- 講演 アーサー・ビナード氏(詩人)/野口勲氏(在来種専門の種屋)/天笠啓祐氏(ジャーナリスト)
- 討論 アーサー・ビナード氏×野口勲氏×天笠啓祐氏 「『種たね』を考える」
- 日時 2015年5月2日(土)12:30〜16:30
- 場所 大田区民ホール・アプリコ(東京都大田区)
- 主催 スローアグリカルチャー研究会/九条を守る神奈川高校教職員の会
遺伝子革命で「種子は宝物」になった
環境問題やバイオテクノロジーに詳しい天笠氏は、1991年、UPOV条約(植物の新品種の保護に関する国際条約)の改正について、「全植物の遺伝子から細胞、個体に至るまでが企業の特許になるように変更され、大きな問題になった」と語り、種が巨額の利益を産むビジネスになった経緯を振り返った。
「1970年代の中頃に遺伝子組み換え技術が登場し、『遺伝子革命』と呼ばれた。1980年前後には、モンサントなどの農薬企業がどんどん種子企業を買収していった。1990年前後、GM(遺伝子組み換え)作物の開発が活発になり、遺伝資源ブームで世界中に種子バンクができる。種子は宝物になった」
同時に、政府や企業の研究者たちが、資源国から新種の植物や細胞を密猟する、バイオパイラシー(生物学的海賊行為)が横行するようになった、と天笠氏は言う。
「米イーライリリー社は、マダガスカル島に自生するニチニチソウで抗がん剤を開発、特許を取得しましたが、その利益はマダガスカル島にまったく還元していない。こういうことが問題視され、2010年の名古屋議定書で、企業が遺伝資源の利用で得た利益は、資源国へ還元することが決まります。しかし、日本政府は、いまだに名古屋議定書に加盟していません」
知的所有権を支配する者が、世界を支配する
「このように、大企業が『生命特許』を得ることで、種子支配が可能になった」とした天笠氏は、最初の生命特許は、GE社が開発した重油を分解できる微生物(1980年代)で、その後、トリプトファン含有量の多いトウモロコシ(1985年)が初めての植物特許を、ガンを起きやすくした実験用マウス(デュポンマウス・1988年)は最初の動物特許を獲得している、と説明した。
これらの生命特許は、元々、アメリカでしか成立しなかった、と天笠氏は解説する。
「アメリカでは概念特許と言って、物自体がなくても、概念やビジネスモデルで特許を得られる。また、アメリカ以外の国は先登録主義だが、アメリカは先発明主義。だから、発明の証拠を隠し持ち、(他社によって)その儲けが確定した頃合いを見て『自分に特許がある』と訴える例もある。それは、潜水艦にたとえて『サブマリン特許』と呼ばれます」
1990年以降は遺伝子特許の隆盛期になり、1994年、GATTのウルグアイ・ラウンドのマラケシュ協定で、TRIPs協定(知的所有権)が締結される。それは特許条件をアメリカ基準で国際統一するというもので、その後、日欧米三極特許長官協議、特許G7が始まる。「知的所有権を支配する者が、世界を支配する時代に突入した」と、天笠氏は説明した。
米国、モンサント、ビル・ゲイツ財団などによる食料支配
1996年、植物新品種保護制度が改定され、新品種保護の3つの法律(二重保護可能)が揃う。2011年11月30日、食品安全近代化法が成立。そこには種子も含まれ、政府による種子管理が強化されることになった。天笠氏は、「それは『モンサント保護法』とまで言われています」と口調を強め、このように続けた。
「EUでは、遺伝子作物の権利が全加盟国にも適用されて、大問題になったため、各国ごとに変更された。日本も1998年に種苗法を改正。2002年、知的財産基本法の公布により戦略が強化されます。そんな国際情勢の中、米国政府、モンサント社、ビル・ゲイツ財団などによる食料支配戦略が進展している」
天笠氏は、「特許を制する者が、種子を制する。種子を制する者が、食料を制する。食料を制する者が、世界を制する。2014年の遺伝子組み換え作物の栽培面積は1億8150万ヘクタール。これは世界の農地の10%強で、トップのモンサント社が27%、デュポン社が17%、シンジェンタ社(スイス)が9%を占める。上位3社は化学企業です。それに7位のバイエルン・クロップサイエンス社(ドイツ)を入れると、遺伝子組み換え作物の4大メーカーが揃う。ちなみに、日本のトップは『サカタのタネ』の2%で、世界9位になります」と、内訳を語った。
2013年のGM品種作付面積は、大豆が世界生産量の79%、トウモロコシ32%、綿70%、ナタネ24%。モンサント社は、世界の種子の約27%、大豆の約79%を支配しており、次のターゲットは稲と小麦、野菜の種子だという。
世界で一番GM作物を食べているのは日本人
「GM作物を、世界で一番食べているのは日本人です」と天笠氏が言うと会場はどよめいた。
「GM作物はトウモロコシ73.6%、大豆84.3%、ナタネ油が89.1%を占める。カップラーメンには、GM作物由来の食物油脂、醤油、たん白加水分解物、加工でん粉、調味料、カラメル色素、乳化剤、酸化防止剤、ビタミンB2などが使われています」
また、ビル・ゲイツ財団は、2005年から2011年まで、助成金の40%以上をGM作物に与えて、モンサント社の50万株を取得。同財団と米国国際開発庁は、アフリカ・バイオ・セーフティセンター(ABC)のGM種子開発のモデル作りの研究『モニター・デロイト研究』も支援している。トウモロコシ、コメ、ソルガム、ササゲ、インゲンマメ、サツマイモなどの遺伝子組み換えを、エチオピア、ガーナ、ナイジェリア、タンザニア、ザンビアで実施中だという。
また、アフリカでは、グループ・マグレイン社によるアフリカ最大の種子企業Seed Coの買収、インドのモンサント系企業マヒコ社による、アフリカ唯一の綿種子企業Qutonの買収、シンジェンタ社によるザンビア種子企業MRIシード社買収なども進められた。
種子戦争が起きている、と指摘する天笠氏は、さらに、遺伝子組み換え果実も、現在開発中であることを明らかにし、「オカナガン社は変色しないリンゴ、サザンガーデン社は耐病性のあるオレンジ、クイーンズランド工科大学はビタミンA増量バナナ、デルモンテはリコピン増量パイナップルなどの開発に取り組んでいる」と話した。
世界中の野菜が子孫を作れない野菜になってしまった現実
次に、在来種専門の種会社の代表、野口氏がマイクを握った。
「昔から種屋は『一粒万倍』と言い、一粒のちゃんとした種があれば、1年後には1万粒に、それを蒔けば2年後に1億粒に増える。本来の種は、こういうものだった。だが、今、皆さんが食べている野菜のほとんどはF1(交配種)かハイブリッドです」
ハイブリッドの語源は、ラテン語のイノブタ(猪と豚の雑種)だ、と野口氏は笑い、「先進的でもなんでもない。日本が、大正時代に世界で最初にナスのハイブリッド化に成功した。ナスは自分のおしべで受粉し雑種しない。手作業でおしべを抜き、雑種を作ることから始まった」と、育種改良技術について説明していった。
日本特有品種のアブラナ科野菜(ダイコン、カブ、白菜など)は、自家不和合性(同じ個体では受粉しない性質)で、日本では、昔ながらの技術を使ってF1野菜を作っていた。それが雄性不棯(おしべのない種)に技法が移り、日本人は経済効率の点から種を作らなくなった、という。
「本来、秋冬伝統野菜のアブラナ科野菜は、他の花粉を喜んで受粉してしまう。そのため隔離する必要があり、中山間地の集落に種作りを依頼していたが、林業が衰退して人がいなくなってしまい、海外の種屋に依頼するようになった。海外では、自家不和合性の作物も、雄性不棯で育種するため、世界中の野菜が子孫を作れない野菜になってしまった」
農水省の指導は「トウモロコシの種はアメリカ以外から買うな」
野口氏は、「野菜は自家受粉性だから自前で種を取れるが、EUでは、それは法律違反。先祖代々受け継いだ種を栽培して、家族で食べるのはいいが、売るのはダメ。このように知的所有権で縛っている。将来、どうなるか心配です。だからTPPになったら、(在来種の種を採っている)私も捕まるかもしれない」と話す。
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「しかし、自分の畑に合った作物を残すことが、どれだけ子孫のためになるかわからない。だから、自家採種する人を増やしたい。うちの会社が種を売れなくなっても、どこかに健康な種が残ってさえいれば、再び取り戻すことができるから。うちから種を買った人には、『今後はうちで買わずに、自分で種を取ってくれ』と言っている。変な種屋です」と、野口氏は会場の笑いを誘った。
また、「遺伝子組み換えのトウモロコシの種は、日本に入っていないとはいえ、(アメリカのどこかで)F1のコーンに遺伝子組み換えトウモロコシの花粉が飛び散って、F1の種に、組み換えた遺伝子が含まれている可能性もある。もし、それが狭い国土の日本に入ったら、あっという間に広がる。だから、アメリカのコーンは怖い」と懸念を語り、このように言い重ねた。
「それなら、日本で品種改良したF1の種を、中国やオーストラリアで作ってもらって、それを輸入すればいい、と種苗会社に提案した。しかし、『農水省の指導で、トウモロコシの種はアメリカからしか輸入できない』と言われた。日本は、そんな国になってしまった」
TPPは「NAFTAにステロイド剤を打ったようなもの」
続いて、天笠氏が司会を務めて、野口氏、ビナード氏のパネルディスカッションに移った。ビナード氏は、「私たちには、TPPの実体は伝わってこない。そもそも、それが問題でしょう」と指摘し、民主主義と言いながら有権者の決定権をまったく無視し、国会で議論もせず、一部の人だけで自由貿易の協定を作ろうとしている米国議会と安倍政権を批判した。
また、それらに無反応な国民の姿勢も問題だとし、「アメリカと日本では、民主主義はやめてしまったんですかね。選挙に行かない人が半数ではどうしようもない」と嘆息した。
TPPに入ったら、どういうことになるのか。マスコミは関税やコメについてばかり伝えるが、それは氷山の一角にすぎない、とビナード氏は言う。
「医療、流通、金融すべてに影響が出ます。ラチェット条項があるので後戻りもできない。農業分野ではコメの輸入量を増やさなければならず、農家は太刀打ちできません。クリントン政権のNAFTA締結以降、アメリカの個人農家は急激に減って、その割合は1%です。TPPは、自由に搾取ができるようになったNAFTAに、さらにステロイド剤を打った自由貿易協定、と言われている」
ビナード氏は、「TPPは、システムも生物も特許の対象にしようとする。そうなると、われわれの祖先が真面目に地道に種を採ってきた営みが、過激派の犯罪みたいになってしまいます」と危惧し、私たちにできることは、一番身近な食べ物を中心に考えて、TPPの恐ろしさを伝えていくことだ、と力を込めた。
コメの2倍、トウモロコシを消費している日本
天笠氏からは、「実は、日本人の主食はトウモロコシなんです」という発言も。トウモロコシの日本の消費量(年間1600万トン)は、コメの倍もあり、トウモロコシを使った商品のトップが異性化糖(ブドウ糖、ぶどう糖果糖液糖)で、コカコーラ500mlに60gぐらい入っている、という。
関税障壁に上がる砂糖は、日本ではサトウキビから作る砂糖と、てん菜からのてん菜糖があり、600%の関税で守られ、その収入は砂糖農家の助成に回されている。「だが、TPPで関税0%になれば、砂糖農家は壊滅し、砂糖はすべて異性化糖に置き替わるだろう」と天笠氏は危惧する。
「異性化糖の原材料のアメリカ産トウモロコシの90%が、モンサントの遺伝子組み換え作物なんです。てん菜糖の95%も同様です。私たちの食卓が、そういうものにすべてに差し代わるのが、TPPです。米韓FTAを締結した韓国では、学校給食を地産地消で作っていたら、外国産の食品を排除する非関税障壁だとして、米企業に訴えられました。それで韓国は、学校給食の地産地消を止めてしまった」
種の購入者名簿を地方警察に渡し、違反者を摘発させるTPPの知財権「非親告罪化」を狙うモンサント
野口氏は、「モンサントは茨城県に農場を持ち、いろいろな遺伝子組み換え作物を栽培しています。そこの見学者は『この農場の情報を外部に流してモンサントに損害を与えた場合、賠償に応ずる』という書類にサインさせられるそうです」と明かした。
「見学者が、『ここで作られる種は日本国内で売っているのか』と尋ねたら、『自家採種などを摘発する法整備が整っていないので、日本ではまだ売らない』という返事だったという。その法整備とは、TPP締結のことでしょう。著作権の権利期間は日本は50年だが、アメリカでは75年になりました」
そして野口氏は、「著作権侵害を摘発できる権利者は本人か遺族のみだが、モンサントは、日本のような小規模農家をいちいち摘発しに回るのは手間なので、TPPの知財権で非親告罪化して、種の購入者名簿を地方の警察に渡し、違反者を摘発させようとしている。それを私が業界紙に書いたら、業界紙の専務が日本モンサント本社に呼びつけられ、『ガセネタだ。訂正しなければ告訴する』と迫られた」と明かした。
TPPでは日本語が非関税障壁にされる
野口氏は、「他の新聞記者から、『モンサントは(筆者ではなく)メディアの経営者に圧力をかける。モンサントは面倒な企業だと思わせて、メディア内部で自主規制させるから、不都合な記事は載らない』と教えられた。今後、どんどんそうなっていくでしょう」と話した。
ビナード氏も、「話題にならないことが、彼らには重要。私も、モンサントと戦ったカナダの農民、パーシー・シュマイザーさんのことを朝日新聞に書いたら、すぐに脅しの手紙がきましたよ。私の場合は『モンサントに訴えられた現代詩人』とか言って話題にできるが、企業の場合は自主規制して、モンサントに触れるな、となる。結局、われわれの知る権利がなくなってしまう」と危惧した。
ビナード氏からは、マイナンバー制とTPPは言語的なルール作りでうまく嚙み合っている、との指摘もあった。
「アメリカにとって、非関税障壁の最たるものが日本語。アメリカは日本国民を管理したいが、戸籍が読めない。数字で管理するシステムを作るように永田町にやらせたが、国民総背番号制という名前で失敗した。今回、それを『マイナンバー制』と言い替えて、印象を良くしています」
また、TPPになると(日本人相手でも)多国籍企業は英語の契約書を示すだけでOKになると、ビナード氏は言う。
「そうなると、日本語は将来、アイヌ語やアパッチ族の言葉のようになってしまいます。それぐらい危機感を持つべきです。つまり、TPPは『日本語も、日本の風土も、伝統も関係ない』ということなのです」
人間の精子減少は食材が原因か?
野口氏は、最初に開発された遺伝子組み換え作物は、日持ちのするトマトだったと言い、トマトの品種改良の歴史を紹介した上で、このような懸念を表明した。
「今はホルモン剤で種無しトマトが作られる。野菜や果実に種があると子どもたちが食べないというので、改良や交配で工夫し、種無し作物が市場に出回るようになった。人間の精子の減少も、こういう食材が原因ではないかと思うが、誰も調べません」
ビナード氏は、「いや、本当は調べているのでしょう、言わないだけで」と応じ、天笠氏も、「今、種のない作物が増えています。種を作らないことは、企業には好都合だが、人間にとってはどうなんでしょうか?」と疑問を口にした。
野口氏は、種の重要性を一番認識しているのが、モンサントやゲイツ財団だろうとし、「ノルウェーでは永久凍土の下に種を集めて保存している。全部で3万数千粒、一品種500粒ほどが、零下18度で1000年以上保存できる。ノアの方舟のように、最後の審判が来た時のためだといいます」と話し、翻って日本のジーンバンクは、予算が減って80年代の種を保存するだけになっている、とした。
天笠氏も「世界中で、遺伝子資源を集めるのが競争になっている。アメリカ、ロシアはすごい数の植物を集めている。日本は遅れています」と話した。
F1のニンジンはネズミも食わない
ビナード氏が、「モンサントの社員食堂では、自社の作物は出さないという噂もある。彼らは種の重要性をとても知っています。だから、一般の人たちには知られたくないし、知られて動き出されるのをとても恐れている」と話し、野口氏が、「うちに取材に来るマスコミの人たちは、みんな私の種を買って帰ります。毎年、買ってくれる人は、野口さんのニンジンの種は野ネズミが食って困る、と言う。同じ栽培をしても、F1のニンジンはネズミも食わないのです」と言うと、会場がざわめいた。
天笠氏が、「やはり、一人ひとりが周囲に危険を伝えて、地道な努力をするしかない」と力を込め、ビナード氏は、「野口さんは、自分で栽培しているから説得力がある。他の人たちも、自分で作物を作ってみて、それを人にあげながら(遺伝子組み換えの危険性を)伝えていくと、もっと伝わります」と言い添えた。
会場の参加者から、「北海道で、遺伝子組み換えの大豆、てん菜、トウモロコシの栽培申請をしているらしいと聞いた。しかし、モンサントに配慮しているのか、ほとんど報道がないので教えてほしい」との声が上がった。
天笠氏が、それは、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が発表したもので、北海道の50人の農民が北海道農業研究センターに試験栽培の要望書を出したというニュースだとして、次のように説明していった。
TPPはトロイの木馬、内部に殺し屋が潜んでいる
「北海道には遺伝子組み換え作物を推進する農民団体があり、昔、試験栽培したことがある。まだ、栽培規制がまったくない頃で、1ヘクタールの国の施設で試験栽培が始まった。周囲の農民たちは驚き、一気に反対運動が強まり、北海道では遺伝子組み換え作物規制条例(2005年3月31日公布)ができた。高橋はるみ知事は評判は悪いが、この規制には賛成した。この規制条例は農水省の規制よりはるかにきつく、簡単に栽培ができない。推進派は、なんとか栽培したくて要望書を出したのです」
また、1990年代に住友化学が発明したネオニコチノイド系農薬について、天笠氏は、「ネオニコチノイド系農薬は強い神経毒性があり、人間に影響がないわけがない。地面から吸わせる浸透性農薬なので、植物全体に行き渡る。とても危険だ」と警告した。
ある参加者は、「命の貯蔵庫である地球にとって、人間はガン細胞のようなものだが、何とか良性腫瘍になってほしい」と訴えた。
ビナード氏は、「命を続けることが必要です。民話が語り継がれるように、種を育てて、毎年、採種し続けることが人類の最大の英知。みんなが大事なことを継続させていければ、人類も、自然界にとっての良性腫瘍になる」と励ました。
さらに、「TPPはトロイの木馬。木馬は職人が素晴らしく仕上げても、内部には殺し屋がいっぱい潜んでいる。このように昔話が語り継がれて、今でも正しい知恵を与えてくれる。人間が語り続けて、知恵を実行していければいいと思う」と言葉を重ねた。
外食産業の都合で、味のない野菜が求められる
別の参加者が、「自分の小さい頃は、トマトも夏みかんもとても酸っぱかった。野菜の匂いもきつかった。だが、今の野菜は匂いもしない」と、農作物の変化を話すと、野口氏は顔を曇らせて、このように答えた。
「農家は、市場の要求で作物を生産する。その市場の7割を占める外食産業からの要求が、味のない野菜なのです。野菜の味が地域で違うと、全国展開するレシピの味が狂ってしまうから。また、雑菌がつかない野菜が求められた結果、イボのないキュウリができた。野菜は、外食産業の要求で品種改良されているのが実情です」
天笠氏は、給食や総菜に使うレタスの塩素殺菌もひどいと指摘し、「塩素100ppmで、人間の細胞の50%は死滅する。50ppmでは30%死滅。だが、レタスは200ppmで5分浸して殺菌しています。みなさんは、レタスの死んだ細胞を食べているのです。今は、何から何までおかしくなっている」と嘆いた。
「余計なことは人々に知らせない風潮になり、もう、市民では太刀打ちできないので、専門家に発言してもらうしかない」という声が上がると、天笠氏は、「専門家は、その分野しかできない。でも、皆さんこそ、生きることの専門家だと思う」と鼓舞した。
ビナード氏も、「専門家とは小さい間違いを器用に避けながら、大きな間違いへと突き進む人」というノーベル賞受賞者の言葉を紹介し、「専門家は、現場から情報をもらって論文にする。だから、専門家に依存しない活動で進むべきでしょう」と提言した。
シンポジウム「種たねSeed」~種(たね)があぶない!食があぶない!命があぶない!(動画)アーサー・ビナード氏/野口勲氏/天笠啓祐氏 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/244341 … @iwakamiyasumi
そもそも種子とは人類共通の財産である。一企業が独占するなど、許しがたい
https://twitter.com/55kurosuke/status/598243866093879297