もある」と述べた。

 日本消費者連盟事務局長の纐纈(こうけつ)美千世氏は、日本での検査について、「小麦に対するグリホサート残留検査を市販品10検体に実施したところ、3つから数値が出た。私たちが普段買っているものにグリホサートが残っていることがはっきりした」と説明し、大豆についても、生産量の多い12道県の中にはグリホサートを散布しているところがあったと報告した。

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■ハイライト

■全編動画

  • 講演 ゼン・ハニーカット (Zen Honeycutt) 氏(マムズ・アクロス・アメリカ創設者)
  • タイトル アメリカを変えたママが来る!「ゼンさんと考える日本の食」
  • 日時 2018年12月14日(金)16:00〜18:00
  • 場所 衆議院第一議員会館(東京都千代田区
  • 主催 日本の食を変えたい実行委員会(詳細、Facebook)

GMO作物の除草剤としてだけではなく、さまざまな作物を収穫前に乾燥させる目的で噴霧されるグリホサート

 ハニーカット氏は、「初めてGMO作物を知った時、子どもを持つ母親として非常に不安になった。遺伝子の突然変異を起こす可能性があり、その成分は洗い流すことができないから。そこで、子どもを守るためにGMOを一切摂取しない方針を家庭内で徹底した。その結果、激しいアレルギー反応に苦しんでいた長男の症状は4ヵ月で劇的に改善した」と話す。

 グリホサートなどの化学物質が農業に使われている比率と、子どもたちのアレルギーや免疫不全、自閉症、発達遅延などには相関関係があるのではないか、とハニーカット氏は言う。マムズ・アクロス・アメリカを立ち上げ、自分の経験を子どもの病気で悩む母親たちと共有すると、「GMOをやめたら、子どもたちの健康状態が改善した」という声が多く集まるようになったという。

 「アメリカの子どもたちは2人に1人が慢性疾患を持っている。自閉症を持っている子どもの数は、現在36人に1人だ。残念ながら、日本でも同じことが起きている。2012年の数字で、自閉症や発達の遅れを持っている子どもの比率は、日本と韓国がもっとも大きくなっている。そもそも、グリホサートの耐性を組み込まれているGMO作物は80%もある。そして、通常の農家では、米、大豆、大麦、小麦、その他さまざまな穀類に、乾燥の目的でもグリホサートを収穫前に噴霧していることがわかった」と懸念を示した。

食物から摂取されたグリホサートが不妊や流産を引き起こす可能性も。母乳検査では10人中9人から陽性の結果が!

 なぜ、グリホサートを摂取してはいけないのか。

 ハニーカット氏は、グリホサートが生き物の内分泌系を阻害するリスクがあるとし、こう続けた。

 「米国環境保護庁(EPA)に提出された研究では、エビはグリホサートのレベルが5.2ppm以上で死ぬ。一方で、砂糖の原料となるてん菜のグリホサート許容量は25ppmだ。妊娠6週目の胎児の大きさはエビに相当する。妊娠中の女性は甘いものを欲することが多いが、(グリホサートが残留する食べ物は)胎児の環境に重大な影響を与えることが動物実験からわかる。不妊や流産を引き起こす可能性のあるものが、食物として摂取されているのだ。これは断じて許されない。もし、アメリカが日本に『これは安全で、心配ない』と言っているならば、単純に嘘を伝えていることになる」

 GMO、そしてGMOではない作物でも、グリホサートが噴霧されているなら、体調不良や不妊などの主要な原因になっていることは間違いない、とハニーカット氏は主張する。

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 「これは私の国でも大きな問題となっており、がんとの関係も疑われている。グリホサートは米国では160種類の農産物に関して許容され、日本にも輸入されている。それだけではなく、数千万トンものグリホサートが、公園や校庭、道路、森林などに噴霧されている。その結果、子どもたちは深刻に病んでいる」

 GMOとグリホサートが子どもの健康被害に関係している証拠を見つけるため、ハニーカット氏はあちこちで断られながら、グリホサートの検査方法を確立するために奔走した。1年が過ぎた頃、あるラボの協力で検査システムが完成し、水道水と尿のサンプルでグリホサート検査を実施。ホームページで検査結果を公表すると、わずか4時間で3万3000人が閲覧したという。

 「私は、とにかく多くの人たちに情報を公開したかった。また、母乳のグリホサート検査ができれば、重大なことにつながると思っていた。なぜなら、DDT(発がん性があるとされた殺虫剤)もPCB(ポリ塩化ビフェニル。人体への毒性が高い)も、母乳で検出されたことがきっかけで、5年以内に使用禁止になったからだ。私は何とか母乳のサンプルを集めたくて、マムズ・アクロス・アメリカのサポーターに呼びかけた。3週間後、10人のお母さんたちがサンプルを提供してくれた」

 母乳の検査結果は、10人のうち9人が陽性(グリホサート検出)という衝撃的なものだった。しかも、検体を提供してくれた母親たちの9人はGMOの危険性を承知していて、日頃からGMO食品を摂取しないことを心がけていた人たちなのだ。数値は、それぞれ76ppb、99ppb、160ppb(※注1)という含有量で、もっとも高い数値の人は、GMOのことはまったく知らず、標準的なアメリカの食生活を送っていたという。

※注1
ppm、ppb:
 ppmとは100万分の1、ppbとは10億分の1を表す。1ppm=1000ppbである。

 ハニーカット氏は、「何よりも大切なのは、子どもたちが健康であること。健康さえあれば能力を発揮し、世の中で自分の目標に向かって進める。私にとって、息子たちはもっとも大切な存在。そして、彼らは私たちの未来だ。子どもたちが健康でなければ、繁栄ある未来は絶対にありえない。私たちの伝統、文化、家族のつながりは、子どもの健康がなければ危険にさらされる」と強調した。

ラウンドアップはグリホサートだけでなく、ヒ素まで含んでいる。日本でもグリホサートとヒ素の検査が急務!

 ハニーカット氏は、ヒ素についても言及した。ヒ素も非常に危険な毒物として知られているが、フランスのセラリーニ氏の研究で、ラウンドアップにはヒ素も入っていることが明らかになっている。慢性疾患を発症するヒ素の量は、わずか0.17ppb。セラリーニ氏によれば、グリホサート系除草剤では500ppbものヒ素が検出されているという。

 「除草剤は、製品によっては石油が含まれており、その中に重金属も含まれていると考えられている。ヒ素も人体への影響が大きいもの。だからこそ、グリホサートだけでなく、ヒ素の検査も実施してもらいたい」

 日本におけるグリホサートの水準に大きな懸念を抱いているというハニーカット氏は、今回の来日に際して、日本のスナック菓子3種類でグリホサートの検査を行った。原料は小麦、グリーンピース、コーンの3つで、小麦製品からは14.91ppb、グリーンピース製品からは6.35ppbが検出された。コーンスナックは不検出で、「これは原料のトウモロコシの実が何重もの皮に包まれていたので、不検出だったのではないか」と話した。

 「日本は、食料の供給に関してユニークな立場にある。先日、全農グレイン株式会社の施設を見学することができた。穀物庫は世界最大のもので、購買している食物の量は1日6万トン。年間では3億トンという膨大な量になる。これらの穀物が、アジアをはじめ世界中に供給されている。

 私は、アメリカの農家が、実は日本に穀物を買ってほしいと依存していることに気づいた。言い換えると、日本は、どのような穀物がアメリカで栽培されるかに大きな影響力を持っているのだ。たとえば、『再生型有機農業の穀物以外は絶対に買わないので、3年以内に実施してください』と、日本はアメリカの農家に伝えることができるのである。

 日本の皆さんには、必ずグリホサートとヒ素の検査を実施していただきたい。これは日本の将来にも関わることだし、日本が先頭に立って実施することで、他国にも影響を広げていくことができる。そして、再生型有機農業を実践してください。そのようにして栽培された穀物を買う国が日本である、という未来を作ってください」

米国の「ラウンドアップ裁判」の結果は、すべての命を持つ者にとっての大勝利! モンサントは株価が暴落、危機的状況に……

 ハニーカット氏は、サンフランシスコのラウンドアップ裁判について、「裁判結果は、アメリカという一国のみならず、すべての命を持つ者にとっての大勝利である。今回の裁判の成り行きを見て、モンサント社ばかりでなく、化学物質を扱う企業は危機感を募らせている。この後、公判を控えている原告数は9500名と膨大な数だ。モンサントにとっては危機的状況であり、株価が暴落している現実もある」と語った。

 また、新しい形のGMOへの懸念や、中国、オーストラリアの取り組みについて、次のように伝えた。

 「モンサントの裁判を主要メディアが報道したことで、ラウンドアップの危険性が十分に認知された。しかし今、『クリスパー』や『Gエディット』という新型のGMOが台頭しつつある。何よりの懸念は、これらには政府による規制が一切行われていないこと。その状態で、マッシュルームやコーンの流通がすでに始まっている。

 中国は今週、輸入品のグリホサート許容基準を従来の1000ppb(1ppm)から200ppb(0.2ppm)まで大幅に引き下げた。中国の取り組みは、まだ十分ではないかもしれないが、特筆すべき重大な一歩である。日本も許容水準を200ppbまで引き下げてほしい。すでにグリホサートを禁止している国は33ヵ国ある。日本も、その一歩に向けて踏み出してほしい。

 オーストラリアでは、ラウンドアップに替わる安全な除草剤が使われ始めた。『ホームセーフ』『ファームセーフ』『ローカルセーフ』という名で販売され、ラウンドアップの代替品として非常に有効だと話題になっている。主要な成分は酢で、安全性は申し分がない。日本でも認可されれば、近いうちに使われるようになるだろう」

 ハニーカット氏によれば、米国では近いうちにGMO表示義務がなくなるという。

 「残念ながら、GMOの表示義務がなくなる法律が、近いうちに正式に施行されそうだ。代わりにQRコード等が表示され、消費者が自分で調べる形に変わる。また、GMOのシンボルマークが、biological engineerの頭文字である『BE』となる。ヨーロッパでは『biological』は有機栽培のものに紐付いた表現のため、GMOのイメージを良くしようとする意図が見て取れる」と述べた。

 最後にハニーカット氏は、「将来、子どもたちがこの日のことを『親たちが、有害なものを食物に噴霧させるのをやめる決心をした日』だと振り返ってほしい。私たちは決してあきらめない。なぜなら、家族への思いは尽きることがないからだ」と述べて、講演を締めくくった。

遺伝子組み換えではない日本産の小麦や大豆にもグリホサートが残留! 「グリホサートを売らない、売らせない運動を」

 ハニーカット氏の講演に続いて、纐纈氏が日本でのグリホサート検査について報告した。

▲日本消費者連盟事務局長・纐纈(こうけつ)美千世氏

 「小麦に対するグリホサート残留検査を市販品10検体に実施したところ、3つから数値が出た。私たちが普段、何気なく買っているものにグリホサートが残っていることがはっきりした。現在は検体数を増やして分析中で、検査結果は『遺伝子組み換え食品いらないキャンペーン』のホームページで公表する。

 遺伝子組み換えの小麦自体は流通していないのだが、ゼンさんの話にあったように、(草むしりの手間を省くため)収穫前に(雑草を)枯らす目的でグリホサートが使われている。これは直接、小麦に撒くので、どうしても残る。日本の小麦に対するグリホサート残留基準は2017年に緩和され、30ppmになっているので、検出結果が少ないという印象を持つかもしれない。しかし、グリホサートという非常に危険な農薬を、私たちが直接口にしている可能性が高いことは共有したい」

 さらに、大豆について、「普通に国産大豆であれば、遺伝子組み換えではないので、グリホサートとは縁がないと思っていた。しかし、最近になって大豆を枯らすためにグリホサートを使うという情報を得て、使用実態を大豆の生産量の多い12道県に聞いてみた。実際に散布していると答えたところが、少ないがあった。ただ、地元の生協から『グリホサートは使ってほしくないという声が上がり、使わなくなった』という答えもあったので、私たちが実態を知って声を上げていくことは大切だ」と話した。

 纐纈氏は、「グリホサートは、家庭菜園や校庭に撒かれることもあると聞いている。飛散して、子どもたちが吸い込むかもしれないと考えると、除草剤としてグリホサートは使ってほしくない。そういったものを何も知らずに使っている人もいると思う。最終的にはグリホサートを売らない、売らせないという運動をしていきたい」と力を込めた。

 「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」や「日本の種子(たね)を守る会」で活動する山田正彦・元農林水産相は、新たに「デトックス・プロジェクト・ジャパン」の代表世話人として、体内に摂取され蓄積する農薬の問題に取り組んでいる。3月18日には、岩上安身による山田氏インタビューを配信するので、ぜひご覧いただきたい。

 また、これまでの岩上安身による山田氏インタビューもあわせてご覧いただきたい。

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