「日本の種子(たね)を守る会」設立!!「多国籍企業は10年先を読んで仕込んでくるが、我々は100年先を考えて集中した活動を地道に積み上げていく」~西川芳昭教授記念講演・同会設立総会・記者会見 2017.7.3

記事公開日:2017.7.3取材地: テキスト動画
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(取材:阿部洋地、文:栗原廉)

 わずか5時間の審議で、50年以上運用されてきた食の根幹にまつわる法律の廃止が決定された――。

 1952年、戦後の日本が主権を回復して間もない時期に成立した種子法(正式名称:主要農作物種子法)は、2017年2月10日に廃止法案が閣議決定され、同年4月14日に参院本会議で可決、成立した。これにより、来年2018年の4月1日に廃止される予定である。

 日本では都道府県の財源を元に、主要農作物である米、麦、大豆などの優良種子の保存や供給が行われてきた。その根拠法となるのが種子法であった。こうした国の取り組みに対し、「民間企業の農業への参入を阻害している」という批判が強くなったため種子法の廃止に至った、と農林水産省は説明している。

 しかし、種子の供給システムに国や自治体が関与しないことへの懸念の声も大きい。外資系企業の参入による農業環境の変化、種子の安定供給への不安、競争原理による品種の淘汰や減少、遺伝子組み換え作物(以下、GM作物)の問題などが山積している。

 そもそも、種子法が廃止に至った背景には、GM作物の種苗メーカーとして有名なモンサント社など、ひと握りの多国籍企業の思惑も絡んでいるのでは、と言われている。また、これらの動きは報道で大きく取り上げられていない。日本の農業、あるいは私たちの食生活に本当に影響はないのだろうか。これから懸念すべきことは、何なのだろうか。

 こうした疑問に応じるべく、2017年7月3日、東京都千代田区の参議院議員会館にて、日本の種子(たね)を守る会・準備会の主催による「日本の種子(たね)を守る会設立総会」が開催された。総会の冒頭には、農業・資源経済学に詳しい龍谷大学教授の西川芳昭氏による「種子の多様性を守る――人間と植物の共生の視点から」と題した記念講演が行われたほか、総会の後には設立記者会見も開かれた。

 今回の種子法廃止に関して、IWJでは総会の全体を取材し、動画とテキストにて懸念される影響をお伝えする。

記事目次

■ハイライト

  • 第1部 記念講演「種子の多様性を守る——人間と植物の共生の視点から」 西川芳昭氏(龍谷大学教授)
  • 第2部 総会
    1. 発起人代表 挨拶
    2. 設立について 設立趣意書の採択
    3. 会則について
    4. 事業計画・執行体制について
    5. 新会長挨拶

人は種子あってこそ、生きることができる。作物の種子を保護し、次世代に継承するのは人間の責任

 「種が消えれば、食べ物も消える。そして君も……

 国際的な種子の保存活動を主導したデンマークのベント・スコウマン(Bent Skovmand)氏のこの言葉を、西川教授は記念講演の冒頭で紹介した。

▲西川芳昭・龍谷大学教授

 私たちは、誰もが日々の生活において食べ物を必要としている。そして、種子なくして食べ物の生産はできない。皆、そこまでは容易に理解できるが、種子や農業が私たちの食生活に大きな影響を与えているという認識は十分に広まっているわけではない。

 「種子あってこそ、私たちは生きることができるのだ、とスコウマンは伝えている」と西川教授は言う。

 国際連合食糧農業機関(FAO)が1996年に発行した『食料・農業のための世界植物遺伝資源白書』の中にも、農業に不可欠な「土、水、種子(遺伝資源)」の三要素のうち、種子については「もっとも理解されておらず、もっとも低く評価されている。(中略)そして、おそらくもっとも危機にさらされている」というコメントがある。

 西川教授は、「野生の植物と違って、農作物は自らの生き残りを人間に委ねる。私たちの配慮と保護に依存している資源なのだ。歴史的に人間と種子は互いに影響を及ぼし合ってきた。人間は作物を保護する責任がある」と述べ、その営みを後世に継承することの重要性を強調した。

種子を「たね」と呼ぶことの大切さ――「種子は公共の資産。国が管理、保護する必要がある」

 自らも種屋の息子に生まれ、また、政府奨学金で米国と英国にそれぞれ留学した経験もある西川教授は、「種子についての、自身の知見を共有する義務がある」という考えに則って、今回の講演に臨んだという。そして、まず伝えたいメッセージとして、「種子は公共の資産であり、種子と人間は世界的に相互依存している」と語った。

 種子の「世界的な相互依存」とは、どのようなことを意味するのか。

 西川教授は、銘柄米の「あきたこまち」の品種改良を例に取り上げて、「この銘柄を生み出すために、アメリカ、中国、フィリピンの米の一部を配合させてきた。日本の米を守るということは、他国の品種を排除するということではない。国際的な連帯が必要だ」と説明した。

 一方、種子が「公共の資産」であるということは、今回、種子法が廃止されるに至って、初めて多くの人の共通認識となったという。この問題に関して、3月27日に衆議院の院内集会で講師を務めた京都大学の久野秀二教授のコメントを引用しつつ、西川教授は以下のように述べた。

 「種子を守る役割が国や自治体にはある、という認識を共有できた点で、種子法の廃止はひとつのチャンスではないか」

▲久野秀二・京都大学教授(2017年5月18日、岩上安身のインタビューで)

 西川教授によれば、種子の供給において中心課題となるのは「優良種子の持続可能な供給」である。その実現には4つの異なるアプローチがあるという。

(…会員ページにつづく)

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  1. 千葉 岳志 より:

    7月3日に個人会員になったのですが、会員サイトに入れなかったです。
    今日、ビューロベリタスジャパン(外資)の重永様から当研究所に種籾の譲渡依頼が有りました。
    種もみの遺伝子把握及びデータ保存が目的だそうです。ジーンバンク?からは無料で譲渡頂いているそうです。既に国家資産の種子を狙いに外資企業が動いております。
    日本の種子を守る会も迅速な対応及び活動が必要だと思います。

  2. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「多国籍企業は10年先を読んで仕込んでくるが、我々は100年先を考えて集中した活動を地道に積み上げていく」~西川芳昭教授記念講演・同会設立総会・記者会見 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/387532 … @iwakamiyasumi
    「食料主権」を売り飛ばす大罪。いま行われているのは政治の名を使った経済活動に他ならない。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/930916840884150272

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