食品偽装、農薬、遺伝子組み換え、合成肉など、グローバル化によって海外からの輸入食品が増えることにより、食の安全は脅かされている。TPPの年内妥結がささやかれる中、TPPにより食の安全は守られるのか、ということを中心に、7日、ジャーナリストで市民バイオテクノロジー情報室代表の天笠啓祐氏による講演会が行われた。
(IWJ・安斎さや香)
特集 種子法廃止の衝撃「食料主権」を売り渡す安倍政権
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食品偽装、農薬、遺伝子組み換え、合成肉など、グローバル化によって海外からの輸入食品が増えることにより、食の安全は脅かされている。TPPの年内妥結がささやかれる中、TPPにより食の安全は守られるのか、ということを中心に、7日、ジャーナリストで市民バイオテクノロジー情報室代表の天笠啓祐氏による講演会が行われた。
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日本がTPPに参加すれば、食品の輸入の条件や、国内基準の緩和が行われることになる。例えば、日本では使ってはいけない成長ホルモン剤や、抗生物質を使った海外の食肉が貿易障壁となり、米国などから基準の緩和を要求され、結果的に「日本の食文化が荒廃することにつながる」という。
農薬の基準に関しては、日本が2006年にネガティブリスト制からポジティブリスト制に移行したことによって、リストに載っていない農薬に一律の残留基準(0.01ppm)が適用された。その結果、米国産果実の多種類が出荷停止となり、米国はこのポジティブリスト制を問題視しているという。また、米国は日本で禁止されている果物などに塗る防カビ剤(ポストハーベスト農薬)の安全性評価の簡素化も要求している。
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フランケンフィッシュと呼ばれる遺伝子組み換えの鮭や、クローン牛など、遺伝子組み換えの食肉が出回る可能性も懸念されている。また、トウモロコシについては、米国産の88%が遺伝子組み換え、甘味のテンサイについては、米国産の95%が遺伝子組み換えであり、こうした遺伝子組み換え作物がTPPにより入ってくることになる。さらに、安価な輸入作物が増えることで、「国内のサトウキビやテンサイが壊滅的打撃を受ける」と天笠氏は警鐘を鳴らした。
遺伝子組み換え作物の栽培は世界で拡大傾向にあり、開発企業は米モンサント社の独占状態にある。モンサント社は世界の種子の27%(2009年)を支配しており、多国籍遺伝子組み換え種子企業が世界の種子の60%を支配している。遺伝子組み換え企業は全穀物、さらには野菜の種子支配も目論んでおり、日本の種子企業が多国籍企業に買収され、遺伝子組み換え種子の流通拡大が懸念される。
「命のつながりで農業をするのではなく、作物しか必要ない」というのが遺伝子組み換え農業だと天笠氏は指摘。商用栽培はされていなくても、自生している遺伝子組み換えなたねは日本各地にみられると、写真を紹介しながら解説した。
2009年5月に発表された米国環境医学会のポジションペーパーでは、過去の動物実験の分析から、遺伝子組み換え作物が、免疫システム、生殖や出産へ悪影響をおよぼすことが明らかになっている。
遺伝子組み換え食品の避け方として天笠氏は、食用油ではコーン・大豆・なたね・綿実以外のものを選択すること、国産で有機栽培の作物を選択すること、遺伝子組み換え作物・食品を扱っていない産地直送のものを購入することを挙げ、「輸入食品を減らし、日本の農業を守ることが大切だ」と解説した。