民間企業が入ればもっと多様になる!? 民間企業は利益がでるものしか作らないだろう!日本の食は守られるのか――種子法廃止について、農水省、生産者、消費者が意見交換! 2017.4.10

記事公開日:2017.4.15取材地: テキスト動画
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(取材:林俊成、文:花山格章)

特集 種子法廃止の衝撃「食料主権」を売り渡す安倍政権
特集 TPP問題
※2017年11月16日、テキストを追加しました。

 「自分たちの食料のことは、自分たちが決めるという『食料主権』の考え方が、種子法廃止の議論では無視されている。このまま種子法が廃止になれば、長年かけて構築した種子は弱体化する。私たちの将来にとってマイナス要因でしかない」

 種子法が廃止されることについて、龍谷大学経済学部教授の西川芳昭氏は、「種子をめぐる国際条約と日本の農民と消費者の権利」と題した講演の中で危機感をあらわにした。

▲西川芳昭・龍谷大学教授

 米、麦、大豆など、日本の主要農産物の種子を公的に保護し、安定供給する仕組みを支えていたのが主要農作物種子法(種子法)だ。その種子法について、2016年10月、規制改革推進会議の農業ワーキンググループから廃止が提案された。それを受けて、2017年2月10日に種子法廃止が閣議決定され、3月28日に衆院本会議を通過。この後、参議院でも可決、成立する可能性が強くなり、これを問題視する関係者たちが声を上げた。

 2017年4月10日、東京都千代田区の衆議院第一議員会館にて開催された、全国有機農業推進協議会、日本の種子(たね)を守る有志の会の主催による「第2回『日本の種子(たね)を守る会』講演会と農水省、生産者、消費者による意見交換会」では、日本の農業、食の根幹を支えてきた種子法をめぐって、さまざまな意見が飛び交った。

 西川氏は、「種子法は、主要農作物である稲、麦、大豆の優良な種子の生産及び普及を促進し、国が果たすべき役割を規定している法律。食料の生産につながる優良な種子を安定的に確保する責任は、最終的に国にあることを定めている。この種子法の支えがあり、予算が確保されているからこそ、日本では300品種近くの米が作り続けられている」と説明した。

 その上で、「種子は農業資材である一方、情報でもある。近年の遺伝子組み換え技術の発展で、種子に経済的価値をつけることが可能となった。政治的には『種子、遺伝子を制するものが世界を制する』と言われている」と語った。

 農水省側は、種子法が民間企業の農業参入の障壁になっているとし、稲の奨励品種の開発者に民間企業がいないことを、種子法廃止の理由とした。しかし、民進党衆議院議員(当時・現在は希望の党党員)の福島伸享氏は、この日の意見交換会で「民間の品種開発意欲を、この法律が阻害していることはありえない。稲の品種改良は大変で、都道府県ごとに独自の品種があり、すぐには儲からないのだ。公的に開発した品種を大事にしてきたから、民間は手を出せなかったに過ぎない」と反論した。

記事目次

■ハイライト

※全編動画の、約1分30秒地点から、約14分40秒地点まで映像が荒くなっております。申し訳ございませんが、なにとぞご了承下さい。

  • 講演「種子をめぐる国際条約と日本の農民と消費者の権利」 西川芳昭氏(龍谷大学経済学部教授)
  • 農林水産省からの説明/生産現場の声/意見交換会

種子は資源であり、情報でもある。ゆえに、種子を制するものが世界を制する

 講演会の冒頭で西川氏は、われわれの身近にある大切な種子が、なぜ、投資の対象になるのかを解説していった。

 「種子は、もっとも基礎的な農業の生産資材である。ここを押さえると、農業全体を押さえることができる。また、種子は作物の特性を規定する遺伝情報を持っている。したがって、種子は情報でもある。この情報を公的に共有するのか、あるいは多国籍企業のように囲い込むのか。囲い込むと、その外側にいる人は費用を払わないと情報にアクセスできない。そこに経済的価値が生まれる。遺伝子組み換えなどの技術が発展したことで、種子に経済的価値をつけることが可能となり、それが拡大している現状がある。政治的には『種子、遺伝子を制する者が世界を制する』と言われている」

 第二次世界大戦中、イギリスの研究機関は南米に種子探索の調査隊を送っている。目的は、戦争後に国民の食料を確保するためだ。西川氏は、「彼らは種子の大切さを理解しており、大戦の最中にあっても、次の世代を見据えていたのだ」と語った。

 農業投資を支えている種子関係の法律、条約の中には、「植物の新品種の保護に関する国際条約(UPOV)」があり、知的財産権の生物への適用の普遍化(農業の工業化)についての言及がある。「これによって、特許とロイヤリティ(対価)が発生する。つまり、『種子は金になる』。これが今の、種子の開放を求める基本的な流れになっている」と、西川氏は説明した。

種子法は稲、麦、大豆の優良な種子の生産や普及を促進し、安定供給のために「国が果たすべき役割」を規定している

 ここで西川氏は、種子法と、同じく国が農作物に関与することを定めた種苗法(しゅびょうほう)との違いを説明した。

 「2つの法律は目的が違う。種苗法は、品種の育成の進行と種苗の流通の適正化を通して、農林水産業の発展に寄与することで、品種育成した方の知的財産権を保護することが目的だ。種子法は、主要農作物である稲、麦、大豆の優良な種子の生産及び普及を促進し、国が果たすべき役割を規定している。そして、食料の生産につながる優良な種子を安定的に確保する。その最終的な責任は、国にあることを定めている」

 種子法が制定された1952年5月は、敗戦国であった日本がサンフランシスコ講和条約で主権を取り戻した直後である。西川氏は、「当時の政治家や官僚が、食料の確保が国家的課題だと認識していたということ。戦争中、種子に関する管理は食管法の下で品質が悪くなった現実がある。そこから抜け出し、良質な種子を確保する法律が必要だとされ、議員立法で作られた」と、種子法の制定過程について述べた。

 そして、国際的な枠組みにおける種子法の位置づけについて、西川氏は、次のように述べた。

 「国連人権宣言に基づいて条文化された『社会権規約』がある。当然、日本も締結している。この中に『技術的及び科学的知識を十分に利用することにより、栄養に関する原則についての知識を普及させることによりならびに天然資源の最も効果的な開発及び利用を達成するように農地制度を発展させ又は改革することにより、食料の生産、保存及び分配の方法を改善すること』とある。基本的人権のひとつとして、国民はこれを保証される。こういう法的規範の中で、種子法も解釈される

種子法の支えがあり予算が確保されているからこそ、300品種近くの米を作り続けることができた

 続いて、西川氏は食料に関する数字を示した。世界で生産される3大穀物は、米、小麦、トウモロコシで、これらの生産量には大きな差はないという。

 「注意すべきは貿易に回る部分。米は5%、トウモロコシは14%、小麦は22% 。米が足りなければ輸入すればいいと考えがちだが、米は世界市場に出回る比率が他の穀物と比べて低く、非常に不安定だ。

 もうひとつ、穀物自給率。フランスやアメリカといった農業国は、穀物自給率は常に100%を超えている。イギリスは、第二次世界大戦の食糧不足の苦しみを国民も政府も覚えているので、何十年もかけて100%を越えさせた。だが、日本の穀物自給率は1960年代から下がる一方で、今は27%程度。種子法が廃止になれば、ますます下がると考えられる。ちなみに、OECD諸国の30ヵ国の中で日本の穀物自給率は28位。国際連合食糧農業機関(FAO)で統計が利用できる世界173ヵ国中124番目。先進国として、情けない数字だ」

▲農水省の公表している日本の食料自給率の推移

(…会員ページにつづく)

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